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第1回超党派座談会 移民・外国人労働者受け入れ政策

少子化と労働者不足に直面した日本をどうする!?

司会/憲政史研究家倉山満
衆議院議員 自由民主党 大岡敏孝
参議院議員 民主党 金子洋一
衆議院議員 日本維新の会 杉田水脈
参議院議員 みんなの党 和田政宗
※50音順
与党も野党も関係なく、国家のために尽力している各党の若手保守系議員が集結。日本が現在直面している多くの問題について語り合ったー。

倉山:賛成と反対に分かれるからこその民主主義ですが、それ以前に、国家を思う姿勢に対立があっては、日本という国がなくなってしまう危険性があります。しかし今回集まってもらった4人の先生は、正しい歴史観・国家観をお持ちで、私が各党で最も期待を寄せている政治家です。では自己紹介からお願いします。

杉田:日本維新の会の杉田水脈です。「維新・杉田=慰安婦問題」と認識している方が多いと思いますが、その他のこともしっかり取り組んでいます。今後は公務員の労働組合の問題、プレスコードとマスコミの関係、戦時徴用の問題にも力を入れていきます。また先日の国会でも言及しましたが、男女共同参画基本法の廃止に向けて、頑張っていきたいと思っています。

倉山:杉田さんは今年2月の予算委員会で、慰安婦問題に関する質疑をされてから人気が大爆発。今や全国で引っ張りだこですけれども、私が一番最初に杉田さんを紹介したのは、まだ『チャンネル桜』に出演していたときでした。憲法論議でおかしなことを主張する政治家が多い中で、非常に素晴らしい主張をしていたことから"杉田推し"をしたというわけです。

和田:みんなの党の和田政宗でございます。自主憲法制定派で、みんなの党では一番右よりでございまして......。

倉山:全政党でも一番......(笑)。

和田:極右かもしれません(笑)。普段から西村眞悟先生のご指導を仰ぎながら、誇りある日本を取り戻すために活動しています。具体的には「日教組教育による戦前の日本の全否定」や「憲法9条があるから平和を守れている」という間違った呪縛を解くために闘っています。最近は宮城県仙台市において、ソチ五輪・男子フィギュアで金メダルを獲得した羽生結弦選手のパレードが行われたのですが、主催者が日の丸の手旗を用意していなかったことが発覚したため、支援者を通じて2000本の手旗の配布を実現させました。

倉山:和田さんは昨年7月の参議院選挙で某反日政治家を破って当選。まさに「宮城の奇跡」でした。

金子:民主党の金子洋一です。私は経済と安全保障を専門に活動しています。経済では平成22年の初当選直後に「積極的な量的緩和」と「2パーセントのインフレターゲット」を目指して『デフレ脱却議員連盟』を立ち上げました。結局、民主党政権下では実現しなかったのですが、私の考えは安倍政権で実現されました。これは我が国にとって大変いいことだと思っています。だからこそ4月の消費増税は残念でした。

倉山:私が『チャンネルAJER』で番組をやっていたときに、一番最初に出演してくれた政治家が金子先生でした。当時は民主党政権に対する批判の声が大きかったわけですが、「民主党にもこんな素晴らしい政治家がいたのか」と多くの視聴者が驚いていたことを覚えています。

大岡:自民党の大岡でございます。私はこれまで静岡で市会議員、県会議員を務めてきたので、インフラ、教育、経済など内政に取り組んできました。しかし今は国会議員として、国のあり方や守り方、そして外交交渉でも日本の立場をしっかりと主張することで、世界から尊敬される日本にしたいという思いを抱いて活動しています。

倉山:私は安倍政権を支持しながらも、自民党に対しては「賞味期限が切れているのではないか」と批判的な思いを持っています。しかし大岡さんは古き良き自民党の議員です。言うべきことは言い、やるべきことはやる。自民党のいい面を受け継いでいます。自民党の悪い議員は上ばかり見ていますが、大岡さんは横も下も見ているのが素晴らしいですね。

『技能実習制度』の拡大は
様々な問題を引き起こす!?

倉山:今年4月に「外国人労働者の受け入れ拡大」についての報道がありました。それを受けて「安倍政権を倒閣せよ」という声も出ています。そこでまずは与党の大岡さんに聞きたいのですが、そもそもこの話はどういったきっかけで出てきたのでしょうか?

大岡:私もすべて把握しているわけではないのですが、経済界がずっと外国人労働者の受け入れを要求されてきたという経緯があります。また、日本には『技能実習制度』があり、常時10万人から15万人程度の技能実習生を海外から受け入れていますが、安定的な労働力を確保するために、この人数を増やそうという声もあるのです。技能実習制度には、外国人に日本の技術を学んでもらい、帰国後にそれぞれの国で役立ててもらおうという"建前"があります。しかし同時に外国人の労働力を確保したいという"本音"も混在しているのです。政府は本音と建前のどちらを重視しているのかと問われたら、恐らく答弁出来ないのではないでしょうか。

倉山:まだ整理がされていないのですね。

大岡:そうなのです。だからこれから議論を重ねて、政府の意志を明確にしなくてはなりません。

倉山:安倍総理は移民には反対で、一時的な労働者として外国人を受け入れて、親日になって帰国してもらおうと考えているようです。これは移民とは違いますよね。

大岡:移民とは違いますが、それでも問題の種であることは間違いありません。日本には約72万人の外国人労働者がいます。内訳は「日系人やブラジル人労働者」「高度人材」「不法滞在者」「その他の滞在者」がそれぞれ4分の1ずつになります。そして「その他の滞在者」の一部が技能実習生です。もしこの人数を増やすとなると、同時に「不法滞在者」など他の外国人も増加する可能性が生じてしまうのです。さらに現在、技能実習生の年限は3年と定められていますが、これを5年や10年に延ばそうという意見まであります。もし5年も10年も日本にいたら......。

杉田:帰国しないでしょうね。

和田:仮に5年に延ばしたら帰化要件を満たすことになります。技能実習生が心から帰化することを望んでいるなら問題はないですが、悪意を持った国が日本に大量に人材を送り込んで、そのまま日本に帰化させて、内部から日本を崩壊させようとする可能性も否定出来ません。だから技能実習制度の年限を延ばすのであれば、帰化制度も見直さないといけなくなるでしょう。

倉山:帰化制度については議論せず、技能実習制度の年限を延ばすという話が出てきたら危険信号ですね?

和田:気を付けたほうがいいでしょう。

大岡:年限が延びれば延びるほど、結婚や子供を作る可能性も高くなります。するとそれに伴う社会的コストの問題も出てきます。日本の社会インフラのあり方も議論しなければなりません。移民ではないから大丈夫、外国人労働者だから大丈夫、と簡単に決められる話ではないのです。

金子:国全体として見た場合に、移民や外国人労働者の子供達に教育を施せるのか。言語の問題も出てくるでしょう。他にも年金など、公的なサポートはどうするのか。そういったことまで考えると、それほどコストの安い話ではないはずです。経済界の要望通りに外国人労働者を受け入れると、大変な事態に陥る可能性が高いのです。

移民を検討する前に
取り組むべき課題がある!

和田:被災地では労働力が足りないのが現状です。地元企業の要望としては、外国人労働者をどんどん入れて欲しいようです。しかしそこで安易に結論に結び付けるのではなく、例えば女性も建築現場で働けるような環境を作るのはどうでしょう。もちろん力仕事をしろということではなくて、施行管理など、女性でも活躍出来る業務はあるはずなのです。最近は建築学科などを専攻している学生も増加しているので、そういった人が現場に入りやすくなるように、オフィスを整備したり、トイレを綺麗にするなど、様々な工夫を政府が率先していくべきなのです。この点については前に国会でも言及して、太田昭宏国土交通大臣からは「国交省としてもしっかり考えて政策を出していく」という前向きな答弁を頂きました。

金子:移民や外国人労働者は企業にとっては安く雇える労働力かもしれません。しかしその大半は現場で必要とされるスキルを持っていない。例えばブルドーザーは、ただ動かすだけだったら少し習えば誰でも出来ます。しかし地面を平らにするような作業は、長年積み重ねた技術がないと不可能です。だから外国人労働者を受け入れたら労働力不足が解決するということではないのです。我々は長期的な視点で、建設業が今後もずっと成り立っていくような政策を採らないと駄目ですね。

大岡:企業が移民や外国人労働者の受け入れを要求している理由は、労働力不足に加えて、国内の操業環境が厳しいからだとも思います。まず、日本の解雇規制は異常で、企業が社員を解雇出来ない。会社の戦力になっていない社員すら解雇出来ないというのは、企業にとっては物凄く厳しいことです。もちろん、解雇規制の緩和に向けて動くとなると、マスコミや特定の政党が「解雇権の乱用」を理由に大反対するでしょう。しかし少し考えてもらいたい。もし企業が解雇権を乱用したら、会社そのものの存続が危うくなってしまいます。だから企業は無闇矢鱈な解雇は出来ないはずなのです。労働法は企業の要望に合わせて、もう少しまともなものに変えていくべきだと思います。それからもうひとつ。日本の法人税は高過ぎます。これに加えて人件費も高いとなると、経営は非常に厳しいものになる。だから安く雇える外国人労働者を欲しがっているという事情があるのです。こういった企業の抱える悩みを放置すれば、もう日本では経営が出来ないと、海外に出ていってしまう企業がますます増加することは明白です。すると日本経済は先細りすることになってしまいます。それを避けるためにも、税金を安くするなど、国内の操業環境を早急に整えなければならないでしょう。

杉田:「増税の前にやるべきことがある」という某政党の主張ではないですけど「移民の前にやるべきことがある」ということですね。

教育改革で人材を育てて
労働力不足を解消!

金子:国民が手に職を持ち自立出来るように、国内の教育を改善させる議論から始めるべきだと思います。

杉田:その通りです。日本は『大学全入時代』に突入しました。しかし本当に存在意義があるのかが分からない大学もあります。高校を卒業した人がみんな大学に行くようになると、なぜ肉体労働をしなくてはならないのか、なぜ外で働かなければならないか、といった感情が芽生えてしまい、結果として"格好いい職業"にばかり人材が集まってしまいます。そしてそういった職種に就けなかった人は、ニートやフリーターになってしまうという悪循環があるのです。私立大学への補助金はある一定のラインで切って、潰れる大学には潰れてもらう。その代わりに農業高校や工業高校、高等専門学校などのカリキュラムを見直して、必要に応じた補助金を支給して、各分野でプロフェッショナルな人材が増えるように取り組んでいくべきではないでしょうか。

倉山:しかし文部科学省が大学という"天下り先"が潰れることを容認するとは思えないので、「18歳で大学に入学する」という固定観念を取り払う方向を目指すべきかもしれません。理系はともかく、文系は社会人を経験してから入学してもいい。政治学や歴史学などは、むしろ40代から始めたほうがいいくらいです。18歳で政治や歴史を勉強しても、何も理解出来ないですから。

大岡:不要な大学は自然な形で、徐々に潰していけばいいのではないでしょうか。

倉山:しかしこれが不自然に潰れないのです(笑)。生徒が足りなくて、中国人留学生を受け入れるという禁断の実に手を出している私学まであります。

金子:凄い勢いで増加しているようですね。

杉田:基礎教育の部分に予算を注ぎ込んで、賢い日本人を再構築するべきなのです。以前、会社を経営している知人が「使えない日本人を雇うくらいだったら、優秀な外国人を雇いたい」という話をしていました。経営者の中にはこういう人が多いのです。だったら優秀な日本人を育てなければなりません。そのためにも教育が大切だと思っています。私は常々「日本人ほど優秀な民族はいない」と言っていますが、このままの教育を続けていくと、本当に危うい状態に陥ると思っています。 <全文は「ジャパニズム19」で!>



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