東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 速報ニュース一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

「首相官邸の前で」世代、志向超えデモ 歴史社会学者が映画

2015年8月20日 14時05分

 東京電力福島第一原発の事故後に広がった脱原発運動を、小熊英二(おぐまえいじ)慶大教授(52)が映画にした。政府や電力会社の姿勢に市民らが怒り、デモは自由参加で官邸前に毎週集まるという前例のない抗議へとつながっていく。「歴史家で社会学者の自分が今やるべきことはこれを記録し、後世に残すことだと思った」。映画名は「首相官邸の前で」。九月二日に公開される。 (辻渕智之)

 映画は、セミの鳴き声だけがする閑散とした国会前と官邸前の光景から始まる。一転し、官邸前の歩道を人が埋め、国会前に「原発、いらない!」の声が響いて車道に人があふれるデモの場面に切り替わる。

 映し出されるデモに参加した人々は性別も世代も、職業も志向も違う。小熊さんは「そうした人々が一つの場に集う姿は力強く、美しいと思った」。そして当事者たちが自覚せずとも、歴史社会学者として「そうした奇跡の瞬間は、一つの国や社会にめったに訪れるものではない」という。

 小熊さんは事故当時の首相だった菅直人氏や被災者、デモ呼び掛け人ら八人にインタビュー。彼らの語りと、ネットに投稿されたデモの自主撮影動画を無償提供で集めて、自身初監督となる映画を構成した。

 事故翌年の二〇一二年六月、政府が関西電力大飯(おおい)原発の再稼働を決めた。直後、官邸前と国会前にそれぞれ約二十万人(主催者発表)が集結した。同八月、当時の野田佳彦首相はデモ呼び掛け人らでつくる首都圏反原発連合(反原連)のメンバーらと面談に応じた。翌九月、政府は「三〇年代に原発ゼロ」の新エネルギー戦略を発表する。

 日本は「原発稼働ゼロ」でこの二年弱を過ごしてきたが、今月十一日に九州電力川内(せんだい)原発が再稼働された。だが映画の中で反原連のメンバーは「自民党は原発推進にかじを切っているが、もう元には戻れない。日本社会そのものを構成している人々が変化し始めている」と悲観していない。

 映画の最後、3・11以降にデモに参加した女性たちも笑顔で語る。「かつて声をあげるのはタブーだった。今はまったくOKよ」「微力は無力じゃないってことを実感しました」

 小熊さんは安全保障関連法案の抗議デモにも足を運び、観察を続ける。「不当なことがあれば声をあげていいのだと社会全体が認知した。その変化が反映されている」と指摘した。

 上映は東京・渋谷の劇場「渋谷アップリンク」で隔週水曜日。料金は一般千八百円、大学生千百円など。問い合わせは同劇場=電03(6821)6821=へ。

◆当面の主なデモ予定(かっこ内は主催、呼びかけ団体)

▽21日18時半

 川内原発再稼働反対!首相官邸前抗議(首都圏反原発連合)

▽23日16時半

 戦争法案に反対する全国若者一斉行動表参道デモ(SEALDs=自由と民主主義のための学生緊急行動)

▽26日18時

 安保法案廃案へ!立憲主義を守り抜く日比谷野音大集会&パレード(日本弁護士連合会)

▽30日14時

 戦争法案廃案!国会10万人大行動(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)

(東京新聞)

映画「首相官邸の前で」の一場面

映画「首相官邸の前で」の一場面
 

この記事を印刷する

PR情報