(場内アナウンス)「37番高田千明さん」。
(スタートの合図の音)ファイト!頑張れママ!頑張れママ!頑張れママ!頑張れママ!
子どもの声援を力に全力疾走する…
全盲の陸上選手です
ママ〜頑張ったね〜。
(千明)ありがとう。
ママ1位だよね。
視覚障害者の世界で国内トップレベルのランナーです。
4年前の世界大会では全盲女子短距離走日本人初のメダルを獲得。
目指す舞台は来年のリオパラリンピックです
子育てそして仕事をしながら世界に挑む千明さん
一番の理解者は同い年の夫裕士さんです。
実は裕士さんほとんど耳が聞こえません
裕士さんも短距離走のアスリート。
3年前世界大会のフィールド競技で日本男子初のメダルを獲得しました。
現在はハードルの日本記録保持者。
目指すは2年後聴覚障害者のスポーツの祭典デフリンピックです
夫婦ともに国内ではトップアスリート。
しかし国際大会ではまだ果たせていない事が…
ないよ。
(千明)そうだよね。
30歳を過ぎ選手としてのピークは過ぎているといわれています
それでも諦めません
互いに高め合い頂点を目指す夫婦のブレイクスルーに迫ります
高田家の朝です。
(裕士)はいいただきます。
長男の諭樹くんがちゃんと食べているか千明さん気になります。
夫婦のやり取りは千明さんが手話を使いそれに対し裕士さんは声で返します。
行ってらっしゃい。
行ってきま〜す。
家事を済ませた千明さんは一人練習へ向かいます。
コーチ兼伴走者は大森盛一さん。
元オリンピック選手です。
千明さんは100mなど4種目で日本歴代2位の記録を持ちます。
その才能は幼い頃から際立っていました。
生まれた時から病気のため視力が弱かった千明さん。
小学校は普通学級に進みましたが授業についていく事が難しく悔しい思いをした事もあったといいます。
ところが徒競走はいつも1番。
走る事は人一倍自信がありました。
徐々に視力が落ち中学からは盲学校に進学。
十分な練習をしていないにもかかわらず全国大会に出場。
そして22歳の時自分は意外にも世界で通用すると知ったのです。
本格的に取り組むと面白いように記録が伸び一躍注目される存在になりました。
一方の裕士さん。
現在…アスリートとしての道のりは千明さんとは全く異なります。
陸上を始めたのは大学生の時。
最初は女子よりも遅いタイムでした。
しかしコツコツと努力を重ね大学4年の時には世界を狙える記録をたたき出していました。
その諦めない姿勢の原点には母の教えがありました。
世界の舞台を意識し始めた22歳の頃。
2人は国体の合宿で出会います。
手話に興味を持っていた千明さんが裕士さんに教えてもらった事がきっかけでした。
全く異なる個性を持つ2人。
すぐに引かれ合い2年後結婚しました。
スタジオには高田裕士さん千明さんにお越し頂きました。
よろしくお願いします。
(2人)よろしくお願いします。
お互いに足りない部分を補い合ってるそんな関係に見えたんですけれども。
そうですね。
障害があるから助けるとかそういう事ではなくてお互いにこれが今必要だなと思う事をお互いが自然に行動として出してそれが結果的に周りから見たら助け合ってるというようなそういう事なのかなと自分では思っています。
私がこう…後ろから車が来てるみたいなのも車の音は聞こえるのでトントンってやって「車!」みたいな「ああ」みたいなんでよけてくれたりとか段差とか階段とかも私は分からなくても主人が「あこっち」って「階段あるよ」とか「段差だよ」みたいに言って歩いてくれたりとか半分半分なのでそういうところでの苦労みたいなものは外に出るとあんまりないですよね。
そして出会いのきっかけが千明さんが手話を習いたかったという事なんですけれどもどのようにして手話を教わったんでしょうか?そうですね例えばそのお疲れさまですの手話だと両手で握り拳を作って自分がその手話の形に持っていってトントントンってするとこれがお疲れさまの手話というふうに手で触りながら教えていったりとかそういう事で教えました。
やっぱちょっと恋にボディータッチは不可欠だと思うんですけれども手を握ってお話を2人で教え合ってる間にちょっと何かこう恋っぽくなっていったんですかね?ハハハハハ。
う〜ん…。
当時はそういうのがなくて。
純粋に純粋に…。
(千明)ハハハハハ。
その…そうですね。
視覚障害者の方と関わるという事が全くなかったので手話を教えてほしいっていう事にまず驚いて見えないのに手話?っていうところからやっぱり…。
視覚障害の人はボディータッチって結構自然にする事なので見えない分「手借りるよ」みたいな感じで手取って「ここにあるよ」とかっていうのとかポンとこう触れてっていうのは結構日常的に起こる事なのでそこまで多分ないと思います。
そこは恋とは関係なかったんですね。
すいません。
すいませんとんでもないです。
やっぱりこう…刺激し合いながら競技に向かい合ってるって感じですか?特に国際大会でメダルを一番初めに取ったのが嫁さんなので夫としてはすごくうれしい気持ちなんですけどアスリートとしては「ああ先を越された」。
すごく嫁さんの活躍だったり頑張りにはすごく刺激を受けています。
今6歳の諭樹くん。
千明さんの手伝いを自分からするようになりました。
(千明)あっそうそうそうそう。
(千明)あっ本当?
(千明)本当?
(諭樹)ママ大好き〜。
日々成長する諭樹くん。
その姿が陸上に挑む原動力です。
しかし出産後千明さんは一時陸上を断念しようと考えました。
復帰したものの記録が伸びなかったのです。
思い直すきっかけとなったのは諭樹くんの存在でした。
息子のためにも走り続ける決意をしたのです。
ママ見えなくてもこんだけ速く走って…諭樹くんが誕生した頃実は裕士さんも壁にぶつかっていました。
働きながら陸上を続け夢だったデフリンピックに初めて出場。
ところがベストの記録には遠く及ばず陸上を続ける自信を失っていました。
仕事と陸上子育て。
全てを完璧にやり遂げようとした結果疲労が重なりけがを繰り返していたのです。
そんな時海外の試合会場で会う選手の話に衝撃を受けます。
その多くが企業や国に生活を保障され陸上に専念できるプロとして競技を行っていたのです。
でもやってみないともしかしたらあるかもしれないし探してもないかもしれないっていうのは分からなかったんですけどやってみてなかったらもう陸上やめようって。
自分の夢を諦めず家族も守れる道を探そうと決心した裕士さん。
早速行動に出ます。
プロの選手として雇ってほしいと自ら企業に売り込んだのです。
その数は500社以上。
しかし採用する企業は出てきませんでした。
諦めずに送り続けたところやっとある企業から連絡が入り聴覚障害の陸上選手として初のプロ契約を結ぶ事になりました。
そして契約を結んだ2年後。
世界大会でトラック競技日本男子初のメダリストになりました。
この2009年の最初のデフリンピックの時に自己最低記録。
そしてそのあとのデフリンピックで日本新記録樹立。
本当に自分の道を自分で切り開いてるなって…。
デフリンピックの知名度というのが日本国内の中ではほとんどの人が知らない。
はい。
そういった状態でやっぱりオリンピックパラリンピックだとああすごい事じゃないかと頑張りなさいって言ってくれる会社の方がすごく多いとは思うんですけどデフリンピックだと「何それ?」って。
「それよりも仕事でしょ?」と。
自分よりも才能のある選手がたくさん夢を断念して競技をやめていくっていう選手をたくさん見てきたんですけど自分がプロの選手としてオリンピックパラリンピックのプロ選手と同じように活動して活躍してロールモデルになって見本を示せたらと思って活動してきました。
う〜ん。
息子の諭樹くんの存在は大きいですか?ママは1番だから頑張るねっていうのをすごい小さい時から言ってくれてママは目見えないけど家の事もできるし何でもできるよって。
走ったり跳んだりしたらすごいんだよっていうのを友達たちにみんなに言ってくれたりするところを見るとああやっぱり続けてきてよかったなというふうに思いますね。
う〜ん。
諭樹くん…お二人ともアスリートじゃないですか。
はい。
将来何になるんでしょうね?今息子がお医者さんになりたいというふうに言っていてお医者さんになってパパとママの耳と目を治したいという事を話してきて。
お医者さんになりたいって言ってくれた事はすごくうれしい反面ちょっと切ない感じはありましたね。
やっぱり健常のご両親を持つお子さんとさほど違わないようにっていうふうには接してきてるつもりではいますけどやっぱり限界がお互いにあったりするところもあるので。
あの…諭樹くんもお二人の子どもだから得られてる特別な事ってたくさんあると僕個人は思うんですね。
お二人の子どもだからこそ生まれた夢なのかなって。
諭樹自体は目に障害がある人の気持ちも分かるし耳に障害のある方の気持ちも分かる子どもに育っているかなっていうところは今すごく感じているところなので…。
来年のパラリンピックに向けて千明さんは新たな挑戦を始めました。
12345678910。
12345。
走り幅跳びでのメダル獲得です。
去年のアジアパラ大会では銀メダル。
しかし今ある壁にぶつかっています。
実は去年の大会の苦い記憶が…。
思いっきり跳んだ先は砂場ではなく硬いグラウンドの上だったのです。
足をくじいてしまいその恐怖感と今も闘っています。
コーチの大森さんは新しい練習方法を始めました。
一緒に走りながらリズム感と歩幅を体に覚えさせ恐怖感をなくそうというのです。
試金石となる大会は2週間後。
まずは4mを超える事が目標です。
大会前日。
2人で必ず行う事があります。
(足で呼ぶ音)ん?スパイクの裏のピンがちゃんと締まっているか裕士さんが一つ一つ確認していきます。
今シーズン初障害者陸上の全国大会が始まりました。
会場には裕士さん諭樹くんも駆けつけました。
ママはあそこから…。
これまで諭樹くんを大会に連れてくる事はほとんどありませんでした。
しかし最近は変わってきたといいます。
いよいよ千明さんが出場します。
全盲のクラスは千明さんのみ。
跳躍は6回行われます。
はい。
1回目。
12345678910。
12345。
千明さんは右足に痛みを感じていました。
それでも跳び続けます。
(千明)あ〜全然低い。
試合の時諭樹くんの声がすると千明さんは集中力が途切れるといいます。
ママ頑張って…。
そうか…そうだね。
そして4回目。
(大森)1234567891012345。
うわっ。
目標の4m超えです。
来年のパラリンピックに向け自信を取り戻しました。
惜しいだった?惜しいだった?ママ惜しいだった?もうちょっとだったね。
走り幅跳びすごいですね。
自分の歩幅と体の体感今までの練習を信じて思いっきり走ってそして跳ばなきゃいけないって…。
本当に砂場までの距離っていうのと跳ぶまでの歩数と距離とっていうのがすごく不安で「駄目止まれ危ない」って声がかかるまでそのまま手ばたきをして「はいはい」っていう声を出してくれてる間は絶対に大丈夫っていうふうに強く思ってないとやっぱり最後の踏み切りの部分っていうのは跳べないかなと思いますね。
そして音を頼りに集中していると思うのでやっぱりそこに諭樹くんの声が入ってしまうとアスリートの気持ちから母親の気持ちに揺れてしまうっていうところがあるんでしょうか?やっぱりどうしても母性の方が強いというか声を聞くとあっ諭樹どこにいる?みたいなので子どもの声は響いて耳に届くのででもアジアの試合の時も応援に来てくれたんですけどそれまですごい緊張がひどくて砂場に入れないし踏み切りもできないっていう状態だったんですけど諭樹の「ママ来たよ〜応援に来たよ頑張って1番になるよ」っていうその声を聞いた瞬間にこう…過剰に緊張していた体がスッとこう…今までの体になって自己ベスト更新でメダル獲得っていうふうになれたのでやっぱり子どもの力家族の力っていうのはすごい強いなっていうのを実感しましたね。
この銀メダルは諭樹くんが運んできた銀メダルみたいなところあるんですね。
(千明)そうですね。
さっくんがくれた銀メダルだったかなっていうふうに思いますね。
ただ金じゃなかったっていうのをすごい言われたんですけどね。
これから3人でどのような家庭を築いていきたいですか?自分の専門種目が400mハードルでハードルというのを日本語に変えると障害っていう日本語になるんですけども体の障害だったり困難な事だったりとかそういったいろんな意味があるんですけど家族3人でそれぞれの夢に向かって3人で力を合わせて障害ハードルを飛び越えていつまでも人生終わるまでチャレンジし続けられるような家庭でありたいなと思っています。
(千明)ちゃんとちゃんとこっち向いて。
向いて。
ニコッとして。
ニコッとニコッと。
ニコッとして。
乾杯〜。
頑張って。
いやそれは無理!無理無理…。
硬い硬い。
123。
股関節がはずれちゃう。
はずれちゃうはずれちゃう。
「きょうの健康」今週は佐賀県神埼市からの2015/08/17(月) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV ブレイクスルーFile.32▽陸上競技選手・高田裕士 千明[解][字]
聴覚障害の高田裕士さんと、妻で全盲の千明さんは、共に世界で活躍する短距離走ランナー。息子のため、金メダル獲得を目指し30歳を過ぎてなお、挑み続ける姿に迫る。
詳細情報
番組内容
聴覚障害の高田裕士さんと、妻で全盲の千明さんは、共に世界で活躍する短距離走ランナー。夫が妻の目となり、妻が夫の耳となり、互いの障害を補い合いながら日々暮らしている。一人息子のため金メダルをとることを目標に夫はデフリンピック、妻はパラリンピックへの出場を目指して日々、厳しい練習を自らに課している。30代になり選手のピークを過ぎてなお、挑み続ける奮闘の日々を追う。
出演者
【出演】陸上競技選手…高田裕士,陸上競技選手…高田千明,【司会】風間俊介,【語り】Chiko
ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 高齢者
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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