(2015年8月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ニコラス・マドゥロ大統領は、いつまで債務返済の意志を貫けるか〔AFPBB News〕
ニコラス・マドゥロ氏は2年半前にベネズエラの大統領に就任した際、前任のウゴ・チャベス氏から、国の債務の元利返済は必ず行うという約束と、1バレル=110ドルを超える値がついていたベネズエラ産原油とを引き継いだ。
しかし、それも過去の話となった。原油価格は先週になって再び下落し、ベネズエラ産原油の値段は1バレル=40ドルに向かっている。
国際通貨基金(IMF)によれば、ベネズエラの今年の経済成長率は7%のマイナスに落ち込む見通しだ。
また、格付け会社ムーディーズの推計によれば対外収支の赤字は今年だけで300億ドルに達する勢いで、その穴埋めに外貨準備が使われているという。
ベネズエラ国債を保有する投資家は、来年にも予想されるデフォルト(債務不履行)から身を守ろうと躍起になっており、今週、ベネズエラのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の需要が記録的な水準に増加した。
原油価格が1ドル下がるたびに歳入が7億ドル減少
インフレが手に負えなくなり、国民が基本的な物資の不足に苦しむ中、債務に関する前任者の約束を守りたいというマドゥロ氏の気持ちもついには折れてしまうのでないか――。そんな疑問を投資家たちは抱くようになっている。
「来年のリスクは、ベネズエラの返済能力次第。今年のリスクは、ベネズエラの返済意志次第だ」。首都カラカスを拠点とするコンサルティング会社エコノメトリカでディレクターを務めるエンケル・ガルシア氏はこう語る。
大手産油国の中で、今回の原油安の痛みをベネズエラほど強く感じているところはない。この国では、輸出の96%を原油販売が占めているからだ。エコノミストらの試算によれば、原油価格が1ドル下がるたびにベネズエラ政府の歳入は7億ドル減少する。