早朝出勤をくり返し過労自殺も–朝型勤務のリスクを弁護士が指摘
7月1日から国家公務員22万人を対象に出勤時間を1~2時間前倒しするという政府推進の朝方勤務「ゆう活」に対し賛否両論が集まっている。弁護士の元榮太一郎氏は、早朝勤務をくり返し過労自殺をした会社員の遺族による過労死裁判・第二審において「朝型勤務は時間外労働にあたらない」との判決が下されたことを紹介。早朝出勤を違法なサービス残業として用いる悪質なケースをなくすなど、朝型勤務のデメリットに対するケアが不十分なうちは一般企業には導入すべきではないと持論を語りました。(TOKYO MXとの共同企画でニュース番組『モーニングCROSS』を書き起こしています)
- ログ名
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モーニングCROSS 2015年7月8日のログ
- スピーカー
- フリーアナウンサー 竹下佳奈 氏
弁護士 元榮太一郎 氏
MC 堀潤 氏
アシスタント 榎本麗美 氏
朝型勤務「ゆう活」について
堀潤氏(以下、堀):さぁ、では、元榮さんお願いします。
元榮太一郎氏(以下、元榮):こちらです。
(テーマ「朝型勤務キャンペーン『ゆう活』」について)
榎本麗美氏(以下、榎本):今月1日から、霞ヶ関の各省庁で試験的にスタートした職員に朝型勤務を促す「ゆう活」について、ネット上では賛否両論が噴出しています。
堀:CROSSでも、1回ゆう活の話を取り上げたんですけど、「公務員さんの話でしょ?」とかね、いろいろあったんです。「省庁から民間企業へ働き方をまず提案しましょう」ということで。
中央省庁では8月の末まで、出勤時間を1~2時間早めて午前7時半~8時半として、退庁後の夕方以降を有効活用する試みを実施しますと。余暇の充実による個人消費の底上げも期待と。
割と霞ヶ関の中央省庁、官僚の皆さん、夜中まで働いているんですよね。ネットでは、賛否両論です。それこそ、子育てやプライベートの時間が増えたという賛成の声。否定的な声は、夕方に帰れる業務の人と帰れない業務の人とで残業格差が発生するという。こういった声も挙がっています。
「ゆう活」のメリット・デメリット
元榮:やはり、昔から言われてますけれども、日本人の労働時間が長いということで。OECDの34カ国中でも年間の平均労働時間というのは1745時間。13位。依然として長時間の労働の実態があると。子育て支援とか、プライベートの充実等とも含めて今回の提言ということになったのだと思いますね。
ここでもう1回メリット、デメリットということでまとめてみたのがこちらです。ゆう活のメリットなんですけれども。まず、「仕事の効率化」ということで。生産性向上というのは、非常に求められていますよね。
堀:「ダラダラやってんじゃないよ!」という。
元榮:そういうこともありますからね。早く帰る意識を持つということでの仕事の効率化を考えるということです。そしてあとは「退社後の活動が広がる」ので、夜、家族との時間が取れたりとか。こういうような形で、非常に有意義になるのではないでしょうか。
堀:そうねぇ。アメリカの場合は、お父さんが夕方に帰ってきて、子供と遊んでから、っていう時間が必ずあったりする。
元榮:家族との団欒の時間も増えることなども期待されています。
あとは、経済効果ですね。夕方からの消費が活性化するということで、「経済効果」の向上ということも考えられます。さらには、節電効果ということで。照明等の電気代削減にもつながるということなんですね。
このような形で見ると、メリットがあるからこそ導入されて、そして、民間企業も導入し始めているということですが。
朝方勤務で労働時間が増える可能性も
元榮:デメリットも一応ありますので。こういうところをケアしながら実施すべきだと思っております。
1つは、取引先とか他の部署との時間が合わせにくくなるんじゃないかという懸念。こういったところはケアが必要ですね。要は、民間企業が「やるぞ!」って言って、突然勢いよくやってみたら、現場同士の時間が合わなかった。これじゃまずいだろうということで、そういう部分はうまくケアしなければならないということもありますね。
あとは、人によっては適応に苦労するということで。朝、子供を保育園から送って出社する人なんかは、時間が合わなくて苦労する場合もありますので、会社が導入する場合には、各人のライフスタイルにも気をつけなければならないと思います。
最後に考えられる問題としては、労働時間が増える可能性があるというところ。やはり退社時間をしっかり管理しないと、出勤時間が早まっているので、結局先ほどの残業格差どころか、全社的に残業が長時間化してしまうというような可能性もありますよね。
堀:戦線拡大(笑)。
元榮:そうなってしまうと、これはやはり当初の趣旨が損なわれてしまうので、例えば、官庁とか自治体ですと、市長とか副市長とかが退庁指導ということで、全フロアを回って、「退庁してください」と促すなどですね。
あとは、一部の民間企業ですと、オフィスの電気を消していくとかですね。そういうような形で、もっとしっかりと、実効的に運用していかないと、社員の人たち、働いている人たちが、結局大変なことになってしまいますよね。
早朝出勤をくり返し過労自殺も
元榮:実際、裁判例においても「朝型勤務」みたいなところで、労働訴訟なってしまったりすることもあるんです。
堀:どういう訴訟になるんですか? 朝型勤務の場合の。
元榮:例えばですね、これは結局二審で敗訴の判決になり、今最高裁にかかっている案件なんですけれども、朝型勤務をしていた金融機関の会社員がいらっしゃって、この会社員は毎日2時間くらい早めに来てお仕事していたところ、鬱病になってしまって自殺をしてしまったんです。
堀:あぁ、かわいそうに……。
元榮:労働基準監督署では、この朝型の勤務2時間くらいが、時間外労働とみなされて、すごい長時間の労働をさせているじゃないかということで、裁判所に提訴したのです。結果としては、会社が遺族に対して、9,000万円くらいのお金を払うという賠償を一審は認めたんですね。
しかし、二審では、これがひっくり返ったのです。
堀:えっ? どうしてですか?
元榮:実はこの朝型勤務は、時間外労働じゃないという認定になったのです。要は、朝の業務は時間外労働じゃないんだということを表す裁判例なのですけれども。二審においての判断としては、朝早く来てることは確かでしたが、実態は新聞を読んだり、コンビニで買ってきた朝食を食べたりしていた点を指摘したんですね。
堀:朝の早朝出勤って、そんな時間ですよね。
元榮:そうですよね。
堀:ちょっとゆっくりリサーチしながら、働く準備整えて。
元榮:そうですね。この点が最高裁ではどういう認定がされるのかというのが注目されますね。
堀:今、係争中。
元榮:そうですね。
どのような業務をしているのかということで、裁判所で認められないケースもありますので、働いている方は、ちょっとだけ頭に留めておいてもらえるといいかなという感じはしますね。
堀:でもね、残業って言いながらも、ずっとテレビ見てる上司いましたよ。
(スタジオ笑)
元榮:そうなんです。だからいい残業とね、そういう(笑)。
堀:わかんないでしょ、それね!
早朝出勤を残業と認めるカルチャーが会社にあるか
堀:今ね、大事な話で。「吊られ人」さん。「残業代じゃなくて、『早出手当』だしたら殺到すると思う」ということですけど。
確かに、会社カルチャーの中で、早朝出勤のこの時間帯を、ちゃんと残業と認めるか否かっていうのは、会社によって大きく違いますよね。
元榮:もちろん大きく違います。法的には業務性がある場合には「時間外労働」という形で残業になったりするので、会社側はきちんと対価を払われなければなりません。
堀:残業の「残」に引っ張られてるんですよね、きっとね。だから、新しい概念をまた生み出したほうがいい。
元榮:公的には時間外労働なんで。
堀:時間外労働ですと。なるほど。
ありがとうございました。今日は……ありますね? よかった!
元榮:参ります! 「ゆう活で 充実しちゃいな そこのYOU!」ということで。
(スタジオ笑)
堀:新しい、これ! きましたね!(笑)
元榮:こんなポップな感じで考えてきました。
堀:いろいろ引き出しはありますからね。ありがとうございました。
本日のオピニオンCROSSは、以上とさせていただきます。
※続きは近日公開
人気テレビ番組「モーニングCROSS」との共同企画
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