政府のサイバーセキュリティ戦略本部(本部長・菅義偉官房長官)は20日午前の会合で、新たなサイバーセキュリティ戦略案を決めた。防衛策の強化のため政府の権限を強める法改正に乗り出す。政府のサイバー対策の司令塔となる「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」の監査権限の対象を日本年金機構などの特殊法人や独立行政法人に拡大する。
菅氏は「近年、サイバー攻撃は進化しており、我が国の戦略を抜本的に強化しなければならない」と強調した。戦略案は日本年金機構がサイバー攻撃を受けて年金情報が流出した問題を踏まえ、5月末に策定した当初の産業振興策を中心とした案から防御対策に重点を置いた案に見直した。21日にも閣議決定する。
NISCは必要な防御策がとられているか監査し、必要に応じて報告を求め、勧告もする。サイバーセキュリティ基本法改正案を秋に想定される臨時国会に提出する。
専門技術者が多い独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)へのNISC業務の一部委託も盛り込んだ。IPAには高度なIT(情報技術)知識を持つ技術者が多く、業務委託ができれば、防御力向上につながる。
社会保障と税の共通番号(マイナンバー)導入に合わせた地方自治体への支援や、公衆無線LAN(構内情報通信網)「Wi―Fi(ワイファイ)」などの安全確保策を明記。日米サイバー対話の強化も明記した。
2012年のロンドン五輪では公式サイトが2億回以上のサイバー攻撃を受けた。20年の東京五輪も標的となる可能性が高いとみて、政府はサイバー防衛の強化を急いでいる。
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