新船長の航海事件日誌 2015.08.18


(歓声)
(拍手と歓声)ご苦労さん。
エンジンスラスタ準備できました。
了解。
スタンバイエンジン!スタンバイエンジン。
スタンバイエンジンサー。
了解。
オールラインレッコー。
おもてラインクリアサー。
「了解」ともラインクリアサー。
「了解」スローアスタンポート。
「船長の川上です。
本船『きそ』は全長199.9メートル幅27メートル総トン数約1万6千トンの名古屋仙台苫小牧を結ぶ日本最大級の大型フェリーです」「船内ではプロスタッフによる歌と演奏」「バイキング形式のレストラン」「サウナ付きの海が見える展望大浴場など船旅を十分満喫できるよう豪華客船並みの設備とおもてなしをご用意いたしております」「皆様ごゆっくり優雅に船旅をお楽しみください」
(定松五郎)早いもんがちだ!おみゃあも嫁さんもらうならこういううみゃあ漬物作れる人もらわなあかんぞ。
昔から言うだろ!1ナス2カブ3きゅうりってな!この歯応えたまらんわ!
(大西)宇宙一ですよね!
(花山隆)塩加減が最高なんですよね!あっ!それ私の!たわけ名札ついとりゃせんわ!ボースン一番食べてるのに!当ったり前だぁや。
わしゃこれさえありゃ他のおかずはいりゃせんわ。
それ私だって…!ああもう〜!何もめてるんだ?船長お漬物増やしていただけますか?漬物?お母様のぬか漬けです。
ははっこれにはまいってんだよ。
毎日かき回せったって船長室でやる訳にはいかんからな。
えっこれ船長やってるんですか?そうだよ!かき回すのは私が。
ああありがとう。
欲を言えばもっと大きな容器で。
これみんな迷惑してんじゃないのか?とんでもない!奪い合いですよ。
若い奴らも大好きだでかんわ。
そりゃおふくろが聞いたら大喜びだよ。
よし次から増やそう。
やったー!また食いすぎて太ってまうわ!船長お客様がお待ちです。
どなた?例のダンスの。
またあの2人組ですか。
船長とのダンスが目的で乗ってりゃあすんだわ。
はは…!しょうがない。
行くんですか?大事なお客様だからな。
ダンスのお付き合いまでしなくても。
今フェリーは移動の手段じゃなくてクルージングを楽しんでいただく時代だよ。
第一外国じゃゲストのおもてなしは船長の必須条件だ。
行きましょう!あっ!あっごめんなさい!失礼いたしました。
私ったらどうしましょ!要様どうしましょ…。
大丈夫です。
ちょっと小さめにまいりましょう。
はい。
イタッ…!あっごめんなさい!どうしましょ私…。
大丈夫です…本当に大丈夫です。
スローにまいりましょう。
はい…。

(拍手)
(古谷圭二)すみません。
今何時ですか?
(水島美知)3時40分です。
どうもありがとうございます。
(美知)何するの…!?
(古谷)離せ…!
(古谷)うわー!!船長素敵ー!大丈夫ですか?
(美知)失礼しました。
大丈夫でした?すいません。
お茶でもご一緒に…。
おっ!何なのあの人…。
失礼なまったく…!さあまいりましょう。

(石原良三)ご苦労さまでした。
どうぞ。
次の乗船は16日からですね。
はい。
湯の川温泉の渚亭の露天風呂にでも浸かってのんびりしようと思ってます。
お疲れです。
はいお疲れさん。
気をつけてな。
じゃあ大沼の療養所におられる奥さんもご一緒に?ええまあできれば。
船長!おおどうした?函館まで乗せてください。
遊びにでも行くのか?部屋探しです。
部屋探し?函館に住みたいんです。
10年早い。
失礼します。
サードオフィサーのうちはいつでもすぐに船に駆けつけられるように港の近くにいろ。
陸ではサードにも住居の自由があります!あっそ。
船長!船長はどうして函館に住んでるんですか?うん?尊敬する先輩の家があるからだよ。
うわ〜!私と同じです。
その先輩って私いろいろ聞いてます。
いいな〜尊敬する先輩がいるって。
うわ〜きれいな海!函館まで251キロか。
すっごい快適!船長の運転も素敵だし!うるさいなお前。
少し黙ってろ。
(携帯電話)おい。
もしもし。
あっ蛍です。
あっはい。
苫小牧の所長から。
うん?はい…はい。
えっ!?どうした?船で船長のロッカーが荒らされたそうです。
俺のロッカーが?制服がなくなっているけど何か大事なものは入っていないかと…。
いやポケットの中空だな。
入っていないそうです。
はいそう伝えます。
(鐘の音)お前ホントに越して来るのか?はい!できれば港の近くに。
高いぞこのへんは。
苫小牧の寮にいれば安上がりなのに。
夢への投資は惜しみません。
夢か…俺にもそんな時があったな。
船長になって夢は叶ったんじゃありませんか?船乗りだけが夢じゃないよ。
他にも?欲張りだったんですねぇ。
それが夢の特権だろ。
夢の特権か。
同感です。
はははっ。
(北山敏哉)おおいいジャケット着てるじゃん。
(曽根安生)おっよく見せてくれよな?やめて…!何やってんだお前こら!やめろ!わかった。
そんなに見たきゃ見せてやるよ。
ほら。
おい!?泥棒!もういいよ。
どうせ安物だ。
ケガするよりいいだろ。
どうして船長はそんなにおとなしいんですか?船長は昔学生ボクシングのチャンピオンだったんでしょう。
お前何でそんな事知ってるんだ?商船大学の先輩に聞きました。
昔の話だ。
もう忘れたよ。
余裕だよ余裕。
なあ?ああ。
返して来て。
えっ?じゃあこれ俺がもらうよ。
じゃあ俺にくれよ。
いや俺もだよ!警察に届けられるとまずい。
へえお母様はこの市場で?もう50年近く店出してるよ。

(北山)にいさん!ちょっと何…!?おい…!何なんだあいつら。
泥棒も欲しくないんですかねぇ。
(岸川アサ)おかえり。
何だ帰るの?珍しいんでねぇか。
べっぴんさん連れて。
あっこれは船の三等航海士だよ。
和田蛍です。
よろしくお願いします。
帰ったらめしだ。
一緒に食うかい?はい。
お漬物ありますよね?おいっ!
(鈴の音)部屋なんか探さんでもうちさ来ればいい。
ここにですか!?そこだ。
汚ねぇけど空いた部屋もあっから。
ああホントですか!ちょっと待ってよ。
それは困るよ。
何が?何がじゃないよ。
蛍はねこれでも若い娘だよ。
これでもは余計です。
いやとにかく部下の女性とひとつ屋根の下で暮らすっていうのは船長としてはちょっとさ…。
部屋は別だ。
困る事ねえべ。
そういう訳にはいかないの。
そうですね。
大沼の療養所にいらっしゃる奥様も何ておっしゃるか。
清見さんはそったら事気にする人でねぇ。
ああラッキー。
今回の航海中の出来事はまあこんなとこかな。
(岸川清見)ありがとう。
私もあなたと一緒にお船に乗ってるようだわ。
シンドバッドの冒険じゃないから毎回そんなに代わり映えはしないけどね。
ううん私には新鮮よ毎回。
今度もちょっとん?っていうところが。
うん?どこ?船長室のロッカーから制服が盗まれたっていうお話。
あああれね。
でも個人的な被害はなかったんだよ。
でもその後また函館でジャケットが盗られたんでしょう。
そうなんだよ。
けどすぐに戻ってきたんだけどね。
どうして戻したのかしら?俺のジャケットがボロだったからじゃない?あっのん気ねぇ。
はははっ!お邪魔します!何だお前来たのか。
奥様にごあいさつに。
ああありがとう。
さっき話してた蛍。
下宿の事お義母さんから電話で聞きました。
よろしくね。
こちらこそよろしくお願いします。
あっいけね!ああもう行かなきゃ。
高杉船長に呼ばれてんだよ。
よろしく伝えてね。
わかった。
じゃあな。
アームチェア・ディテクティブって知ってる?ええ!車イスの探偵ですか?私それなの。
はあ?彼の話を聞いて推理する。
ああ…でも奥様は車イスでは?もうすぐ。
時間の問題よ。
えっ…?筋萎縮症。
体がだんだん動かなくなる病気なの。
でも私は幸せ。
要一さんのお陰で頭と心はイキイキしてられるから。
ふふっ。
(高杉英雄)よう!ああどうも。
本日はお招きいただきましてありがとうございます。
今日はお前が客だ。
あっちへ座れ。
いえとんでもないっすよ。
大先輩を差し置いて。
お前も船長になったんだ。
船では警察権を持つ一国一城の主だ。
床柱を背負ってサマになってるかどうか俺が見届けてやる。
いややめてください。
冷や汗が出ますよ。
はははっ!さあさ…。
じゃあ失礼します。
船長になったら一流の料亭で祝ってやる。
その約束で招いたんだ。
お祝いしなきゃいけないのはこっちのほうです。
ホントにおめでとうございます。
ありがとう。
外航クルージングの船長は船乗りの夢だよ。
この歳になってもうれしいよ。
どうぞ。
ああすいません。
今日は表が騒がしくて申し訳ございません。
ああマスコミがつめかけてるみたいだね。
上田泰三先生がお見えになりますので。
上田が?地元の大物政治家ですよね。
政権党の幹事長まで務めた男だよ。
いや俺の少年時代からの親友なんだ。
そうなんですか?あっすいません。
はい。
あの秘書さんに高杉がここにいるって伝えてくれませんか?かしこまりました。
・上田先生コメントお願いします。
(大里隆夫)すいません。
今日はあくまでプライベートな席なので取材はお断りします。
申し訳ございません!お下がりください!すいません申し訳ございません!先生どうも。
ありがとうございますどうも。
お前については1つだけ気がかりがある。
わかってます。
例の問題ですよね。
そうだ。
例の問題だ。
そろそろ決まりをつけたらどうだ。
私は結婚を申し込んでるんですけど向こうがなかなか承知してくれないんですよ。
清見さんはお前にいい人を見つけて結婚をとすすめてるんだろう。
ええ…。
船長もそうしろっておっしゃるんですか?家庭は必要だと言ってるんだ。
本物の家庭がな。
私には今のが本物です。
そうなったいきさつを俺は知ってる。
20年以上も前の事だ。
いつまでもとらわれていては相手の人達も不本意なんじゃないか。
相手の気持ちの問題じゃないんです。
私の心の問題です。
私がそうしたいんです。
それが船長がよくおっしゃってた人生航路です。
(ため息)そう言うと思ったよ。
でも今私にそこまでおっしゃってくださるのは高杉船長だけです。
ありがとうございます。

(仲居)こちらでございます。
(上田泰三)高杉入るぞ。
おお〜!しばらく。
おお〜!いや会いたかったんだよ。
近々日本を離れるんでな。
えっ?どこ行くんだ?カリブ海のクルーズ船15万6千トン。
船長冥利だよ。
それはおめでとう!よーし祝杯だ。
あっこちらへどうぞ。
ああいやいや…。
それじゃ失礼します。
あっ後輩の川上。
名古屋苫小牧間大型フェリーの船長だ。
あああの航路は乗った事がある。
お噂は高杉船長から伺っております。
おめでとう!ありがとう。
失礼します。
小学校から高校までずーっと一緒でね暴れん坊の双璧だった。
はははっ。
今は大きく変わってしまったがな。
何が変わった?お前は正道を世界に向かって堂々と歩いてる。
お前違うのか?政治の世界は清濁併せ飲まなければやっていけん。
そうしているうちに濁のほうがだんだん広がってくる。
政界の寝技師政局の仕掛け人と言われてる事か?お前だから言うがなそれが俺の本質かもしれん。
いや違う。
いくら政界や世俗の垢にまみれてもお前はお前。
変わらないものがあるはずだ。
この上田泰三は本当はあきれるほどウブで純情なんだ。
少年時代のこいつほど純情な男を俺は見た事がない。
おいおいそんな昔の話なんか…。
エピソードならいくつもある。
ぜひ伺いたいですね大物政治家の少年時代を。
(携帯電話)すいません。
ちょっと失礼します。
はい川上です。
ああ所長どうしたんですか?ええっ!?わかりました。
すぐ行きます。
オフィサーとパーサーにも連絡しといてください。
何かあったのか?金華山沖で水死体が発見されたんですが服のポケットにフェリーのチケットが。
お前の船か?はい。
それは大変だ。
すぐに行け!はい。
失礼します。
ああ。
いやそうじゃにゃあて!古い新しいの古い。
うんそう。
うんうん。
はい頼みます。
はいご苦労さん。
水死者の確認は?はい古谷圭二さん28歳。
住所は名古屋市熱田区です。
職業は?
(湯川)財団法人日本農水振興会職員とありますが。
写真がきました!水死者の古谷圭二さんです。
誰か見覚えありませんか?見たような気がするな。
どこでですか?
(定松)7デッキだ。
あそこはアベックがよう写真撮るところだで気にもならせんかった。
船尾に女性がいたのは確かなんですね?そら確かだわ。
遠くて顔はようわからんかったけど携帯電話かけとるみたいだった。
お前も船長になったんだ。
船では警察権を持つ一国一城の主だ。
航行中の船内で発生したトラブルはすべて船長の責任だ。
高杉船長はいつも沈着冷静に行動しておられた。
俺も高杉船長の教えどおり事に当たろうと思う。
みんなも先輩のクルーに負けないよう頑張ってほしい。
(一同)はい。
次の乗船時に船内をくまなく点検するぞ。
もし水死者が他殺だったとしたら必ず何らかの痕跡を残してるはずだ。
頼むぞ。
(一同)はい!何かあった?そっちは何かあった?・
(井崎)船長。
おう。
船内に異常はないようです。
甲板員やアテンダント達の情報は?全員心当たりはないと言ってますが…。
そうか…。
船長さん。
はい。
ちょっとお話が…。
何か?あちらへどうぞ。
どうぞ。
私を覚えてらっしゃいませんか?ああいえ…すいません。
ダンスフロアでぶつかりました。
ああ。
大丈夫ですか?
(美知)失礼しました。
あの時ポケットに入れた物を返していただきたいんです。
ポケット?何ですか?それは。
とぼけないでください。
あなたとぶつかった後ロッカーから私の制服が盗まれたんですがもしかしてあなたが?違います。
函館でもジャケットがはぎ取られました。
私は関係ありません。
本当に?ポケットに入れた物が何かは言えません。
でも私の物です。
返してください。
そうおっしゃられても私は持っていません。
ポケットから何も出てきませんでしたし。
事情を聞かせてください。
あの時あなた誰かに追われてませんでしたか?失礼します。
(砂田省平)どうだった?持ってないと言ってます。
何?私とぶつかった事は覚えてるのに…。
(砂田)とぼけてるのか?わかりません。
ああ名古屋の手が回ったんじゃないのか?そうも見えませんでした。
川上船長は先輩の高杉船長と共に函館の料亭で上田泰三と会っている。
その時上田に渡ったのかも。
それならいいのですが。
よくはない。
上田が警戒するようになったらどうする?そうはなりません。
自信があるのか?はい。
あの女性は601号室に入りました。
ロイヤルスイートの乗客か?いいえ。
女性の部屋は特等の615。
乗船名簿のお名前は水島美知様。
ご住所は函館市新川町です。
じゃあ601の乗客は?砂田省平様。
函館の大手貿易会社日露商事の社長です。
ああその方だったら何度も乗っていただいているご常連だよ。
確か日誌にも記録があるぞ。
何だこれ?携帯電話のメモリーカードでしょう。
船長のですか?いや俺のにはついてないな。
俺はいつもこのメモは下船する時にポケットから出して引き出しに戻してるんだよ。
じゃあこの前下船の時も?ああ確かにそうした。
あの女性が俺のポケットの中に入れたって言ってた物はこのメモリーカードだったんだ。
知らせて返しますか?出てきた以上はそうするのが筋なんだろうが…。
なあこないだボースンは転落した乗客は7デッキで携帯電話をかけてる女性に進み寄ったって言ってたよな?その女性が水島美知さん?断定はできんがその可能性はあるな。
このメモリーカードはパソコンでも使えます。
開いてみますか?いやそれはちょっとまずいんじゃないか?でもこれは殺人の疑いのある事件が絡んでるんです。
それはそうだ。
よし見よう。
「泰さん」?写真もあります!これは…上田泰三先生じゃないか。
女性は水島美知さんです。
どういう事だ?ラブラブです。
上田先生ほどの大物政治家がこんな若い女性とか?歳は関係ありません。
メールのやりとりも若者と変わりありません。
「いまどこ?」「国会議員食堂」「なに食べてるの?」「カレーライス」「誰と?」「農水大臣」「泰さんとどっちが偉い?」「もちろん泰さん」かわいい〜!バカ!それどころじゃないだろ。
この女性は転落事故にかかわってるかもしれないんだぞ。
もしこの女性との事がスキャンダルになってみろ。
政治生命の致命傷になりかねないぞ。
実はなこの上田先生は高杉船長の親友なんだ。
高杉船長の?うん。
メモリーカードを返すのはしばらく考えてからにしたほうがよさそうだな。
すぐには返さないという事ですね?転落者は政治家絡みの団体の職員だ。
そのへんの事をよーく調べてからにしよう。
(汽笛)所長さんでいらっしゃいますね?
(松坂邦夫)そうですが…。
私太平洋フェリーの船長で川上と申します。
あの時ご乗船されてましたよね?あの時とは…?こちらの職員の古谷圭二さんが転落された時です。
いや乗ってません。
実はその件で伺ったんですけれども古谷さんはどういう目的で本船に乗船されたんでしょうか?観光旅行です。
休暇を取って北海道へ。
どなたかとご一緒に?いや1人でしょう。
女性とお会いするようなお話はされてませんでしたか?聞いておりません。
そうですか…。
失礼ですがこちらの日本農水振興会というのはどういう…?日本の一次産業農林水産業を力づけようという事です。
この方は確か副総理を務められた…。
(松坂)会長の青木東五郎先生です。
あの所長俺に名刺を渡す前から俺の事を知ってたみたいだったな。
船長が来る事を予想していたんですね。
会長は上田先生と並ぶ大物政治家の青木東五郎か…。
政治絡み…という事ですか?函館の新聞社に飲み友達の政治記者がいるんだ。
彼に2人の事を調べてもらうか。
私は日露商事の砂田社長が気になります。
どういう会社か調べます。
そうはりきるなよ。
俺も昔は何かっていうと1人で行動してよく高杉船長に怒られたから気持ちはわかるがくれぐれも1人で深入りはするなよ。
はーいキャプテン!
(門永年男)上田泰三と青木東五郎。
そりゃああんた知る人ぞ知るライバルだよ。
同じ政権党なのに?政策の違いがあるのさ。
なるほど。
名古屋の青木先生っていうのは日本の農林水産業の振興を掲げてる人だよね。
振興というよりは保護だな。
外国からの輸入に検疫と関税の壁で対抗する。
上田先生のほうは?その逆。
自由貿易拡大。
ああどっちにも主義主張がある訳だ。
表向きはな。
だが裏はそんなキレイ事じゃない。
関連業界の利害が絡んでドロドロさ。
利権とか賄賂とか?そのスケールでは青木東五郎のほうがデカイ。
業者との癒着の噂はなんぼでもある。
上田先生には?あの人は清潔が取りえさ。
それだけに反青木の情報が集まって来るらしい。
野党なら国会で問題にして政権を揺さぶるだろうな。
という事は青木先生にとっちゃ上田先生は煙たい存在っていう事だ。
いずれは火を噴く…と俺は見ている。
ふう〜ん。
今度は俺がおごるから。
危ないよ門さん!日露商事か…。
…ってさロシアとの貿易会社だよね。
水産物特にカニの輸入では北海道でトップだよ。
ふーん。
社長ってどんな人?やり手で有名さ。
旧ソ連時代からロシアとの太〜いパイプを持ってるらしいっていう噂。
乗らない乗らない。
ごめんねもう1軒行くから。
うん行こう行こう。
はいはい。
(ロシア語)
(作業員)はいいいですよ。
はいコンテ12到着!すいません。
これ何て書いてあるんですか?ああ英語だったらわかるんだきっどロシア語だからちょっとわかんねぇな。
中は何?カニだよカニ。
でっけえタラバガニ。
はっ!
(山村達也)何か用か?勝ったー!ああまたか…。
泰さん鈍い!ふふふ…。

(ノック)
(大里)失礼します。
はーい。
川上船長がみえました。
私は…。
ああここにいなさい。
でも…。
(上田)通してくれ。
(大里)はい。
どうぞ。
失礼いたします。
今日はお忙しいところを申し訳ありません。
いやまあどうぞ掛けてください。
ありがとうございます。
携帯のメモリーカードでは美知が迷惑をかけたようだね。
ご存じでしたか。
美知から聞いた。
あんたは持っていないと言ったそうだが。
その後出てきたんです。
本来でしたらすぐにお返しするべきだったんですが…。
ああいやいや転落事故が絡んでいた。
あんたの留保は当然だ。
大変失礼とは思ったんですが内容のほうも拝見させていただきました。
美知さんはあれを人に知られたくなかったんですね。
私の立場を考えての事だがそんな必要はなかったんだ。
知られてもいいという事ですか?構わん。
私は10年前に女房を亡くして独り身だ。
家庭争議も起きんよ。
いやでも社会的にはどうでしょうか…。
現にメモリーカードを奪おうとする動きもあるようですし…。
飲むかい?いいえ私は。
不本意な事だが私を政敵と見る勢力は確かにある。
私の船から転落した人も名古屋の日本農水振興会の職員でした。
その人物が美知から携帯電話を取り上げようとした事は事実だ。
美知さんがそうおっしゃったんですね。
うん。
だが美知は突き落としてはいない。
(上田)すぐその場から逃げたと言っている。
人に知られてもいいとおっしゃってましたが。
やましいところはない。
私は結婚したいと思っている。
結婚ですか?おかしいと思うかね?ああいえ。
しかし…。
私も自分の立場を考えない訳じゃない。
だがねぇこれが私の正直な願いなんだよ。
君は親友高杉の弟分だから言うが私は美知に出会ってこれまで知らなかった人生の喜びを知った。
高杉船長は少年時代の上田先生ほど純真な人は知らないと言っていました。
忘れていたあの頃に戻った気分だ。
確かに携帯メールの中の先生はまるで少年のようです。
はっはっはっ…。
メールのやり方も美知に教えてもらった。
これが実に楽しい。
でも先生ほどのお忙しい方が…。
忙しい合間にメールを打つと仕事にハリが出てファイトがわく。
美知は私の命の泉だ。
これはお返しします。
そうか…。
それじゃ私はこれで…。
失礼します。
ありがとう。
このメモリーカードは君のものだ。
処分は任せる。
これはロシアのカニですか?輸入の最大手っていうのは日露商事だよね?
(アサ)んだ。
港の陸揚げを見てきました。
あれは正規の輸入ですよね?まあ通関とか検疫とかあるからな。
でも日露商事の倉庫裏の桟橋でも陸揚げしてたんです。
えっ?どんな船で?小型の漁船です。
ああそれだば密漁ものだ。
密漁?タラバには日本とロシアの間で決めた漁獲制限たらいうもんがあってそれを超えた分は密漁だ。
おかあさん詳しい!カニを扱ってる者なら誰でも知ってるさ。
その密漁っていうのは日本の船?ロシアの船だ。
北のほうの海には何十隻もいるっちゅう話だ。
けど海上保安部が監視してるんじゃないの?取り締まりに行くとさーっと逃げるんだと。
なるほどね。
確かにさ領海外に出ちゃうともう手は出せないんだよ。
そのカニを正規の手続きなしに日本に陸揚げしたら違法になりませんか?そりゃなるさ。
おかあさんは誰でも知ってるって。
みんな知ってるさ。
どこかで話がついてるんだべ。
まあそのお陰でねこうやって安く食べられるんだろうけど…。
一番儲けてるのは業者だな。
その業者が日露商事。
倉庫裏の陸揚げってのはどんなやつだったんだ?警戒厳重で怒鳴られて慌てて逃げてきました。
ほらみろ!だから1人で深入りするなって…。
でも漁船の船籍は保安部で調べて来ました。
おお…さすが航海士だな。
で船名は?第十一共生丸。
船主は鹿部町の水島拓次という人です。
水島?はい。
メモリーカードの水島美知さんと同じ名字なんです。
うん…。
ただいま。
おかえり。
おかえり。
どうしたの?今日は随分早かったんだね。
いやごめんごめん。
はい。
ああすいません。
よいしょ。
大丈夫か?ありがとう。
ゆっくりでいいぞ。
奥様はよくお戻りになるんですか?えっ?ああ月1回月命日の時にね。
船長のお父様のご命日ですか?いやそうじゃないんだ。
お位牌はお父様でしょう?私の息子の位牌だ。
えっ?じゃあ船長のご兄弟?本当の事言えばいいんでねぇか。
そうですよね。
お位牌は私の夫です。
前のご主人様ですか?それも違うわ。
この人は今でも私の夫よ。
じゃあ船長と奥様は…?夫婦じゃないわ。
言いそびれてしまってごめんなさいね。
別に隠してた訳じゃないんだよ。
いずれわかるだろうと思ってさ。
でもどうしてそういう事に?それは…要一さんがやさしいから。
んだ。
私にも本当の息子のようにしてくれてる。
要一さんはね私の夫の親友だったの。
いくら親友でも…。
訳があるのさ。
20年以上も前の事だども…。
もういいじゃない。
ねっ。
それより蛍さっきの話の続きだけどさ例の密輸の漁船の船主。
あれと水島美知さんとの関係調べるぞ。
はい!とりあえず明日鹿部に行ってみよう。
わかりました。
鹿部で何を調べるの?フェリーの転落事件と関係があるかもしれないんです。
アームチェア・ディテクティブには後で報告するよ。
おもしろそうなお話ね。
私も鹿部に行きたいなぁ。
水島拓次さんの家だば先々代まで船を何杯も持つ網元でさ。
大勢の若い衆を抱えてたそうだ。
今はどうなの?もうニシンが揚がらなくなって没落さ。
それでも10年ぐらい前は2〜3隻の船で魚獲ってたども。
今はもう獲ってない?う〜ん魚揚がったっていう話は聞いた事ねぇな。
でも船はあるんでしょう?ああ第十一共生丸ね。
ああ時々出してるようだね。
このへんの海に?さあ…。
出先までは知らねぇな。
水島美知さんっていうのは拓次さんの…。
娘だ。
これがまんずたいしたもんだってば。
たいしたもんって?いや高校生の頃はさこのへんの女番長でさ。
暴走族引っ張って函館小樽まで遠征してたもんだ。
へえ〜あの人が。
ちょっと想像つきませんね。
いや女だてらにさ空手なんか習ってねほいでもってあんた噂ではロシアに渡ったっていう話だ。
ロシアに?空手を教えにとか?そのへんの事はわかんないけど何年か前に戻ってきた時にはああ見違えるほど垢抜けてたよ。

(ドアの開く音)あっいらっしゃい。
ああ何だ社長。
ああ奥さん!いやいや…。
空手とは驚きですね。
転落した水死者には脊椎損傷があったから女性には無理だなって思ってたんだけど空手をやってたとなるとな…。
水島美知さんという人は見かけよりずーっとタフなようです。
北緯43度30分東経146度。
船名はプーシキン。
間違えないでね。
(水島拓次)いつまでやるんだ?えっ?こんなやばい仕事いつまで…。
何言ってるのよ。
これで借金を返してるんじゃない。
俺は漁師だ。
漁で稼ぎてぇ。
そのうち最新型の船を買ってあげるから。
それまでにお前挙げられて船の免許取り上げられたら…。
そうはならない。
日露商事の砂田社長がついてる。
社長に…ホントにそんな力あるのか?ある。
日本でもロシアでも押さえるところは押さえてる。
俺はなぁ…。
おめぇに社長と縁切ってもらいてぇんだよ。
借金返しに娘エサにしてちゃ…。
ご先祖様に申し訳ねぇんだ。
バカな事言わないで!私はエサになんかなってない…。
水島美知さん取り引きしませんか?名古屋の人ね。
あなたは私にメモリーカードを渡す。
代わりに私は…。
何をしてくれるの?あなたの古谷殺しを警察に届けない。
私は殺してない。
それは警察が調べてくれるでしょう。
じゃあ…届ければ?しぶとい人だ。
じっくり話す必要があるようだね。
うっ…。
名古屋の日本農水振興会の所長ですよ。
相手は日露商事の裏桟橋にいた男です。
日露商事の…!?
(砂田)メモリーカードが名古屋の青木に渡るとまずい事になる。
うん…危ないところだった。
メモリーは消してしまうほうがよかったのでは?いやぁそれはいかん。
我々にとっても重要なカードだ。
上田先生は私と社長…日露商事の関係を知りません。
絶対に悟られるな。
切り札は使わずにすむほうがいい。
私は…。
どうした?気がとがめるのか?お前らしくもない。
カードは私が預かる。
よこしなさい。
それは…。
どうした?持ってるんだろう?いいえ。
川上船長がホテルで上田先生に会った時返してよこしたんじゃないのか?船長は持ってないと…。
そう言ったのか?はい。
山村の報告では…。
山村さんは見てません。
何だ確認してないのか?はい。
すぐに調べろ。

(砂田)ロシアを思い出す。
ロシアの密漁密輸にはマフィアも絡んでいて取り締まりも日本より厳しい。
こちらにも備えが必要だ。
山村はロシアで訓練を受けた。
特殊部隊だ。
ソ連時代の伝統を受け継いで人間をタフな戦闘マシンにする。

(門永)今日の夕刊だ。
「カニ輸入規制法案」…。
青木東五郎が水産団体の陳情を受けて提出を進めてた。
でも水産物の規制っていうのは難しいんじゃないの?帆立貝などわずかだが前例がある。
青木は政治力で規制品目に入れようとしたんだな。
ところが自由貿易論者の上田先生が反対した訳だ。
バックの大きさでは青木のほうが強い。
多少の修正があっても法案はゴーだと見られてたんだが今日の農水部会でひっくり返った。
上田先生の正論が通った訳だ。
青木ほどの曲者が筋論で引っ込む訳がないさ。
上田先生は青木先生の弱味を握ってるような事そういえば言ってたね?それが青木を後退させた事は確かだ。
問題は青木の反撃だよ。
反撃…どんな?それをあんたに訊きたいんだよ。
そんな事俺に言われたってさ…。
青木絡みの団体の職員があんたの船から転落して死んだろう?船で何があったの?やっぱり何か知ってるな。
知らないよ…。
あんた正直だからすぐ顔に出るんだよ。
そうだろ?さあ。
あんたも知ってるんじゃないかい?知りません。
おとぼけでは三等航海士のほうが船長より上だな。
ありがとうございます。
あんたらも職務上の守秘義務ってのがあるかもしれないが何か思いついたら連絡してくれよ。
頼むよ。
ねっ。
うわっ…!船長!蛍!何すんだよ!船長…!
(山村)カードをよこせ。
カード?メモリーカードだ。
持ってないよ。
やめて!蛍!どこにある?どこにあるんだ?船長!何も言うな。
もういいだろ?これ以上やられたら俺は明日船に乗れない。
船長が船に乗らなければ船は動かん。
俺はみんなに乗れない理由を説明しなきゃならん。
日露商事の倉庫でゴリラに殺られそうになった。
そう言ってもいいのか?カードは持ってないんだな?持ってないって言ってるだろう!たぶん知らないうちにどこかで落としたんだろう。
船長!大丈夫ですか?どうして?どうして言わなかったんですか?メモリーカードは…上田議員に渡したって。
カードは上田先生から美知に渡ってるはずだ。
なのに彼女は仲間をだましてた。
その理由が知りたいんだよ。
それに仲間をだましてる事がばれたら今の俺みたいにやられるだろう。
あのゴリラ半端じゃねぇぞ。
ああイッテ…。
痛いよ。
アッイテテ…痛いってば。
殴られても殴られっぱなしなんて意気地がなさすぎます。
殴られ方がうまいんだよ俺は。
つまり殴られ強いんだな。
反撃しようとは思わないんですか?お前さ海の上でルール無視の対航船が正面衝突しようって突っ込んで来たらどうする?海上法規どおり船を進めます。
相手が法規を守らないならず者でもか?両船沈没だぞ。
そんな船長の船にはおっかなくて乗りたくないね。
船の話じゃありません。
人と人男と男のぶつかりです。
男と男か…。
俺はそれで親友を殺したんだ。
要一さん。
お前が殺した訳でねぇ。
どういう事ですか?親友を殺したって。
その親友っておかあさんの…。
んだ。
私の息子だ。
そして奥様の…。
夫です。
夫はね学生ボクシングのタイトルマッチで要一さんと戦ったの。
1か月意識不明のまま夫は亡くなったわ。
要一はそれ以来ボクシングをやめてしまったんだ。
プロからも声がかかるほどの強豪だったのに。
プロから声が…。
船乗りだけが夢じゃないって言ってたのはその事だったんですか…。
若気の至りだよ。
ボクシングはやめてよかったんだ。
(清見)ボクシングだけじゃなく拳にも封印してしまったのよ。
俺別に無理に封印した訳じゃないよ。
こいつが動いてくれなくなっちゃったんだよ。
(清見)私もお義母さんももう恨んでなんかいないのに。
一生背負うって言ってきかねぇんだこの息子は。
どうしよう…私弱い男は嫌いですなんて。
バーカ!お前にはねそういう泣きべそは似合わないんだよ。
(嗚咽)おかあさんはすぐに船長を許したんですか?とんでもねぇ。
初めのうちさ水ぶっかけて追い返してた。
それで船長は?休みには毎日市場さ来て高い魚いっぱい買って行った。
2年目には店ば手伝って5年目にはこの家さ来てた。
奥様はその頃?大沼のゴルフ場で働いてたさ。
要一はそっちにも休みの度に行ってたようだな。
清見さんは初めは会いたくねぇと言ってたどもいつの間にか一緒にゴルフしてたようだな。
療養所にはいつ?5年前だ。
周りは夫婦だと思ってるべさ。
でも夫婦じゃないんだ…。
日露商事の砂田社長は有名人よ。
療養所でもよく噂を聞く。
そうなの。
どんな噂?ロシアの政治経済の大物と人脈が通じているとか。
それは俺も聞いた。
正規の貿易だけじゃなくてその裏もあるとか…。
密輸や密漁にかかわっているのは確かだなぁ。
でも気になるのは上田先生との関係よね。
砂田社長は上田泰三後援会の役員だべ。
ああ私も選挙応援は聞いた事ある。
まあでもさ自由貿易論者の上田先生を貿易業の砂田社長が応援するのはこれは当然かもしんねぇよな。
それって癒着ですか?見返りもらってなければ癒着とは言わないよ。
でも上田先生にそういう悪い評判はないわよ。
そうなんだよ。
高杉船長もさ上田ほど純粋な男はいないって言っておられたしそれから例の門永記者ね彼も上田先生は清潔が取りえだって言ってんだよね。
その上田先生を味方にするために砂田社長は巧妙な手を使っているんじゃないかな…。
心当たりがあるのね!?まさか水島美知さんとの事ですか?鹿部に調べに行った人?上田先生は結婚したいって言ってんだよ。
まあでも上田先生と水島美知のプライベートなメールのメモリーカードをさ政敵の青木東五郎サイドが欲しがる。
これはよくわかるんだけどなぜか日露商事も欲しがってるんだよね。
それに水島美知は空手もやるし転落事故との関連も残ってるし何てったって上田泰三青木東五郎日本農水振興会日露商事砂田社長。
すべてとかかわりがある訳だよ。
まあ恐らく水島美知が彼らの隠された何かを握ってるんじゃないかと思うんだけどね。
花山さんちょっと来て。
調べました。
どうだった?あの人は事件の日乗ってました。
やっぱり。
何の話だ?砂田社長とゴリラが乗船してたんです。
何!あのゴリラ転落事件のあった日本船に乗ってたんです。
(花山)女性が一緒だったそうです。
女性!?水島美知さんでは?チョッサー。
はい。
船内の監視カメラでビデオが残ってるのは何か所だ?3か所です。
事件のあった日のビデオは?残っていると思います。
よし全部調べてくれ。
(山村)お待ちしておりました。
どうぞ。
どうも砂田です。
船長の川上です。
お呼び立てしてすみません。
まあどうぞ。
失礼します。
ええ…お会いしたかった訳はお詫びのためです。
先日私の部下が暴力を振るったそうで失礼しました。
おいっ。
(山村)はい。
私は丁重にお話をするように命じたのですがこの男は手っ取り早い手段を選んでしまった。
いずれにしてもあれは社長のご命令だったんですね?そのとおりです。
メモリーカードをよこせって言ってましたがそれも社長のご要望ですか?私がそれを望む訳はひとえに盟友上田先生のためなのです。
盟友ですか。
先生は日本の自由貿易推進の重鎮です。
反対勢力はスキャンダルで追い落とそうとしている。
それでメモリーカードを?あれが名古屋の青木派に渡ると上田先生は苦しい立場に追い込まれます。
ええ…船長さんはこの山村にメモリーカードは知らないと言われたそうですがそれに相違は…。
ありません。
私も山村さんにお訊きしたい事があります。
以前本船に乗船された事はありませんか?ない。
(井崎)これも違うな。
違います。
これは?違います。
ちょっとストップ!これは?違います。
早送りします。
うん早送りしてくれ。
あっ。
これも違うだろ。
あれ…。
あっ!どうだ?船長見てください!7デッキ救命ボートの監視カメラです。
山村です。
船尾に向かってます。
やっぱりな…なのにあのゴリラ乗船してなかったって言ってたな。
どうしてそんな嘘を?うわー!!転落事件に直接かかわってるからさ。
よう!お揃いでよく来てくれた。
お前に会いたいと言って来たのは川上だ。
俺は立ち会いだよ。
そうかまあ座ってくれ。
失礼します。
転落事件の事だね。
はい。
率直に申し上げます。
私は水島美知さんを疑っていました。
それは仕方がない。
美知さんは先生には自分は突き落としていないと。
そう言った。
先生はそれを信じてらっしゃる。
そのとおりだ。
そのとおりかもしれません。
君もそう思ってくれるのか?もう1人あの場所に居合わせた人物が浮かび上がってきたんです。
もう1人?はい。
彼女はその事について先生に何か?いや何も聞いてない。
その人物とは?日露商事の山村という男です。
日露商事の山村?ご存じですか?いや知らん。
社長の砂田省平氏の事は?ああ〜よく知っている。
私の有力な後援者だ。
社長は先生の事を盟友と言っておられましたが。
盟友…。
はい。
うん…そう言ってもいい。
その砂田社長と美知さんはどういう関係なんでしょうか?関係…?はい。
それはないだろう。
美知さんと日露商事とは?いやそれも聞いた事がない。
川上は遠慮している。
代わりに俺が言おう。
何かあるのか?水島美知という女性は砂田社長とも日露商事とも関係がある。
表には出せないダーティーな関係だ。
ダーティーな?その女性は父親の漁船でロシアと日露商事の密漁密輸に参加している。
川上がそれを確認した。
川上が心配しているのはその先の事だ。
その事が上田泰三の立場にどう響くのか。
それで俺に相談に来た。
先生は美知さんとの関係を世間に知れても構わないとおっしゃいました。
しかしその美知さんが意図的に先生に接近したとしたら…。
意図的にとは?お前をろうらくするためだよ。
念のために訊くがお前砂田社長や日露商事とは癒着はないだろうな?ない。
俺の政治理念と先方の利害が一致しているだけだ。
見返りに何かを受け取った事は?政治献金や選挙の応援は受けているが法の範囲内だ。
日露商事の密漁密輸知らなかったのか?まったく知らなかったとは言えない。
世間の噂は耳に入っていたよ。
だが何もしなかった。
清濁併せ飲ませなければ政治はやっていけない。
お前はそう言った。
そうしているうちにだんだん濁のほうが広がってくるとも。
水島美知さんに対するお前の気持ち少年時代のように純粋だとしよう。
だがその女性が途方もない汚濁の中にいるとなればどうする?清濁併せ飲めるか?今答えなくてもいい。
俺達は事実を話しに来ただけだ。
よく考えてくれ。
他に言う事はあるか?せん越ですが美知さんとのメールだけはおやりにならないほうがいいと思いますよ。
うん。
砂田社長はそれを証拠に先生をとりこにしようとしています。
名古屋の青木派もそこを狙っています。
よーくわかった。
忠告ありがとう。
生意気申し上げて失礼しました。
上田との関係は何としても続けろ。
(美知)でも世間に知れると…。
否定するんだ。
上田がそうするように私がアドバイスをする。
名古屋が暴き立てるでしょう。
証拠がない。
色事は密室の出来事だ。
まあマスコミも政治家の下半身には寛大だ。
否定を通せば噂も消える。
だが我々だけはしっかりと物証を握っておく必要がある。
上田を取り込む切り札としてな。
女性関係で業者と結ばれていたとなるとうん…政治家としては最悪の致命傷だ。
お前の任務は重大だ。
よしこれからメールを打って絆を強めろ。
今ここで?そうだ私の目の前でだ。
どうした?おいほら。
やれないのか。

(メールの着信音)来ません。
来るまで続けろ。
(メールの着信音)ほらもう一度。
(メールの着信音)来ました…。
「変わらない」…。
うんその調子。
先生はお前と別れたくないんだよ。
よくやった。
これだけでもたいした成果だ。
その調子で続けろ。
だがまた襲われる事もあるだろう。
メモリーカードはその都度私に提出しなさい。
メールの度にですか?そうだ。
まずそれをよこしなさい。
いちいち妬いたりはせん!これはお前の仕事だ。
私の命令が聞けないのか?うん?私の命令が聞けないのか?ううっ!山村を呼べ!美知は上田に心を移した。
偽りの恋が本物になった。
携帯を取り上げるのですね。
それではすまん。
上田の弱味を握るという私の意図を上田に明かすだろう。
転落事故も。
お前が突き落とした事も明かすに違いない。
消します。
あの女がやった事にします。
その前に…確かめろ。
心を入れ替えるなら連れ戻して来い。
船長!あっ?お願いがあります。
上田先生に返してください。
これを持っているのを仲間に隠してたんですよね?砂田社長を裏切ったって事ですか?どうしても渡せなかったんです。
上田先生を守るためにですか?その後先生とメールは?さっきしました。
返信は?ありました。
メールはしないように忠告したのに…。
いいんですか?上田先生に伝えてください。
これが最後のメールです。
この記録は?消します。
今までの記録も全部。
わかりました。
必ず伝えます。
お願いします。

(美知)離して!戻れば許すと社長は言っている!ううっ…!私は戻らない!うっ…!
(咳込み)蛍!はい!警察に連絡しろ。
はい!裏切った仲間は殺す。
それがロシアの組織のやり方か。
邪魔する奴も殺す!そうはいかないよ。
ここは日本なんだからな。
やめて!この男は本当に殺します!
(美知)やめて!来ないで!やめて!来ないで!やめてー!!ああ…!うわぁー!うわっ!船長!うっ…うっ…!うわぁ…!うわー…!えいっ!やったー!ブラボー!無茶な人。
そんなゴリラを相手に。
夢中で勝手にこいつが動いたんだよ。
蛍さんうれしかったでしょうね。
あの人本当にあなたの事が好きだから。
私も蛍さん好きよ。
大事に育ててあげてね。
アフリカへ?名古屋のセントレア空港から出国します。
もう日本へは戻らないつもりなんですか?はい。
あなたとうとう上田先生の事を明かしませんでしたね。
山村も古谷さん殺しは自供しても砂田社長の関与は明かさなかった。
砂田は上田先生という大きなバックを失いました。
上田先生はもっと大きなものを失いました。
あの人の恋は本物でした。
金華山沖か…。
転落者の遺体が上がった海だ。
これがすべての始まりでしたね。
長声一発。
長声一発サー!
(汽笛)2015/08/18(火) 14:00〜15:55
ABCテレビ1
新船長の航海事件日誌[再][字]

超豪華客船殺人航路 金華山沖に謎の水死体!妖しい函館の女、表の顔と裏の顔!!

詳細情報
◇番組内容
超豪華客船殺人航路 金華山沖に謎の水死体!妖しい函館の女、表の顔と裏の顔!!かつて高橋英樹さん主演で人気シリーズだった船長シリーズがリニューアル!当時三等航海士だった船越英一郎が一等航海士を経て船長に大出世!
◇出演者
船越英一郎、木内晶子、原日出子、遊井亮子、伊藤孝雄、草村礼子、本田博太郎、高橋英樹

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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