こうのとり:H2Bロケットで打ち上げ成功 JAXA
毎日新聞 2015年08月19日 20時54分(最終更新 08月20日 00時25分)
三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は19日午後8時50分、国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を運ぶ無人補給機「こうのとり」5号機を搭載したH2Bロケット5号機を鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げた。約15分後、こうのとり5号機は予定通り地球周回軌道に投入され、打ち上げは成功した。
こうのとり5号機には、滞在中の宇宙飛行士のための水や食料のほか、宇宙最大の謎の一つ「暗黒物質」の観測装置「CALET(キャレット)」や、マウスなどの小動物を飼育できる実験装置など計5.5トンの物資が積まれている。
ISSへの物資補給機は昨年10月以降、米民間企業が運用する「シグナス」「ドラゴン」、ロシアの「プログレス」が立て続けに失敗しており、こうのとりへの期待が高まっていた。今年7月29日には、米航空宇宙局(NASA)からの緊急要請を受け、水再生システム用ポンプなど約210キロを積み込んだ。
JAXAによると、こうのとり5号機は24日にISSに到着し、滞在中の油井亀美也・宇宙飛行士(45)がロボットアームを使ってISSに結合させる予定。若田光一・宇宙飛行士(52)がNASAの交信担当者として結合作業を支援する。
H2Bは、こうのとり打ち上げを主目的に、主力ロケットH2Aを改良してJAXAと三菱重工業が共同開発。2009年の1号機以降、5回連続の打ち上げ成功となった。H2Aと合わせた成功率は97%(33回中32回成功)となった。今回の事業費総額は約360億円。【斎藤広子】
◇解説 存在感アピール コスト削減課題
国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届ける米国とロシアの補給機が立て続けに失敗する中、日本の「こうのとり」が5回連続で打ち上げに成功し、日本の存在感をアピールする結果となった。ただ、高額な打ち上げ費用には政府内に批判があり、今後はコスト削減と信頼性の両立が課題となる。
ISSへの物資補給はこうのとりのほか、米民間企業2社の「シグナス」と「ドラゴン」、ロシア宇宙庁の「プログレス」が担うが、昨年10月にシグナスが打ち上げに失敗。今年に入ってからも4月にプログレス、6月にドラゴンが失敗した。星出彰彦・宇宙飛行士(46)は「失敗のないこうのとりは今やISSの物流の根幹を担っている」と指摘する。
一方、ISS参加のため、日本が負担する年間約400億円の費用には批判が根強い。このうちの大部分を占めるこうのとりについて、文部科学省は現行機種は9号機までとし、約200億円かかっている製造・運用費を半額の100億円程度に抑えた改良型を2021年ごろに投入することを検討している。
今年1月に閣議決定された新しい宇宙基本計画では、宇宙利用の拡大をにらみ、コストの低減が大きなテーマになった。主力ロケットについても、打ち上げ費用を現在のH2Aの半額程度の1基約50億円に抑えた新型「H3」の開発に着手している。高い安定性とコスト削減をどのように両立させていくのか、日本の技術の真価が問われる。【斎藤広子】