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中国共産党内報告 台湾の政権交代「確実」 日米と連携警戒

産経新聞 8月20日(木)7時55分配信

 中国政府系の台湾専門家が、共産党内で行った台湾に関する情勢報告で、台湾の次期総統選(来年1月実施)で最大野党、民主進歩党(民進党)による8年ぶりの政権奪還が確実だと結論づけたことが分かった。報告は中国国民党の公認候補を「二軍だ」と酷評する一方、民進党政権の独立路線や親米傾向を予測し、台湾が日米と連携して中国と対峙(たいじ)する局面の形成に強い警戒感を打ち出した。(山本秀也)

 この報告は、中国政府のシンクタンク、中国社会科学院台湾研究所の朱衛東副所長が7月、「当面の台湾情勢と両岸(中台)関係の前途」と題して行った。

 判明した報告内容によると、台湾の内政状況については、昨年11月の統一地方選で、政権を握る中国国民党が惨敗したことを例に同党の弱体ぶりを悲観。同党の総統候補となった洪秀柱・立法院副院長(国会副議長)を「人気のない二軍的な存在」と論評した。

 これに対し、民進党候補の蔡英文・同党主席に関しては、「しなやかな台湾独立」「笑顔の台湾独立」を進めていると評し、「われわれは民進党『台湾独立』政権が、再度登場することに備えなければならない」との結論を示した。

 報告は、台湾の独立傾向が強まるなかで、「米国、日本が(台湾に)手を突っ込む余地が広がっている」と指摘し、蔡英文氏が政権獲得後、米国への依存を強めると予測した。

 その上で、台湾の政権交代後の周辺情勢として、(1)台湾海峡での民進党政権の挑戦(2)南シナ海問題で、ベトナム、フィリピンと連携する米国の挑戦(3)尖閣諸島(原文では中国名「釣魚島」)問題での日本の挑戦−を列挙。東シナ海から台湾海峡を経て、南シナ海に至る日米台の包囲網を意味する「三海連動」の状況が生まれると懸念を示した。

 中国が取るべき対策について、報告は経済をはじめとする中台の実力差が中国優位に傾いているなどとして、国民党政権の8年間に深まった中台の経済・貿易関係を軸に民進党政権を揺さぶる方法を提言。「両岸(中台)の統一は台湾の宿命だ」と述べ、統一政策に自信を抱くよう党内に訴えた。台湾の総統選について、中国政府は公式には「介入も論評もしない」(馬暁光・国務院台湾事務弁公室報道官)として、選挙情勢や候補者への評価は通常明らかにしない。

 任期満了にともなう次期総統選は、来年1月16日に立法委員(国会議員)選と同時に投開票される。現地の世論調査では、民進党の蔡氏がリードし、国民党の洪氏と8月に出馬表明した宋楚瑜・親民党主席が蔡氏を追う情勢となっている。

最終更新:8月20日(木)14時17分

産経新聞