2人目、3人目の子どもが生まれて育児休業を取る間は、親が自宅にいるのだから、保育園に通う上の子ども(0~2歳)は一時退園とし、入園待ちの他の家庭の子どもを入れる。

 埼玉県所沢市が4月からこんなルールを実施したところ、退園の可能性が生じた保護者が裁判に訴える事態になった。

 待機児童問題は都市部を中心に深刻だ。朝日新聞が20政令指定都市と東京23区に聞いたところ、今年4月1日現在で待機児童(厚生労働省の定義による)は7千人。この定義には含まれない「隠れ待機」(保育施設に入れず育休を延長しているケースなど)は3万人に達していることが分かった。

 1人目の子どもの入園待ちで親が働きに出られない。2人目が生まれて退園を強いられる。片働きでも子どもを預けざるをえない事情がある……。家庭の事情は様々だ。どの家庭の子どもを優先すべきなのか、一概に答えは出せない。

 根本には保育園不足があり、国も自治体向けの予算を積んで対策を進めているが、短期間での解消は困難だ。

 それでも、家庭同士の対立をあおるような制度は好ましくない。「子どもを増やしたら保育園を使えない」という認識が広がれば、出産したい気持ちが薄れかねない。子育てしやすい社会づくりへの機運に水をさすことは避けなければならない。

 自治体には、保護者や保育、教育の関係者らによる「子ども・子育て会議」を設ける努力義務が課されている。所沢市も設置済みだ。この場を有効に使って、待機児童、隠れ待機の問題を少しでも改善する方策を探ってはどうだろう。

 ほかの自治体の実践は、自分のまちの保育を考えるヒントになる。

 育休退園を実施している静岡市は、年度途中の職場復帰で保育園が見つからない家庭向けに「待機児童園」を用意している。通常の保育園と比べて低コストで設置でき、保育園に空きが出るまでの間、子どもを預かる施設だ。

 横浜市では「退園で子どもの環境が変わるのはよくない」という保育現場の考えを尊重し、いったん入園すれば通い続けられる仕組みがある。入園待ちの家庭には専門の職員が、保育園以外の様々なサービスを紹介している。保育士らが自宅で子どもを世話するサービスなどだ。

 自治体が悩みや経験を持ち寄り、知恵を絞る。所沢市の事態を、そうした取り組みへのきっかけとしたい。