聞き手 編集委員・石飛徳樹
2015年8月19日22時36分
文部科学省が国立大学の人文社会科学系学部の廃止・転換を求める通達を出すなど、現代の日本社会には「教養」というものに対する逆風が吹いている。寅さんという「教養」とは対極にいそうな人物を生み出した映画監督の山田洋次さん(83)は「教養」についてどんな考えを持っているのだろう。
――「男はつらいよ」の車寅次郎はインテリ嫌いだとよく言われます。実際そんなセリフもたくさんありますが、インテリ嫌いの一言ではくくれない思いもあるような気がします。
そうだね。寅さんのインテリ嫌いが最も雄弁に語られているのはね、「続・男はつらいよ」で山崎努が演じる若い医者と、寅が言い争いをする場面でね、山崎さんが「その点については僕が謝る」という言い方をしたのを受けて、寅が「お! てめえ、さしずめインテリだな」って言うところですね。そこで観客が大爆笑した。びっくりしました。
――有名なセリフですね。私も大笑いしました。
「てめえ、インテリだな」というのは僕が書いたセリフです。だけど、そこに「さしずめ」をくっつけたのは渥美清さん。優れた俳優というのは、とっても素晴らしい言葉を、時々無意識に出してくるんですよ。寅さんはね、深い教養のある人のことは分かるんですよ。そういう人のことはちゃんと尊敬しています。
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