100分de名著 ダーウィン“種の起源” 第2回「進化の原動力を解き明かす」 2015.08.19


(ダーウィン)進化はどのようにして起きるのか。
それを科学的に説明する理論が必要なんじゃ。
生き物たちは神によって創造されたのではなく進化したものだという理論にたどりついたダーウィン。
自然界で起こる進化のメカニズムを解き明かしていきます。
「100分de名著」今回は「種の起源」の最も核心部分生存競争と自然淘汰に迫ります。

(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…さあダーウィンの「種の起源」。
そもそも当時は神様が動物は作って作ったままずっとそのままいると考えられてる中ダーウィンは「進化ってあるんだ」と。
いろんな変異が生まれて進化につながるんだという事をペットのハトを使ってみんなを説得するというか。
ちょっとドキドキしましたね。
でも自然界では同じ事がどうやったら起こるんでしょう。
そうかハトの場合は人間がこうやるときれいだからってやってるけども。
今回も長谷川眞理子さんをお招きして読み解いていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
さて伊集院さんここでクイズでございます。
いきなり。
得意だよクイズ。
キリン。
はい。
これね教わりましたよちゃんと幼稚園の先生に。
キリンは馬ぐらいだったんだけど高い所にある草が食べたくて食べたくてウガーッウオーッと頑張ってるうちに割と長くなったっつって。
次の子供はその長いのを受け継いで更に努力するからもっと長くなって…ってなって最終的にはキリンはこうなりましたとさというのを。
先生どうなんでしょうか?いや〜あの…本当の答えはよく分かっていません。
分からないんですかこれ。
本当の本当はよく分かってない?それこそ馬みたいなものからなぜこういう種類が出てきたのかの本当の道筋は化石もあんまりないし分かっていません。
という事なんですが先ほどおっしゃった答えは幼稚園の先生は間違いですね。
そうですか違いますか。
明確に否定されました。
キーワードは「生存競争」です。
ご覧下さい。
ダーウィンは人間がペットや家畜を掛け合わせる事でさまざまな特徴を持つ品種を作る事に注目しました。
重い荷物を引く馬は品種改良により頑丈で力強くなっています。
花が美しく見えるように改良されたソメイヨシノは江戸時代に作られた品種です。
生物はこのような変化を起こす力を備えておりそれによって種が進化するのだとダーウィンは考えたのです。
では人間の手が加えられない…その役割を担うのが「生存競争」だと考えました。
ダーウィンはまず生物の繁殖力の高さを指摘します。
しかし地球上に一つの生物があふれ返るほど増える事はありません。
生き物たちが生み残す子孫たちはどこへ行ってしまうのでしょう。
ダーウィンは更にこう言います。
生物が無制限に増えていかないのは全員を養えるほどの食べ物がないからです。
つまり足りない食べ物をめぐって生き物たちは常に競争を繰り広げているのです。
これが生存競争。
では生存競争がどうして進化を促すのか先ほどのキリンを例にダーウィンの理論で説明してみましょう。
キリンの中にも個体差があるので多少首が長いものと短いものがいたとします。
やがてキリンたちは低い木の葉っぱを食べ尽くしてしまいました。
首が長い個体は高い所に残っている葉っぱを食べる事ができます。
しかし首の短い個体は飢えて死んでしまう事になります。
生き残ったのは首の長いキリンばかり。
首の長いキリン同士の子供は遺伝によりまた首の長いキリンが生まれてくる可能性が高くなります。
首が長いキリンが繰り返し選択される事でその特徴が強められていきます。
このように生存競争により環境に適した種へと進化が起こるのです。
なるほど。
確かにあの幼稚園の先生もさすがにこういう難しい話は子供にはなかなかね。
だから多分努力が大切みたいな話も含めて。
でも食べ物は限られていてそれを手に入れられるものだけが生き残っていくというのがもうこの生存競争。
もともとたくさんの個体変異がある。
みんなみんな1つずつ違うという事があってその中で…そうするとその次の世代の子供たちはそういう性質を受け継いでるから親の世代よりもうまくいってるでしょうと。
そもそもキリンの中で平均から5センチ高いやつから5センチ低いやつまでいて。
そうしたら高いグループの方が基本子孫を残しやすい環境ありましたと。
そうすると今度ここを受け継いでプラス5センチからマイナス5センチまでいてくれれば。
しかもその環境が続いていればどんどんそのプラス5センチ組の方が増えやすいと。
生き残りやすい。
そうするとおのずとその環境にうまく適応したうまくできたような種類ができちゃうじゃない。
だから種は変わるし種は環境にうまく適応するという事が神様抜きで全部説明できるという事よね。
残ったものだけに目を向けてしまうと「こんなによくできてるものを作った神様すごい」になっちゃうんだけど違うんですよね。
もうありとあらゆるものが試されていって。
だから全然目的なんかないし努力したかどうかじゃなくて。
ただただ残ったって事ですもんねそれが。
しかもカウンターもまたあると思うのはその首の長いキリンがめちゃめちゃ増えた段階で次有利なやつはそいつらがかがんで食べられない所にあるやつだから今度低いやつブーム来ますでしょ。
来ますね。
来ます。
そうです。
だから絶対的に首が長いやつがどんどん長くなってくわけでもないし。
なるほど。
増えすぎた時にまた違う…。
たまたまその時代は長いやつが有利で。
でねダーウィンはその食べ物をめぐる競争以外にも進化を促す力があると挙げてるものがあるんですよね。
それが「自然淘汰」ですね。
その自然淘汰というのが競争が食べ物以外でもいろんなそういう競争がどっかであれば必ず自然淘汰というものが起こるというふうに考えました。
はいこちらでございます。
では続いてはこれを学んでまいりましょう。
生存競争と共にダーウィンが進化の原動力として挙げているのが「自然淘汰」です。
「種の起源」の中でダーウィンはライチョウの仲間は住む場所によって羽の色に大きな違いがある事に注目しています。
雪深い高山に住むライチョウの冬の羽の色は白。
泥炭の蓄積した湿地に住むクロライチョウは泥炭色。
荒れた草地に住むヌマライチョウは紫紅色。
つまり羽の色は住んでいる環境の色と似ているのです。
それはライチョウがワシやタカに狙われた際に見つけられにくい個体だけが残りその羽の色が世代を超えて受け継がれていったのだとダーウィンは考えました。
生き残るためには少ない食べ物を手に入れるだけでなく自分が食べられないようにするのも必要なのです。
雪山に白いライチョウと色の濃いライチョウがいれば簡単に発見されて食べられてしまうのは色の濃いライチョウです。
これが長い年月繰り返された結果より白いものが繰り返し選択されてきたのです。
環境に選ばれた性質が残っていく。
それが自然淘汰です。
敵の目に留まりにくい性質が何世代にもわたって積み重なり限りなくリアルな擬態へと進化する事も起こりえます。
ダーウィンはこう語ります。
う〜ん僕あの擬態する昆虫とか大好きなので。
すごい葉っぱに似てるような蛾がいたりするじゃないですか。
いますね分からないの。
あれ個体差多分すごい最初いっぱいあってグラデーションがあってたまたま鳥に見つからなかったやつというのが多分やや葉っぱに似ててそれが子供を生んでくとまたグラデーションがそこを中心に始まるから。
そのやや更に葉っぱに似てるやつが捕まらなくてみたいな事が繰り返されてびっくりするぐらい似てるのができる。
ダーウィンはこの自然淘汰というのは常に常にもう僅かな僅かな変化が起こっていって有利な変異は保存されて不利な変異は常に排除されるその過程だというふうに言ってるんですね。
そうですね。
だからライチョウはまあ多分見つからない捕食者から見つからないようにするカムフラージュの度合い。
それがちょっとみんな少しばらついていたらより環境に溶け込めたものが残ったと。
そうするとそれの子供というのもやっぱり羽の色が環境に近い色でカムフラージュがもっと良くなってという事が起こるんでしょうと。
寒い所にどうやって進出するかも毛皮が厚くないといけないけどそれもちょっと薄めからちょっと厚めまでもともとばらつきがあったら寒くなってきたらちょっと厚めの方がたくさん子供を残せてっていう。
そういう事がどんどん子孫に伝わっていくと子孫はそういう遺伝子を持ってるからみんなそっちの方にうまくいくタイプになるでしょうと。
こういうプロセスが自然淘汰ですね。
これ面白いのは何か僕らこういった事を擬人化したりするのが好きだから「頑張ってよくああいうふうに進化した」とか言うじゃない。
「頑張って適応した」とか。
「よく首を伸ばした」。
「よくぞあんな葉っぱにそっくりになったね」と言うけど別に頑張っちゃいないですよね。
そう頑張っちゃいないですね。
頑張っちゃいないし進化というのは世代を経てある個体の集まりが変わっていく事だから一人や一匹に起こる事ではないのよね。
一人や一匹に一生の間に起こる事ではなくてその集団に世代をどんどん経て時間をかけて起こる事だから。
そうですね。
私たちが目にするような時間の流れじゃないという。
なくてね多くのものは。
だから個体はどうせ頑張ろうが頑張るまいが寿命が来たら死んじゃうんですから。
一匹や一個体が一生の間に変化するようについつい思ってしまう。
「うまくできてるよね」「偉いよね」みたいに。
でもそういう話じゃなくて必ずしも進歩してるわけではない単に。
そこも難しいですね。
進化っていうとねちょっとこう優れたものになっていくという何かそのイメージがありますね。
それ言うんですよね。
「炊飯器が進化した」とかさ。
その進化の「進」はどんどん時間や世代が進行していく上で変わったんですよって話をしてても俺らはやっぱりそれの「進」を進歩の「進」って思ってしまう。
そうですね。
人間がそういうふうに進歩したい動物だからなんでしょうけど。
洞窟の魚は目が見えなくなっちゃうとかそれからダーウィンが出してるのはマデイラ島っていう所はカブトムシの甲虫の仲間がねみんな飛べないんですよ。
もうそこに500種以上…550種かいるようなその甲虫の仲間の半分ぐらい200種ぐらいはもう飛ぶ力を失っているのね。
まあある意味後退したわけよねその虫の姿からすれば。
でもそれはマデイラ島って絶海の孤島でビュービュー風が吹いてるから羽なんかなまじ持ってるとみんな飛ばされて海に落ちて死んじゃったのよね。
なるほど。
だから羽がちっちゃい飛べないのの方がしがみついて残れたとそんなふうに。
あ〜そういうのもあるんだ!これが難しいのは僕らからしてみたらあったものが無くなるのを退化って言葉があるから。
進化に対してね。
退化だと思っちゃうけどそれも進化ですよね。
その方が便利。
その場所がそうだったから。
何が幸せか分かんないという事ですね。
そう思う。
何かほんとに身近な例え話にして申し訳ないけれども太るという事がどっちなのっていう。
僕がこれから立ち向かっていく環境によって違うわけじゃないですか絶対。
そうですね。
お笑いであればもしかしたらこの特徴は目立つというのでいい事かもしれないし。
ちょっと面白いですよそこ考えた事なかったな。
自然淘汰。
ちょっと教えて頂きましたけれどもダーウィンは自然界の生物同士の複雑な関係についても触れています。
ご覧頂きましょう。
自然界では食べるもの食べられるものといった単純な関係だけでなくさまざまな生物が複雑に影響を与え合っています。
その一例としてダーウィンは荒れ地の植生の変化を挙げています。
(ダーウィン)荒れ地が2つあった。
一つは全く人の手が入っていない荒れ地。
もう一つは25年前に一区画だけ囲いをしてヨーロッパアカマツを植えた荒れ地だ。
この囲いによって若木は牛に食べられなくなり大きな樹木に成長する。
その結果調査すると普通は荒れ地では見られない植物が12種類も見つかった。
植物が変わるとそれを食べる昆虫にも影響が出る。
そして鳥にも影響があった。
虫を食べるタイプの鳥がふだん荒れ地では見かけないものばかり6種類もいる事が分かったんだ。
自然環境はさまざまな要素が複雑に絡み合っているのである一つの出来事で生存競争の条件が変わりその結果勝者と敗者が入れかわり進化の方向が変わっていく事もある。
ダーウィンはその事にも気付いていたのです。
これは面白いっていうか200年も前にここまで気付いてる人がいる。
単純なもんだと思うじゃないですか。
そうですよね。
もっと単純なものだと。
何か食べられるものと食べるものの。
直接的な関係しか分からない。
そうそう。
…って教わってきたし。
そうじゃなくてもっと複雑なものだという事も。
そうですねだからダーウィンの慧眼はほんといろんなところにありますけれど単純に一つの種と一つの種だけの直線的な関係なんていうもんじゃないという事を気がついたわけですよね。
生態系全体っていうのはまだその全貌を今の科学者も捉えきれていません。
ほんとにそれほど複雑です。
だけど何ていうのかしらね人間ってやっぱり単純化しないと理解できないから単純化したくなるんでしょうね。
でも現実は本当にすごく複雑なんですよ絡み合い方がね。
それも知らないのに何か勝手に環境を変えてうまく人間が生きていけると思ってるのは大間違いよね。
そうですね。
一つの細かい事が大きな事へと発展していってしまうという。
例えば昔19世紀のころにアイルランドでジャガイモを植えて暮らしていたと。
その時に経済的に言えば収量の高いジャガイモがいいですよね。
だからいっぱいなるやつというので1種類を全部植えてたの。
そうしたらジャガイモにとりつく病気っていうのに種類がみんな同じだから全部やられてしまってジャガイモ飢きんという事で人口が20%も減るようなそういう目に遭ってしまったわけですよね。
すごいですねそれ。
連鎖的に言うと最終的に人間という種類の動物がその地域では20%死んだって事ですもんね。
ほんとにいろんな複雑な…。
多分今の例ですらまだ単純な方ですね恐らくね。
もっと細かい事がどんどん起きてくから。
今は生態系の見方が変わってるんですよね。
ちょっとこちらご覧頂きましょうか。
これまで私たちが習ってきたのはいわゆる「食物連鎖」。
ピラミッドになってるというこういう見方をしていたんですよね。
何かその生産者という植物が自分で栄養を作る植物がいてそれを食べる動物がいてそれを食べる動物がいてというふうに何か一直線になっていると。
今はこんな単純じゃない。
今はこれ「食物網」というような考え方なんですね。
ここに表れているように本当にさまざまな種類がさまざまな関係を持っていて。
それは確かに植物を食べる動物がいる。
それを食べる動物がいるというのはそうなんだけどじゃあそれが単純にこれがこれを食べてという事ではなくて。
もうこれを食べるのはこれもこれもいるしこれを食べるのはこれもこれもいるしでもこれはこれを食べるしみたいにこんなになってるのね。
だからどれか1種類がいなくなったらこのネットの網がどこかぷつんと切れたようなもんで。
網目になってるのをどっか切るとぶら下げておくとフニュッと変わるじゃない。
…というふうに何かこれみんなお互いに関係を持ちながらある一枚の網になってるんだけど。
絶妙なバランスで。
絶妙なバランスだという事ですね。
この全貌をまだ私たちは理解してない。
恐らく僕ら単純に教わった例えば草が生えなくなったらバッタがいなくなるからバッタを食べるっていう順番にいなくなってくイメージなんですけど。
その網の考え方で言うとこの種類とこの種類が減った場合に何だか全然関係ないような事が起こって突然ここは増えますとか。
風が吹くと桶屋が儲かるどころじゃない。
もはや分析不可能なものがもしかしたら動いてるのかもしれないという。
そういう事にダーウィンは気付いているんですよね。
まだ生態学という学問もなかった時代に生態学を作ったとも言えますね。
何かもちろんね生物学というか進化論そのものも面白いけど何か教えてくれる事いっぱいあるよねっていう。
多様性という事から言えば何か経済的に有利という事だけにず〜っとみんなが寄ってった時に何かそれに信用置けない事が起こった時に我々はジャガイモのように全滅する可能性がある。
1種類の人間が。
そうですね。
個体差が無くなった時になるとか何かそんな事を思いますよね。
先生今日はどうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
2015/08/19(水) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
100分de名著 ダーウィン“種の起源” 第2回「進化の原動力を解き明かす」[解][字]

同じ種の生物が世代交代を経るごとに変異を累積し、やがて当初とは大きく異なった種へと変貌していく「進化」。ダーウィンはその原動力が何かを解き明かしていく。

詳細情報
番組内容
同じ種の生物が世代交代を経るごとに変異を累積し、やがて当初とは大きく異なった種へと変貌していく「進化」。ダーウィンはその原動力が何かを解き明かす。生物の進化は生物同士が同一環境でそれぞれに必要な資源を求めてしれつな競争を行った結果、たまたまその環境に適した変異をもった生物だけが子孫を残すことができるために、結果として起こる現象だというのだ。第二回は「生存競争」「自然とう汰」の概念を明らかにしていく
出演者
【講師】総合研究大学院大学教授…長谷川眞理子,【司会】伊集院光,武内陶子,【声】水島裕,【語り】墨屋那津子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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