新国立見切り発車、3000億円突破も

2015年7月8日6時0分  スポーツ報知

 2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設計画を巡り、関係機関のトップが集まる有識者会議が7日、都内で行われ、整備費が当初より約900億円増え、2520億円となることが了承された。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は、資材や人件費の高騰などを理由に挙げた。五輪後に開閉式屋根などを設置すればさらに260億円増の総額2780億円に。17年4月に消費税率が10%に引き上げられると、通常のスタジアムの4倍近い3000億円を超える可能性も出てきた。

 有識者会議でJSCは、当初より900億円膨らんだ新国立の整備費用2520億円の内訳を説明した。膨張した理由は資材や人件費の高騰にあるとして、これまでと同様の説明を繰り返した。

 五輪後に設置するとしたフィールド部分を覆う開閉式屋根については膜を二重にする変更を行うほか、一部の空調設備も見直すと報告。屋根の設置や電動式可動席にかかる費用を260億円とした。修繕費も完成後50年で1046億円と、当初より約390億円以上も膨らむ見通しを示した。 費用や工期の面で最大のネックとされるのはJSCが固執した「キールアーチ」と呼ばれる巨大なアーチ構造だ。有識者会議での専門家の説明によると、長さ約370メートル超の鉄骨のアーチは2本で約200億円。さらに特殊なデザインに起因する加工や溶接により、費用は総額で約760億円に上る。

 会議後、JSCの山崎雅男本部長は会見で「(2本のアーチなど)屋根の鉄骨は非常に特殊な技術が必要。日本でこれができる業者は数社しかない。競争原理が働かず価格が高止まりする」と話した。試算では、17年4月の消費税率引き上げ分は含まれておらず、開閉式屋根など当初予定した全ての機能を備えた「完成形」は、約3000億円に上る可能性が出てきた。

 収支計画も事実上、破綻した。維持管理費については40億円と試算。コンサートやスポーツなどで10億円の収入があり、VIP席などの販売で12億円の収入があるとした。だが、黒字額は整備費の膨張で当初の3億5000万円の約10分の1となる年間3800万円に大幅下方修正。ここに年間21億円の修繕費を組み込むと、20億円以上の赤字に転落する。

 財源についてもメドは立っていない。文科省は不足分の1000億円以上をスポーツ振興くじで補う考えだが、売り上げが低迷するリスクもある。

 JSCが配布した30ページの資料には、ほぼ全てのページに「独立行政法人(JSC)は独立採算を前提としない」、「計画は変更の可能性があります」などと注釈が入っていた。斬新なデザインが話題となった未来の競技場は、「負の遺産」となる可能性を秘めたまま、見切り発車の形で走り出した。

  • 楽天SocialNewsに投稿!
社会
報知ブログ(最新更新分)一覧へ