タイの首都バンコクで爆弾テロが発生、多くの死傷者を出した。外国人も多数訪れる観光地での犯行で決して許されない。タイ政府は凶行が二度と繰り返されないよう万全の対策を取ってほしい。
テロは十七日夜、バンコクの観光名所になっているヒンズー教の「エラワンのほこら」付近で発生した。死者二十人、負傷者百二十人以上を出す大惨事となった。被害者の中には外国人も多く、滞在中の日本人も重傷を負った。
翌日には現場近くの船着き場付近の水中で爆発があり、同一犯の可能性が指摘されている。犯人からの犯行声明はなく、複数とみられる犯行グループは特定されていない。
タイ政府は住民や観光客などの不安をなくすためにも、一刻も早く事件を全容解明し、さらなるテロの防止に全力を挙げてほしい。
タイは、タクシン元首相を支持するグループと反タクシン派の対立が長年続いている。昨年、タクシン氏の妹で当時のインラック首相と反タクシン派の対立が激化、デモなどで多くの死傷者を出す事態になった。五月には治安維持の名目で軍によるクーデターが決行され、暫定政権が生まれた。
テロ事件は軍政に反対するグループの犯行とする見方もあり、タクシン派が背景にいるとの説も流されているが、タクシン派は真っ向から否定している。中国・新疆ウイグル自治区から迫害を逃れるためタイへ不法入国し、強制送還されたウイグル族の反発や、タイ南部で分離独立を目指すイスラム勢力など犯人グループについては諸説が出ている。
現地では、テロの解決と治安維持を求める一方で、軍政が長期にわたることを懸念する声もある。プラユット暫定政権は、戒厳令解除後も強権を維持している。テロ対策名目で民主国家への移行が遅れることがあってはならない。
タイには、日本から千六百社以上の企業が進出、約六万四千人の日本人が滞在している。バンコクだけでも滞在者は四万人を超える。日本からの観光客は昨年一年間で百二十万人と日本人にとって、親しみの深い国だ。
テロは無差別で、どこで被害に遭うかわからない。今回のテロで邦人社会にも動揺は広がり、企業活動の停滞や観光客の足が遠のくことは避けなければならない。
外国の信用を回復するためにも治安の回復と同時に、速やかに民政移管し、民主的な安定国家にしていくことが望まれる。
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