午後のサスペンス「芸者小春姐さん奮闘記6 加賀VS江戸友禅殺人事件」 2015.08.18


小春:荒川から分流して東京湾へとそそぐ隅田川。
北斎や広重の浮世絵に描かれ多くの小説や戯曲を生んだこの川は下町文化の母といえましょう
隅田川沿い約3キロの区域に七福神様が祀られております。
福を授かるこの隅田川七福神めぐりは古くから下町の人々に親しまれそう私ども花乃屋でも先代女将から受け継いだ年中行事のひとつといったところでしょうか。
言問橋からちょいと北の三囲神社。
東京大空襲の戦災を免れたこの神社には恵比寿様と大國様が祀られております
お女将さん。
あら寿美花。
お女将さんすっかりご無沙汰しちゃって…。
(福豆)同じ向島なのにずいぶんご無沙汰ね寿美花姐さん。
(桃千代)寿美花はどうしてるかしらってお女将さんの心配も知らないでさねぇちょっと太ったんじゃない?幸せ太りってやつかしら?あ〜ら桃千代あんたこそだんだん似てきたわよ。
何?恵比寿様。
何だって!?商売繁盛の恵比寿様なら結構なことじゃないの。
お座敷の引きが増えるわよ。
「寿」に「美しい花」と書いて寿美花。
金沢の花街ひがし茶屋の出身ですがそうもう16年前になりますか縁あってうちの花乃屋に身を寄せました。
子供の頃からの習い事のおかげでしょうか筋のいい芸者でしたが4年前の結婚を機にうちを辞めて手塩にかけた芸者が嫁いでいく。
それはもう実の娘を嫁がせるようなものでして…。
特にこの寿美花にはいろいろと事情がありましたから
七難即滅七福即生。
おや忘れちゃいないんだね。
お女将さんに教わったことは一生忘れませんわよ。
あっそう。
七福神様全部お参りして福をいっぱいいただいてさぁ飲むわよ〜!
(若菜)よ〜しバンバン歌うぞ!
(鷹奴)バンバン食べるぞ!
(彩乃)お女将さんご馳走になります。
ははは…。
結局あんたたちは七福神めぐりのあとがお目当てなのよね。
はい!〜
(虎松)名にし負わば〜。
いざ言問はむ都鳥。
いざ言問はむ…。
(日出子)大将!何だよ!?また不動産屋からなんですけど4丁目の亀の湯が潰れちゃったんでうちもそろそろマンションにって…。
やかましい!とっとと断れ!バカタレ!!とっとと断れ!ってことなんでどうも〜。
こんなにも燃料が高いんじゃ〜バッタバッタと潰れちゃう〜。
次はいよいようちの番かな。
あると思います!タコ言ってんじゃねえよ!バカタレ!!いいか!?いくら油が上がったってな俺はこのセンターな意地でもやんねえからよ!バカ野郎!!虎ちゃん!おぉ小春ちゃん!大将ご無沙汰。
寿美花…お前生きてたか!相変わらず口が悪いわね。
あら珍しく本なんか読んじゃって。
勉強だよ勉強。
お前たち言問橋のいわれって知ってっか?いや…。
わかんねえだろうなバカだから。
いいか?そもそもこの言問橋っていうのはだな…。
なにがそもそもよね〜。
ねぇ。
お女将さん大将どうしちゃったんですか?ボランティアよ。
ボランティア?こ…これ!何?
(桃千代)下町再発見?
(若菜)地元ガイドと歩く墨田の名工を訪ねる旅?地元ガイドって…まさか大将!?おい…何だ何だその目は!?じゃあなにか?この俺じゃ務まらないってそういうことか!?虎ちゃんそうカリカリしないでよ。
いい?三代続いてこその江戸っ子。
生っ粋の江戸っ子だもん虎ちゃん。
この大役は虎ちゃん以外にはいないわよ。
〜え〜この辺りは向島寺町通称鳩の街でありましてね。
かの有名な永井荷風や吉行淳之介の小説の舞台になった所で…。
虎ちゃん。
え〜え?え〜はいらないわよ。
とっても耳障り。
ついねクセだから。
お女将さん大将で大丈夫なんですか?それを言わないの。
虎ちゃんが引き受けてくれないと困るのよ。
私の代役で推薦したんだから。
あらそういうこと。
しかしなんだなぁ。
やっぱり小春ちゃんの言うようにこの大役はおいらしかな…。
向島の生き字引男虎松の腕の見せどころよ。
大将その調子で頑張って。
へへ!お女将さんすっかりご馳走になっちゃって。
今日はどうもありがとうございました。
ちょくちょく顔見せなさいよ。
はい。
あっ…ちょっと寄って。
たまにはいいでしょ?おっそいつはいいね!小春ちゃんちょっと行くか。
えっいいの?おぅ行こう行こう。
は〜い。
へぇ〜。
鳩の街ならではの長屋風でいいんじゃねえの。
ちょっとちょっと虎ちゃん!少しは遠慮しなさいよ!そっちじゃないです。
こっちですよ。
ほらこっちよ。
え?なんだよ!はいどうぞどうぞ。
すみません。
総太郎さん!お女将さんよ。
おじゃましますよ。
総太郎さん!遅くにすみません。
寿美花?えぇっ!おぉっ!こ…小春ちゃん!〜
(吉野)警部ご苦労さまです。
(田村)おぉ。
ガイシャは津上総太郎40歳。
手描友禅の工芸師です。
手描友禅…。
(井口)検視によると手足の指の硬直から死後2時間ほど。
死亡推定時刻は7時前後。
ガイシャがこの白生地に下絵を描いていたときの犯行と思われます。
第一発見者は?ガイシャの奥さんですが4年前まで向島の花乃屋で芸者をしてました。
久しぶりにそこの女将さんたちと会って9時ちょっと前まで中華料理屋で会食。
その帰りに発見したそうです。
手描友禅…。
しかし東京でこういうものが作られていたとはな。
下絵の型取りには青花を使うそうです。
青花…。
まさかこんなことに…。
警部こちらが津上総太郎さんの奥さんです。
あぁどうも。
こちらは花乃屋の神無月小春さん。
えぇ…こちらは…。
向島虎ノ湯四代目笈川虎松!ご主人の総太郎さんは手描友禅の工芸師だとか。
東京ではちょっと馴染みのない仕事ですが…。
あれ?知らなかったんですか?江戸友禅といやあれっきとした日本三大友禅のひとつなんですけどね。
ほう…あの…日本三大友禅というと?え?いやだからほら…ね。
京都…京都の…。
本友禅。
本友禅!ね?それからその…石川県。
石川県のその…。
加賀友禅。
加賀友禅ね。
それでもって東京の江戸友禅。
これで三大友禅ですね。
なるほど。
総太郎さん!総太郎さん!!室内が物色された形跡はありません。
ご主人に抵抗した様子もなく顔見知りの犯行と思われますが何か心当たりありませんか?警部さん寿美花にも心当たりはないようで…。
それにまだ今はちょっと…。
わかりました。
落ち着いてからお話ししましょう。
警部津上さんの弟子の岡本京平さんです。
奥さん!お弟子さん今日はどちらに?工房でいつものように手伝ってましたけど。
お帰りになった時間は?7時前だったと思います。
7時前?そのあと総太郎さんは工房で一人だったわけですね。
下絵は今日じゅうに仕上げるって…。
あっでも僕が帰るとき…。
(京平)横山町の深町さんが…。
深町さん?どういった方で?着物問屋の方ですけど…。
まさか僕が帰ったあと…。
その深町って男が?いやそう先走らないで。
岡本さんあちらで詳しく。
お願いします。
どうなってんだい!寿美花総太郎さんの手描友禅はその深町さんが仕入れていたのね?彼のところが一手に。
総太郎さんとの間になんかこの…。
仕事上のことでなんかあったってことはないのかい?私にもよく…。
(七重)女将さん。
お通夜は6時からだそうです。
七重さん私今夜は寿美花のそばについていてあげたいからお座敷のほうよろしくね。
お任せください。
寿美花の旦那が…。
まさか殺されたなんて…。
さぁさぁみんなも早く支度してお座敷に間に合うようにお通夜の前にお焼香させてもらうのよ。
いいわね?でもこんなときにお座敷なんて。
何を言ってんの!芸者の命はお座敷よ!わかった?どんなことがあっても…。
七重さんみんなももうわかってることだから。
梅の間が三膳竹の間二膳。
会長!
(山岡)このたびはまことにご愁傷さまで…。
(野崎)まさかこんなことに…。
(相良)津上君とは一緒に江戸友禅を守っていこうと…。
同志のようなものでしたからなんとも残念としか…。
深町…。
(深町)なんですか?あぁいやいや…別に。
奥さん…。
女将さんあの人が深町さんです。
〜深町さん!僕が帰ったあと総太郎さんの工房を訪ねましたよね?何があったんですか?本当のことを知りたいんです!お前俺を…。
京平君!いやいやちょっと待ちなよ!深町さん!墨田東署です。
ちょっと署まで。
弱ったなぁ。
まだ仕事が…。
ご足労願えますか?警部さん!やっぱりこの野郎がやっちまったんですか?まぁまぁそう先走らないで。
さぁ行こう。
さぁ。
先走っちゃいけねえのかよ。
でもやっぱりあの深町さんが…。
総太郎さんといろいろトラブルもありましたし…。
トラブル?それどういうこと?深町さん昨夜の7時頃に津上総太郎さんの工房に行きましたね?いったいどういう用件で?催促というか頼んでいたものを早く仕上げてもらおうと。
で津上さんの工房にはどれくらい?仕事の邪魔になってもとそう10分ほどで引きあげました。
でそのあとはどちらへ?自宅へ帰りましたが。
刑事さんこれはいったいどういうことだか。
まさかこの私を疑ってるんじゃないでしょうね?あなたが訪ねた時間と犯行時刻とが重なってるんですがね。
だからって心外だな。
心外です。
まぁまぁ…。
津上さんと仕事上のことでトラブルがあったそうですが。
誰がそんなことを?あんたのとこの仕入れ値は相場より安い。
そのうえ未払い金もある。
で津上さんは別の問屋に乗り換えようとした。
それを察知したあんたが工房に乗り込んだ。
違いますか?こういう仕事してれば大なり小なりそういうものはつきものです。
信じてください。
私は何も誓って何もしてない。
人権侵害名誉棄損です!総太郎さんは伝統工芸の江戸友禅を残そうと頑張ってらしたのね。
しかし寿美花が友禅師の女房になろうとはな。
兄も友禅をやっていたから。
その兄貴の事件がおめえの人生を狂わしちまったわけだ。
虎ちゃん。
あっ…つい余計なこと。
その金沢で友禅修業を積んだ総太郎さんが一本立ちして東京に出てきたわけだよな。
4年前鳩の街でばったり…。
同じ向島で友禅工房を持っていたなんて。
芸者辞めてまで総太郎さんと一緒になろうと…。
そこまで惚れちまったわけだよな。
寿美花。

(京平)深町さんにじかに確かめたくて。
でも茅場町のマンションには帰ってないみたいで横山町の会社にもお通夜以来姿を現してないみたいです。
おかしいわねぇ…。
ずらかったんだよ。
警察の事情聴取の後でずらかったんだ!やっぱりあの総太郎さんをやったのは深町さん…。
おう。
だったら僕絶対許しません!もしもし?あっ寿美花。
え?深町さんが見つかった?えぇっ!?たった今墨田東署から連絡があって深町さんの死体が金沢で発見されたと。
詳しいことは私にも…お女将さん。

(園部)毒物反応が顕著でありますが…。
服毒死。
(丸山)死亡推定時刻は昨夜7時から9時の間死体のそばにはこのコーヒー缶と農薬の小瓶がありました。
これに混ぜて飲んだ。
外傷は認められません。
状況からは自殺と判断されますが。
園部さん遺体の発見現場は?深町祐介の死体はここにあった車の中に…。
犬の散歩をしていたお年寄りが発見したんですが車は深町本人のものです。
なぜこの場所だったかだが深町はこの金沢に土地勘がありますね。
加賀友禅を扱ってたようでこっちにはちょくちょく来てたようですな。
警部深町祐介は津上総太郎を殺害しておいてぬけぬけとあの通夜に顔を出した。
我々の聴取では人権侵害だとか名誉棄損だとか居直ってみせましたけど。
内心穏やかじゃなかったのか。
アリバイはない。
いずれは犯行がバレてしまう。
心理的に追い詰められて馴染みの深いこの地を自殺場所に選んだ。
そう考えられますが。
はい園部。
なに!?わかった。
深町祐介の着衣から青花の成分が検出されたそうです。
友禅の下絵描きに使う青花。
これが深町祐介のズボンです。
これが鑑識の分析結果ですがデンプンのアミロースとヨウ素が検出されました。
青花の成分なんだな?ええ。
デンプンのヨード反応を利用して生成される化学青花の成分です。
化学青花?水によく溶けて色が消えることから染め物の下絵描きの絵の具に使われています。
警部こういうことですかね。
事件当夜深町は鳩の街にある津上の工房を訪ねた。
そこで…。
いい加減にしろ!
(丸山)そのとき付いた青花。
紺色のズボン青花と同じ色合いだから付着したとしても目立たんだろうな。
津上総太郎を殺害した深町祐介は追い詰められて自殺。
これで決まりでしょうね。
よっしゃ事件性がなければうちのほうの出番はない。
お宅のほうのヤマも被疑者死亡で一件落着。
軽く1杯やりますか。
加賀の地酒うまいですよ!やっぱりあの深町がやってたのか。
警察がそう断定したの?そこまでは…でも青花が。
青花?青花の化学成分が深町さんのズボンの裾についていたと。
ってことは総太郎さんをやったときについたもんだな。
犯行を裏付ける証拠も動機もバッチリってわけか。
総太郎さんを殺しちまった罪の意識から自殺したってことだろうけどなんともあっけねえ幕切れだなぁ。
遺書のようなものは…深町さんは残していないの?遺書はない…。
名にし負わばいざ言問はむ都鳥。
わが思う人はありやなしやと…。
え〜というわけでございましてですね「いざ言問はむ」でもってこの言問橋。
なんとですねこの言問橋がですね遠く平安時代の伊勢物語にその謂れを発するというこういう次第でございますはい。
(米子)あっすみません今の唄は誰が詠んだものですか?在原業平。
在原業平。
あぁ…そうですよねっだから在原業平在原業平。
在原のね。
そうそう在原業平。
それでなんとですねこの隅田川これはですね遠くその奥秩父にその源を発しましてね。
すみません奥秩父の何という山ですか?え…。
甲武信岳。
甲武信岳。
甲武信岳。
あ甲武信岳。
そうあの…遠くですね奥秩父の甲武信岳にその源を発しましてね。
それでもってその新岩淵水門というところでもって荒川と分かれます。
それで隅田川となりまして東京湾へそそぐ。
全長23.5kmでございます。
お上手ね。
それでは皆さん。
これから名工めぐりへと出発します。
皆さん移動しますよ。
足元気をつけてくださいね。
あのばばあに質問すんなって言っとけ。
ナビゲーターがいるから大丈夫っすよ。
あの文化文政の時代より作られております江戸押絵羽子板であります。
綿を布でくるんで立体的に仕上げるのが特徴でございますね。
すみません。
あのこれ羽根つきに使うにはちょっともったいない気がするんですけどね。
だけどこれどういうときに使うんですかね?昔は女の子の初正月には羽子板を贈ったもんです。
魔除けや厄払いの意味があったんですな。
きっとまぁ悪い男がつかねえようにっていう親心があったんじゃねえっすかねぇ。
昔も今もね娘を持つ親心っていうのは変わらねえんじゃねえすか?ですねぇ。
ええ。
江戸友禅。
東京友禅ともいわれておりますがですねこの下絵から仕上げまですべて手仕事でございまして2つと同じものはございません。
すみません。
あのすべて手仕事っておっしゃいましたけどその工程をですね説明していただかないとねぇ。
ええ。
まぁそう先走らないで。
相良さんすみません。
仕上がりまでのご説明お願いします。
はい。
これが原画です。
これをもとにこのちりめんにこの青花で下絵を写し取ります。
すみません。
どうしてこの青花を使うんですか?青花はあとで水で消せるんですよ。
失敗しても消せればいい。
ねぇ?あちょっとごめんなさい。
あらなんのにおいもしません。
においます?ねぇにおわない。
それはにおいませんがにおいがするのもあるんですよ。
実は青花には2種類ありましてね。
相良さんすみませんけども時間の都合でなるべくその簡潔に。
はぁ。
この白生地に絵模様を描き染めて結局仕上がりはこういうふうに。
なんとも美しいもんじゃございませんか。
相良さんどうもありがとうございました。
皆さんじゃあまいりましょうか。
はい次どうぞ。
次は江戸切子です。
江戸切子。
皆さん足元にあいてて…。
サクラも楽じゃないわね。
もう虎ノ湯のタダ券だけじゃ足りないわよ。
文句言わないの。
あのすみませんちょっと。
この青花は2種類あるんですね。
ええ。
化学合成のものと露草から採れる天然のものがあるけど女将さんそれがなにか?あれはたしか…。
あっ昆布茶のような匂いが…。
あぁそれでしたらこれが露草の本青花。
こっちが化学合成のものだけど昆布茶のような匂いがするのはこの本青花ですね。
本青花?あっ昆布茶。
ちょっとすみません。
あ昆布茶。
ねぇ?あぁ。
両方?露草の本青花とそうじゃない化学青花。
総太郎さんはどっちの青花も使っていたのね。
はい。
本当なら天然の本青花だけを使いたかったんでしょうけどなにしろ本青花は手に入りにくいうえに高くて。
だからほとんど化学青花を使ってました。
事件のあった日あのときはどっちの青花を使ってたの?天然の本青花。
京平君それ間違いない?僕が用意したんで間違いありません。
あのそれがなにか?深町さんのズボンに付いていたのは化学成分の青花のほうなのよ。
えどういうことですか?《総太郎さんが使っていた青花は天然の本青花。
深町祐介が犯行に及んだときに付いたものならその本青花のはずだけど…。
付くはずのないほうの化学青花がついていた》ここです。
すみません。
(貴子)どうぞ。
深町さんは仕入れを担当されていたんですね。
ええ。
友禅とか小紋とか一品ものを扱っておりました。
着物作家の先生との相対取り引きが多いですから。
どうしても彼でないと。
でもそのせいかちょっと…。
ちょっと?京友禅も加賀友禅も友禅関係のことはすべて彼の裁量で。
そう彼だけ特別待遇というか。
うちの会社の看板で独自にやってたようなところありましたから。
お仕事の関係でよく金沢に行かれてたんですね?今度もてっきり出張だと。
出張ってその予定があったんですか?ですから私どもはてっきり買い付けで行ったんだと。
でもまさか金沢であんなことに。
で買い付けをしていた金沢の友禅作家っていうのはどなただったんでしょうか?
(貴子)主にこの方の。
一ノ瀬絹代先生の手描加賀友禅の帯ですが。
一ノ瀬絹代さん。
一点ものにはこうした落款が押されているんですね。
はい。
実にすばらしいですよね。
古典的な加賀友禅の特徴の五彩の色を散りばめてねぇ。
(一同)こんばんは。
よぉ福豆元気か?山岡先生いつもお世話になってありがとうございます。
そのかわり次も頼むぞ。
頼むぞ。
はい。
次の都議選やばいらしいからね。
しかし山岡さんも票になんない伝統工芸協会の理事長をよく。
それはあんたたちが押しつけてきたからだろ。
江戸指物職人のせがれの都議がおる。
指物はさっぱりだけど口は達者だとね。
(笑い声)こんばんは。
よぉよぉ寿美花。
戻ってまいりましたのでどうぞよろしくお願いします。
いやいやお座敷でまた寿美花姐さんにお目にかかれるとはな。
津上君のことはなんとも…。
しかし返す返すも残念で。
相良さんそのことは。
さあどうぞ。
寿美花。
久しぶりのお座敷はどうだ?白粉の匂いでいっぺんに時間が戻ったみたいで。
ほぉそういうもんか。
よし。
寿美花姐さんのカムバックだ。
景気よくいこう。
あぁお前たちは。
福豆お前たちはいいよ。
今日は特別な日だ。
寿美花の舞をじっくりと見たいんだ。
(桃千代)私たちは余計でございますか?
(三味線)〜自殺じゃねえ?深町さんが金沢に行ったのは仕事がらみ。
目的は加賀友禅の買い付けだったのよ。
だとしたら…。
自殺したとは思えないけど。
しかしそれは口実だったってことも。
それよりさおかげさんで俺のガイドの評判がよくってな区の地域振興課にまた頼まれちゃったよ。
まいっちゃったね。
虎ちゃん!はい…。
はいって虎松さんいいですか。
僕の師匠が使っていたのは天然の本青花なんです。
深町さんのズボンについていたのは化学青花でした。
おかしい!おかしいじゃないですか!何なんだおめえは!小春ちゃんのおめえ金魚のフンみたくくっつきやがってよ。
いいから帰れよ!もう!お言葉ですけどいったい誰が殺されたと?僕の師匠ですよ!そんなことはな言われなくてもわかってら!虎ちゃん!!師匠をやったのがあの深町さんじゃなかったらいったい誰が…。
どんなことをしても犯人を見つけ出してやります。
主張先の金沢で何があったのか…。
ズボンの青花はいつ誰がつけたのか。
ハァ…。
自殺に他殺に青花に金沢に。
なんでぇ何が何だかもうさっぱりわかんねえよ。
俺には。
(三味線)〜やっぱ寿美花にはお座敷がいちばんだけどしかし…どこまでついてないのかねあの子は。
16年前には実の兄貴が人を殺めちまって今度は亭主の総太郎さんがあんなことに…。
小春ちゃん?やっと取り戻したあの笑顔…。
そういやぁ亭主の事件以来初めて見せるけど。
つらいこと悲しいこと山ほどあるでしょうけど。
ほんの短い時間でもお座敷に出てたら忘れられるしね。
せっかく戻った寿美花にこれ以上つらい思いさせられない。
私金沢に行ってみる。
小春ちゃん…。
虎ちゃん。
この世界じゃ昔から女将と芸者は実の親子同然なのよ。
けどだからって…。
私の娘の旦那の命を奪ったのは誰なのか…。
あの子を悲しみのどん底に突き落としたのは誰なのか…。
じっとしているわけにはいかないわよ。
〜昔はこの犀川や浅野川で友禅流しが行われていたんですよね。
総太郎さんもこの金沢で修業してたと聞いたけど。
京平君修業時代の話聞いてないの?あんまり話されなかったけど…。
でも加賀友禅の里のこの金沢にはいつかつれていってくれるって。
まさかこんな形で来るとは。
〜あちょっと。
京平君。
加賀友禅の色挿しはこうして火で炙りながら?ええ。
昔は炭火を使っていたんです。
へぇ〜炭火で?ええ。
であのお話というのは?深町祐介さんのことなんですが。
一ノ瀬さんの作品は深町さんが買い付けをされていたそうですね。
ええ。
この金沢で深町さんの死体が発見されたのをご存じですよね。
その前にこちら訪ねてきませんでしたか?いえ。
お見えになってませんけど。
今度のことで何かその…思い当たることありませんか?そう言われましても。
〜きれい…。
いいわね。
いいですね。
(千絵)いらっしゃいませ。
すてきな作品ですね。
(千絵)あれは絹代先生のお父さまの遺作ですけど。
お父さまの遺作。
品があって見てるだけでうっとり。
ほんとすばらしいですね。
おっしゃるとおりで。
どれもうっとりするような繊細さと華やかさが。
16年前のご不幸さえなければ今頃はきっと人間国宝にもねえ。
千絵さん。
〜深町さんは来てないってとんだ無駄足でしたよね。
先ほどはどうも。
あの…。
ごめんなさい。
ちょっとお話を。
何でしょうか?一ノ瀬さんのお父さまの16年前のご不幸というのはご病気か何か?それが事件にあわれたと。
事件?それはどういう…。
殺されたと聞いてますけど。
殺されたってなんでですか?私まだ子供でしたから詳しいことは。
もうよろしいですか?どうもありがとう。
16年前の殺人事件…。
寿美花のお兄さんの事件も16年前よ。
同じ16年前…。
その事件と同じ16年前ってもしかして…。
〜「平成4年11月22日。
被害者が加賀友禅作家の南条春信。
加害者は三石拓郎」。
寿美花のお兄さんよ。
えっ!?まさか…!?そう…。
たしかあれは…暮れの12月だった。
雪になりそうな冷たい雨のなか寿美花が訪ねてきてこの記事私の前に置いて…。
お兄さんのことを打ち明けたんですね?兄が手描友禅の修業中に師匠にあたる人を殺してしまったんだと…。
その師匠が一ノ瀬絹代さんの父親。
でもなんでこんなときに奥さんのお兄さんのことが…どこでどうつながってるのか全然わからないです。
〜なによみんなして寿美花寿美花って…。
ほんとよね。
お座敷の引きがじゃんじゃか殺到だってさ。
すっかり出戻り芸者にお株奪われちゃったわね!ねぇ!なに?出戻りで悪うござんしたわね。
お〜やかんに障ったかしら?全然。
何なりとおっしゃっていただいて結構よ。
調子にのってるんじゃないわよ!おや〜?相変わらず仲がいいわね〜!もう七重さんは引っ込んでて!そうはいかないわよ。
私女将代理ですから。
あっ寿美花。
商工会のお歴々がちょっと顔出しなさいって。
桐の間7時よ。
はい。
七重さんお女将さんは?金沢行ったのよ。
金沢?あんたがせっかく戻ってきたんだからよけいな心配かけないように黙ってなさいって。
女将心よね〜。
あっやだ!言っちゃった!ぺらぺらぺらぺら!ねぇ!向島の放送局なんだから。
何かおっしゃって?なにも!あんたたち!寿美花に負けないように出戻りの…。
頑張って!えぇ。
悪いけど今夜帰れそうにないの。
泊まっていくから。
ほんと…七重さんがいてくれるんで大助かりよ。
えぇ…よろしくね。
女将さん!一緒…3人一緒でした!ちょっと落ち着いて。
友禅画塾で修業してた尾張町で染物屋をやってるおやじさんに確かめたんですけどあの一緒…一緒でしたよ!だから何が一緒なの?これ…これ借りてきました。
この真ん中が画塾の塾長南条春信さん。
これが弟子の三石拓郎。
この2人も同じ友禅画塾。
総太郎さんも…深町祐介さんも…。
南条春信というのは先代の友禅師南条春海から受け継いだ雅号だそうで…。
どうなってるんですかね?今度の事件と関係あるのかないのか…。
どういうことなんだろう?3人ともが同じ画塾生だった…。
3人ともが死んでしまっている…。
ほぉ〜!わざわざ東京からね!深町さんの事件は一応変死扱いということで捜査は続けてますがね。
変死扱い?えぇ。
まぁどうぞ。
でわざわざ東京から何を?16年前の事件のことなんですが…。
被害者は友禅作家の南条春信さん。
あぁ…それで?その被害者のお弟子さんが亡くなった深町さん!あのこの事件の担当でいらっしゃいますね?いいや。
あれはたしか徳さん…徳丸さんだが。
その徳丸さんはどちらに?定年で辞めたけど。
またなんでそんなことを?こっちです。
警部なにしに来たんですかね?
(徳丸)お気をつけて。
ありがとうございます。
あの〜徳丸さんですか?そうや。
こちらにいらっしゃるって聞いたので…。
あんたらは?あの…東京からまいりました神無月と申します。
すみませんがちょっとお伺いしたいことが…。
あのもうすぐ交替になりますんでしばらくあのお待ちいただけますか?あれから16年か…。
歳もとるはな…。
あの…三石拓郎が犯行に及んだのはどういう事情からだったんでしょうか?南条春信の画塾は修業が厳しいことで知られておったがひどいがに叱られた三石は衝動的に春信を突き飛ばしてしまったんや。
才能がないがや!辞めろ!先生!辞めてしまえ!!机の角に後頭部をぶつけて死因は脳出血と脳挫傷やった。
弟子の三石拓郎がやってしまったことに間違いなかったんですか?何が言いたいがか?いやすみません…。
証拠も揃っとったし動機もはっきりしとった。
何よりも…決定的な証言があったがや。
証言…といいますと?弟子たちがその現場を見ておったんだ。
見ていた…?三石はいち早く逃亡を図りおって指名手配したその矢先に…。
崖から身を投げた…。
ほぼ即死。
それに60m下の海面に叩きつけられた。
まぁ遺体損傷もひどかった…。
ありがとう。
あっ!自殺した三石には妹がおりましてな…。
お兄ちゃん!兄と妹…たった一人の家族が罪を犯してしまって…。
なかなかそれを現実として受け入れることができずに…何かの間違いじゃないかってね。
何かの間違いじゃないかと…?うん…まっ…身内ならみんなそう言うんですわ。
被害者の南条さんのご家族は?娘さんが一人おりましたな。
まぁでも最愛の父親が殺されたんだ…。
それも手塩にかけた弟子の手で…。
娘さんの悲しみはとても言葉になんかねえ。
あれは春信さんの仮通夜のことだったな…。
お帰りください!せめてお焼香だけでも…。
父は誰に…いったい誰に殺されたっていうんです!?許しません!私絶対許しませんから!お帰りください!娘の絹代さんが寿美花を追い返した…。
あぁ…。
決して家の敷居はまたがせんかった。
片や被害者。
片や加害者の遺族。
その感情たるや天と地のひらきがある。
私も長い間刑事をやってきたがこの溝だけは埋めようがないもんだ。
しかし「光陰矢のごとし」とはよく言ったもんで春信さんの十七回忌の法要が今月の22日に執り行われると聞きましたが。
どうもありがとうございました。
お昼休みにすみません。
いやいやどうも。
あの…証言したというのは?え?現場を見ていたお弟子さんというのはどなただったんでしょうか?この2人。
津上総太郎さん!深町祐介さん…。
この2人に間違いありませんね?総太郎さんと深町祐介。
2人が16年前の事件で証言していた。
(京平)三石拓郎が師匠の南条春信に手をかけたところを見てたんならこれは決定的ですよね!でもその重要証言をした2人が相次いで死んでいった。
どういうことですか?女将さん?
(長唄)こんにちは!
(長唄)
(五十鈴)この事件ねぇ。
それはもうたった一人取り残されたあの子が不憫で。
寿美花のお母さんも芸者をされていて寿美花が中学生のときに亡くなったそうで。
ええ菊松というて私と姉妹弟子でねひがし茶屋一の名妓といわれとったがやけども心臓を患うて父親も早くにのうなっていたから兄妹二人っきりになってしもうてねぇ。
それはそれは仲のいい兄妹やったがやぞ。
それがあの事件で一変してしもうて…。
ほやあの子が言ったことでちょっと気になったことがあったんやけども。
先月の末私の亭主の法事にしばらくぶりにこっちに帰ってきたわいねぇ。
ずっと気にしとったんがやけどあんたが金沢のことは忘れて出直したいっていうから私も遠慮して…。
でも元気でよかったわ。
寿美花…。
今年は拓郎さんの十七回忌やけどごく身内だけで済ませたほうがええがでない?そのほうがいいわね?お兄ちゃんじゃないお兄ちゃんじゃない…?寿美花がそう言ったんですね?ほうや。
あのどういうことですか?それっきり何も言わなんだけどもあの事件があったときも「これはなんかの間違いやないか?お兄ちゃんがそんなことするはずがない」って言うとったわいねぇ。
そう思いたいあの子の気持もねぇ…。
今さら何を言っても…。
《16年前南条春信の殺害容疑で指名手配された寿美花の兄三石拓郎。
その兄は崖から身を投げた。
16年後寿美花の夫の総太郎さんが殺されその嫌疑をかけられた深町祐介が服毒死》自殺に見せかけて殺されていたら…。
似てるようだけど。
似てるって?いい?何者かが総太郎さん殺しの嫌疑を深町にかけて…そのうえで自殺を装って殺していたら…。
そう…同じように16年前の事件も…。
奥さんの兄さんも自殺を装って殺されたってことですか?いやいくらなんでもそんなことは…。
16年前の事件の現場にいて目撃したって証言した2人が今度の事件の被害者なのよ。
寿美花が「お兄ちゃんじゃない」ってもらしたように。
友禅作家の南条さんを殺したのは寿美花のお兄さんではなくあの証言した2人だったとしたら…。
それが今度の事件の動機。
あの…何をおっしゃって…。
だから今度の事件の原因はすべてあの一ノ瀬さんの父親の事件につながってるんじゃないの?だとしたら父親を殺されたあの一ノ瀬さんが?ちょっと待ってください!犯行の動機は彼女だけじゃなく奥さんにもあるんじゃないですか?でも寿美花は私と一緒だったわよ。
そうですよね?師匠が殺されたとき奥さんは女将さんと一緒にいました。
すみませんよけいなこと心配しちゃって。
あっ。
いろいろと熱心に調べ歩いているようですがいったい何を?退職した徳丸刑事のところにも行かれたそうですが16年前の殺人事件と何か関係があると?それが実は…。
あの警部さん。
深町さんは変死扱いだそうですけど他殺の疑いがあるんですか?深町祐介の死体のズボンに付着していた青花は何者かが故意に付けたもので総太郎さん殺害現場のものではなかったことを確認したんです。
津上総太郎深町祐介2つの事件は連続殺人として金沢中央署との合同捜査になるでしょう。
これ以上クビを突っ込まないであとは我々に。
よろしいですね?何があっても知りませんよ。
知りませんよ。
連続殺人…女将さん!今年はお父さまの…南条先生の十七回忌だそうですね?早いものでもう…。
お父さまは友禅画塾をひらいて後進を育ててらしたそうですけど。
お父さまの作風に魅せられて全国からお弟子さんが集まってきていたようですよ。
千絵さん。
あの…16年前の事件のことなんですけどお父さんは友禅画塾の弟子の1人にその弟子の三石拓郎さんはなんだってまた…。
一ノ瀬さん当時のことを話していただけませんか?事件の現場を2人のお弟子さんが見ていたと証言してらっしゃいますよね?津上総太郎さんと深町祐介さんこのお二人ともが今度の事件の被害者なんです。
これがただの偶然なんでしょうか?お父さまの事件の奥には何かが…。
あの頃のことはもう思い出したくもありません。
どうかお帰りください。
ごめんなさい。
もうひとつだけ。
一ノ瀬さん深町さんの事件のあった日8日の夜はどちらに?その日は友禅会館におりました。
先生はカルチャースクールで加賀友禅の教室をもっていますから。
千絵さんお帰りいただいて。
16年前の事件のことは何も話してくれない。
おかしいですよね。
ひょっとして何か秘密があるからじゃ…。
京平君下絵を描いていた青花だけど…。
一ノ瀬絹代さんが使っていたのは化学青花でした。
その青花が深町祐介のズボンに付けられていたら…。
こういうことですか?深町さんはこの金沢に一ノ瀬絹代さんの作品を買い付けに来た。
その深町さんに毒を飲ませて自殺したように見せかけた…。
京平君事件当日の8日の彼女の行動を。
はい友禅会館で調べてきます!〜
(京平)女将さん!友禅会館で確かめました。
8日事件当夜の7時から9時カルチャースクールで加賀友禅の教室を持っていました。
深町さんの死亡推定時刻は7時から9時ですから…。
一ノ瀬絹代さんのアリバイは成立するのね。
てっきり彼女がこの金沢で深町さんを殺してズボンに青花を付けて工作したのかと。
どうなってるんですかね?《今度の事件の発端が16年前にあったとしたら父親を殺された一ノ瀬絹代には十分すぎるほどの動機がある。
でも彼女には確かなアリバイが》お兄ちゃんじゃない《「お兄ちゃんじゃない」。
寿美花がひがし茶屋の女将にもらしていたあのひと言。
あの言葉に込められたものは?》お女将さん!お帰りなさい。
ただいま。
はいお土産。
寿美花は?まだお座敷ですけど。
戻った途端に売れちゃって。
あとでちょっとお帳場まで来るように言ってちょうだい。
連続殺人?深町さんは自殺じゃなく殺されたということで警察は動いてるわ。
総太郎さんのことも深町さんがやったことではなかったと思われるのね。
寿美花今度の総太郎さんのこと深町さんのことと16年前のお兄さんの事件との関連どこかでつながってると思うの。
つながってるって…。
私にはそう思えるの。
ねぇ寿美花あんたつらいでしょうけどお兄さんのこと話して?
(寿美花)兄は子供の頃から絵を描くことが大好きで加賀の手描友禅に出会ってその魅力に取りつかれていつか自分の手描友禅を世に出したいと…。
私に似合う最高のものを作ってやるって。
でもあの日で人生が一変してしまって。
(寿美花)私のために描いていた友禅それを兄の形見に持って金沢を出ようと…。
「お兄ちゃんじゃない」ってあんたひがし茶屋の女将さんにそう言ったんだって?どういうことなの?なんか根拠があってのことなの?ねぇどうなの?もういいんです。
忘れたい。
思い出したくもないから。
私お客さんに呼ばれてるんで。
はい小春ですけど。
あっ京平君?えっ展示会?着物組合の主催で年に1回やってます。
あっそう。
たしかあの深町さんも作家のプロデュースをやってました。
一ノ瀬絹代…一ノ瀬さんの作品も展示されてたのね。
はい。
展示会は3日から10日。
総太郎さんの事件があったのは5日。
事件はこの展示会中だったのね。
一ノ瀬絹代がこの展示会で上京してそのときを利用して犯行に及んだってことも。
なんだかますます怪しく思えてくるけどでも金沢での深町さん殺しのアリバイはあるしなんだか迷路にはまり込んじゃったようですね。
〜今年は父春信の17回忌にあたります。
到底父には追いつけませんが…。
展示会前日のパーティーの一ノ瀬さんのご挨拶ですね。
えぇ。
一ノ瀬先生の作品が3点展示されましたから。
深町さんもプロデュースされていたんですね?えぇ。
一ノ瀬先生の作品は彼がねえ。
この展示会中一ノ瀬さんはずっと東京にいらしたんですか?前日の2日のこのパーティーに出席されてそういろいろと所用があるので2〜3日は滞在するとおっしゃってましたけど。
宿泊先は?
(貴子)東京スカイホテルですけど。
もうよろしいですね?すみません!ちょっと戻していただけます?はい。
止めて!
(貴子)はい。
寿美花…。
どうしました?奥さん…女将さん!《一ノ瀬絹代さんと寿美花…。
被害者と加害者。
それぞれの遺族の2人がここで会っていた》つまりその…こういうことか?16年前に加賀友禅師の父親を殺された娘が一ノ瀬絹代でその父親を殺した犯人の三石拓郎の妹があの寿美花。
よりによってその2人が会ってた!?一ノ瀬さんはお通夜に訪れた寿美花に敷居をまたがせなかったっていうじゃないの。
被害者の親族と加害者の親族。
どこまで行っても溝は埋められるはずないのに二人の間に何があったのかしら…。
(日出子)少々お待ちください。
大将!また不動産屋からっす。
それどころじゃねえよ!それどころじゃねえよって。
女将さん!6日です!一ノ瀬絹代が東京から帰ったのは6日です。
6日総太郎さんが殺された翌日に帰ったのね。
はいホテルで確認したから間違いありません!どういうことだよ!?加賀友禅の展示会で東京へ行ったときを利用してやっぱり総太郎さんはあの一ノ瀬絹代に…。
東京の総太郎さん。
金沢の深町祐介。
その2人とも一ノ瀬絹代が?そういうことか!?金沢の犯行には一ノ瀬さんは無理だわ。
どう考えても彼女は犯行には及べない。
犯行には及べないだったら誰が?小春ちゃん…。
考えたくもないけどもしあの2人が手を組んだら。
考えたくもないけどもしあの2人が手を組んだら。
2人って!?まさか一ノ瀬絹代と奥さんが…。
何ばかなこと言ってるんだよ!あの寿美花がおめえ!んなことあるわけねえじゃねえか。
なぁ小春ちゃん。
《片や被害者片や加害者。
その遺族の2人をつなぐもの…。
16年前の事件と今度の事件。
東京で殺された津上総太郎。
金沢で殺された深町祐介。
東京と金沢の2つの殺人。
犯行時のそれぞれのアリバイが用意されていたら…。
東京では一ノ瀬絹代が…。
金沢では…》警部小松空港の防犯システムです。
お願いします。
(丸山)深町祐介殺害当日の8日。
搭乗便は羽田発の1275便と思われます。
(吉野)止めてください!この女です!東京で殺害された津上総太郎。
金沢で亡くなった深町祐介。
この2つの事件は16年前の事件が絡んでいるのは間違いないんだよ。
被害者の南条春信。
加害者の三石拓郎。
この2人の遺族の間にいったい何があったかだよ。
なぁ2人の遺族。
よし!こうなったらもう一度洗いなおしましょう。
徹底的に。
(一同)はい。
寿美花。
寿美花。
まさかおめえ小春ちゃんのこと…。
虎ちゃん!寿美花法要すませたら待ってるから。
総太郎さんが殺された日つまり隅田川七福神めぐりがあった日のことだ。
おめえ小春ちゃんをアリバイ作りに利用していたのか?もしそれが本当なら俺はお前を許さねえからな!寿美花。
あの日何があったの?お女将さん私のことはもう花乃屋にも戻らないから。
お待ちなさい!私のことなんかもう放っといて!小春ちゃん。
寿美花。
私がこの世界に入ったとき先代の女将からこう教えられたわ。
いったん芸者を預かったらそのときから産みの母親に代わって置屋の女将は母親になるもの。
それがこの世界のしきたりだって。
私はそれを心に刻んでずっと今日まで守ってきた。
寿美花。
あんたがどんな人生を送ってきたのか。
どんな苦しみを抱えていたのか。
あんたのその胸に押し込んだものおかあさんに話して。
おかあさんにぶつけて。
あんたの母親としてたいしたことはしてあげられないけど一緒に苦しんであげたいのよ。
あんたと一緒に一緒に泣きたいのよ。
ねぇ寿美花。
寿美花さん…。
16年前のあの事件…。
拓郎兄さんが人を殺してしまった…。
殺してしまったのは尊敬していた先生…。
でもあの事件の裏には…。
三月前の日舞の会の日…気分が悪くて予定より早く帰ったら…。
深町:俺との関係は打ち切る?本気か…本気でそんなこと言ってるのか。
もう十分だろう。
いいのか。
お前にそんなことが言えるのか。
今のお前があるのはあの原画のおかげだろう。
南条春信の未発表の原画をそっくりいただいてそれで評価を得たんだからな。
とにかくお前とはもう…。
総太郎。
俺とお前とは一蓮托生なんだ。
俺から離れようなんて二度と思うなよ。
しかし…この15年は実に長かったな長かった15年…殺人の時効…。
殺人の時効!殺人…。
あの深町の恫喝にこめられたもの…。
16年前の秘密…。
私は不安に駆られて密かに彼の工房を調べた…。
春…
(寿美花)春の落款…。
南条春信先生の友禅原画がなんでここに…。
ますます不安が募って…。
これが何か…あなたならわかるわよね。
深町さん。
15年は実に長かったでしょう。
深町さん!あんたの考えてるとおりだよ。
この原画こそが友禅の命だからね。
あの事件のどさくさに総太郎が持ち出していたんだよ。
兄は…兄は…。
だからあんたのその頭で考えてるとおりだと…。
でももう時効なんだよ。
終わったことなんだよ!
(深町)あんたの考えてるとおりだよ。
この原画こそが友禅の命だからね。
あの事件のどさくさに総太郎が持ち出していたんだよ。
あんたのその頭で考えてるとおりだと…。
でももう時効なんだよ。
終わったことなんだよ!あの事件のどさくさに紛れてあなたが持ち出した師匠の原画…。
でももう時効!違う!違う?何が違うっていうの?俺じゃない!あれは深町が…俺じゃない。
あいつが。
祐介お前のためや。
はっきり言うけどお前には才能なんてないがや!いつまでもしがみついとらんと別な道を探したらいいがでないかい。
待ってください!クッソ!おい離せ!
(拓郎)おい何やってんだよ!先生…先生!先生!!先生!!
(寿美花)春信先生のあっけないほどの死…。
その春信先生の死体を前にして…。
兄は…。
頼む。
頼むから…自首してくれ。
お前からも何か言えよ!拓郎兄さんは深町たちのことを思えばこそ…。
それなのに…あの2人は警察の調べで口裏を合わせて…。
お前には才能がない…春信先生にそう言われて…拓郎が…あいつが…あいつが…。
あいつが…才能を否定された拓郎が…。
カッとなって先生を…あの2人の目撃証言…。
物証も状況証拠も揃っていた。
いえ…揃えたのよ!その証言と証拠を裏付けるように拓郎さんは姿をくらました。
冗談じゃない!何ひとつやましいことのない拓郎兄さんがなんで逃げたりするものか。
お兄さんは犯人に仕立て上げられそして自殺したように…。
夫の総太郎もそれに手を貸して深町に加担した見返りにあの友禅原画を手に入れていた…。
ずっと隠されていたその真実を絹代さんに伝えたんだな。
兄はここから…投げ捨てられたんです!え…。
先生を殺したのは兄じゃありません!なに言ってるの。
絹代さん兄じゃないんです!これ…。
これは…父の未発表の原画…。
(深町)この原画こそが友禅の命だからね。
あの事件のどさくさに総太郎が持ち出していたんだよ。
あんたのその頭で考えてるとおりだと…。
でももう時効なんだよ。
終わったことなんだよ!
(絹代)あまりのショックに言葉も失って…。
父春信を殺した男…。
私はこの16年間ずっとその男に友禅を提供してきた…。
私が魂を込めて作り上げたものが父を殺したその男の手に…。
そいつに手を貸した男が父の友禅原画を盗んでいた…。
どこまで父を…この私を踏みつけにすればいいっていうの!今度の計画は私から…。
もし絹代さんが断ってきたらそのときは私1人ででも…。
ずいぶん悩みました。
でも覚悟を決めてあの展示会の日に…。
寿美花さん…。
私…やるわ。
絹代さん。
津上総太郎は私が…。
深町祐介は私が…憎い…でも一度は愛した人。
寿美花さんには到底できない。
だから私が…津上総太郎はこの私が。
(絹代)あの男が工房から帰ったあと…。
〜父と拓郎さんの恨みをこの胸に。
小春さんあの日の計画は私が立てたんです。
展示会で上京した日に。
あの日しかなくて…。
深町祐介は…寿美花…。
あの男は私に疑惑を抱いた。
でも私にはアリバイがあった。
それで絹代さんに疑惑を抱いて。
大事な話がある…予期したように深町から連絡があった。
私は日時を指定しました。
8日の8時。
でもその時刻あなたは友禅会館にいた。
完璧なアリバイがある。
深町に会ったのは…。
私が!あの日金沢で絹代さんが用意した毒物と青花を受け取りました。
そうかそういうことですか。
あなたと一ノ瀬絹代が結託して。
警察はこの私が犯人だと睨んでるようだけど心配しないで。
黙っててやりますよ。
その代わりお前たち二人からはそれ相応のものはきっちりいただく。
嫌なら刑務所だ。
いいな?わかってるな?〜
(寿美花)ズボンに青花を付けて…。
てっきり私が使っているものと同じ化学青花だと…。
お女将さん私は本気で津上総太郎を…。
(寿美花)友禅に生涯をかけようとしていた拓郎兄さん。
そのおもかげが重なって…。
本気で愛した男に裏切られ続けていたんです。
お女将さんの前で見せたあのときの涙は…。
あの涙は…。
兄の無念を思うと…絶対に許さない。
あのときの私はその恨みと憎しみの一念で。
でもお女将さんまで裏切ることになってしまって。
お女将さんどうか許してください。
寿美花待ってるからね。
もう私のことなんか…。
16年前あんたはどこの芸者になったんだい?そこの女将はいったい誰なんだい?あんたがいくら放っておいてくれって言ったってそうはいかないよ。
だからきちっと罪を償って花乃屋に帰ってくるのよ。
それまで待ってるから。
いいわね。
お女将さん…。

(田村)いいですね。
奥さん!どうしてあんたがここまで…。
どうも理解できませんな。
小春ちゃんの今の言葉福豆たち芸者衆に聞かせてやりてえよ。
〜お女将さん大将から聞きました。
お女将さんが寿美花姐さんのことそこまで思ってたなんて。
寿美花の気持を思うとお女将さんにどれほど救われたか。
でもこう言ったらなんだけどやっぱりちょっと妬けるわけね。
そうね。
お女将さんの愛情を寿美花姐さんに独り占めされたみたいで。
なにバカなこと言ってるの。
あんたたちはみんな花乃屋の家族。
私のかわいい娘なのよ。
お女将さん…。
甘ったれた子や喧嘩っ早い子やまぁがめついのもいれば。
でもね子どもは出来が悪いほどかわいいって言うじゃない。
ほんとうちの子はかわいい子ばっかり。
お女将さんかわいいって私でしょ?〜2015/08/18(火) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「芸者小春姐さん奮闘記6 加賀VS江戸友禅殺人事件」[字][解]

鳩の街に響く手描き友禅作家の絶叫!?遺体に付いた青花の謎!

詳細情報
番組内容
ある日、老舗料亭「花乃屋」の元芸者・寿美花の夫・総太郎が刺殺された。総太郎の弟子・京平の証言から、事件当夜、着物問屋の深町が総太郎を訪ねていた事が判明する。2人の間には、仕事上のトラブルが囁かれていたことから、深町に殺人の容疑がかかるが…。ところが数日後、深町の遺体が金沢で発見される。遺体の状況から、服毒自殺を図ったとみられる。事件は、被疑者死亡で一件落着かと思われたが…。
出演者
神無月小春…十朱幸代
 寿美花…中山忍
 一ノ瀬絹代…秋本奈緒美
 岡本京平…鳥羽潤
 七重…磯野貴理子
 米子…松金よね子
 田村…島田順司
 園部…中本賢
 徳丸…ケーシー高峰
 笈川虎松…石倉三郎   ほか
原作脚本
【脚本】峯尾基三
監督・演出
【監督】吉川一義

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
解説放送あり
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