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【政治】

「次世代、まず過去を知るべき」 戦後補償支援 ドイツ財団職員

来日したドイツの財団職員ウタ・ゲルラントさん=15日、東京都新宿区で

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 安倍晋三首相が戦後70年談話で「次の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と述べたことが論議を呼んでいる。第2次世界大戦当時の強制労働被害の補償に当たるドイツ「記憶・責任・未来」財団理事会の専門職員(アドバイザー)で、最近来日したウタ・ゲルラントさんは、本紙に対し「歴史の責任は次の世代にもあるというのが、ドイツの姿勢だ」と述べ、若い世代が過去を直視する重要性を語った。 (編集委員・五味洋治)

 安倍首相の「次世代」への言及は、中国や韓国からは「過去の歴史に対する幕引きを図る発言」との批判も出ている。

 市民団体の招きで滞在していた東京で、談話の内容を知ったゲルラントさんは「歴史問題を終わらせようという人は同じ敗戦国であるドイツにもいるが、主流ではない」と説明。さらに「過去は、現在、未来についてくるものだ。それをはねのけることはできない。過去は一種の毒となって現代に影響を与えてしまう。過去の毒を抜くという感覚で考えないといけない。そうでないと現在も、未来も駄目になる」と、歴史に対する基本的姿勢を述べた。

 また「若い世代は、過去の歴史を知らないで生まれてくる。まず知ることが必要だ。それがより良き未来につながる」と、歴史教育の重要性を指摘した。

 同財団は、ナチ時代に強制労働させられた約六百人分の動画や録音インタビューをインターネットで公開し、ドイツの学校で教材として活用されている。そのほか相互理解を深めるため強制労働の被害者をドイツに招き、若者たちとの出会いの場をつくっている。

 ゲルラントさんは「私たちがやっていることは、もう(歴史問題や謝罪は)いいじゃないか、過去と一線を画そうという意見への抵抗だ。しかし、それはやりがいのある、生産的な仕事であり、被害の当事者と、加害国の若者の間に友情も生まれている」と意義を語った。

 ゲルラントさんは一九六五年生まれ。二〇〇一年から同財団で勤務している。

◆安倍首相の談話抜粋

 戦後七十年の安倍談話で謝罪に区切りをつける考えを示した部分は次の通り。

    ◇ 

 日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。

 

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