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賛否分かれる福岡市後援拒否の「戦争展」 来場者の声は?

西日本新聞 8月19日(水)11時6分配信

 「特定の主義主張に立脚している」として福岡市が後援を拒否した「平和のための戦争展」が18日、同市・天神のアクロス福岡で始まった。「表現の自由の侵害」「権力に異を唱えられないのか」。戦後70年の夏、主催団体のメンバーは危機感を募らせる。戦争を知る世代の高齢化、安全保障政策の転換、ぎくしゃくした隣国関係…。来場者や街の声に耳を傾け、その波紋を追った。

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 会場には戦争の悲惨さを伝え、護憲や反原発を訴える資料が約300点展示されている。集団的自衛権行使の危うさを訴えるイラスト、首相の戦後70年談話を報じた15日の新聞各紙も。
 食い入るようにパネルを見ていた東区の馬場紀子さん(68)は、市が後援拒否したことに疑問を感じている。「展示内容は主催者側の主張、問いかけであって結論ではない。見る側の意見は人それぞれ。偏っていると言って拒否するのは理解できない」と語る。
 南区の60代の女性は午前10時の開場と同時に姿を見せた。「若い人が少ない。スタッフも高齢化しており心配だ」と戦争を語り継ぐ難しさを憂える。
 見回すと高齢の人たちが目立つ。「未来の子どもたちのためにやっている」。戦争展に寄せる思いを語ったある男性の手提げ袋に、成人用の紙おむつが入っていた。老いと戦いながらの訴えは、若い世代にどう響くのか。

 漫画作品を展示している西山進さん(87)=南区=は最近、うれしいことがあった。市の後援拒否を知った市内の学生から、反戦や反原発を訴えるプラカードの絵を依頼された。今回の騒動がもたらした、せめてもの救いか。「怖いのは、みんなが自粛して意見を言わなくなること。自己規制をかけ始めると世の中、暗くなる」。戦時下の経験が西山さんにこう言わせる。
 「平和は空気のようなもの。空気が濁って、だんだんと息苦しくならないとなかなか分からない」。戦争展の運営委員長で福岡大名誉教授(憲法学)石村善治さん(88)の言葉だ。

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最終更新:8月19日(水)15時24分

西日本新聞