【社説】北朝鮮の挑発癖、韓国国民の覚悟で終止符を

 北朝鮮は20日午後3時53分、韓国側の対北拡声器を狙って、京畿道漣川地域の山地に向け高射砲1発を発射した。その後4時12分に、今度は直射砲数発を非武装地帯(DMZ)に向けて発射した。北朝鮮が火器を動員して韓国の地域を直接攻撃したのは、2010年の延坪島砲撃以来、4年9カ月来となる。

 韓国軍は、北朝鮮の最初の挑発からおよそ1時間11分後の午後5時4分ごろ、北朝鮮軍のロケット砲発射地域付近に向けて155ミリ自走砲で数十発の対応射撃を行った。双方とも、人命被害は発生していないという。20日夜までの時点で、さらなる状況は発生しなかったが、漣川郡と江華郡の一部地域では住民に避難命令が下り、韓国軍全軍に最高レベルの警戒態勢が発令された。韓国政府は、挑発からおよそ2時間後、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が主催する緊急の国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、今後あらゆる挑発に断固として対応するという立場を明らかにした。

 韓国政府は、今月4日に京畿道坡州のDMZで発生した北朝鮮による地雷挑発で韓国軍の兵士2人が重傷を負った後、11年年来初めて対北拡声器放送を再開した。北朝鮮は今月14日、拡声器放送を中断しない場合、「無差別打撃戦」に入ると脅迫した。

 韓国政府はこれまで、北朝鮮が挑発するたびに「原点打撃」を警告してきたが、きちんと実行したことはなかった。地雷挑発の時も、原点がどこか不明確なので打撃できないと言った。今回も対応できなかったら、安全保障は大きく揺らいでいただろう。

 問題は、これからだ。北朝鮮の総参謀部は、砲撃挑発の後、韓国軍の合同参謀本部(合参)宛てに電話通知文を送り、22日午後5時までに放送を中断し、放送施設を撤去するよう要求、「履行しなければ軍事的行動を開始するだろう」と言ってきた。同時に、金養建(キム・ヤンゴン)労働党統一戦線部長は韓国大統領府(青瓦台)の金寛鎮(キム・グァンジン)安保室長に書簡を送り、拡声器放送を中断すれば「関係改善の出口を開く意志がある」と言ってきた。硬軟両面戦略で対北拡声器放送の中断を狙っているわけだ。

 韓国軍は「対北拡声器放送は継続する」と宣言した。哨戒艦「天安」爆沈事件、延坪島砲撃、地雷挑発のような、韓国国民を殺傷する攻撃を北朝鮮側が続けるかぎり、対北放送はやめられない。韓国政府は、北朝鮮がさらなる挑発を行ってくると考えて、これに備えなければならない。20日の挑発では、対応までに1時間少々かかったが、次はこの時間を大幅に縮め、直ちに対応できるようにすべきだ。

 北朝鮮が砲撃挑発で軍事的効果だけを狙った、とみることはできない。緊張をあおり、韓国社会に疲労感や南南葛藤(韓国国内での対立)などを起こすことも意図しているだろう。今回の事態は、その性格上、決して短期間では終わらないだろう。今後も、幾つもの紆余(うよ)曲折があり得る。韓国の軍事的能力に不足はない。足りないのは、決意と忍耐だ。何が起ころうとも今回は北朝鮮に引きずり回される悪循環を断つ、と韓国国民が決心し、不便と犠牲を覚悟すれば、北朝鮮の挑発癖にここで終止符を打つことができる。

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連ニュース