(和田美佐江)何なの?こんなもの私のところへ持ってきて…。
(今岡編集長)でもやっぱり最終チェックは編集長に…。
編集長はキミ!今月号から私は一介の編集者。
そうは言っても月刊サスペンスはOBEDさんあっての!D。
青葉今日子先生の原稿どうなってる?遅れてるみたいですね。
例によって。
じゃあちょっと覗いてハッパかけてくるか!そういう訳で…。
はあ。
はいご苦労さん。
あ〜あ読者には見せられないわねその姿。
(青葉今日子)待ってた待ってた。
うわ〜い!はい差し入れ…どうせ何も食べてないんでしょ?そう…もう餓死寸前!ダメダメダメ!何でよぉ〜。
原稿が先!あと何枚?ラスト15枚。
今トリック開けたとこ!ではどうぞ。
うわあ〜。
先生今日中に作品書いてくださいよ。
明日の高山朝いちで発ちますから。
地が出ないようにうんとお洒落しなくちゃねふふ…。
せっかく高山まで行くんだったら奥飛騨の温泉で2〜3日ゆっくりしたいよねぇ〜。
いいわよ私もそのつもりだから。
ホント!?あなたにとって高山は思い出の場所だもんね…。
うわ〜っ!でもさあ美佐江さんの編集部ってあなたが居ないと仕事にならないんじゃないの?いいかげん楽させてもらわなきゃ…。
そのためにやっと編集長の肩書外してもらったんだから。
だよね…私たち働き過ぎだよねぇ。
何の楽しみもないまま歳とっちゃってさ。
何言ってんです!先生さまはまだまだこれからです。
さあ…働いて働いて!あっ!ねえ…もう少し。
豊かな川の流れ山に囲まれた地形。
碁盤の目状に整えられた美しい町並み。
そして「高山祭り」に代表されるさまざまな文化…。
あらゆる面で古都京都を彷彿とさせる飛騨高山は特に女性に人気が高く四季を通じていつもにぎやか…。
旅情にあふれおいしいもの美しいもの…そして素朴な温かさがいっぱいのこの町はまさに小京都中の小京都といえるかもしれません
(カメラマン)はいいいですね。
(観光客)きれいな人ね。
女優さんかしら?青葉今日子先生です。
ミステリー作家の…。
(カメラマン)はいOKです。
お疲れさまでした。
どうも…。
ああ〜シンド!窮屈だよぉ〜。
こら!地金を出すんじゃないの。
青葉今日子はビジュアル系作家で売ってるんだから…。
(観光客)サインしてくださ〜い。
いいですよ。
はい先生お願いいたします。
はいはい。
(杉浦静)あなたやっぱり青葉今日子先生よ〜。
(杉浦信男)よしなさい!いきなり失礼じゃないか。
ごめんなさい…私先生の大ファンなんです。
もううれしくて…。
ホントおきれいだわ。
いえいえ今日はバッチリ化けてますから。
ううん!撮影ですか?雑誌か何かの…。
ええ月刊サスペンスのグラビアです。
「青葉今日子が巡る小京都」というエッセーの連載でその記念すべき第一回は是非この高山でと…。
あの…高山は先生の処女作の舞台ですよね?あらそんなことまで覚えててくださったの?はい。
もう全部読んでますから先生の作品は…。
うれしい。
ありがとう。
ああこんなんだったらカメラ持ってくればよかったわ。
あの…撮ってもらうなんてできませんかしら?いいですわよね?ええ…まあ…。
じゃあねえガンちゃん。
はい。
ちょっと2〜3枚撮ってあげて。
すみません。
(信男)すみませんね。
うわあ〜。
お住まいはこの近くなんですか?ええ去年東京から引っ越してきましたの。
開店するお店がようやく着工になったので今日は商工会の皆さんにごあいさつ回りを…。
(カメラマン)はいOKです。
(2人)どうも…。
そうだわ…先生よかったらご一緒にお食事でもいかが?いいかげんにしなさい!ご迷惑だよ。
だってせっかく…。
お気持はありがたいんですがこれから行くところが…。
春慶塗の職人さんを訪ねようと思って。
春慶塗というとどちらの製造元かしら?私もこちらへ来てからすっかり春慶塗が気に入って…。
よくお茶席なんかで使わせていただいておりますの。
そうですか。
はい。
塗師の山瀬三郎さんと木地師の岸本澄夫さんという方なんですよ。
静…そろそろ失礼しよう。
あああなたちょっと待って。
私…杉浦と申します。
写真ができましたらこちらのほうに送ってください。
お願いします。
どうも。
失礼します。
図々しい人!よくいるじゃん!もう…この辺なんだけど。
・
(女)岸本澄夫のことを…。
どうかした?今女の人が岸本さんの名前を…。
山瀬さん!?
(2人)ああっ!!
(山瀬三郎)今日子さん…!?ご繁盛ですねえ職人さんも増えて。
小さいほうですようちなんか。
ただいいものを丁寧に作ろうと思ったらこれくらいが限度じゃないかな。
中で…見せていただけますか?かまいませんよ。
木地作りのほうでしたら。
でも春慶塗といったら塗りがメインでしょ?美佐江さん…痒いの我慢できるならどうぞ。
ああそうか…かぶれるかもね。
個人差がありますから大丈夫って人もいますけど。
いややめときます。
ふふふ…。
じゃあこちらへどうぞ。
でもね美佐江さん春慶塗って私たちと同じ。
2人でひとつの作品を作りあげるのよ。
塗りがメインって言われてるけど…それも良い木地があってのこと。
ねえ…山瀬さん。
春慶塗は二者一体の共同芸術と言われるくらいですから…。
塗師と木地師がお互いに切磋琢磨しあってひとつの作品を作りあげる…。
私も2人のそこに触発されて作品のテーマを決めたんですもの。
そうだったわね…。
職人同士が起こす殺人事件。
私もダメモトで取りあげたけどあんなに当たるとはねぇ。
私たちも二者一体木地師と塗師。
そう…作家青葉今日子が今日あるのもすべて美佐江さんのお陰でございます。
まあ!
(2人の笑い声)あの頃たまたま飛騨へ旅をして春慶塗に出会って…。
岸本さんが精魂込めて木地を作りその木目を最大限に生かして山瀬さんが漆を塗る。
飛騨の匠の魂みたいなものをそこに感じたの。
そういえば岸本さんの姿が見えないわね。
いや…山瀬さんもステキなんだけど…岸本さんてのがこれまたステキなのよ。
寡黙で一本気で…。
その岸本のことなんですけど。
実は…アイツ今ここにはいないんです。
いない!?どうして?突然姿を消してしまったんです。
1年前に…。
えっ!?僕にも明子ちゃんにも何も言わずに…。
(岸本明子)いらっしゃいませ。
岸本の妹の明子ちゃんです。
当時はまだ高校生で…。
卒業してからはずっとここを手伝ってもらってるんです。
私よく覚えてます今日子さんのこと。
そういえばあの頃…。
あの頃ね…ん!?岸本澄夫:はいこれ。
よう!お兄ちゃんお弁当。
わるいな。
あこんにちは〜。
はいこれ。
サンキュー!山瀬さんの分も…。
えっ!僕の分まで?ありがとう明ちゃん。
おい俺のより大きいじゃないかよ。
そんなことないよ。
ハハハ…。
急がないと遅刻するぞ!は〜い。
行ってきま〜す。
(山瀬)行ってらっしゃい。
(岸本)気をつけてな!じゃ俺も行ってくるわ。
おうあの時の…。
そういえばさっき話してましたよね?女の人が岸本さんのことを。
彼女は岸本とは何の関係もない人です。
でも…確かに岸本さんの名前を。
そんなはずはありません。
ただのお客さんですから。
とにかく岸本がどうして姿を消したのか正直言って僕らにも全く分からないんです。
あれ!?ねえ…あの人さっきの奥さんじゃない?え〜と杉浦さんて言ったっけ?もう沢山!先生先生って大騒ぎされちゃたまんないわ…行きましょ!
(さつき)あいにく新館が満室でございまして。
でも…旧館もとても風情があってお客さまの中にはこっちのほうがいいと言われる方も多いんですよ。
お風呂はこの奥で檜造りの合掌風呂になってます。
「生っ粋源泉」生まれたての湯でもちろん露天風呂も…。
あのよろしかったら貸切りの露天風呂も…。
でも女同士じゃね。
いいじゃないの!
(笑い声)さあどうぞこちらへ。
どうしたの?食い意地張ってる人が…。
飛騨牛ですよ飛騨牛!10年前ね…取材を終えて東京に戻ってからもあの2人のことが気になっちゃってね。
2人とも今どき珍しいぐらい男っぽくて…純粋で…。
もう絶滅しちゃった日本男児って感じだったのよ。
それっぽい話はもう10回ぐらい聞いてます。
あの2人は特別なの!何かおかしかったわね今日の山瀬さん…。
何か引っ掛かるな。
ああおいしい!だって確かに聞いたのよ岸本澄夫がどうこうって…。
空耳じゃないの?百歩譲って空耳だったとしても何であの女の人のことをただのお客さんだなんて言うの?春慶塗を買いにきたお客さんが職人をひっぱたいたりする?ふふふ…まだまだ甘いな今日子先生は…。
ん?客だってごまかしたのは明子さんの手前でしょ?恐らく…あの女と訳ありの関係って思われたくなかったのよ。
じゃあ明子さんと山瀬さんは…。
恐らく…。
そういえば明子さん高校生の頃から山瀬さんのことが好きみたいだった…。
当然山瀬さんのまわりの女性関係には目を光らせる。
あなた…要らないこと言って余計な波風立てちゃったのかもよ。
オーバーねえ!さあ食べ終わったら今度は露天風呂へ行こう。
早く…追いつかなきゃ!待ってよ〜。
私も行く!あの人だ!・
(バーテン)いらっしゃいませ。
「さるぼぼ」かわいいですよね。
高山のお土産ですか?今日…お目にかかりましたよね?
(冬木エミ)隣の部屋の人でしょ?ええ…でも昼間高山の「秀峰堂」さんの近くで…。
何になさいますか?水割りを。
はい。
私も山瀬さんを訪ねたとこだったんですよ。
知り合いなの?あの人の…。
ええ山瀬さんも岸本澄夫さんも。
岸本さんも?やっぱり空耳じゃなかったんだわ。
どういう意味?びっくりしたんです今日…。
山瀬さんから岸本さんの行方が分からないって聞いて…。
そうなの。
だったらちょうどいい。
あなたからも聞いてみてくれない?聞くって何を…?「岸本澄夫は今どこにいるのか」って…。
山瀬さんは岸本さんの居所を知ってるの?大事なお金の話をしなきゃならないの。
お願いね。
ああの…ちょっと!
(目覚まし時計のアラーム)はい起きて〜っ!起きてよ〜。
ふわぁ〜あ〜。
朝ごはん7時半に頼んだんだから…。
はい起きて!何よ…もう…。
作家先生ってのは夜型でしょう?今どきそんなの流行んないの!
(隣の部屋の物音)う〜んうるさいわね!朝っぱらから…。
さあ…はい朝の空気を吸いますよ。
ああもう…。
この健康優良児!
(滝の音)うわあ〜気持いい!ホント気持いいね。
もっと滝壺に近づいてマイナスイオンをいっぱい吸って若返っちゃおう!沢山吸いなさい。
美佐江さん足元に気をつけて…うわ〜っ!もうどっちが気をつけるのよ。
あっ!えっ?あれ…。
何?そ…それ。
えっ!?ああ〜っ!!
(パトカーのサイレン)
(鑑識係)あの滝の上から落ちたようです。
靴が片方だけ残されていましたので誰かと争った可能性が高いですね。
(佐伯警部)争ったって…キミ殺しの線もあるってこと?ええ。
怖いなあそんな…。
ああどうもすみません。
お引き止めして。
じゃああなた方は偶然あの女性と同じ宿に?みたいですね…。
私は宿では顔を合わせてませんけど。
そうなんですか。
といいますと?いえその前に高山で一度。
これも偶然ですけどあの女が男の人と…。
いいじゃない!揉めてるのを見てるんです。
美佐江さんその話は…。
男と揉めごと?
(寺内刑事)警部!平湯館と連絡がとれました。
どうだった?名前は冬木エミ。
東京からの旅行者です。
それと彼女が今朝6時頃出かけて行くのを仲居が見てます。
6時?6時ってバカに早いな。
ええ…ただその時間散歩に出かける客は少なくないようで…。
うん。
あの…本当に6時だったんでしょうか?何か…?いやあの…私たち7時頃あの人の部屋で物音がするのを聞いたんですけど…。
ねえ美佐江さんも聞いたわよね?うん。
少なくとも被害者ではなかったということになりますね。
その時部屋にいたのは。
でそのあと中庭を見たら…。
まさか…誰かが部屋に忍び込んで…。
そそんな…。
分かった分かった。
じゃあ早速確認させましょう。
(寺内)冬木エミさんが外出するとき何か特別変わった様子はありませんでしたか?いいえまあ…後ろ姿をちょっと見ただけやから。
この部屋から中庭へは?はい下の廊下に私たちの通用口があります。
う〜ん六本木のクラブホステスか…。
ああ鞄を漁った形跡がありますね。
うん。
もし殺人事件なら忍び込んだのは犯人かもしれない。
さっきの現場で彼女を殺したあとここへ…。
しかし何でそんな真似を?犯人にとって何か都合の悪いものがあったんじゃないですか?この部屋の中に…。
なるほどそれを盗み出すために?はい…。
あの…青葉今日子さんとおっしゃいましたよね?お聞きしたようなお名前なんですが…。
青葉今日子さんは有名なミステリー作家です。
先生の洞察力はなかなかのものですよ。
そんな…大したことないんですけど…。
いやいや青葉先生の指摘はなかなか一理ございますよ。
ま私もそう思ったんですよ。
第一感で。
で例の男性の話ですけど…。
さっき話されてた。
被害者と揉み合ってた話。
それをもう少し詳しく…。
あの人は関係ありません。
揉めてたってほどじゃ…。
ねえ美佐江さん?あらひっぱたかれてたじゃないほっぺたをパチンと。
美佐江さん!叩かれてたんですか?被害者に。
こういうことは変に隠すのはおかしいわよ。
警察がそれだけで即犯人なんて決めるほど単純じゃないでしょ?冗談じゃないわよ!山瀬さんが犯人だなんて。
はあ…山瀬さんとおっしゃるんですね?いやあよかった。
今のところ唯一の手がかりですからね。
是非ご協力をよろしくお願いします。
山瀬さん。
あちょっと待って。
表に警察の人が…。
警察…?死んだ!?冬木エミさんが?はい。
ご存じなんですね?冬木エミさんを。
昨日何か争いごとがあったようですね?ここを訪ねてきた冬木エミさんとの間に。
それは…。
お話いただけませんかねどんな経緯があったのか…。
ここではちょっと。
じゃあ署のほうへお越しいただいても…。
かまいません。
どういうこと?ねえ…。
心配しなくていいよ何でもないんだから。
それじゃ…。
僕はいつも国府町の実家から高山へ通っています。
朝7時ならちょうど家を出た時間です。
平湯までは車で40分かかります。
僕がそんなことできるわけないでしょう。
それを…証言できるものは?そんなことそっちで調べてくださいよ!明子さんおはよう。
おはようございます。
山瀬さんは?戻ってきてないんです。
昨日警察に連れて行かれたっきり。
いったい何が起こってるのか私にはさっぱり…。
ねえ…明子さんお兄さんが高山に戻ってるってことはないかしら?兄が高山に!?
(朝市のざわめき)それじゃあ冬木エミさんは兄を捜しに東京から?うん。
確かなことは分からないけどそんな口ぶりだったわ。
関係が…あるんでしょうか?兄や山瀬さんはその人が殺されたことに…。
そんなことないわよ!だけど何か事情を知ってたって可能性はあるわね。
たしかエミさん…大事なお金の話があるって言ってたわ。
お金の話?何か心当たりが?実は兄の失踪も本当はお金のトラブルが絡んでるんじゃないかと思うんです。
でも山瀬さん…理由は分からないって。
それは多分私に心配させまいとして…。
でも何かあるんじゃないかと思ってました。
2人で言い争ってるのを見てたから…。
何を言ってるんだ岸本!春慶塗は大量生産品とは違うんだぞ。
これ以上所帯を広げればいい作品は作れなくなる。
だからオマエは甘いんだよ。
商売ってものが分かってない!俺はこの仕事を商売とは思っていない。
俺は金を稼ぎたい。
春慶塗はそのための道具だ。
腕と頭と両方を使って商売を広げれば明子にだってもっといい暮らしをさせてやれるその頃だったと思います。
よく兄に利殖を勧める電話がかかってきて…。
もしかすると秀峰堂を大きくするために手っとり早くお金を増やそうとしていたのかも…。
それで山瀬さんと対立を…。
何かあったのかしらね岸本さん。
あんなに純朴な人だったのに…。
もともと職人気質の強い山瀬さんとだんだん考え方が違っていったようです。
兄は中学生の頃から同じ木地師だった父の仕事を手伝って…。
父はケガをして思うように仕事ができなかったから兄が家計を支えていたようなものなんです。
その父が亡くなって病気がちだった母も立て続けに…。
兄は年の離れた妹の私をたった1人で宝物のように守りながら育ててくれて…。
金銭にシビアにならずにいられなかったのね。
それだけの苦労をしてきたから…。
でも不思議よねたとえ山瀬さんと袂を分かつことになっても何も言わずにあなたまで置いていくなんて…。
それはきっと私の気持に気づいていたから…。
あなたが山瀬さんを想ってるってことね?山瀬さんと一緒にいるのがあなたの幸せ。
お兄さんはそう思って…。
でも私兄さんがいてくれなきゃ幸せなんかじゃない。
兄さんがいないのに山瀬さんと2人で幸せになることなんて…。
兄さんが姿を消してからなんだか私たちギクシャクしてしまって…。
本当は山瀬さん…迷惑してるのかもしれません。
私1人がここに残っていることを…。
そんな…考えすぎよ明子さん…。
兄は…本当に戻って来ているんでしょうか高山に…。
会いたい…。
何があったか知らないけれど早く帰ってきてほしい。
あの…こちらに佐伯警部は…。
(婦警)捜査本部におります。
ありがとうございます。
あらっ!?美佐江さん…どうして…?1人で高山見物しててもつまらなくて…。
私もミステリー雑誌の編集者の片割れですからね一日ぐらい実戦の体験もいいかって…。
とか何とか言って本当は私のこと心配してくれてたんだ。
さあどうかな。
そんなことより山瀬さん何も話そうとしないらしいわよ。
冬木エミさんと何があったか。
黙ってたら疑われるだけなのに。
このままじゃただの参考人聴取じゃ済まなくなるかもしれないわ。
庇ってるのかな岸本さんのことを…。
え?事実を話せば岸本さんが疑われることになる。
だったら自分が疑われてるほうがマシだと思って…。
ちょっと今日子さん…何の話?いやいやお待たせお待たせ。
はいはい。
その冬木エミは岸本を追いかけて高山まで来たと…。
はい。
いったい何が目的で?それは分かりません。
ただ岸本さんは金銭トラブルを抱えていたみたいなんです。
ほう…。
1年前に失踪した時も何かお金の問題が絡んでたみたいで…。
じゃあ失踪の後東京へ出てそこでまたぞろ金銭トラブルを…?そういうことも考えられるわ。
あなるほど…つじつま合いますな。
岸本は東京で金銭問題を起こして高山へ逃げ帰ってきた。
でそれを冬木エミが追いかけて来たので持て余して殺してしまったと…。
まさかそんなことは…!?そういえばさっきあなた「山瀬は親友の岸本を庇ってる」そう言ってましたね?エミさんの事件事故ではなく殺人と断定されたんですか?あまあね。
現段階ではその可能性が極めて高いということですなはい。
じゃあやっぱり誰かが突き落として…。
うわ〜っ!あ〜っ!
(佐伯)岸本澄夫はどこにいる。
居場所を知っているなら隠さず話せ…。
あなたはそう…冬木エミさんに責められたんじゃありませんか?でも私には寝耳に水で…岸本がどこにいるのかこっちが知りたいぐらいでしたから…。
そう言ったら彼女はひどく腹を立てて…。
(叩く音)やっぱりそういうことでしたか…。
山瀬さんね友情を大切になさるのも結構ですがこれ…立派な捜査妨害ですよ。
申し訳ありません。
ただ…行方不明の岸本に疑いがかかったら身の証を立てるのが難しいんじゃないかと…。
それだけ疑わしいってことですよね岸本澄夫は…。
まああなた自身金銭面じゃ相当苦労をかけられていたようですね。
店の金を使って株や投機に投資をしようとする岸本さんとぶつかってね…。
確かにそういうことはありました。
でもそれは店を大きくして仕事の幅を広げたいためで悪気があってしたことじゃないんです。
正直疑わざるを得ないんですよね冬木エミ殺しを。
あなただってそう思ったから庇おうとしたんでしょう?違う。
本当にあり得ないから…。
岸本は人を殺せるような男じゃない。
そんなことできっこないんです。
何でこんなことになっちゃうのかな…。
山瀬さんの疑いが晴れたと思ったら今度は岸本さんが…。
あ〜あ丸2日見なかったら編集部からメールがこんなに…。
もういちいち私にお伺い立てるなっていうの…。
明子さんは私のこと恨んでるわよね…。
だって言わなきゃ言わないで今度は山瀬さんが…。
あら写真も届いてる。
よく撮れてるわよ今日子さん…。
いい女だわね…ここにいる誰かさんとは大違い。
あれっ?ちょっと見てこの写真…。
どうでもいいわよ化けてるんだから…。
アンタじゃないこっちこっち。
さ早く。
これ…。
冬木エミ…?こっちも…。
えっああ調べものですか?あぁでも今みんな取材で出払ってて…。
あなたがそこにいるでしょう。
でも僕は一応編集長としてですね…。
編集長なんてものは「イザ」って時に自分が動くためにいるもんなの。
内容はメールで送るから。
はい。
これでよし。
さすが…。
(街の騒音)
(ママ)ええこの方なら…。
知っているんですか?この男性…。
うちの常連だったお客さんよ。
1年前までは毎日のように通ってくれてたのに急に高山へ引っ越しちゃって…。
だからもうびっくり!さっき警察の人が来てエミちゃんがあっちのほうで殺されたって聞かされて…。
じゃあ2人の間には何か因縁が?いい仲だったのよ杉浦さんとエミちゃん。
それも随分長いこと…。
そのうち奥さんと離婚することになったんでエミちゃんはやっと自分にも春がきたと思ったんだけど…。
どうしたのよそんなに荒れて…。
アイツ杉浦のヤツ再婚するって!再婚?相手は大きなショッピングセンターの社長の娘だって。
それも40歳過ぎたいかず後家。
杉浦のバカヤロー!あれからもう1年も経ってるのに恨みごとでも言いに高山へ行ったのかしら。
まさかそれで返り討ちに遭ったなんてことないわよね。
どうもありがとうございました。
(静)どうもご苦労さまでした。
先を越されたわね。
案外やるじゃない。
杉浦さん!こんばんは。
まあ青葉先生…。
夜分にごめんなさい。
例の写真ができたものだから少しでも早くお届けしようと…。
先生がわざわざ届けてくださるなんて…。
ちょっとお邪魔してもよろしいですか?それともご都合でも…?えいいえ。
一緒に見ていただきたいんです。
奥様だけでなくご主人にも…。
は?警察もやっぱりこの人との関係を?あいえそれはちょっと…。
奥様は同席しなかったんですか?刑事さんと…。
私はただ昨日の朝主人がちゃんと家にいたかどうか聞かれただけで…。
でも奥さん…本当は知っているんじゃありませんか?この女性冬木エミさんとご主人の昔の関係を…。
バカな!この女と私とは何の関係もない。
それで警察にとおりましたか?私見ているんですよ。
奥様が平湯にいらしたのを…。
あれは冬木エミさんに会いにいらしたんじゃないんですか?静!オマエ…。
もういいじゃない。
青葉先生の目はごまかせない。
主人の留守中に電話があったんです。
2〜3日前に同じ人からかかってきた時主人の様子がおかしかったので…。
先日お電話をくださった方でしょう?生憎主人は留守をしておりますがどういったご用件でしょうか?私アンタのせいで捨てられたのよね杉浦に…その時初めてエミさんの存在を…?もともと主人は父の会社に営業で出入りしていた人なんです。
それで父が気に入って…。
私自身40歳過ぎまでもらい手がありませんでしたからどうしてもこの縁談だけは壊したくなかったんです。
気にしないようにしてたのね。
ご主人の離婚歴のことも他の女性の関係のことも…。
結婚したらすぐ高山に進出を計画しているショッピングセンターを任せるって父が言ってくれて…。
もしそういう人がいても東京を離れれば自然に清算できるんじゃないかって思っていました。
で何て言ったんですか?エミさんに…。
手切れ金を用意すると…。
それでこの人に会ったんです。
あの日の夕方1人で平湯へ行って…。
小切手を切りました。
これで昔のことは忘れていただけますね?さすがにお金持ちの娘は違うわねあなたの名義の小切手ですか?ええ。
犯人にとって何か都合の悪いものがあったんじゃないですかこの部屋の中に…。
なるほどそれを盗み出すためにすべて私が一存でしたことです。
この人は知らないことです。
あの女女房から金を巻き上げるなんて。
エミさんはあなたからお金を引き出すためにこの高山へ?銀座で店を持つ話が出たらしい。
それで融資を頼みたいと…。
でももう別れて1年も経つんでしょう?あの時だってそれなりの金は渡してあるんだ。
それなのにあの女は味をしめてまた…。
だったら…まだまだ…続いたかもしれないわね。
融資のお願いは…。
どういうことですか?あなたがエミさんを邪魔に思っても無理ないかなって。
私が殺したと言うのか!
(静)違います。
この人はずっと家にいました。
前の晩から次の朝まで…。
会社に出かけるまで私とずっと一緒に!警察にもちゃんとそう言ってあります。
もう分かりました。
あの…もうひとつだけ…。
岸本澄夫さんていう人についてエミさんから何か聞いてませんか?エミさんの死と岸本さんの1年前の失踪…。
2つの事件はどこかで微妙に絡んでいるような気がするんです。
知らない!そんな男は。
私はそんな…何も聞いてません!
(寺内)どうなんですかね杉浦信男は…。
アリバイがハッキリしない以上リストから外せないだろう。
だって女房と一緒に寝てましたなんていうのはどうにもならないよ。
でどうなんだ岸本の捜索状況は?町中くまなく聞き込みましたがそれらしき男を見た者は…。
おかしいな…。
で警視庁への照会は?これといった情報はありません。
失踪後東京にいたかどうかについてもまだ…。
警部!たった今岸本らしい男を見かけたという通報が…。
お出たか!で通報者は?聞いても言わないんです。
関わり合いになりたくないとか言って。
北山町の墓地の近くに花を持って歩いていたと…。
行ってきます。
おう。
まさか…。
兄さん…?
(パトカーのサイレン)
(パトカーのサイレン)岸本を見ませんでしたか?え?妹さんですよね岸本澄夫の。
ええ。
それよりどうして兄がここにいることを…?通報があったんです。
花を持った岸本をこの近くで見かけたと…。
本当ですか!?兄さ〜ん!兄さ〜ん!岸本が…?きっとそうよ。
だって今日は父の月命日だもの。
しかし本当に岸本ならなぜキミに会わずに…。
顔向けができないのかも…悪いことをしたから。
もしかしたら本当に兄さんが冬木エミさんを…。
バカなこと言うんじゃないよ。
でも…。
キミが岸本を疑ってどうする。
誰が何と言おうとキミだけは信じてやらなきゃ。
でもやっぱり兄さんは山瀬さんを裏切ったんでしょう?山瀬さんに黙ってお店のお金に手をつけて…。
そのことはもう…。
話してほしかった私にも…。
秘密になんかしないで兄さんのことちゃんと…。
この1年山瀬さんはどこか私によそよそしかった。
本当は目障りに思ってたんじゃないんですか私のこと…。
明ちゃん…それは誤解だ。
もういいの。
私もうここには来ません。
何だって?ちゃんとよそで働いて兄さんが穴をあけたお金はお返しします。
2人で一緒に兄さんを待ち続けるなんてこれ以上できない。
それがいいかもしれない。
金のことはともかく…キミはいつまでも僕なんかにくっついていないほうが…。
明ちゃんはまだ若い。
外に目を向ければ別の幸せが見つけられる。
もっと早くにそうすべきだったんだ。
もう戻れないのね…。
あの頃には…。
もちろんやってますわ。
空気がいいから仕事がはかどっちゃって…。
ええ。
もちろん締め切りは守ります。
はい…はい…どうも…。
バカ!締め切りまであと10日もあるでしょうに!分かってる分かってる。
帰ったら倍働きますから。
大丈夫…。
うんじゃあ…。
ねえねえ…聞いて聞いて…。
ちょっと!こんな格好でうろうろするんじゃないの!ビジュアル系作家で売ってるんだから。
私考えたの。
犯人がエミさんの部屋に忍び込んだのは杉浦夫人名義の小切手が狙いだった。
これかなりいいセンでしょ?そうね。
杉浦さんが犯人なら小切手の事は前もって知ってたはずだから2人は昨夜示し合わせて私たちの前で芝居をしたことに…。
まあね…。
ひとっ風呂浴びてこよう。
えっまた…?実戦はどうするのよ。
それより連載用のエッセーの事考えといてよ。
会社のほうが経費を持てるのがねそろそろ…。
経費は私が持ちます!ねえ美佐江さん…知ってた?何べん入ってもここのお湯の売りって子宝なんですって…。
お生憎さま。
美肌にだってすごくいいんです。
早く部屋へ行って書きなさい!失礼いたします。
先生にお電話があって伝言が…。
私に?誰から?岸本さまとおっしゃる男性の方でこちらへ来ていただきたいと…。
岸本さん…!?あの…私先生が最初に出されたご本を持ってるんです。
明日持ってくるんでサインしてもらえますか?ええいいですよ書きますよ。
いや〜うれしい!…コーヒーでも…。
いや出かけますから…。
あの…白玉ぜんざい…。
岸本さん…。
(建築資材が落下する音)1年前明子さん…。
分からなくなってしまって…。
山瀬さんにとって私っていったい何なのか…。
今まで以上に明子さんのことを大事にしなきゃいけないって思ってるのかもしれないわ。
岸本さんの分もお兄さん代わりとして…。
私はただの妹ってことですか?あなたは大切な預かりものですもの。
でも岸本さんが戻って来たらその時はお兄さん役じゃなくてもっと素直な気持であなたと向かい合ってくれるかもしれない。
兄は高山に来ています。
会ったの?見せてくれないんです姿を。
でも見かけた人がいるって警察の人が…。
実はね私にも電話があったの。
今日子さんに?兄はあなたに何を…。
うん結局はすれ違ってしまったんだけど会って話がしたかったわ。
何とかお兄さんに会える方法はないかしら。
ねえ明子さんお兄さんだったらどんな場所に身を潜めてると思う?例えば好きだった場所とか思い出のある所とか何か心当たりはない?もしかしたら山に…。
山…?兄は山の木や草花が好きだったんです。
木地の材料になる檜やサワラを見て回ったりときには私に花の蕾や種をとってきてくれたり…。
やっぱり本物の木地師だわお兄さん。
自分の足で山を歩いて木や草花の息吹を感じ取って…。
10年前に会った時と何も変わってない。
あそこだわきっと。
白川郷の近くの山なんですけどあそこには山仕事の人が使う小さな作業小屋があって兄は泊まってくることもありました。
白川郷…。
岸本さんを捜す?冗談じゃないわ。
なにもそんな怖い顔しなくたって…。
ものには限度があるわ。
もう駄目。
あなた殺されてたかもしれないのよ。
でもあれが岸本さんの仕業だとは思いたくない。
岸本さんであろうとなかろうと誰かがあなたのしていることを面白く思っていないのは確かなんだから。
だって美佐江さん。
あなたを危険な目に遭わせるわけにはいかないわ。
世の中っていうのはね真実だけが正しいってことはないのよ。
やっぱり見て見ぬふりをしてやり過ごすってこともあるのよ。
今回のことだって事実を暴かれたらかえってみんな不幸になるかもしれないでしょ。
それでも人は真実を知るべきだと思う。
「人の心の闇を見つめる作家になれ。
それこそが本当のミステリーだ」美佐江さん駆け出しの私にそう言ったじゃない。
殺した人も殺された人もどうにも乗り越えられない切実な思いを抱えていたと思う。
私はその心の闇が見たい。
今日子さん…。
美佐江さんが傍にいてくれるから私はそれが書けるの。
そう言われちゃ…。
傍にいて美佐江さん明日だって一緒に白川郷に行ってくれたら私なんの心配もないもの。
な〜にそれって明日私に山を歩けと…?そう。
嫌よ絶対私行きませんから。
(明子)多分こっちのほうだと…。
こんな所なら来なければよかった。
しっかりしてよ置いていくわよ。
誰よ傍にいてくれと言ったのは。
うわ〜っ!熊!?ああびっくりした。
(ハンター)驚いたのはこっちだよ。
何やってんだい?作業小屋を探してるんです。
だったらこの尾根の向こう側だ。
俺その小屋から来たから。
その小屋に誰かいませんでした?誰も見なかったな。
誰か泊まった形跡は?いや誰も。
それよりこの奥に行くのなら気をつけなよ。
狩猟区だからな。
あの熊とか?この辺りには熊はいないんだ。
俺らが狙うのは大抵鹿だね。
じゃ気をつけてよ。
ありがとうございました。
どうする?明子さん。
行ってみますその小屋に。
どうしたの?あれ…。
同じお花です。
お店の前にあるのと…。
あれは兄のいなくなった日の朝…。
出かけるの?おう。
あっ忘れてた。
この間さ木曽のほうに行った時にとってきた球根。
「百合水仙」といってすごくきれいな花なんだ。
明子にも見せてやりたくてさ。
明子を花に例えるとあんな感じだろうな。
兄さんったら…お兄さんはそれきり?リュックについてた兄さんのだ…。
これ兄のです!えっ?待って!明子さん。
およしなさい。
兄さん!
(佐伯)まあねポケットに偶然残っていた球根が何かのはずみで飛び出して自然と芽を出したんでしょうな。
まるで妹さんのあなたにね見つけてもらうために花開いたのかもしれませんな。
遺留品を見ても十中八九岸本澄夫さんと思われます。
因みにお兄さんの血液型は?O型です。
うちは両親ともにO型ですから。
岸本さん1年前からあそこに…。
そのようですねあれだけ白骨化しているとなると。
まあね私たちもてっきり生きているものだとばかり思っていましたからね。
明ちゃん!山瀬さんっ。
(泣きじゃくる声)こんな形で岸本さんの身の潔白が証明されるなんて…。
見つけられてよかったと思いましょう。
あのまま人知れず冷たい土に埋まっていることを思ったら。
でもあんまりだわ。
岸本さん生きてるように見せかけられてエミさん殺しの犯人にされるなんて…。
問題は誰がそれをやったかってことよ。
杉浦信男…それ以外考えられない。
でしょうね。
承知してたのかしら岸本さんが失踪したんじゃないってこと。
とっくに死んであそこに埋められてたことも知ってて…。
だとしたら岸本さんもあの男に殺されたってことにならない?ねえ今日子さんもしかしたら冬木エミはそれを知ってて杉浦を強請りに来てたんじゃ。
1年前にもお金を受け取っているのにまたタカリに来た…。
ただの手切れ金とは思えないじゃない。
私ちょっと行ってくる。
どこ行くの?今日子さん!大規模なショッピングセンターといっても高山の小京都らしい風情は壊したくないからね。
完成を楽しみにしていますよ。
何の用ですか?私は忙しいんですがね。
岸本澄夫さんの遺体が発見されました。
岸本さんはちょうどあなたが高山へ来たのと同じ頃に殺されていた…ほんのすれ違うほどの短い間にあなたたち2人の間にいったい何があったんですか?知らないと言ったはずですそんな男のことは。
岸本さんの名前を使って私を呼び出したのはあなたでしょう?私死ぬところでした落ちてきた資材で…。
それが私のしたことだと?バカな。
自分の店の建築現場でそんな真似をしたら真っ先に疑われる。
私ならそんな真似はしない。
まるで用意していたようなお答えですね?普通ならそれで納得するかもしれませんけどでも作家はねとっても天邪鬼なんですよ。
裏のそのまた裏を考えたくなる。
何を証拠にそんな…。
証拠?証拠はあなたのその胸の中に。
私にしたことだけでなく岸本さんが両親のお墓参りをしたように見せかけたり岸本さんを見かけたと警察へ匿名の電話をしたり一度でも明子さんの気持を考えたことがありますか?お兄さんは高山にいる…そう思って喜んだやさきに実はとっくの昔に殺されてたと知った明子さんの気持…。
エミさんがあなたに付きまとっていたのは手切れ金二重取りのためだけじゃない…?エミを殺したのは私じゃない。
アンタが私を疑いの目で見るから…やむにやまれず脅しだったんだ。
やっぱり…あなたはエミさんに重大な秘密を握られていた。
岸本さんの死に関する何かを…。
ただエミさんがどこまで確証をつかんでいたのか今となってはそれも謎のままだわ。
どういう意味だ!?それは。
エミさんが殺される前の日岸本さんの居所を私秀峰堂の山瀬さんに尋ねてるのを見ました。
山瀬とエミが…?山瀬さんを知ってるんですか?アンタの推理はひとつだけ間違ってる。
え…?何もかも私一人に背負わされるのはごめんだ。
(佐伯)散弾銃の弾が…!?
(鑑識)遺体周辺の土を調べたら全部で17発…探せば更に出るかもしれません。
遺体に銃痕は?骨には達してないけどこの弾が致命傷だった可能性は高いと思う。
散弾銃で撃ち殺されたのか。
狩猟者登録リストを洗います。
うん頼む。
なんかワクワクしてきたぞ。
で岸本かどうかの確認は?はい。
先程歯科医のカルテが届きすぐに照合を。
歯形も治療痕も完全に一致していました。
じゃあDNA鑑定の結果を待つまでもなく岸本本人と…。
ただ毛髪で調べた血液型が違うんですよ妹の申告と。
血液型が?妹はO型だと言ったそうですが実際はB型でした。
なに?杉浦信男?あの男か…。
(チャイム)あなた!?警察の者ですがご主人は…?帰ってないんです昨夜から。
え…?
(夫)どうした?
(妻)あ〜あっ!どうしたんだ!あ〜っ!本当なんですか?今杉浦さんの会社へ行ったら…。
奥さん…。
あなたのせいよ。
何か言ったんでしょう!?昨日うちの人に。
何か言って責めたんでしょう!?あの人を。
主人を返して!奥さん落ち着いて!さあ。
あの杉浦さんは…。
自殺しました。
首を吊ってね。
自ら命を断つということで自分の罪を認めたのでしょうかね。
特に岸本の殺害に関しては死因が分かった段階で全く逃げ場がなかったからね。
死因って?岸本澄夫はですね散弾銃で撃たれていたんですよ。
杉浦は狩猟者登録をしてまして猟銃も持っています。
発見された散弾も一致しました。
でもまあ動機の部分がいまいちなんですがね。
それもまあ2人がいつどこで出会ったのか…その状況を洗えばおのずと浮かび上がってくるしまあ一件落着ということでしょうかね。
そうそうあなたが言っていた犯人が取り返したがっていたもの。
それもようやく分かりましたよ。
殺される前の日…冬木エミが書留で自宅宛に送ってたんです。
それを警視庁が郵便局で押収しました。
見つかったんですか?杉浦さんの奥さん名義の小切手。
よくご存じで。
盗まれたんじゃなくて自分で投函してた。
そうなんです。
だから杉浦必死に宿に忍び込んだものの結局手ぶらで帰るハメになった。
警部遺体を司法解剖に回します。
ご苦労さん。
待って!お別れさせてください。
この赤いただれは何ですか?それは縄の摩擦でついたものでしょう。
杉浦さんの顔うっ血してるじゃないですか。
うっ血?普通自殺の時は頚動脈と椎骨動脈が一緒に塞がれるのでうっ血はしない…。
それに首吊りなのに擦痕だって。
はいはい早く運んで。
はい。
ほんとに自殺かどうかもう一度調べてください!もちろんですよ。
我々は万全の体制で捜査に望んでおります。
青葉さんねあなた…自分の当てずっぽうが外れた無念さといいますか照れくささというのはよく分かりますよ。
そんなんじゃありません。
青葉さんね現実は現実なんです。
フィクションじゃないんです。
現実のことは我々プロに任せていただきたい。
遊びじゃないんですから。
明日引き上げましょう東京へ。
私のせいだわ。
現実は小説みたいに簡単に解決しない。
何言ってるの。
私が心の闇を覗きたがって杉浦さんを追いつめて奥さんにもあんな辛い思いを…。
あなたのせいじゃないわ。
杉浦さん言ってたのよ。
エミさん殺したのは自分じゃない。
何もかも自分一人に背負わされるのはごめんだって。
あなたにできるのは今の心の痛みを作品にすることよ。
東京に帰って血の通った作品を書くことよ。
私切符買ってくる。
あなたは先に宿に帰って荷造りしてちょうだい。
ね。
あら…。
兄の遺品が戻ってきたんです。
まだ遺骨も位牌もないからせめてお花だけでもって。
(明子)何だか夢を見てるみたいで。
本当は兄さんまだどこかで生きてるんじゃないかって…。
そう信じられたらどんなにいいでしょうね。
しかも警察の人が言うんです。
兄の血液型はO型じゃなくてB型だって。
え…?調べ間違いに決まってるのにでも一瞬あ兄さんじゃなかったんだって。
あそこに埋められてたのは別の人だったんだって。
嘘でもいいそう思うことができたら…。
写真…よく残っていたわね。
この写真たしかこっち側に山瀬さんがいたはずじゃ。
ええ…どうして兄さんこんなことを。
(フロント)お帰りなさいませ。
あお帰りなさいませ。
どうかした?いえいつの間にか増えてるんですさるぼぼが。
増えてる?これは飾った覚えがないんですけど…。
ちょっといいかしら。
これは…。
杉浦でございます。
青葉です。
何もお話することはございません。
待ってご主人のことでひとつだけ教えてください。
それが分かればご主人の疑いが晴れるかも…。
いったい何の話ですか?大事なことなんです。
ご主人はもしかして漆にかぶれやすい体質だったのでは?そうですか明日お帰りに…。
ええ。
結局ゆっくりお話することもできませんでしたね。
いや洗っても洗っても完全に漆が取れるわけじゃないんです。
ハンカチに漆の成分が残ってあなたがかぶれてしまう。
ひどい人だと少し触っただけでば〜っと赤いかぶれが広がる人がいます。
ご存じでしたか?杉浦さんがそういう体質だったってこと。
私が見た杉浦さんのご遺体。
首の周りから顎にかけて真っ赤なかぶれが…。
あれは間違いなく漆かぶれだったわ。
あなたは恐ろしい人だ今日子さん。
たったそれだけの疑いで僕を人殺し扱いするなんて。
それだけじゃないわ。
あなたがどう言い訳してももうどうすることもできない。
いったい何のことを?元はといえば私の勘違いが事態を混乱させてしまったのかもしれないわ。
エミさんの言葉をそのとおりに受け取って彼女が本当に岸本さんを捜していると思い込んでしまったから…。
だったらちょうどいい。
あなたからも聞いてみてくれない?聞くって…何を?「岸本澄夫は今どこにいるのか」って…今思えばあれは私を使ってあなたを脅そうとしてたんだわ。
脅し…!?あの時エミさんは岸本さんが殺されたことを知っていたのよ。
だからあえてあなたに揺さぶりをかけようとした。
待ってください。
僕はずっと岸本が生きていると信じて…。
じゃあエミさんは何のためにあなたを訪ねたの?あなた「岸本さんの居所を教えないことに腹を立てたエミさんが頬を叩いた」そう言ったわよね?でも実際はあなた自身が強請りのターゲットになっていたのよ。
何を言ってるんだ今日子さん。
最後に私と話した時杉浦さんもそのことに気がついたんだわ。
そしてその事実を確かめに行って逆にあなたに殺されてしまった。
どうしてこんなことに…。
もともとはあなたと岸本さんの疑いを晴らしたくて事件を調べ始めたのに…。
まさかあなたは…。
すべては1年前にあなたと杉浦さんが起こした過ちが始まりだったのね。
エミさんは…この中に隠して宿のさるぼぼの中に紛れ込ませてあったのよ。
あなたが探していたのは写真を記録したこのメモリーカード…。
現像した写真は…ここに…。
信じたくなかったこんなこと…。
た頼む…お願いします。
その写真…明ちゃんにだけは…。
山瀬さん!今日子さん!これなのねさるぼぼの中から出てきたメモリーカードの写真って…。
(明子)何なんですか?何の写真ですか?この罪は…あなた自身にしか償えない。
罪っていったい山瀬さん何を…?何なの?山瀬さん…。
答えて!ちゃんと答えて!いや〜っ!!あなたが…兄さんを…。
すまない…。
その日岸本さんはいつものように山歩きに出かけた。
でもその日は1人じゃなくあなたも一緒だったのね?話したくて…一度ゆっくり…。
アイツはあの頃金のことばかりで…。
おまけに「オマエとはもう一緒に仕事をしたくない」とまで…。
俺にはオマエの作る木地が必要なんだ。
オマエだって誰の漆がオマエの仕事をいちばん生かすか分かってるだろう?俺にとっては誰が塗ろうと一緒だ。
金になればそれでいい。
また金か!オマエは「明ちゃんのためだ」と言うけどあの子にだってそんなに悪い暮らしはさせてないだろう。
それに明ちゃんは近いうちに俺と…。
やめろ!そんな話は聞きたくない。
愛してるんだ明ちゃんを。
一生大切にする。
うわ〜っ!明子と結婚なんかしてみろ。
殺すぞ!オマエ…どうして兄さん…そんなことを…。
明子さんあなた「警察の人に言われた」って言ってたわよね。
「お兄さんの血液型はB型だ」って…。
ええ…。
その理由…あなたは分かってたんじゃない?何のこと?美佐江さん。
血液型が違うって…。
ご両親2人がO型ならB型の子供が出来るはずない。
本当は血が繋がっていないのよ岸本さんと明子さんは…。
何ですって!?そんな…違うわ兄妹じゃないなんて。
だってそんな話一度だって…。
知ってて隠していたのよお兄さんは。
兄妹としてならずっとあなたと一緒に…。
あなたの特別な存在として傍にいることができるから。
じゃあ…岸本さんも明子さんを…。
いちばん大切な女性だったんでしょう。
だから山瀬さんに嫉妬して3人で撮った写真から山瀬さんだけを切り抜こうとして…。
あなたは聞いてたの?2人が実の兄妹じゃないって。
養子なんです岸本は…。
明ちゃんがまだ生まれる前本当の両親が亡くなって子供のいない岸本家に引き取られた。
そのあと明子さんという実子が…。
岸本としては精一杯家の役に立たなきゃいけないと思った。
だから木地師を継いだ。
明子さんだけだったのねそんな岸本さんの心の慰めは…。
兄さん…。
(セルフタイマーの音)
(シャッター音)初めは岸本も兄として明ちゃんを守っていこうとしていた。
僕とのことも納得していたはずなんです。
でもアイツの明ちゃんへの執着は年を追うごとに強くなっていくようでした。
あの時兄さん悲しい目をしてた。
とても悲しい目を…。
いやだ…何見てるの?どうかした?会いに行くのか?アイツに…。
えっ!?いやいい…何でもない…岸本さん心が引き裂かれるような毎日だったんでしょうね。
兄妹だからこそ身近にいられる喜びと触れることさえできない切なさと…。
もっと早く明ちゃんを連れて店を出るべきだった。
僕が明ちゃんにすべてを話す覚悟で山を下りようとした時…。
(銃声と悲鳴)岸本!岸本!おい!おい!しっかりしろ!岸本!
(山瀬)あんたか!やっぱり人だった。
おいおい…しっかりしろ!た頼む。
このとおりだ。
見逃してくれ!金が必要なら金を払う。
頼むから助けてくれ。
どうかどうか…。
た頼む助けてくれ!頼むよ〜!その時なぜかひどくホッとした気持になっている自分に気がついた。
あ〜これでもう岸本はいない。
目の前にいるこの男が僕と明ちゃんのために岸本を消してくれたと…。
その時エミさんが近くに来ていたのね?慰謝料を取ろうと杉浦を高山まで追いかけて来たのに相手にされなくてスケジュールを調べてとうとう狩り場まで…。
いったん作業小屋に戻った杉浦の姿を見たそうです。
(山瀬)それから戻ってきた杉浦と一緒に…。
まずいな…そろそろ戻らないと仲間に怪しまれるんだ。
あとのことは頼まれてくれないか?ええっ!?ただし妙な考えは起こすなよ。
アンタはもう立派な死体遺棄の共犯者なんだからな。
いいな!う〜っ!山瀬…キサマ〜!あ〜っ!うわ〜っ!う〜っ!まさにその瞬間をエミさんが…。
(シャッター音)その後すぐ彼女は杉浦さんに会って口止め料を要求した。
でもなぜその時山瀬さんがしたことを話さなかったのかしら。
いざとなったら両方からお金が取れる。
たぶんそう踏んだんでしょうね。
杉浦は1年経ってまた強請りにやって来た彼女に今度はなかなか金を出そうとしなかった。
それでとうとう僕のところに…。
だからアンタから口添えしてって言ってるの。
杉浦にお金を出すように…。
明日の朝平湯の砂防ダムに来るようにって。
もちろんアンタが2人分出してくれるならそれでもいいけど。
分からないって言ってるじゃないですか何のことか…。
ここにちゃんと証拠があるのよ。
アンタが岸本澄夫のことを。
これは…
(山瀬)結局杉浦には何も言わず翌朝1人で…。
お金は?杉浦にはちゃんと話したの?会えなかったんだ。
僕のほうもすぐというわけには…。
それじゃ呼んでもいいのね?警察をここへ。
そんなことしたって無駄よ。
写真はメモリーカードに保存してあるんだから。
メモリーカード!?言っておくけどここにはないわ。
悪いヤツが考えることぐらい最初からお見通しよ。
待ってくれ!ちょっと離してよ!なによ!メモリーカード…。
あ〜っ!!
(山瀬)とにかくメモリーカードを見つけなければ。
そう思って宿に忍び込んだものの…。
見つかるはずないわ。
さるぼぼの中に隠してあったんですもの。
でもそのお陰で警察にも見つからずあなたは難を逃れ疑いは杉浦さんに…。
杉浦さんは警察の目をそらすため岸本さんの仕業に見せかけようとした。
そのこともあなたにはプラスに働いた。
そんな見せかけの幸運がいつまでも続くわけがないわ。
杉浦さんは気づいたのよエミさんがどうしてあなたを訪ねたのか。
アンタじゃないのかエミをやったのは?何を言うんです。
エミのことだ考えてみればアンタからだって金を引き出そうとしたはずだ。
それで困ったアンタはエミを…。
お陰で俺は身に覚えのない疑いをかけられて…。
どうしてくれるんだ!もういいこんな思いは沢山だ。
俺は自首する。
うわ〜っ!あなたのその手に染み込んだ漆の成分が極端に漆にかぶれやすい体質の杉浦さんの首の周りを赤くかぶれさせたんだわ。
岸本さんの執念がポケットの球根から花を咲かせたように杉浦さんもまた赤い花を咲かせたんだわ。
きっといつかはこの日がくる。
心のどこかでそう思いながら…何とか明ちゃんには自分のしたことを知られたくない…。
岸本のことを案じながら健気に僕を支えてくれて…。
明ちゃんの顔を見るのが死ぬほど辛いのに離れる勇気も持てなかった。
兄としてただ傍にいて見守るだけでいい。
その幸せだけは絶対に誰にも邪魔されたくない。
そんな岸本の気持がやっと僕にも分かったような気がします。
(パトカーのサイレン)詳しい話は署で伺います。
では…。
悪いのは私だわ。
何も気づかず何も知らずただ守ってくれる人たちに甘えるだけで…。
そういう罪はいったい誰が裁いてくれるんですか?私は自分の力では何もしてこなかった。
居心地のいい場所を与えられてただ愛されて満足しているお人形みたいに…。
私がもうちょっと大人だったら2人が傷つけ合うことだって…。
愛されたことを罪だというなら誰も生きてなんかいけないわ。
私たちは人を愛し誰かに愛されるために生まれてきたんだもの。
沢山の愛を受け取ったら沢山の愛を与えられる。
強くなって…強く…。
また来てくださいませ。
もみじの頃とてもすばらしいです。
本当にいろいろお世話になりました。
どうもありがとう。
お気をつけて。
ありがとうございました。
はいお待たせ。
おいしそうよ。
私この丸いのを…。
それより第1回のエッセー東京へ着くまでに完成させてくださいよ。
えっ!?鬼〜!でも揺れるからさここほら。
言い訳しないの。
はい書きゃいいんでしょ書きゃ。
2015/08/17(月) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
山村美紗サスペンス「小京都飛騨高山殺人事件」[字]
美人作家を招く死の百合水仙!白川郷に消えた匠の秘密とは…!?
詳細情報
番組内容
人気ミステリー作家の青葉今日子と、ベテラン編集者の和田美佐江は、デビュー作の舞台となった岐阜県の飛騨高山を訪れた。以前知り合った春慶塗の職人コンビ、山瀬と岸本に再会するため、店に向かった今日子たちは、山瀬が女(冬木エミ)と口論しているところを目撃する。口論の最中、女が岸本の名を口にしていたのを、今日子は耳にする。山瀬が今日子に気づき店に案内すると、そこに岸本の姿はなかった。
番組内容続き
岸本は一年前に突然姿を消したのだと言う。「どうしてなのか、まったくわからない」山瀬の口は重い。その夜今日子は宿で、昼間、山瀬と口論していた女を見かけた。岸本について尋ねると女は「岸本は今どこにいるか山瀬に聞いてみて。大事な金の話があるから」と意味深な言葉を残して立ち去った。
出演者
青葉今日子…名取裕子
和田美佐江…山本陽子
山瀬三郎…川野太郎
岸本明子…国分佐智子
岸本澄夫…布川敏和
杉浦信男…加納竜
杉浦静…あき竹城
佐伯警部…森本レオ
さつき…山村紅葉
寺内刑事…前田耕陽 ほか
原作脚本
【原作】山村美紗
【脚本】いずみ玲
監督・演出
【監督】南部英夫
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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