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賛否分かれる福岡市後援拒否の「戦争展」 来場者の声は?

西日本新聞 8月19日(水)11時6分配信

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 会場外にも平和の訴えが響いた。午後2時、天神中央公園で始まった日韓友好イベント「ピースロード2015」。参加者は約200人。北海道から韓国を目指す自転車2台が到着し、韓国のチマ・チョゴリ、日本の浴衣を着た女性が両国の童謡を歌った。
 実行委員長の林吉植(イムキルシク)さん(63)=西区=は「生みの親は韓国、育ての親は日本。日韓の今の状況は本当に心が痛む」と在日2世の思いを吐露した。
 アクロス3階の県国際交流センター。中国出身の職員、高雪飛さん(29)は戦争展について「個人的な意見」と前置きして語った。「日本は報道やメディアで自由に意見を発表できるが、若者は興味がないように感じる」。中国では体制に批判的なネット発信は一方的に削除されるという。戦争展をめぐって主催者と市が対立しても、互いの立場を主張し合っていることは「いいこと」と映る。
 同センターの県職員の中村悦也さんは「一方を後押しすると見られるのは行政として良くない。市と同じ対応になると思う」。街の声を聞くと、市の対応に理解を示す人たちもいた。

 午後7時前、後援を不承諾とした市の担当部長と課長が来場した。15分ほど首相批判の風刺画などを見て回った。課長は「特定の主義主張であるという考えに変わりはない」と取材に答える一方、部長は「一市民として勉強になった」と語った。ともに「企画そのものは否定しない」と口をそろえた。男性スタッフから「部下もみんな連れてきてね」と声を掛けられ、2人は複雑な笑みを浮かべた。
 主催者によると、初日の来場者は例年の倍を超す383人。市が後援をすべきか否か、取材班は明確な答えは出せない。安保法制は「平和のため」と訴える政権を支持する人も、しない人もいる。さまざまな立場の人たちが、当たり前にものを言える社会に−。そう思って取材し、記事を書いた。戦争展は23日まで。
=2015/08/19付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

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最終更新:8月19日(水)15時28分

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