自民党が教育現場への関与を強めようとしている。8月末が期限の4年に1度の教科書採択に合わせ、保守色の強い教科書を選んでもらうためのパンフレットを作成。地方議員が議会で質問することなどを通じ、採択権限を持つ市町村教委にはたらきかけることをねらう。さらに、政治的中立を私立高校の教員にも求める法改正も検討している。

 「より良い教科書を子供たちに届けるために」

 安倍晋三首相に近い議員でつくる議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長=古屋圭司衆院議員)は先月、こんなタイトルのパンフレットを作り、全国の自民の地方議員に配った。

 パンフレットには「議会質問用参考資料」とも書かれており、冒頭で「安倍内閣の教育再生の成果として、教科書は大きく変わった。しかし、記述にはいまだバラツキがある」と指摘。第2次安倍政権で初めて作られた今回の社会科教科書は、領土問題や近現代史で政府の見解や立場を強調する記述が盛られているが、まだ満足できないとの認識で「都道府県議会、市町村議会でのしっかりした検証」を求めている。

 さらに、「国旗・国歌」「領土」「自衛隊」「拉致問題」「外国人参政権」「南京事件」「慰安婦」などの項目について出版社8社の教科書の記述を比較。「圧力」との批判を防ぐため、特定の社を支持する明確な表現はないが、保守色の強い教科書に対しては、国旗や国歌について「特集ページで詳しく記述している」などと好意的に紹介している。

 一方、それ以外の教科書に対しては、拉致問題について「索引に拉致問題が載っていない教科書があります」「子供たちが参照しやすいように改善することが求められる」と評したほか、北方領土についての表現を「ソ連・ロシアの行為を不法とは記述していません」と指摘するなど、否定的なニュアンスをにじませている。