新たな安全保障関連法案を審議する参院の特別委員会が、きのう再開した。

 冒頭から問題になったのは、法案成立を先取りして自衛隊が作成していた内部資料である。今月11日の特別委で共産党の小池晃氏が暴露したのを受けて、審議が中断していた。

 この資料には、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)と安保法案に伴う、対米支援の具体的な内容が含まれている。

 それぞれ十分な議論が必要な内容なのに、国会にも国民にも伏せられてきた。政権の国会軽視、国民軽視の姿勢が改めてあらわになったと言える。

 資料が明確に示すのは、日米の軍事的な「一体化」がいっそう進む方向性である。

 ▼平時から利用可能な常設の同盟調整メカニズム(ACM)の中に「軍軍間の調整所」を設置。要員派遣の検討が必要

 ▼南シナ海での情報収集、警戒監視と偵察などの関与のあり方について、今後、ワーキンググループなどを活用して検討

 自衛隊と米軍が日常的に緊密な連携をとり、日米共同計画を策定し、共同訓練を重ねることで、抑止力を高める――。そんな将来像が浮かぶ。

 だが、そこで日本のシビリアンコントロール(文民統制)は確保されるのか。不測の事態の際、米軍の現場レベルの軍事的な判断に引っ張られないか。次々と疑問がわいてくる。

 政府が国会であいまいな答弁をしてきた南シナ海での対米協力についても「検討する」と明記しているが、日本がどこまで踏み込むのかは難しい問題だ。日本海や東シナ海の警戒が手薄にならないか。防衛費が拡大することはないか。

 安倍首相は今春の米議会演説で、法案を「この夏までに成就させる」と公約した。水面下では、国会で説明できない対米支援の方向性まで約束していたということなのか。

 国連平和維持活動(PKO)をめぐっても、派遣中の南スーダンでの活動拡大が検討スケジュールに盛り込まれていた。離れた場所で襲撃された他国部隊などを武器を使って助ける「駆けつけ警護」の任務への追加を想定しており、まさに法案成立を先取りした計画だ。

 資料は5月に作られたという。衆院の審議入りの日に、自衛隊幹部のテレビ会議で使われていた。その後も重大な事実が隠され、判断材料を欠いたまま、衆院は法案を通過させたことになる。

 事実が伏せられた審議で、法案を成立させてはならない。