東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

活動拡大へ性急な自衛隊 安保法案成立前に運用準備

 防衛省は十八日、安全保障関連法案の成立を前提に、自衛隊が新たな部隊運用について資料を作成していたことを認め、同法案に関する参院特別委員会の理事懇談会に資料を提出した。南シナ海での警戒監視活動への関与を検討するとしたほか、南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に当たっている自衛隊の業務に、離れた場所で襲撃された他国部隊などを武器を使って助ける「駆け付け警護」を追加する可能性に言及している。 

 資料は共産党が独自に入手し、十一日の特別委で事実確認を求めていた。防衛省は十八日の理事懇で、陸海空自衛隊を統合運用する統合幕僚監部(統幕)が、法案の内容を部隊に理解させるために作成したと説明。「成立を先取りしたものではない」と強調した。

 同省によると、資料は中谷元・防衛相の指示で五月に作成。法案が最速で八月に成立すると想定し、日米防衛協力の指針(ガイドライン)と安保法案に沿って検討すべき項目を列挙した。

 平時の自衛隊と米軍の協力事項として情報収集や警戒監視を挙げ、南シナ海での活動に言及。安保法案に盛り込まれた「任務遂行のための武器使用」を行うケースとして、PKOでの駆け付け警護や、海外での邦人救出を挙げている。

 特別委は十九日、中谷氏らが出席して一般質疑を行う。野党側は、資料作成はシビリアンコントロール(文民統制)に反するとして追及する方針。

 理事懇では、二十一日に安倍晋三首相が出席して集中審議を行うことでも合意した。

◆対米協力 南シナ海でも検討

 防衛省が十八日の参院特別委員会理事懇談会に提出した内部資料からは、安全保障関連法案を成立させた後、平時から有事まで幅広く対米協力を拡大させることを政府が検討している実態が、あらためて浮かび上がった。

 資料は、四月に再改定された日米防衛協力の指針(ガイドライン)と安保法案に基づく対米協力で、(1)平時(2)他国での紛争が日本の平和と安全に重要な影響を与える事態(3)日本が武力攻撃を受けた事態(4)他国から攻撃された米軍を、自衛隊が集団的自衛権を行使して守る存立危機事態−の各ケースに関して自衛隊内部で検討が必要となる事項を並べた。

 このうち、具体的な検討項目として際立つのが、南シナ海での平時の警戒監視活動だ。警戒監視は現行法でも可能とされるが、日本から遠く離れた南シナ海での活動には、海洋進出を進める中国が反発する可能性が高い。中谷元・防衛相はこれまでの国会審議で可能性を否定はしていないが、あいまいな説明にとどめてきた。

 しかし、内部資料は「今後、ワーキンググループなどを活用し、関与のあり方について検討する」と具体的に検討を進める方針を明記した。中国による南シナ海での環礁埋め立てや滑走路建設を警戒する米軍が、安保法案の成立を契機として自衛隊の活動拡大に期待していることが背景にある。

 ただ、自衛隊の護衛艦や哨戒機を南シナ海に派遣すれば、中国を刺激するだけでなく、日本防衛に必要な日本海や東シナ海での警戒が手薄になりかねない。哨戒機の航続距離の限界など問題も多く、防衛予算拡大や装備増強につながる可能性もある。

 資料は対米協力以外でも、派遣中の南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)で、駆け付け警護を任務に追加することを想定。海外での邦人救出をめぐっても、大使館占拠やハイジャックなど具体的なケースを挙げた。

 いずれも自衛隊の武器使用権限を拡大しなければ実施できない危険な任務。検討の性急さが目立っている。 (金杉貴雄、新開浩)

写真
 

この記事を印刷する

PR情報