(鐘の音)
(鶴丸あや)事件だわ!
(自転車のベル)
(柿野たまこ)今の一押しはこれ!たまこ特製の京野菜オリジナルジュースでマクロビオテック!
(3人)ちょうだい!!大〜変〜!ねぇ大変大変大変なの〜!!
(吉川香織)あ〜もうまた事件?違う違う!昨日ねこの携帯をトイレにポチャ…落としちゃったのよ!それですぐ引上げてさドライヤーでガガガガーって乾かしたらね電話は通じるの。
電話は通じるのに章ちゃんからのメールだけが来ないの!
(3人)あ〜。
(桜井麗子)そりゃ大事件だわ…。
いよいよ来たんちゃうか?あんたんとこにも中年夫婦の危機ってやつが。
うちはそんな事ないわよ!いいえ!仲が良かった夫婦ほど急にどんでんが来るらしいですよ〜!どんでん!どんでん!大どんで〜ん!!あ〜ねぇ!夫婦の危機には何が効くの!?玉葱!?ラッキョ!?にんにく!?ドクダミ!?ドクダミ…ドクダシ…。
(刑事)コラー!止まらんかー!
(池内弘二)おいコラー!止まれー!
(門田)どけ!
(女の悲鳴)待てー!
(パトカーのサイレン)
(北村鉄男)は〜いここまでだ。
(堀川正太)ワッパ!ブツは押収したぞ!俺たちはこれからこいつの女んとこ当たるからおたくら組ガサ入れしてくれ。
あれ?あんたにアゴで使われる覚えねぇなぁ!何だ何だ?所轄の腑抜け野郎は早く帰って母ちゃんの作った晩飯でも食いてぇか?ハハハ!かみさんに逃げられたヤツがひがんでるぜ!
(3人の笑い)面白ぇ事言うなぁ!相変わらずこの野郎!あ…ちょっと!今回は所轄との合同捜査なんですから揉めないで下さい!揉めるなよ…揉めるなっつってんの!
(荒い呼吸)おっ?どうぞ。
(チャイム)留守かな?羽田さ〜ん?
(ノック)羽田さんいらっしゃいませんか?…開いたよ。
(堀川)えぇ。
京都府警ですけどお邪魔しますよ。
(堀川)失礼しま〜す。
オイ!?どうした!?オイ!救急車!はい!もしもし!もしもし!…あっ!このっ…あ痛っ!何してんだお前は!?いてて…。
痛ぇ…。
ボーリングか…。
「僕はいつもあやのこと想ってるよ!」ウフフ。
(鶴丸りん)ただいまー!はいお帰り。
フフフ。
う〜わ!また無駄遣いしてる!何コレ?老化防止!?いいのよ。
だって即効で効いちゃってさ!見て見て!章ちゃんからのラブメール。
ねぇねぇそれより今度の修習生にイケメンいる?え?顔なんかどーだっていいの。
大事なのは仕事をちゃんと覚えるかどうかなんだから!でもさぁみんな幸せよねぇお母さんの下で勉強できるんだから。
やっぱりお母さんって周りと自分が見えないジコチュー病。
お母さんジコチューじゃないわよいつだって世界の平和と人類の発展を…。
あそうだ章ちゃんからのメールも来たし夫婦の危機は回避できたんだからこれは返品しよう。
うん。
(糀谷さよ子)ご飯できましたよ。
どうしたんです?いつものニュース見ないんですか?
(さよ子)冷めちゃいますよ?
(チャイム)はい!京都府警のものですがご主人様いらっしゃいますでしょうか?主人…ですか?
(糀谷辰男)何ですか?中京区のマンションで羽田美和さんが殺害された件でちょっとお話をお伺いしたいんですが署までご同行願えますか?ここに「糀谷辰男」とありますけれどもこれはあなたのバッグですか?…はい。
私の物です。
羽田さんとはどういうお知り合いだったんですか?仕事仲間に連れられてたまに彼女の店へ…。
祇園新橋のバー「シュガースノー」ですね?はい。
実はですね…事件当日あなたが彼女の部屋に入っていくのを見たっていう目撃者がいるんですよ。
何しに行かれたんです?…私です。
私が…殺しました!ここは幼稚園じゃない!神聖な執務室にこんな物を持ち込んで!あなたたちはこの鶴丸に毎朝持ち物検査をさせる気!?
(出口恒雄)すぐ食べます!
(鍵崎ナナ)すぐ捨てます!
(鼻歌)
(太田勇一)検事。
今度の事件の被疑者は宮大工の棟梁なんですねぇ。
70で殺人とは世も末だなぁ。
ハハ〜ンフフフ〜ン。
太田さん?これは被疑者と会うのに必要な物ですか?あ…え…。
早く捨てた方がいいですよ。
何でだよ!?5年ぶりの見合いなんですよ。
昨夜もそれ見てたら眠れなくなっちゃって…。
舐めるように見てたんだったらもうこれいらないわね。
あー!!検事それだけは!僕のタケコさん返してください!脂ぎった手で何やってんですか!?ここ切っとけばいいじゃない!
(太田)お願いします勘弁して…。
噂どおり…鶴丸恐るべし!
(ノック)今被疑者が到着しました。
入れなさい!
(手錠を外す音)あなたには黙秘権があります。
自分の意思に反して供述する必要はありません。
では始めます。
あなたは事件当日の前にも羽田美和の部屋に行った事があると警察で供述していますが…。
何のために被害者宅を訪問していたんですか?あの…弟子たちと「シュガースノー」の女たちとでボーリング大会をしようという事になってたので…。
では事件当日の話をしてください。
あなたは午後1時過ぎに被害者宅を訪ねた。
そこで口論の末に羽田美和を刺したとありますがその口論の原因は何ですか?あの女が急に気が変わったからボーリング大会やめにしようって言い出したんですよ。
弟子たちも楽しみにしていたのでそんな勝手な事言われてもってもう腹が立って言い合いになって…!
(うめき声)ど〜もおかしいと思わない?
(出口)は…はい!はい!僕の素人意見なんですがいいでしょうか?デブチ!この部屋に入れるのは司法のプロだけ!素人はいらない!デブチじゃなくて出口です!新人としての僕の意見なんですが…羽田美和は覚醒剤密売組織と関係のある女でした!なのにボーリングどうのこうので殺されるのは不自然じゃないでしょうか!?お前唾飛ばさないと喋れないのかよ!?つまり糀谷も覚醒剤に関わりがあったんじゃないかと言いたいのね?出口さん調書読んでないの?美和の情夫門田と糀谷にまったく繋がりはなかった。
尿検査も陰性だってちゃんと書いてあるじゃない!でも!糀谷の犯行の動機は極めて曖昧!それにこの現場写真絶対変!ねぇちょっと見てほら。
調書によると皿の上のこれ。
柿の種なのよ。
被害者は殺される前に柿を食べていた。
それだけの事じゃないんですか?愚か者!柿を食べていたんだったら種と一緒に柿の皮があって当然でしょ!?それがないのはおかしいと思わない?これは絶対事件を解く鍵になる!これあたしの主婦の勘!出た!検事の十八番!やめてくれないかなぁ…。
まずは事実の積み重ねよ!さぁ聞き込み行くわよ!
(出口・ナナ)はい。
検事って凛々しい〜!コーヒーでも飲むか?おぞましい…!糀谷さんですか?
(ナナ)はい。
よくご夫婦で参加なさってましたよ。
(ナナ)なんか最近変わった事とかなかったですかねぇ?さぁ?気が付きませんでしたけど。
あの何でもいいんですけど思い出せ…あ痛たた!糀谷の棟梁があんな事をするとはねぇ…。
やはり普段は真面目な方で?真面目でしたよ。
奥さんも大事にしてはりました。
ありがとうございました!
(ナナ)糀谷さんの事なんですけど。
えぇ仲のいいご夫婦やったんですけどねぇ。
はい。
女遊びするような人と違うんですけどねぇ。
そうですか。
このおじいちゃん見た事ないかなぁ?
(子どもたち)あるある〜!ある?何か覚えてないかな?
(百合子)このブランド物のネックレス!あたしがポックリ逝ったらあんたにあげるわよってママ言ってたんだってば〜!あのねそういう話はさ遺族としよう。
ね?そこを刑事さんのお力で!ね?それよりな…。
いたーっ!うわぁ!何時間捜したと思ってんのよ!?携帯全然繋がんないじゃないのこの能無し刑事!挨拶もなしにいきなり何なんだよ?殺された羽田美和ね?何しに来たんだよ?こっちだってなぁ遊んでるわけじゃねぇんだよ。
この店をアンテナショップにしてヤク売り捌いてる組があるっつーから裏取ってたんだ文句あるか!?あるわ!羽田美和殺し動機がはなはだ不可解!それにヤクよりは柿!柿の皮!言いたい事はわかってるよ。
春先に柿は似合わねぇつんだろ?ちゃんと調べました。
いいか?よ〜く聞けよ?あの柿はなぁ羽田美和の隣の部屋の住人が交通事故にあって入院してて見舞いにもらった果物かごん中に入ってたヤツを美和がおすそ分けでもらった物なんだ。
どーだ参ったか。
参るわけないでしょ。
あたしが言いたいのはねぇこの柿の種が残っていた皿!ここに柿の種があってどうして柿の皮がないの?皮!?捨てたんだろ。
普通柿の皮捨てる時は種も一緒に捨てるでしょう?種だけ残ってて皮がないのは不自然!どーでもいいけどさぁなんでそんな細かい事でいちいち俺を振り回すんだ…。
神は細部に宿るの!柿の皮がどこにあったか調べて。
すぐに連絡して!ハァ!?オイ!ちょっ…!
(ため息)
(ナナ)糀谷とその妻はお互い50を過ぎてからの再婚同士のカップルでした。
両方死に別れです。
熟年再婚か…。
はい。
(携帯電話)北村…!遅いじゃない!どうだった?キッチンにも居間のゴミ箱ん中にも柿の皮はなかったそうだ。
どうして!?種はあるのになぜ?皮ごと食っちゃったんじゃねぇか。
「じゃあな」
(不通音)ったくもう…。
デブチは?出口です!早く!糀谷は間違いなく事件当日の午後羽田美和の部屋から出てくるところを目撃されています。
そのうちマンションの下で遊んでいた子どもたちがおかしなおじいちゃんだったと。
上着のポケットから垂れてたんだそうです。
オレンジ色のクネクネっとしたものが。
クネクネ…?それだ!糀谷さん調書によるとあなたは死んだ羽田美和の口座に30万円振り込んでいましたね。
何のお金だったんですか?ボーリング大会の景品にかかる費用です。
弟子たちはこんな地味な仕事でも毎日真面目に働いてます。
たまの息抜きにと自分が奮発してやるつもりでした。
わかりました。
質問を変えます。
あなたは美和を殺した後美和の部屋からおそらく美和が食べていたであろう柿の皮を持ち出していますね?か…柿の皮…?客観的に見て非常に不可解な行為です。
非常に気になります。
なぜそんな事をなさったんですか?いや〜なんの事か?わかりませんね。
でも目撃者が…。
(糀谷)検事さん!私は人を殺したんや!頭が混乱して理屈に合わん事しても不思議はないでしょう…!裁判…裁判始めてください。
敵は確かに動揺していた!やっぱり柿の皮には何かあるのよ!検事の質問がくだらないからいらだったようにあたしには見えましたけど〜。
検事に面と向かってくだらないとは何だよ!?僕も柿の皮の事なんかよりも30万に関してもっと踏み込んだ質問をしてもらいたかったですね!何しろこの事件の発端は覚醒剤の密売組織にあるわけですからして…!無論!それはやります。
でも柿の皮に関してあたしの主婦の勘がピーン!ときたの。
とことん調べるわよ〜!
(高原純之助)何だね?話というのは。
(ナナ)担当検事を変えていただきたいんです。
鶴丸検事のやり方にはなはだ疑問を感じているからです。
具体的に聞こうか?はい!例えば我々修習生には事実を積み重ね証拠を精査して結論付けるように命じておきながらご自分は主婦の勘だなんて極めて抽象的なものを論拠にしている。
矛盾してます!ふむ。
確かに彼女は矛盾してるかもしれない。
だが我々が相手にするのは数式じゃない。
人間だよ。
矛盾も嘘も正義も悪も同居している生き物に論理だけじゃ太刀打ちできないんじゃないかな?でも…!人の揚げ足取ってる暇があるなら主婦の勘を超える事実を出して並べて見してみたまえ!それは…これから…。
(笑い)
(高原)しかし鍵崎君そのあやちゃんに噛み付く度胸は評価するよ!さながら泥川のカバに食いつくピラニアのようだ!ピ…ピラニアですって!?太田事務官じゃあるまいしそんないじましいものに例えないでください!ご主人と奥様はそもそもボーリング場で知り合われたとか。
(さよ子)はい。
その縁で再婚する事に。
どうぞ。
そのご主人が羽田美和という女性が経営するバーに通われていた事はご存知でしたか?刑事さんから聞かされて知りました。
意外に思いました。
主人はお弟子さんは大事にするタチでしたからよく飲みには出かけていましたけどバーのようなところにはあまり1人で出かけたりしませんでしたから。
女性は苦手とか?小正月の鏡餅のような堅物だと自分ではよく言ってました。
小正月の鏡餅みたいにガチガチに堅いっていう…。
いい例えですね。
今の若い人には通用しないと思いますけど。
そのご主人警察の留置場でも…。
買い物に出かけますのでよろしければもう…。
あ…じゃあ手短に。
もう一つだけ。
ご主人果物の柿はお好きでしたか?えぇ好きでした。
主人の母親の好物だったんです。
それで柿のある時期にはいつもああして…。
そうだったんですか…。
(ピンの倒れる音)ここか…。
(池内)あ〜惜しいっ!副部長惜しい!
(高原)何がいけないんだろうな?力入りすぎてるのかな?池内刑事!副部長も!どうしてお2人がこんなとこに!?彼は中京署のボーリング大会で優勝した腕前でね。
今教えてもらってんだよ。
いえいえ副部長もプロ並みですよ。
ハハハ。
君も上手いなぁ!ハハハ。
何言ってんですか!こんな玉転がしあたしだって…。
ほらちょっと貸して貸して。
わぁ!
(ピンの倒れる音)
(2人)おぉ!うそぉ!ラッキー!
(池内)で何で検事さんがこんなところに?ある事件を担当しててねその犯人と目される男とその妻がここの常連だったのよ。
今その奥さんを訪ねて会ってきたんですけど何かこう…釈然としないものが…。
あの宮大工の一件か?はい。
糀谷さんでしょ?知ってますよ。
ここじゃああの人ら評判の夫婦でしたから。
(ピンの倒れる音)
(池内)揃いのユニフォーム着てストライクが出たら…仲良く決まってハイタッチ。
とにかくあの夫婦は作文で全国一位になるような名物夫婦だったんすよ。
その作文って!?「ぼくのおじいちゃんとおばあちゃん」糀谷辰男の孫が書いた作文か?はい。
4年前2年生の時に書いたものでコンクールで全国一位になってます。
「ぼくのおじいちゃんとおばあちゃんは今年…」
(男の子の声)「ハワイへ旅行に行きました」「ハワイでは年よりの夫とつまは手をつないで歩いていたそうです」「それを見ておじいちゃんはおばあちゃんに『オレたちも手をつないで歩こう』と言いました」「おばあちゃんは『はずかしい』と言ってイヤがったので2人はふうふゲンカになりました」「でも先月おばあちゃんははくないしょうの手じゅつを受けました」「たい院した日おばあちゃんはまだ目がちゃんと見えないのでおじいちゃんに手をつないでもらいました」「そしたらおじいちゃんはおばあちゃんに『ごめん』と言いました」「『手がつなげてもちっともうれしくないよ』」「『オレは健康なお前がいいよ。
無理言ってすまなかった』とおじいちゃんは何度も言いました」「おじいちゃんは泣いているように見えてぼくも何だかなみだが出ました」近頃珍しく…しみたねぇ…。
素朴な子どもの視点で書かれたいい作品です。
このお陰でずっと感じてた違和感が何なのかはっきりわかりました。
違和感?はい。
妻の糀谷さよ子に関してです。
この作品にもあるように2人はかなりのおしどり夫婦でした。
その夫が殺人容疑で逮捕されたんです。
なのに彼女はあたしが彼女の家を訪ねた時に夫はどうしてるか一言も訊かなかった。
いや普通だったら愛する夫がちゃんと食べてるのか眠れているのか気になって仕方がないはずです。
なるほど。
それに夫の逮捕以来さよ子は1度も警察に面会にも差し入れも訪れてないんです!おしどり夫婦のはずなのにですよ?これっておかしいと思いません?この夫婦には何か隠された別の顔がある。
よってそれを調べたいので時間をくれ。
お察しのとおり!あたしの主婦の勘がピーンと!
(携帯電話)あ…ちょっと失礼します。
北村…!あ…失礼します。
はい鶴丸。
「今なぁうんめ〜干し柿食ってんだけど出てこない?」はぁ?
(りん)きゃ〜やめて北村…!そうはいくか!
(りん)やめて変態!いや〜!何が変態だこの!このスケベオヤジ!放しなさい!母親の許可なく乙女の柔肌に触るなんてやめてちょうだい!汚らわしい!指相撲してただけだろ。
うるさい!干し柿どうたらで人を呼び出すのもやめてちょうだい。
あたしも忙しいんだから。
あのなぁ…!それから!りんの周りをうろつくのもやめて。
この子ももう年頃だしキモイオヤジと付き合わせたくないから!りんりん。
何言われても一週間に一回は絶対会おうな。
俺なぁりんりんと一緒にいると癒されるわけよ。
現実逃避はダメだよ。
ちゃんとした彼女見つけなきゃ。
うわ!じゃあ塾行く。
じゃあね!なんかりんりんに怒られるとさこの辺がキュンとなるな。
勝手にキュンキュンしてなさいこのドスケベ!!あら?何だ行っちゃうのかよ。
せっかく教えてやろうと思ったのに。
何を?糀谷辰男の一人息子が神戸でパクられた。
えぇっ!?
(悲鳴)白昼路上で刃物を振り回したそうだ。
糀谷辰男が再婚だったのは知ってるよなぁ?えぇ。
前の奥さんは40年前に病死してるわ。
こいつがその奥さんとの間にできた長男の幸一。
兵庫県警からの報告だと幸一は覚醒剤の常用者だったらしい。
もしかして羽田美和と繋がりが!?ピンポン。
こいつは羽田美和が去年までやってたバーの常連客だったんだ。
何ですって!?糀谷さん。
あなたは息子さんが覚醒剤を常用している事をご存知だったんですね?もう隠し通すのは無理です。
詳しく話してください。
息子は…前の女房との間にできた子で…。
その息子の噂をあの女から聞いたんです。
(羽田美和)糀谷さんって珍しい名前やねぇ。
うん。
そういうたら1人神戸のお店の常連さんにもいはったわ。
エリート銀行マンで。
ほぉ〜。
私の息子も神戸で銀行に勤めてるらしいんや。
お名前は?それで銀行に電話してみたんです。
そしたら離婚したらしい事や長期休暇を取ってる事なんかもわかって…。
心配になって今の女房には内緒で会いに行ったんです…。
なんかやつれてるなぁ…。
どっか悪いんやないか?
(糀谷幸一)あの女にはめられたんや…!
(糀谷の声)銀行の仕事で徹夜が続いてた時期にあの女から疲れが取れるからって渡された薬が…。
覚醒剤だったわけですね?なんちゅう女やと思うてマンションに乗り込んでいったんです!エリートさんがヤクにはまってるやなんて…。
えらい事になるんやない?アハハハハ!羽田美和はあなたに口止め料を要求してきたんですね?はい…。
そしてあなたは美和の口座に30万円を振り込んだ…。
それからどうしたんですか?30万なんてはした金お金のうちに入らへんやないの。
(美和)「弟子のぎょうさんいる宮大工やったらもっと貯めてるはずやわ」
(糀谷)それで…考えて…考えて…!お金持ってきてくれた?まぁ座ったら?
(美和のうめき声)それで羽田美和を刺し殺した…。
申し訳…ありませんでした。
よ〜くわかりました。
ただ1点…不明な点があります。
柿の皮です。
うわぁ…。
またアレ…?あなたは証拠となる凶器やボーリングのボールバッグを現場に残しておきながら柿の皮だけを美和の部屋から持ち帰った…。
なぜですか?自分でもわからんのです。
よっぽどどうかしてたんやと思います。
動機はここまで明白なんです!それなのに鬼瓦は…!「まだ捜査を続けます!」うるさいんだよ!!…すいません。
こんな事が続いたらねぇ私は自分の時間がなくなり心身ともに疲労困ぱいし…。
わかる!わかるよ君の気持ちは!この地検の男たちはみんな同じ思いだよ太田君。
副部長…!味方だと思っていいんですよね!?もちろんだ!
(ノック)失礼します。
…あら太田さん。
あの〜糀谷辰男の事件だけどね僕なりに考えてみた。
被疑者の糀谷は再婚らしいね?えぇ…そうですが?ここから先は僕の独り言だと思って聞いてもらいたいんだが男っていうのはね再婚すると今度は…今度こそは添い遂げようと思うもんなんだよ。
糀谷も努力してたんだろう。
あの作文にもあったように手を繋ごうとしたり2人でボーリングに行ったり…かく言う私もね妻の友達の名前を覚えホームパーティーを開き一日一度は必ず「愛してる」と口に出して言う…。
まぁ素敵!うちの章ちゃんにも教えてやりたいわぁ!ねぇ太田さん!しかし同時に…年に一度は密かに思う…。
かみさんがポックリ逝ってくれたらさぞかしせいせいするだろうなぁと…。
え…えぇ…!?夫婦ってのはそういうもんだよ。
愛情にもうっとうしさにも年季が入って…古酒の味わいだ。
今後の参考になります。
つまり…当事者でなければわからない屈託がそれぞれの夫婦にはあるとおっしゃりたいんですね?ま柿の皮はともかく糀谷夫妻に何か引っかかるものを感じるという君の勘は案外当たらずとも…という気もする。
(太田)副部長!?それでは捜査続行の許可を…!?ただし今日一日だけだ。
深夜12時までに起訴状を提出したまえ。
わかりました!副部長のご理解に感謝します!太田さん!今日の予定は週末に延期!残念ねぇ…今週末のお見合い必然的に延期。
じゃ。
という事はですよ!ここの地検にいる限り私は結婚できないという事でしょうか!?あきらめずに…!トライ!トライ!トラーイ!ガッデム!!うわっ…!北さん昼飯買ってきましたよ。
おぅ。
うわすげぇな。
噂だと鶴丸検事あのヤマまだ追っかけてるそうですよ。
そりゃそうだろ。
送検したとはいえいろいろと問題の多いヤマだからな。
えぇ。
あれ…?俺こいつ知ってんなぁ…。
何でだ?どこでだ?え?今日は少々おかしな事を質問させていただきたいんですけど…。
失礼ですけど奥さんご夫婦仲は良かったんですか?以前から不審に思ってました。
奥さん留置場のご主人の事一度もお尋ねにならない。
えぇ…。
面会にも差し入れにもおいでにならない。
着替えを届けたのも確かお弟子さんでしたよね?なぜなんですか?評判のおしどり夫婦だったのに。
フフッ…みんな嘘だったんですよ。
(ため息)あぁ窃盗犯の佐藤なら今取り調べ中ですが?そいつのヤサにあった盗品の中にこのネックレスなかったか?府警さんが何探ってんのか知りませんがねこっちはこっちで手一杯なんすがねぇ…。
見たんだよ俺は!羽田美和の死体を発見する直前に彼女のマンションでこいつをな。
部屋の中にはこのネックレスはなかったっちゅう事はだ佐藤が関わってる可能性が大だろ?ご夫婦の間に何かあったんですか?あの作文がいけなかったんです。
あたしたち歳を取ってからの再婚同士でしてねまわりにはいろいろ言う人もいました。
でもうちの孫があんなにいい作文を書いてくれたんで主人飛び上がって大喜びでした。
(さよ子)それで2人して張り切っちゃったんです。
こうなったら作文に負けちゃならない。
みんなの手本になるような全国一の夫婦になろうって…。
それからボーリングや太極拳などに必ず夫婦そろって行くようになりました。
最初は私もとても楽しかった。
親戚もお弟子さんもそれ見てさすが全国一だねって。
主人は人の上に立って仕事をする人でしたから体裁もありました。
だけどますます気を回して外では絶対にケンカをしないよういい夫婦でいるように…。
でも外でニコニコするためには家でもケンカができないんですよ。
言い合いをしてわだかまりが残ると次の日笑ってられなくなりますからね。
波風の立たないよう立たないよう…。
そんなふうにして作り笑いをしているうちに主人の顔がなんだかのっぺらぼうに見えてきて…。
本音がわからなくなりました。
この人が大事なのはあたしじゃなくて世間体なんじゃないかなんて…。
そんな頃主人あの女の人と車で帰ってきたんです。
例の事頼んだえ…?一目で水商売の人とわかりました。
何が小正月の鏡餅よ!何がおしどり夫婦よ!あたし腹が立って腹が立って…!
(鍋の吹きこぼれる音)
(糀谷)おぅおぅおぅさよ子!何してんのや!今度また会ったらあたし…あの女を刺しますよ。
奥さん…その女性は殺された羽田美和です。
ご主人は脅されていたんですよ。
主人あたしに言ったんです!死に別れた女房の事はもう忘れた。
お前だけで俺はいい。
だからもう息子にも会わないって!だけどその息子にも会ってたんですよね?あたしに内緒で!あ…それは…。
会うなとは言いません!ただ…嘘をつかれるのはたまりません!それに…そもそも人様を殺すようなそんな人と暮らしていたのかと思うとゾッとなります…!だからあたし…もうあの人の事は忘れて…。
(ため息)
(柿の皮をむく音)奥さんちょっと待ってください。
行きましょう!一緒に!え…?確かに羽田美和の物だな。
だろ?佐藤と話させろ。
いえいえそれはこっちの仕事で…。
堅い事言うなって。
実況検分!?特別に!?こんな時間に!?副部長からこの一件は今日中に起訴手続きしろと厳命されてるの!時間がないのよ!しかしこんなやり方は前代未聞です。
前例のない事例は前もって上に報告して許可を取らないと…。
許可をもらってきます。
素直に従うなよ!あたし男らしい女性に弱いんです。
よしよく言った!鍵崎デブチ!は…はい!あんたたちに取ってきて欲しいものがある!この女知ってるか?なら何でこいつがお前の部屋にあったんだ?知らねぇよ…。
じゃあ訊くけど佐藤。
お前この女が殺された日の午後1時半頃どこにいた?覚えてねぇなぁ。
あっそう。
じゃあ教えてやるよ。
お前はこの女のマンションにいた!目撃者は…俺だ。
(さよ子)検事さんどうしてここへ?もうじきご主人がここにいらっしゃいます。
少しお待ちくださいね。
(ナナ)検事!これ…!あ…ありがとう。
(柿の皮をむく音)何が始まるんだろ?予測不可能…。
さよ子…!あなた…!さよ子…お前なんでここへ来てるんや!お前関係ないやろ!?さ帰れ!な帰れ!検事さん!なんで女房呼んだんですか!?関係ないでしょう!?私がやったって言ってるやないですか!さ…さお前帰れ!検事さん…!ここまでにしませんか糀谷さん。
正直に言ってください。
あなたはホントに羽田美和を刺したんでしょうか?さぁむけた。
ちょっと見てください。
これが今右利きの私がむいた柿の皮です。
そしてこれが…左利きの奥さんがむいた柿の皮です。
見比べてください。
ぐるぐるの向きが…反対ですよね?糀谷さんあなたが事件現場で見つけた柿の皮もこの奥さんがむかれた柿の皮と同じ物だったんじゃないですか?春先の柿に左利きのむいた柿の皮。
とっさに思ったんですよね?羽田美和の部屋に奥さんが来たんじゃないかって。
そこに死体…。
もうあなたは夢中で柿の皮を持って逃げるしかなかった…。
ち…ちょっと待ってください!じゃあ奥さんが犯人!?糀谷さんはご存じなかったでしょうけど羽田美和も左利きだったんですよ。
ほら。
(携帯電話)ちょっと失礼。
もしもし!?おぅ北村だ。
窃盗犯の佐藤正が羽田美和殺しの自供を始めたぞ。
そうありがとう。
糀谷さんもう嘘つかなくて大丈夫ですよ。
手錠外してください。
(警官)はい。
(手錠を外す音)この女が出かけるのを見計らって…。
そしたらあの女忘れ物したのか戻ってきやがって…。
あ…!イヤーッ!キャー助けて助けて…!
(美和の悲鳴)
(チャイム)
(糀谷)羽田さん?どうしました?
(佐藤の声)慌てて隠れたら…じいさんが入ってきやがった。
あ…!羽田さん!?
(さよ子の声)もしかしてあたしが殺したと思ったんですか?それであたしを庇うために自分が…!?刑務所に入るのも覚悟の上で嘘の供述をなさったんですね。
どうしよう…あたし…あたし知らなかった…!あなたが犯人だとばっかり…。
だからもう…何もかも嫌になって…!知らなかった…。
ごめんなさいごめんなさい!奥さん謝らないでください。
事件の後ご主人が家へ帰ってから奥さんに問いただしていればよかったんです。
でも…。
あたしはね奥さん今とっても嬉しいんです。
糀谷さんが無実だとわかって。
高齢の方を刑務所に送るのはつらいものがありますから。
それにご主人はやっと巡り会えた大事な奥さんを守るためにありったけの力で嘘をつき通した。
天晴れじゃないですか!素敵じゃないですか!作文が何です!全国一が何です!もう世間の顔色なんて窺わなくて結構!大いにケンカしてください。
言い合ってください。
家の中でも外でも…。
我慢できなかったらお茶碗投げ合ったっていいんですよ。
派手にぶつかれば反省する気持ちも起きてくる。
敵の本音も見えてくる。
「あぁすまなかった」っていう気持ちにもなります。
せっかくのお2人なんです。
見事なご夫婦なんですから。
これからも末永くお2人で寄り添って生きてってください。
これがあたしのお2人へのお願いです。
あなた…留置所でリウマチ出なかった?お…ちょっとだけな。
ハハハ…。
バカ…!やっぱり…。
何をこそこそ話してるのかな?今ねりんのクラスの男の子がね結婚する時女の子はバージンがいいかどうか意見が割れてんだって。
ハァ!?北村はどう思う?どう思うも何もそんな話を親子でしていいと思ってんのか!?このくらいの話で驚いてちゃねぇ今時の高校生の親は務まんないの!ちゃんと答えてあげて!そりゃあ…あれだよ…。
何?女の子にはなぁ結婚するまでは指一本触れるなと言いたいね俺は。
へっ!そ〜んなつまんない答え。
何がつまんないんだよ…!お母さんは結婚した時どうだったの?え?お母さん?お母さん…。
ごま油買ってこよ…。
ごまかすな!コラ!りんりん追え!逮捕だ!徹底的に取り調べるぞ!2015/08/18(火) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
京都地検の女3[再][字]
「殺意を抱く老夫婦!!祇園死美人が残す謎」
詳細情報
◇番組内容
名取裕子主演人気シリーズ第3弾!
事件解決のカギは“主婦の勘”。京都地検・鶴丸あや検事が、事件の盲点を主婦ならではの視点で鮮やかに解き明かす!
◇出演者
京都地検検事・鶴丸あや ・・ 名取裕子
京都府警刑事・北村鉄男 ・・ 船越英一郎
中京署刑事 ・池内弘二 ・・ 益岡徹
京都地検事務官・太田勇一・・ 渡辺いっけい
京都地検副部長・高原純之介・・ 蟹江敬三 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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