(英エコノミスト誌 2015年8月15号)

支持率の低下に直面しても、首相は無頓着なように見える。

安倍首相が戦後70年談話を発表

顧問たちの不安をよそに、安倍晋三首相は支持率低下を気にしていないように見える〔AFPBB News

 日本を平和主義から遠ざける安倍晋三首相の動きに対する国民の不満が原因で首相の顧問らが神経質になる中、本人は落ち着きを深めるばかりだ。安倍氏がこの夏国会を通過させようとしている安全保障法案は、攻撃を受けた同盟国、特に米国を自衛隊が守ることを可能にするようなやり方で憲法の解釈を変えるものになる。

 顧問らは、この変更に対する反対が、1960年に岸信介氏が米国との安全保障条約改定を断行した時に政府を混乱させた左翼の抗議運動に似たものになりつつあると不安を感じている。

 だが、安倍氏は自身の祖父である亡き岸氏と比較されることを好む。

岸信介との比較

 安倍氏は最近本誌(英エコノミスト)に対して、岸氏が不人気だが極めて重要な改正について正しかったことが証明されたのと同じように、今回の安保法案について自分が正しいことも証明されるだろうと語った。

 これは安倍氏の顧問らにとっては慰めにならない。岸氏は正しかったことが証明されるずっと前に、辞任を余儀なくされたからだ。

 戦後70周年の記念行事が目白押しの月に、世論は安保法案に対して、そして安倍氏に対して厳しくなっている。1945年8月6日の広島への原爆投下、その3日後の長崎の原爆による破壊、8月15日のラジオ放送から流れる、「戦局必ずしも好転せず」と説明する裕仁天皇の高い声――。そのラジオ演説は日本の降伏と第2次世界大戦の終結を知らせていた。

 国会議員たちは、戦争の記憶が、まだ参院を通過していない安保法案を巡る議論により気がかりで感情的な趣を加えていると話す。