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 昨年8月20日、広島市の住宅街を土石流が襲い、75人が亡くなった土砂災害の被災地で、地価の下落が生活再建の壁になっている。被害が大きかった地域では、1年間で5割も下落した土地がある。新たに建設する砂防ダムの用地買収でも、住民の不満が募っている。

 「被災地のど真ん中。常識で考えたら、買う人も借りる人もおらんよ」

 今年初め、広島市安佐南区八木3丁目の家と土地を相続した60代の男性は、ただ同然の価格で手放した。「住む人はおらず、管理するにも更地にするにも費用がかかる。不動産会社にすべてを任せる形で譲るしかなかった」と話す。

 国土交通省発表の公示地価(1月1日時点)では、被災地に近い緑井8丁目が前年比9・5%減と全国の住宅地で3番目に大きい下落率を記録した。

 道路に面した土地の評価額を示す広島国税局発表の路線価(同)でも、被災地周辺が前年比でおおむね1~3割下落した。被害が大きかった八木3丁目や4丁目の山ぎわ近くでは、5割近く下落した路線もある。