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第17話
ごめんなさい暴走しました自重できませんでした、ごめんなさい。
表現を一部修正。
城へと戻った大河だが、与えられた自室のソファに座り込み、腕をくんで唸っていた。
大河はぼそぼそと「やっぱり」とか「でもなぁ」を繰り返し呟いている。
その姿をお茶を入れながら「何を悩んでいるのか?」と考えているのは、この国の騎士団団長にして第一王女、オリヴィアである。
騎士団団長と言う多忙な身であるオリヴィアが何故ここにいるのか?
平たく言えば興味を持った相手に会いにきたと言うだけなのだが、オリヴィア自身は違うようだ。
(お茶など幼少の頃教わった以来だ……美味しいと良いのだが)
なんとも乙女心満載である。
そんな彼女など頭の隅にもない大河は、悩んでいるのを辞めたのか、ソファの前のテーブルにお茶を置いたオリヴィアが座るのを確認して、口を開いた。
「オリヴィアさん」
「……」
名前を呼ばれたオリヴィアは、一瞬顔を大河へと向けるが、ぶすっとした様子でカップを手に取ると、優雅に口へと運んだ。
「あの、オリヴィアさん…・・・?」
対して大河は、名前を呼んだのにも関わらず顔を見せるだけでお茶を飲んだオリヴィアに顔を引きつらせる。
(なんか、やっぱり俺”邪魔”なのかな)
こうしてお茶を飲みにきてはいるが、入室してから一言も発さないオリヴィアに大河は次第にネガティブな思考に陥る。
それでも、先程決意した事を話すべく、もう一度口を開こうとし、それを辞めた。
何故なら、カップを戻したオリヴィアが立ち上がり、対面に座っていた大河へと近寄ったからだ。
そして大河の隣に腰を下ろすと、長い足を組み、大河の肩をぐいと引き寄せたのである。
「あの……オリヴィアさ『オリヴィアだ』」
どうやら”さん”付けが気に入らなかったようだ。
最初は様付けを嫌がり、今度はさん付けなようだ。
「皆の前でそう呼べとは言わん、ただ、二人でいるときぐらい、そう呼んでほしい」
オリヴィアは大河より背が高く、声が上から降ってくる。
加えて、今大河はオリヴィアに強く肩を抱きしめられている。
心臓の音が大きくなるのを拒むこともできず、大河はオリヴィアを見上げた。
「オ、オリヴィア」
おっかなびっくりに名前を呼んだ大河に、オリヴィアは見る者を魅了する大人の女の笑みで「なんだ?」と返した。
「あの、話があるんだ」
「あぁ」
「その、このままじゃ話し辛いんだけど」
「その要求は却下だ、ここ数日仕事が忙しくてお前に会ってない、肩を抱きしめるぐらい許せ」
心臓の鼓動が大きすぎて恥ずかしいのですが、とは言えない。
それにしても、と大河は溜息をついた。
「あの、俺の何がいいんですか?」
大河は、ずっと思っていた事を口にした。
「どういうことだ?」
オリヴィアは何となく大河の言いたい事を予想しつつも、あえて大河の口から聞き出そうとする。
「俺、本当にあの日偶然シルヴィアを助けただけなんですよ? そんな俺を何日も城に置いといて、挙句色々と勉強まで教えてくれて、その事に感謝はしてるけど、でも俺は一般市民と同じ平民で、本来ここにいるべき人間じゃない、それに皆の負担になりたくない」
大河はそこで一旦言葉を区切ると、オリヴィアが淹れてくれたお茶を飲む。
カップを戻し、両手を膝の腕でぎゅっと握りこむ。
そして、意を決して言葉にする。
「俺は城を出ます」
その言葉に、密着させられているオリヴィアの体が僅かに跳ねた。
それは、驚きからだろうか、それとも、分かっていての反応なのか。
オリヴィアは抱き寄せていた腕を戻すと、厳しい口調で言った。
「駄目だ」
「なんでっ!」
今度は大河の体が跳ね、オリヴィアへと顔を向けた。
オリヴィアは怒っていた。それは、顔を見たから分かった訳ではなく、厳しい口調で言われたから理解した訳でもない。
城を出る、そう言った瞬間からオリヴィアから威圧感を感じていたからだ。
「この国を出て何をする? 大河、よく考えてくれ、今のお前に、何が出来る」
何が、出来るんだろう。
戦う事は? レヴィルとの組み手なら何度かやっている、だけどそれは組み手であり実戦ではない、勉強はどうだ? 世界の地理を大雑把に覚えただけだ、国の名前なんて自分がいる国ぐらいしか覚えていない。
この間やっと国から外に出たばかりの、子供にも劣る知識しか持たない大河に、この世界を一人で生き抜くことができるのか、オリヴィアはそう考えている。
そして、それは限りなく不可能であると。
確かに、大河の戦闘能力には目を見張るものがある。
しかし、それだけだ。この世界の子供なら誰でも知っている常識を知らない事があるし、各国の名前や位置もそうだ。何より、一人で旅をしても、食べることに困ったらどうする? 狩りの知識などあるはずもない。
オリヴィアは冷静に大河を見極めていた。
確かに、体は成人前の男児の物だし、考え方もしっかりしている。
ただ、あまりに純粋すぎる。人の好意をありがたくうけとる反面、その裏に隠された真実を見抜けないでいる。何も狡猾になれ、と言っている訳ではない。
ただオリヴィアは、大河が城を離れるにしても、一人でも外の世界でも生きていられるようになるまでは国から出さないつもりでいた。
何より、オリヴィア自身もう大河へ恋をしている自覚がある。
仕事の合間、顔を見せに来た大河に癒され、時々二人で話す時に垣間見える優しさや純粋さが、オリヴィアを恋へと落としていった。
騎士と言う固すぎる身の上のせいかもしれないが、オリヴィアは大河の「心」に惹かれたのだ。
自分に何ができるか、考えているであろう大河。
しかし、答えがでず、言葉も返せない。
そんな大河をオリヴィアは再び肩を抱き寄せる。
「皆の負担か、そんな事はありえない」
現実に、オリヴィアは今この時も癒されていた。
「でも、俺が身の振り方を考えて冒険者になるって言ったとき、シルヴィアめっちゃ怒ってたし……」
「それはただの嫉妬だ、気になる男がどこかへ行くのを嫌がったのだろう」
「そうなの……かな?」
「そうだ、だが私もそうだ、百歩譲って冒険者になるのは構わん、社会勉強の一環としてな、ただ冒険者になって旅に出る、と言うのならそれは許さん、何より私が我慢できん」
そう言ってオリヴィアは大河の膝裏に手を回し、ぐい、と引っ張る。
強制的な逆お姫様だっこをされた大河は、オリヴィアの顔が近いことに焦る。
「オ、オリヴィアッ?!」
「言っただろう、我慢できん、とな……惚れた男が目の前に居るのだ、我慢しろと言う方が酷と言う物だろう?」
「ちょっ、オリヴィっん」
慌てふためく大河の唇を強引に奪ったオリヴィアは、大河の口内を蹂躙する。
成すすべなくオリヴィアの暴挙に晒される大河であった。
呼吸が苦しくなると解放され、息を整える間もなくまた蹂躙される。
いつの間にか場所も奥の寝室にまで移り、オリヴィアがいつだったか、苦手だと言っていた魔法で音漏れ防止さえ部屋に施している。
このままじゃ喰われると確信した大河は、オリヴィアの何度目かの蹂躙をなんとか阻止。
赤くなった顔と潤んだ瞳でオリヴィアを無意識に誘惑する中、打開策を打ち出した。
「分かった、暫くはここを拠点に冒険者活動する……だから、許して」
普段の大河からは想像もできない大河の声に、オリヴィアは背筋に電撃が走るのを感じていた。
目の前の、一回り近く年の離れた男の子が赤面し、涙を一杯に瞳にためこんで許しを懇願している。
(私は意外とSなのか? いや、大河限定かもしれん……それに)
大河自身、M気質なのか、今も小刻みに体を震わせている。
それが下腹部を気にしていることなど、純情な乙女な年代を当に過ぎ去ったオリヴィアは理解している。
苦しいであろう大河の下腹部に手を伸ばすと、大河がぎゅっと目を閉じた。
「恥ずかしいのか?」
大河の耳元でそう囁き、もっと辱めたいと言う欲求に負けそうになる。
(だめだ、自重できん)
事実、負けていた。
それでもオリヴィアは残った理性を総動員すると、大河から離れた。
「分かったか? これが私の想いだ」
残った体力でオリヴィアに背を向けた大河の耳元で再び囁き、オリヴィアは大河の部屋から出て行った。
残された大河は、止まらない心臓の大音量と、先程まで感じていた快感を忘れられずにいる。
オリヴィアの激しい口付けにもその後の行為にも全て頭が追いつかないで居た。
そして、少し冷静になった所で、大河は気が付いた。
「……でちゃった」
草薙大河17歳、童貞。
大人の女性に弄ばれ、暴発。
誤字を修正しました。
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