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【Q&A】セックスワーカーの人権擁護を求めるアムネスティの考え

2015年8月19日
[その他]
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  1. アムネスティは、なぜセックスワーカーの人権を擁護する決議を採択したのか

    世界中でセックスワーカーは、最も社会に取り残された存在のひとつである。多くの国で、性的暴力、人身売買、強制立ち退き、医療制度からの排除をはじめとする差別など、あらゆる人権侵害に脅かされている。ほとんどの人びとが、法的保護をまったく、あるいはほとんど受けられない。そして、多くの場合、その人権侵害と虐待は、警察、客、第三者によって行われている。

    例えば、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで2010年におこなったセックスワーカーの調査では、6か月間にセックスワーカーの50%が、客または警察によって強かんされていたことがわかった。

  2. なぜ非犯罪化がセックスワーカーの人権を擁護することになるのか

    セックスワークの非犯罪化は、セックスワークが犯罪行為ではなくなるということだ。つまりセックスワーカーが法の外で生きる必要がなくなる。そして、その人権が守られる新たな余地ができる。

    過去2年間、アムネスティはこの問題について調査と協議を重ね、世界中の異なる見解に幅広く耳を傾けてきた。セックスワーカーを巡る問題が極めて複雑であることを認識しているからこそ、この問題を国際人権基準の視点から捉えることにした。その結果、セックスワークの非犯罪化が、セックスワーカーの人権を擁護し、直面する人権侵害の危険を減少させる最良の方法であるという結論に達した。

    セックスワーカーが「犯罪者」あるいは「共犯者」扱いされなくなれば、強引な警察の摘発を受ける恐れが少なくなり、警察とより良好な関係を築き、暴力や虐待を受けた場合も警察に保護を求めることができる。法的保護だけでなく、社会的保護も受けやすくなる。

  3. セックスワークの非犯罪化は、人身売買を助長するだけではないのか

    ここではっきり断言しておく。アムネスティは、性的搾取を目的とした人身売買など、いかなる形態の人身売買も断じて許さない。人身売買は人権の忌まわしい侵害であり、国際法で犯罪とするべきである。この考えは、アムネスティのあらゆる方針において明確にされている。

    セックスワークの非犯罪化は、人身売買に対する刑事処罰をなくすことではない。また、非犯罪化によって人身売買が増加することを示す証拠もない。

    その逆で、アムネスティは、非犯罪化が人身売買との闘いにも役立つと確信している。セックスワークの非犯罪化により、セックスワーカーたちが共同で仕事をしやすくなり、自分たちの権利を主張することができる。その結果、仕事の条件や基準が改善されるとともに、性産業とそこに潜む人身売買への監視強化につながる。

    処罰される恐れがなくなれば、セックスワーカーは警察など法執行官に協力し、人身売買業者とその被害者を割り出すことも可能になる。

    女性の人身売買に対するグローバル・アライアンス、反奴隷インターナショナル、国際労働機関(ILO)などのNGOや国際機関は、非犯罪化が人身売買撲滅において有益な役割を果たすとしている。非犯罪化は、性を売る人びとの権利に対する認識を高め、人身売買を含めてセックスワーカーに対する人権侵害に終止符を打つ一助となる。

  4. セックスワークの非犯罪化が、どのように女性の権利保護につながるのか

    方針策定の目的は、セックスワーカーの人権保護を強化することである。セックスワーカーの多くは、社会で最も片隅に追いやられた女性である。方針では、女性のセックスワーカーの保護強化と自立できる権利や環境整備(エンパワーメント)を訴えていく。

    女性がセックスワークを始める主な要因は、ジェンダー間の不平等と差別である。私たちはこの問題に無知でも無関心でもない。しかし、選択の余地が少ない女性を犯罪の対象にすることや、生命を危険にさらすような状況に追い込むような刑法や警察の対応は、この問題の解決にはならない。

    セックスワーカーを犯罪の対象とすることは、自らの選択で職に就くことを一層難しくしている。アムネスティの方針は、非犯罪化だけでなく、女性をはじめ社会の片隅に追いやられた人たちがセックスワークを選ぶ必要なく生きていける力をつけるために、各国が取るべき一連の措置をまとめたものとなる。

    各国は、適切で時宜を得た支援を提供しなければならない。例えば、公的給付金、教育、訓練、代替職などである。なお、これらのプログラムへの参加は、セックスワーカーに強要されるものではない。

  5. アムネスティには、セックスワークに関する今回の決議を裏付ける根拠があるのか

    私たちは、セックスワーカーの人権を擁護する方針案の策定に2年を要した。この方針案は、信頼できる調査と多数の団体、個人との協議に基づいて作成された。

    アムネスティは、世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UN AIDS)、健康への権利に関する国連特別報告者、その他の国連諸機関がこれまで作成した膨大な資料に目を通した。また、国連ウィメン、反奴隷インターナショナル、女性の人身取引に対するグローバル・アライアンスなどの団体の見解も検討した。さらに詳細な調査を自ら実施し、アルゼンチン、香港、ノルウェー、パプアニューギニアにおいて、200人以上のセックスワーカー、元セックスワーカー、警察、政府などの関係者に聞き取りをした。

    世界中のアムネスティ事務所も協力し、セックスワーカーのグループ、サバイバーを代表する団体、セックスワークの廃止を求める団体、フェミニストなどの女性の権利の代表者、LGBTIの活動家、HIV/AIDSの活動家など大勢の人びとと率直な話し合いを行った。

  6. 性を売る人には保護が必要であるが、なぜ「ポン引き」を保護するのか

    アムネスティの決議は「ポン引き」を保護するためのものではない。セックスワーカーを搾取し虐待する第三者は、私たちの提案するモデルでも犯罪の対象になる。

    しかし現在、法律があまりに幅広く適用されている。例えば、売春宿業や売春営業を規制する法律がしばしばセックスワーカーに対して適用され、身の安全を守ろうとする行為そのものが、犯罪とされている。例えば、多くの国では、身の安全を守るために2人のセックスワーカーがいっしょに働くと、その場所は「売春宿」とみなされる。アムネスティは、むしろセックスワーカーを罰してその生命を危険にさらすような「何でも犯罪化」ではなく、法律を見直し、搾取、虐待、人身売買への対応に焦点を当て直すことを提起している。

  7. アムネスティはなぜ北欧モデルを支持しないのか

    北欧ではセックスワーカーを直接犯罪対象とせず、買春や業者だけを犯罪としている国々がある。いわゆる北欧モデルである。このアプローチでは、買春や売春場所の賃借などが依然として犯罪行為であるため、セックスワーカーの安全を危うくし、虐待の危険にさらす結果となっている。警察には相変らず目をつけられ、警察は刑法を適用してセックスワークを根絶しようとしている。

    現実には、買春を取り締まる法律があるために、警察の摘発から買い手を守ろうとしてセックスワーカーがさらに危険を負っている。セックスワーカーたちは、自分たちが安全と思う場所はなく、摘発を恐れる顧客から自宅に来るよう言われると、アムネスティに繰り返し話してくれた。売春宿として摘発されることを恐れる家主から、家を追い出され路上生活を余儀なくされるケースもある。

    セックスワークは北欧モデルにおいても極めて不名誉な仕事とされ、差別と疎外化の一因となっている。

  8. アムネスティはなぜ、買春を人権だと考えるのか

    私たちは、性の買い手の権利をうたっているのではない。犯罪化と関連してさまざまな人権侵害に直面するセックスワーカーを保護することが、そのすべてだ。

    方針策定を決めた根底にあるのは、人権侵害を特に受けやすい人びとの権利を守るべきだ、という信念だ。

  9. 今回の決議は、人権団体であるアムネスティがセックスワークを奨励しているということか

    いいえ。アムネスティは、誰一人として自分の意思に反してセックスワークの世界に入るべきではないし、セックスワーカーになるよう強要されてはならないと考えている。セックスワーカーの多くは、他に生計手段がないためにセックスワークに従事し、選択の余地はなかったと証言している。これではセックスワーカーはいつまでたっても社会の片隅に追いやられたままである。だからこそアムネスティは、このように差別され排除された人びとの人権を擁護する方針をしっかりと持ちたいと考えたのである。

  10. アムネスティは決議を採択した。次は何をするのか

    この決議採択は、アムネスティ国際理事会に、セックスワーカーの人権擁護のための方針を立て、合意する作業にゴーサインを出した。これは、10月に開かれる次の理事会で議論される。国際理事会では、今まで行ってきた協議と調査の結果にもとづき、セックスワーカーの人権擁護に対するアムネスティの取り組みを反映する最良の方針を決定することになる。

以上

アムネスティ国際ニュース

2015.08.11 アムネスティがセックスワーカーの人権擁護決議を採択

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