──まずはアルバムの発端である「東京ミッドタウン ガレリア BGMセレクション」のことから訊いていきたいんですけど、2年で300曲以上。これは壮観のリストですね。
2013年の秋から始まって、クリスマス、冬、春、初夏、夏、また秋に戻って、こないだの夏まで続けてきたわけだからね。基本的には自分のiTunesから選曲していったんだけど、持っていないものは新しく買ったりもして。……やっぱりクリスマスの回は大変だったな。90分みっちりクリスマス・ソングで、それが2回ぶんあったから。
──選曲に対して心がけたことはありますか?
人がたくさんいるところでかかる音楽だし、空間を邪魔するものとか、テンションが高すぎるものは外すようにして、みんなにいい気分になってもらおうというのが基本。ミッドタウンは『デザインあ』の仕事で密接な場所だったし、たまにビルボードにもいったりするから、あそこの空気感というのはなんとなくわかっていて、やっぱりあの場所の年齢層は、自分と同年代のオジサンやオバサン中心じゃない(笑)? そういう人たちに「お?」っと思わせたいっていうのは多少あったかな。
──その数秒間だけでも、スピーカーのほうをジッと見つめてしまうような。
自分でもそういう曲ってたくさんあるからね。記憶の奥のほうをサッと撫でられるような曲というか。
──ミッドタウンに出向いて自分の選曲を聴いてみたりというのはありましたか?
「あ、本当に流れてる」って思った(笑)。通りかかったときに聴こえただけで、フルで聴いたわけじゃないんだけどね。
──(選曲リストを見直して)これははっきりと『Constellations Of Music』との相互性が感じられるリストですよね。Hundred Waltersなどいかにも小山田さんが選んだとわかる近年の作品もあれば、今また新たな感覚で聴ける60年代のサイケなんかも選曲されていて、そのすべてがCorneliusの養分になっていることがわかる。……90年代、フリッパーズ・ギターやCorneliusに音楽を教えてもらった世代の自分としては、かなり染み入るリストです。
(笑)そうなんだ。
──「選ぶ」仕事って、あの当時は山のようにありましたよね?
雑誌に年間ベストを挙げるとか、好きなレコードについての対談とか、かなりの量をやったと思う。でも、最近はほとんどDJもしなくなったし、選ぶといえば自分用にiTunesのプレイリストを編集するぐらいのもので。それも、昼用、リラックス用、ドライブ用とか、ものすごく実用的なものを(笑)。ただ、プレイリストって編集が終わってしまうとあまり聞かないんだよね。選んだ時点で満足しちゃって……。
──そもそも積極的に音楽を探さなくてもいい時代になりましたよね。
好きなものは探さなくても自然に出会うようになっているというか、友だちが教えてくれたりもするし、AMAZONとかiTunesで、なんとなく辿り着いたものを聴いていることが多いかな。……ただ、僕が若い頃に聴いてた人たち、たとえばRoddy Frameとか、Ben Wattとか、Johnny Marrとか、あのへんの大人たちが新作を出してるでしょ? そういうのは意識的にチェックしてる。やっぱり昔聴いてた人がどういうオジサンになってるかというのは、気になるから(笑)。
──枯れ方のサンプルになる?
なるほどこういうパターンもあるのか、っていう。
──(笑)。ところで『Constellations Of Music』というアルバム・タイトルは「音楽の星座」という意味ですよね?
うん。浅草キッドの『お笑い男の星座』って本があって……
──あの、和田アキコとYOSHIKIが対決する?
そうそう(笑)。あの本、前から好きで持ってたんだけど、最近また読み返したら、「Constellation」って言葉が出てきたんだよね。そもそもはユングの心理学用語なんだけど、それまで無関係に見えていたものが、なにかしらのきっかけで、意味を孕んだものに見えてくる………「こ、これや!」って(笑)。
──「わてのアルバムにぴったりやないか!」って。
(笑)もともと星座って、人が勝手にこじつけたもので、それぞれの星を、勝手に線で結ぶことで、動物とか、神話の生き物にしていて。で、今回の作品も、リミックスとか、コラボとか、新曲とか、あと、僕がボーカルだけで参加した曲なんかが(笑)バラバラに入っているんだけど、でもそこにはなにかしらの必然とか整合性が感じられる瞬間があって……
──結果的には1枚の天体になっていると。
うん。そうだといいんだけど。
──アルバムの1曲目「Escalator Step」がBuffalo Daughterの大野由美子さんによる新曲で、小山田さんが参加していないにも関わらず、それがしっかりとCorneliusの新作になっているというのも、その必然を象徴していますよね。細かな話ですが(ミッドタウンの選曲の)2014年の春の回の1曲目、Carlos Nino & Miguel Atwood-Ferguson「Fall In Love」のイントロとこの曲のイントロがリンクしていたりもして。
そのあたりも大野さんにお任せした結果の偶然なんだけどね。ミッドタウンの選曲では何曲かに1曲、Perrey & Kingsleyみたいな60年代のムーグものを混ぜていて、ああいうキラキラした、ショッピング・モール的な感じというか、エレベーター・ミュージックっぽい音楽というか……
──いつもは買わないものまで買いたくなるような。
うん、そういう曲のオリジナル・バージョンがあったらいいなと思って。あと、1曲目に自分が関わった作品を置かないことで、アルバム全体の印象を軽いもの、コンピレーションっぽいものにしておきたいというのもあったんだよね。
──大野さんへはどんなリクエストを出したんですか?
「いい感じでよろしく」って。
──(笑)「いい感じでよろしく」は100%の信頼度ですね。
うん、100%信頼してる。大野さんの弾くムーグはすごく好きなんだよね。あの楽器をあんなに使いこなしている人を見たことがないし、ムーグ奏者でいったら本当に世界一だと思う。もちろんベースも巧いし、スティールパン、バイオリン、オルガン。本当になんでもできる。
大野さんと初めて話したのはBuffalo Daughter時代なんだけど、彼女が前にやっていたハバナエキゾチカのときもニアミスはしていて、プロデューサーの牧村(憲一)さんがフリッパーズ・ギターを担当してくれる前にやりたがっていたバンドというのが、ハバナエキゾチカだったんだよ。でもハバナは違うレコード会社にいっちゃったから、「じゃあしょうがないからフリッパーズ・ギターでもやるか」ってなったらしくて(笑)。それは牧村さん本人から聞いたから間違いない。
──せ、星座がつながった……。
(笑)それも縁といえば縁だよね。
──これはCorneliusのファンであれば誰もが感じることだと思うんですけど、この曲にはちょっと『Fantasma』的な享楽感がありますよね。最初の音が鳴ったときに、妙に懐かしい気持ちになったというか、安堵したというか。
安堵(笑)。まぁ、そうだね。架空のユートピア感というかね。ここ最近のオリジナル・アルバムって、『Point』にしても『Sensuous』にしても緊張感があって、ストイックでモノトーンな感じだったから、いい感じに力が抜けていてカラフルな感じというのは、確かに『Fantasma』以来だと思う。あと、今回のアルバムにはいろんな国のいろんなミュージシャンが参加しているから、アルバム全体としても『Fantasma』に近い部分はあるかな。
──Corneliusが『Point』や『Sensuous』に向かったというのは、世相的なことも関係しているわけですよね。小さな不安が蓄積していって、笑ってばかりもいられなくなってきた時代の空気というか。
もちろん世相に照準をあわせてアルバムをつくるわけではないんだけど、影響はあっただろうね。当然自分も街の中で生活しているわけだから。
──メッセージのないものが許されない風潮というか。
でも、こういう時代だからこそ、そうじゃないものが許されてほしいという気もするけどね。
──音楽ぐらいは、って。
ねぇ。
CorneliusとBuffalo Daughterは1993年に始まって、以降も規模は違うけど同じように活動している唯一の同胞みたいな存在。個人的にもいろいろと一緒に活動できていつも刺激になります。これからも面白いことたくさんやっていきましょう!
──大野由美子(Buffalo Daughter)