これって効きますか?

「いわゆる健康食品」という言葉を聞いたことがありますか?

実は、法律上は「健康食品」の定義はありません。ですが一般通念上、健康の保持増進に資する機能性を有する食品が「健康食品」と呼ばれています。

現在、我が国で機能性を表示できる食品は、シリーズで解説している「機能性表示食品」のほかに、「特定保健用食品」と「栄養機能食品」があります。

それ以外は一般食品に分類され、カプセルや錠剤の形をしていても、野菜や果物と同じ一般食品になります。そして重要なのは、これら一般食品は機能性を表示できません


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しかし、健康の保持増進の効果が科学的に実証されていないにも関わらず、その効果を期待させるような虚偽または誇大と思われる広告・宣伝をしている健康食品が跡を絶ちません。

そのため、厚生労働省や消費者庁は、このような食品を「いわゆる健康食品」と名付け、厳しく規制の対象としています。

そして、最近、これら「いわゆる健康食品」の行く末を示す資料が、内閣府消費者委員会「第1回 特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会」で公開されていたので紹介したいと思います。

その資料は「特定保健用食品等の在り方に関する論点整理(第193回消費者委員会本会議資料1)」。「いわゆる健康食品」のことを言及している箇所を抜粋します。

平成27年4月には機能性表示食品の制度が始まり、企業の自己認証で健康強調表示を行うことができるようになった。同制度による製品は特保とともに、「いわゆる健康食品」と呼ばれる製品群に含まれる、健康への効果や安全性が明らかでない食品の淘汰に寄与することが期待されている。


つまり、機能性表示食品制度が始まったのに伴い、これまでの特定保健用食品(トクホ)などを含めた保健機能食品制度が、国民にきちんと理解されることで、将来的に「いわゆる健康食品」と呼ばれる製品群を市場から排除することが国の考え方として示されたことになります。

もちろん、現時点では「いわゆる健康食品」とされている製品も、機能性を科学的に実証することで「機能性表示食品」や「特定保健用食品」になる可能性もあります。


図表2拡大


以前、このコラムで「機能性表示食品制度は「規制緩和」なのか?」というテーマを取り上げました。

個人的な見解として、

  • 科学的根拠もなく、イメージ戦略だけで大々的に宣伝広告を展開して健康食品を販売している企業にとって、機能性表示食品制度は『規制強化』
  • 自社の製品の機能性について研究を積み重ねてきた「真面目な」企業にとっては、機能性表示食品制度はこれまでの努力が報われる制度になり、見方によっては『規制緩和』

ということを紹介しました。

どうも、国も同じことを考えているということで、改めて紹介をさせていただきました。

大野智 (おおの・さとし)

帝京大学医学部臨床研究医学講座 特任講師/早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構 客員准教授 1971年、静岡県浜松市生まれ。1998年島根医科大学(現島根大学医学部)卒業。腫瘍免疫学、がん免疫療法を主な研究テーマにしているが、補完代替医療や健康食品にも詳しく、厚生労働省『「統合医療」情報発信サイト』の作成に取り組んでいる。帝京大学緩和ケア内科、東京女子医科大学消化器外科などで癌患者の診療に当たっている。

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