日本の話芸 落語「蛇含草(じゃがんそう)」 2015.08.16


(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(三遊亭圓輔)ご来場で御礼を申し上げます。
どうぞ一席おつきあいのほどを願っておきまして。
最近はどうも電車に乗って立ってますとやたらに席を譲られるようになっちゃいましたな。
初めて譲られた時は60代でしたけれどもそん時ゃ驚きましたね。
「あれ〜俺ってそんなに爺に見えるのかしらん」と思って鏡覗いてみるとやっぱり爺は爺なんですけれどもね。
でも端のうちはスッと座れないもんですな「いいです」なんつっちゃってね。
とそういう方は必ず仰いますよ「次降りますから」なんてね。
でこの一言で「それじゃ」ってんで座らせてもらいますけれども「次降りますから」ってぇから「降りるのかな?」と思ってこう見てるってぇと降りませんよ。
「じゃあ今度降りるのかな?」と思っても降りませんね。
「じゃあこの次だろう」ってんで自分が降りちゃったんですけれども。
(笑い)降り際に「どうもありがとう」っつったらその方はニコッと笑顔を返してくれましてそういう時の親切というものは何か心に深くいつまでも残ってその日一日が爽やかないい心持ちのもんですな。
ところがこの間私座ってましたら私よりはるかに人間を長くやってらっしゃる方杖を片手に乗ってらしたんで思わず立ち上がっちゃいましたね。
「どうぞ」っつったら「どうもすみません。
年取ると」ってぇから「おいくつです?」。
「82です」なんて。
年下に席譲っちゃったりしてね。
(笑い)他人の年ってぇのは見た目じゃ分からないですな。
分からないってぇば私は若い時分よく顔にニキビができました。
目にはものもらいなんてのがよく出たもんですけれども近頃年取るとできもんもできなくなってきますね。
でもこの間久しぶりにおできができました。
できた場所が顔ってんじゃありませんでお尻ってぇ所へ出ましてねちょうど座ると踵が当たる辺り右側のこの辺ですけれども。
でも「どうなってるだろう?」と思いましてもどうもこのお尻ってやつはね自分でじかに確かめるってぇ訳にはいかない場所ですな。
大体昔から「明日の天気をお尻に問えば私ゃ空見た事がない」って場所ですからね。
(笑い)しかたがありませんから鏡に映して見ようと思いましたな。
誰もいなくなってから鏡台をパッとまくって自分のほうもクルッとこうまくりましてこういう具合に出して見た。
するともう真っ赤に腫れてる。
真ん中はポツンと黄色くなっちゃってる。
「これはいけない」と思いましてね吸い出し膏というのがあったんでこれを鏡と相談しながらうまい具合にペタ〜ンと貼っといた。
で「これで安心だ」なんて思ってましたらそこへ家内が帰ってきまして「あんたじゃないの?鏡台に膏薬おっ貼ったのは」なんて。
(笑い)我ながらあきれかえったような次第ではありますが。
しかしこれで…。
どうぞお笑いになる時はまとめていっぺんに笑って下さい。
(笑い)噺家てぇものは夏場が近づいてくると夏の噺また冬場になるてぇとそういう噺をするようになりますな。
今日もそんな訳で「蛇含草」というお喋りをさせて頂きますが。
これは本文が割に短いもんですからちょっとその前にですね夏の小咄を1つ2つ申し上げたいと思いますが。
暑い時分はですね私のもうご幼少の頃はってぇとどうにもならなかったですな。
なにしろもうエアコンなんてものはありませんしね扇風機があるなんてぇのはよほど上のほうのクラスのですねご家庭でないとそういう物はなかったですからな。
ええ。
で庶民はどうしていたかってぇと団扇でもって煽ぐ。
ね?団扇がある家はまだいいですよ。
団扇もない家もあるんですからね。
であの扇子ってぇのはその上ですね。
扇子のある家ってぇのはまたちょいと一つクラスが上なんですな。
でこういう時はですね一っ降りあるとねこれはもういいんですけれども暑い時はしょうがないですよね。
「暑いね。
こう暑くちゃしょうがないがこんな時はね一雨あるとありがたいんだがこのまぁ雲行きじゃ夕立は望めそうもないね」。
「ゆ〜だち屋〜ゆ〜だち〜」。
「珍しい商人が通るねええ?『夕立屋夕立』だってさぁ。
雨でも降らしてくれんのかしら。
呼んでみましょう。
お〜い夕立屋さんや」。
「へ〜い。
お呼びでございますか?」。
「うん。
ここだよ。
お前さん今『夕立屋夕立』っつってたけれども雨でも降らしてくれんのかい?」。
「はい。
降らしてご覧にいれます」。
「そうかい。
いかほど?じゃあここへ置きますよ。
じゃあお願いしましょう」。
夕立屋さん印を結ぶってぇと口の中で何やら唱えていたかと思うと今まで晴れていた空が一転にわかにかき曇るってやつですな。
ポツリポツリポツッポツッポツッポツッポツッときたかと思うとこれがザア〜ッという雨。
「あ〜ありがたいね。
どうです?ご覧よあの雨あしを。
まあ〜それに涼しい風も入ってきますね。
ア〜アッ助かるね。
夕立屋さんや。
もうこんなもんでいいよ。
この辺はね地が低いからあんまり降られるとあとどうにもしょうがないからね。
ハハハどうもありがとありがと。
いやそれにしてもお前さん大したもんだね。
この暑い最中涼しくする事ができるなんてぇのはただの人とは思えないがお前さん一体何者だい?」。
「え〜何者だいと仰られましても手前は実は人間ではございません」。
「人間でない?じゃあ一体何だい?」。
「え〜竜でございます」。
「竜ってぇとあっ竜かい。
フ〜ン『雲を呼ぶ雨を呼ぶ』なんてぇけれどもねそうかね。
じゃあお前さん夏の暑い時にそうやって涼しくする事ができるくらいだから冬場の寒い時は暖かくする事もできるんだろ?」。
「それは手前はやっておりません」。
「やってないってぇとできない?」。
「いや。
できない事はございませんが暖めるほうは主に伜の小竜
(炬燵)がやっております」。
(笑い)
(拍手)長い割にあまり面白くねえ小咄でしたけれども。
(笑い)お天道さんですとかお月さん雷さんなんてぇなぁこらぁお喋りする訳はありませんが落語のほうですからこれはもう何でもお喋りを致しまして。
この3人が下界へ降りてきていろいろお喋りをするという小咄がありますけれども。
「ね〜お天道さん」。
「何です?お月さん」。
「いや今日はこうして一日下界へ降りてきて方々見物してあるきましたがこの世の中てぇところは実にどうも賑やかで面白いところですな」。
「いや私もね今日は一日ゆっくりさしてもらいました。
どうです?雷さんは」。
「いや私もね今日は一日面白い思いをさしてもらいましたヘヘヘ」。
「じゃあどうでしょう?もうちょいと遅いからその辺で泊まりましょう」なんてぇとこの3人が一軒の宿屋へ入りまして。
で朝目が覚めてみますとお天道さんとお月さんの姿が見えません。
雷さん一人。
昨晩の酒が少し残っちゃったと見えましてグ〜ッという高いびき。
気が付いてみると2人いませんから…。
「お〜いお姐さんや。
連れの姿が見えないがねどこ行っちゃったの?」。
「お天道さんとお月さんでいらっしゃいますか?もう朝早くお出かけになりました」。
「ヘ〜エ月日の発つ
(経つ)のは早えもんだな〜」。
(笑い)「まあ〜面白い事仰るのね」。
(拍手)「で雷さん。
あなたはいつごろお出かけになります?」。
「そうよな俺は雷だからもうひと寝入りして夕発ち
(夕立)にしよう」。
(笑い)
(拍手)「こんちは〜。
お暑うございます」。
「暑いね。
こう暑くちゃしょうがないが。
おやおやお前さんなんだねええ?面白い格好してんな」。
「いや。
別に面白くありませんよ。
これ甚兵衛着てるんですから」。
「甚兵衛てぇけれどもさそらぁ普通の甚兵衛と違うな」。
「そりゃまぁねそこいらで売ってんのはね格好はいいんですがね汗は吸い取らねえ風は通さねえでねそこへいくてぇとこれは私の手作りの甚兵衛だ。
ほらよく祝い返しやなんかでもらうあの〜湯上がりタオルってぇのあるでしょ?あれが溜まっちゃってね何か工夫は無えかと思いましてね。
だから2枚合わせてチクチクチクッと縫ってねここん所を首出るようにしてここへ紐を付けてエヘヘ。
便利ですよええもうね湯屋行くったってねもう手拭いもタオルも持ってかねえんですから。
もうねなんですシャボンをギュッと握りましてねで向こう行ったらこのシャボンを甚兵衛にワ〜ッとなすりつけて体をワ〜ッて洗ってごらんなさい体がきれいになって甚兵衛も一緒にきれいになっちゃう」。
(笑い)「あとはよくゆすぎだしてねギュッと絞ってパラッと払ってねヒョイと背中へ引っ掛けてごらんなさい。
そらぁもうねヒンヤリとしていい心持ちだのなんの」。
「そうかい。
そらぁお前面白いな」。
「そんなに面白いですか?」。
「うん。
面白い」。
「じゃあ10万円で売りましょうか?」。
「10万円で買うほど面白かぁないよ。
どうだ?涼しいか?」。
「涼しいのはこの上なしですね。
それにお宅は風通しが良うござんすからね」。
「家はねおかげでもってまぁ南がもろに開いている。
それに多少の庭もあるからまぁ夏場は風通しが良くて涼しい。
夏場涼しいくらいだから冬場はな日当たりが良くって暖かい。
どうだ?お前ん所は」。
「私ん所?風通し?良うござんすよ。
もうねビュ〜ッと入ってきますからね」。
「じゃあ涼しいだろ?」。
「へえ。
まぁ涼しいってんでしょうね。
ただ入る時期がちょいと良くねえんですよ。
6月7月8月なんてぇ時にはもうそよとも風が入らねえ。
世の中に風があるかしらんと思うくらい。
これがね11月から12月1月2月の声を聞くてぇとそりゃもういい風が入ってくるのなんのってねビュウ〜っと入ってきますからねそりゃもう涼しいざんす」。
「そりゃお前涼しいってんじゃないよ寒いってんだお前。
うん?だってなんだろ?お天道様真上来た時には日陰になるだろ?」。
「そうはいかねえんだよ私ん所はね天井にこんな大きな穴が開いてましてねそこからお日様がカンカン照りつけやがる。
ええ。
でもお天気ん時はいいんですがね雨でも降られようもんならどうにもしょうがねえね。
ええ。
この間も嬶がね『お前さん。
今日は降りがひどいから表でお飯食べよう』」。
「それじゃお前天井が無いようじゃないかよ」。
「そこへいくてぇとねお宅は風通しはいいしそれからさっきからこのね風鈴の音色良うござんすね。
チリリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンなんてやがって」。
「どこの風鈴だってみんなチリリンて音がするよ」。
「そうはいかないよ私ん所はねコツコッツンコッツンコッツンコッツンコッツンコッツン」。
「何だい?そのコツコッツンコッツンコッツンってぇなぁ」。
「端はチリリンて音がしてたの。
ところが落として欠えちゃったもんですからね無えよりはましだと思ってぶら下げてありますがね風が吹く度にコツコッツンコッツンコッツンコッツンコッツンコッツンコッツンなんてやがってね風が強くなるとコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ」。
「おいおいおい。
つばきだらけだよその辺汚えなどうも」。
「そこへいくってぇとねお宅は風通しはいいし風鈴の音色は冴えてるし…。
あ〜これは釣り忍ってんでしょ?風情がありますね〜ヘエ〜。
それにこの脇に妙な物がぶら下がってますね。
なんか気になるんですけどこれなんですか?あなたの胞衣ですか?」。
「胞衣なんてぇものはこんな所へぶら下げるもんじゃないよ。
これは蛇含草という草だ。
聞いた事がない?そりゃまぁ無理もないね。
これはねその辺の花屋さんや植木屋さんに売ってるってぇ物じゃないんだよ。
これはねごく山奥の谷間にあるそうだな。
お前うわばみってぇのは知ってるだろ?蛇のこういう太いやつだ。
あれがどうかしたはずみでな人間をパクッとのむ時がある。
そんな時にだねいくらお前うわばみだって人間一人をのみゃなかなか腹ん中で溶けないから苦しい。
苦しいもんだからもう地べたの上をのたうち回る。
そんな時にだね谷間へ下りてってこの草をペロッとなめるとな中の人間がきれいに溶けて楽になる。
これはまぁ毒草だよ」。
「ヘ〜エ。
じゃあまぁ早え話がこれはなんですね?うわばみの胃の薬ですね?あっそうですか」。
「お宅にうわばみがいるの?」。
「話の分からねえ人だね。
うわばみなんてぇなぁ飼って楽しもうってぇもんじゃないよ。
これはなまじないだそうだ。
こうやってね夏場軒先にぶら下げておくと悪い虫が入ってこない」。
「悪い虫いるんだよ私ん所にも。
別に飼ってある訳じゃありませんけれどもねまぁ昼間は左程じゃねえんですがね夜中にもう電気でも消そうもんなら柱の割れ目からゾロゾロゾロゾロ出てきやがる。
あらぁ性質が悪いね〜。
今まじないってぇましたね?まじないってのはいっぱい無くったっていいんでしょ?ちぃっとあったってまじないになるんでしょ?じゃあこれ半分下はいなこれ」。
「うまい理屈だな。
そう言われるとやらない訳にいかないね。
じゃあまぁ持ってきな」。
「ありがとうござんす。
いや別に踏み台も何も要りませんよちょいと背を伸ばしゃ届きますから。
じゃあこれええ半分こっちぃやってまたもとへエヘヘ。
どうもありがとうござんす。
どうもこの甚兵衛ってぇのはね隠しが無えでしょ?懐が無えんで不自由ですがね無きゃ無いでこのねええこの紐に結わえつけるって手がありますから。
へいこれで大丈夫エヘヘ。
どうもありがとうございました。
それから私はいろいろ気になるんですがねさっきから見てますとだいぶ火鉢に火を熾しましたがね。
あ〜そうかお宅は風通しが良くて涼しいてんでこれから火にあたろうてぇの?」。
「お前がそんな格好してるほどの陽気だよ。
いくら涼しいったってお前火にあたるほど涼しかぁないやね。
まぁここをご覧よ餅があるだろ?私が餅好きなもんだからな親類の農家からついて送ってきてくれた。
夏の餅はどうもカビが早くていけないがねこれから茶菓子代わりに焼いて食べようと思ったところへお前さんが来た」。
「餅?餅ですか?あっ餅好き餅大好き餅好きですよ私」。
「『好きですよ私』ったって食べろとも何とも言ってねえじゃねえ」。
「あなた意地が悪いね。
私が餅が好きだっつってんだからさ『お上がんなはい』ぐらいの事をお言いなはい」。
「言ってる間が無えや本当に。
『餅を焼いて食べるんだ』っつったら『餅?餅ですか?餅好き餅大好き餅好きですよ私』ったら言ってる間がないだろ?まぁ好きならお上がりこんなにあんだから」。
「ご馳走さま。
いいえどうも私はね餅となると目が無えんですよ。
ええじゃあ頂きます。
どうもすみません。
ご馳走さま。
今こんなにあるっつったなぁそこにあるだけ?それでそっくり?それで全部?ア〜ッたった」。
「何だい?この男はたったってぇ言いぐさはないだろ?お前。
切り餅にして50〜60あるんだよ?これだけありゃ足りるだろ?」。
「いいえ。
そんなものは私の歯くそだ」。
「これだけの餅がか?」。
「もう食う気になりゃ朝飯前です」。
「お前ね餅なんてぇものは入るようでなかなか食べられるもんじゃないんだよ。
じゃあお前50も60もある餅を朝飯前にきっと食うか?」。
「食わせるか?」。
「面白い食べさせよう。
大きな事を言いやがって。
50も60もある餅を歯くそだの朝飯前だの。
これ一体何をつけて食べるんだ?醤油か?それとも砂糖か?」。
「何もつけないエヘッ。
餅に味があるんだよ。
プウ〜ッと脹れたところをねただ食べる」。
「こりゃお前さん本当の餅好きのようだな。
焼いてあげましょ。
そのかわりいいかい?お前ね大きな事言ったんだからこれ1つでも残すてぇと承知しないよ」。
「そんな事はもうね心配しなくもようござんす。
それよりもね焼くほうを心配して下さいな。
食べるのは私ですからねあなた焼く人私食べる人。
それからあんまり焦がさねえようにしてもらって。
ええ。
私はどうも猫舌なもんですからね焦がされちゃうてぇと駄目なんですよ。
ええ。
で焼けたらその〜なんですあっお盆がありますねその上へ載せといてもらって。
どうもありがとうございます。
アハハハあ〜焼けてきた焼けてきたこりゃありがてぇねどうも。
そろそろ食べ始めますがね断るなら今のうちですよ私は食べ始めるってぇととめどがありませんよ。
じゃあいいんですね?じゃあ頂きます。
どうもご馳走さまエヘヘ。
ウワ〜ッ熱熱熱っこりゃ熱いやアハハ。
どうも舌も猫ですけれどもね手も猫なもんですからね。
ええ。
ウワ〜こりゃ熱いやフウ〜フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜こりゃ熱いやフウ〜フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜。
じゃあ頂きますご馳走さま。
フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜…。
ハア〜ハアハアハアハア。
どんどん焼いてウフン。
フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜…」。
「ハア〜ハアハアハアハア」。
「じゃんじゃん焼いて。
フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜…。
ハア〜ハアハアハアハア」。
「せわしねえ食い方だねお前のは。
口ん中入ったかなと思うと無くなっちゃうんだね。
冷や奴食べたってお前もう少し手間のかかるもんだよお前のはそれ噛まないのか?」。
「噛まない。
私は大概の物は噛まないね。
でもねプリンとかねチョコレートですとかねああいう物は噛みます。
ウフッこの間間違えてねウフッカレーのルーのみ込んで驚いちゃった」。
「嘘をつけ大きな事を言いやがって。
お前一人でうん?食べるんだからもっと落ち着いてゆっくり食べな」。
「あなた手を出さない?本当に?あっそうですか。
いえ私はねあなたに一つでも弾かれちゃいけねえと思って無理してのみ込んでんだよ。
うわばみじゃねえんですからね無理にのみ込みたかぁねえんだ。
あっそうですか。
あなたが手を出さないてぇ事が分かりゃもうこっちはね落ち着いてゆっくりと頂きますエヘヘ。
あ〜ね?田舎の餅。
田舎の餅ってぇなぁね色からしてね違いますね。
ええ。
このねうんフウ〜まずね田舎の餅ってぇなぁ米がいいね?そこへもってきて水がいいでしょ?そこへもってきてつきがいいいいつきしてますからねまるでこれゴムみたいちっとやそっとじゃちぎれませんよ。
ご覧なさいほら。
フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜…」。
「うん」。
「いい餅だ。
やっぱりねこんないい餅をただのみ込んでたんじゃもってえねえやアハハ。
やっぱり口はききようですね。
口のききようがいいてぇとこういううまい餅がただ食える。
口のききようが悪いてぇと手前の餅を他人に食われて見てなきゃならないアハハ。
やっぱり口はききようだどうもなアハハ。
うん。
そりゃこういうのも…」。
「黙って食べな黙って。
どうする?お茶をいれてあげようか?」。
「要らない。
そんな物飲んじゃった日にゃもう餅の入る所少なくなっちゃいますからね。
それじゃただ食べていても能がありませんからちょいと芸当をご覧にいれましょうかね。
え〜最初は『出世は鯉の滝のぼりの餅』。
ようござんすか?フウ〜フウ〜フウ〜フウ〜ヨッ」。
「ほ〜らそっちから見ると滝のように見えるでしょ?ね?こいつをこう上のほうへやっといてね下のほうから『滝のぼりの餅』」。
「ハウッ」。
「『滝のぼりの餅』。
今度は同じようですがね『遊園地はブランコの餅』。
ようござんすか?フウ〜」。
「『ブランコの餅』」。
「ハア〜ハウッ」。
(笑い)「『ブランコの餅』。
今度は2ついっぺん『お染久松相生の餅』。
こっちがお染さんこっちが久松さん。
ようござんすか?ヨッ」。
(拍手)「ばか野郎2つ喉へ入れてつかえさせてやがら本当に。
そっちを向けそっちを。
ほらっ」。
「ヒャア〜ッ。
アア〜ッハア〜ッ驚いたア〜ッ。
もう少しで餅と心中するところ。
ア〜ッびっくりした。
さあ〜食おう」。
「何を言いやがる」。
もうさすがの男もあらかた食べてしまいましたが6つばかり残して目を白黒させて。
「ア〜ウ〜ッハア〜ッハア〜ッ餅まだ残ってますか?」。
「まだ6つばかり残ってら」。
「フウ〜ッフウ〜ッ」。
「フウ〜ッア〜ウ〜」。
「ハ〜ッハア〜ッ」。
「アハッハ〜ッハ〜ッハ〜ッハ〜ッ」。
「ア〜ッハ〜ッも…餅まだ残ってますか?」。
「ちっとも入りゃしねえじゃねえかよ。
まだ5つばかり残ってら」。
「もう餅もう食べられない」。
「食べられない?お前この餅見た時何つった?歯くそだの朝飯前だの。
これでも朝飯前か?」。
「昼飯過ぎ」。
「何を言いやがる。
そんなもん入りゃしないからもうお帰りお帰りお帰んなさい」。
「すみませんけど鏡取って下さい」。
「『鏡取れ』?お前喉から出るほどになっちゃって今更鏡を見て気取ったってしょうがねえだろう本当に。
ほら鏡」。
「気取る訳じゃないんですよ。
下向くと餅が出ちゃうん。
下駄探すの私の下駄」。
「ばかそこに揃ってら」。
「さいなら」なんてんで家へ帰って参りましたがそらぁもう苦しいのなんの。
早速おかみさんに奥へ床を敷いてもらいましてあぐらかいてみたが苦しい横になってみたが苦しい寝てみたが苦しい。
「アア〜ッ苦しい。
もうこんなばかな事は二度とするもんじゃない。
なんとかしてこの苦しみから逃れられないかしらん」と胸をさすっておりますとヒョイと手に当たったのがさっきもらってきた蛇含草。
「そううわばみが人間をのんで苦しい時にこの草をなめるってぇと中の人間がきれいに溶けて楽になる。
これはうわばみにも効くんだから人間にも効くだろう」てんでどこをどう勘違い致しましたかこの草をムシャムシャッと食べてしまいまして。
ご隠居さんのほうは小言を言ったようなもんの心配ですから。
「どうしたい?おかみさん」。
「まあ〜旦那ですか。
いいえ家のがどうも大変ご馳走さまでございました」。
「ご馳走さまじゃないよ。
お前さん所のご亭主ぐらい意地の汚い人はいませんよ。
その端っからね無理だとは思いましたがね言った事が私もちょいとねカチンときたんで食べさせちまったらとうとう音を上げてしまったがあれからどうしたい?」。
「なんですかね自分でもきまりが悪いんでしょうねご覧なはいなこのもう暑いのに障子をピタピタッと閉めきってさっきから布団の上でウンウンウンウン唸ってましたけれどもねそれでもついさっきから唸り声が聞こえなくなりましたんでいい按配に寝つかれたんだと思いますわよ」。
「そうかい。
だったらいいがね。
またなんだったら医者にでも診せなきゃいけないが。
あ〜いいよ私が見ましょう」とご隠居さんが障子をサラッと開けてみたら人間がきれいに溶けて餅が甚兵衛着てあぐらかいてました。
(拍手)
(打ち出し太鼓)NHKのスタジオに160人の若者が集まった。
2015/08/16(日) 15:00〜15:30
NHKEテレ1大阪
日本の話芸 落語「蛇含草(じゃがんそう)」[解][字]

落語「蛇含草(じゃがんそう)」▽三遊亭圓輔▽第672回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「蛇含草」▽三遊亭圓輔▽第672回東京落語会
出演者
【出演】三遊亭圓輔

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:2788(0x0AE4)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: