今月12日、中国・天津港の化学物質を保管している倉庫で発生した爆発事故は、死者数が100人を超えた。テレビを見ると、原子爆弾が投下されたかのような凄まじい爆発とともに火の手が上がっていた。15日には、倉庫に保管されている物質に、いわゆる青酸カリと同じ猛毒のシアン化合物の一種「シアン化ナトリウム」が含まれていることが判明し、半径3キロ以内への立ち入りが禁止され、化学戦部隊が動員された。最初に出動した天津消防隊は、倉庫に何が保管されているのかを知らずに放水したが、その水が炭化カルシウム(カーバイド )と化学反応を起こし、爆発が発生したという。
2012年9月、韓国慶尚北道の亀尾工業団地でフッ化水素酸(フッ酸)が漏れ出し、5人の命を奪った事故の際にも、消防隊は中和剤である消石灰を保有しておらず、水をまいただけだった。そのため、フッ酸は煙霧のように周辺に拡散し、1万1300人が病院で手当てを受けた。漏れたフッ酸の量は8トンだったが、周辺の農作物の被害は212ヘクタールに及んだ。フッ酸を流出させた企業は、従業員7人の零細企業だった。韓国にはこのように大量の有毒物質を扱う事業所が3000カ所もある。
韓国の石油化学産業は、米国、中国、サウジアラビアに次ぐ世界第4位の規模を有する。蔚山市や全羅南道麗水市、忠清南道瑞山市大山邑などの化学工業団地にある工場の中には、40年以上経過した古い設備が多い。1960年代末から整備がすすめられた麗水産業団地だけでも、化学メーカーの工場や倉庫が220カ所も密集している。連続的な爆発事故が発生しようものなら、大規模な災害につながりかねない。
旅客船「セウォル号」沈没事故や中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の感染拡大も「まさか、そんなことが起こるはずがない」という安易な姿勢が事態を拡大させた。韓国の企業関係者や公務員たちが、最悪の事態が起こり得ることを想定し、それに備えているのか、心配でならない。政府は化学工場の安全体制を点検し、消防訓練もさまざまな化学物資を想定した多様な形にするべきだ。