IoT<Internet of Things>と仮想通貨技術が創る未来
この記事の所要時間: 約4分30秒ビットコインなどの仮想通貨は、その技術的ポテンシャルを高く評価されながらも、現在のところ実社会にはあまり適用されておらず、社会の役にたつマーケットを探しているという状況です。ここでは、IoT(Internet of Things)と仮想通貨を組み合わせることによる可能性を示したいと思います。
私は2011年頃、分散型地震計というものを開発していました。通常の地震計は一個百万円ぐらいするのですが、精度の荒い数万円の地震計を数百メートル間隔で配置することによって、地震動の波形の伝わり方を可視化し今後の地震対策に役立てようというプロジェクトでした。
実際にプロトタイプを開発し、当時余震がしばしば発生していた東北地方にデプロイしようと何度か東北を訪れましたが、そこで大きな壁にぶつかりました。
地方自治体からの反応は良く、設置に協力したいと申し出てくれるのですが彼らには予算がありません。ビジネスとして法人設立するには、明確なビジネスモデルを作ることができません。市民ベースの活動とするには、ハードウェアの開発費や部品購入費がかかります。本来は受益者である市民が自発的に設置していくような形が望ましいのは明らかですが、それを実現するのは非常に難しい状況です。
そのような状況の中、”市民発”の通貨ビットコインが世界中に広まりました。広まったインセンティブは投機でしたが、それでも”市民発”で世界に広めた力を利用できるのではないかと研究を始めました。
たどり着いた考えは、仮想通貨を使用して、公的機関、会社、市民それぞれの受益と費用の整合を取れるよう、インセンティブを綺麗に設計しなおすことです。センサー設置者に正しい報酬が渡るように設計することで、自発的に効率良くセンサーネットワークを構築していきます。センサーを設置する際に機器に秘密鍵を搭載し、個人のアカウントと紐付けます。データのアップロード時にはデータに署名を行い、センシングへの貢献を測定できるようにします。貢献に応じて、金銭的な収入が得られるようにします。
この際に、全体のシステムが正しい方向に成長していくようインセンティブを設計します。最初にセンサを設置する人達は、何の役にも立たずに終わる金銭リスクを背負った人達です。ビットコインに習い、初期であればあるほど、利益が出た時のリターンを大きく設定します。これによって、求めるシステムができるかどうか分からない時に実行するハードルを下げます。
その他、必要な場所に必要なだけ自律的に設置されていくインセンティブを考えます。環境センサの測定結果はWEBのgoogle map上に値が表示されるのが一般的です。ここで、設置ニーズが高い場所は閲覧回数も多いでしょうし、画面の拡大もされると予想されます。WEBでの閲覧の統計データを取り、各センサに対してニーズの高い物に傾斜を付けたリターンを設定します。また、あるポイントに新たにセンサを設置すると、どれくらいのインセンティブとなるのかを現状から計算した値も表示できるようにしておきます。
収入として考えられるのは、WEB閲覧による広告収入や国・地方自治体からの補助金、取得データの販売、寄付金等となります。それらの収入を傾斜を付けたインセンティブで分配します。
このようにシステムの成長に経済原理を組み込むと、本当に必要なところに密度高く、環境センサのような公的なセンサを効率良く設置することができます。その他、電気代を払ったり、必要なデータ取得成功者に賞金を払ったりが可能です。
IoM(Internet of Money)はこのように、現在経済原理を組み込めていない場所に経済原理を組み込むことができるという特徴を持っています。また、仮想通貨のように発行主体が無いものは、個人・会社・国・地方自治体をつなぐグルーロジックとしての柔軟性が企業発行のポイントよりも高くより良いシステムを設計しやすくなります。市民(個人の集合)と国の組み合わせという形も作ることが可能になります。
今回は、IoTと仮想通貨を組み合わせる効果を示す一つの案として環境センサへの組み込みを提案してみました。仮想通貨の特徴には以下のようなものがあります。
- 発行主体が無い
- 安全なお金のやり取りができるオープンソースなシステムがすでに存在している
仮想通貨にはマーケットが無いという批判も良く聞きますが、それはただ単にまだ明確なマーケットを見つけきれていないというだけにすぎません。IoT x 仮想通貨には大きな可能性が存在します。
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