財政緊縮策の是非を問う国民投票で反緊縮派が予想外の大差で勝利したにもかかわらず、その直後にアクロバティックな政治的「Uターン」を行い、EU(欧州連合)など債権団の緊縮要求のほぼすべてを受け入れて最大860億ユーロの第3次金融支援に向けた基本合意を取り付けた、ギリシャのチプラス首相。
ギリシャ議会における財政改革法案の採決では与党議員の約3分の1が造反したが、ギリシャ国民の間でチプラス人気は引き続き高い。カパリサーチが実施した世論調査で、チプラス首相の支持率は60%を超えたという。
より一層の我慢をギリシャ国民に強いる妥協をしたにもかかわらず、チプラス首相への支持は落ちていないのである。なぜだろうか。
7月下旬の米紙ウォールストリートジャーナルに掲載された記事が、謎解きをしてくれる。理由は2つあるという。
まず、債権団との5カ月にわたる厳しい交渉で、チプラス首相が全力で戦ったのが評価されていること。
そしてもう一つは、自分たちの国を過去に長く支配したものの大きな経済危機を結局は招いてしまった旧2大政党や古い政治家の表舞台への復帰をギリシャ国民が望んでいないことである。仮に総選挙が今行われた場合、急進左派連合(SYRIZA)に投票するとした人は42.5%で、最大野党であり旧2大政党の一つである新民主主義党の21.5%に対し、ほぼダブルスコアになっているという調査結果が出ている。
過去の政権の失政に対する反感や失望が国民の間にあまりにも強く根付いている場合には、たとえ現政権の指導者の行動が期待に反する結果を招いたとしても支持率はあまり落ちないことが、上記のギリシャの事例からうかがえる。
株価と連動しなくなった安倍内閣の支持率
ここで考えてみたいのが、日本の安倍内閣のケースである。安倍内閣は「株価連動型内閣」と長く呼ばれてきたが、実際には株価動向と支持率はこのところ連動しなくなっている。
株高が続いても景気回復の実感がさっぱり出てこないことに多くの国民がすでに気付いているということもあるが、より大きな原因は、安全保障関連法案の衆院での強行採決と今国会で成立させることへの強いこだわりという、過半数の有権者が望んでいない行動を安倍内閣がとっていることへの批判である。
マスコミ各社が7月中旬から安倍首相の「戦後70年談話」が8月14日に出る前までに実施した世論調査では、第2次安倍内閣が発足して以降では初めて、支持率が不支持率を軒並み下回った<図>。
◆NHK (7月10~12日実施) |
「支持する」(41%)、「支持しない」(43%) |
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◆共同通信 (7月17、18日実施) |
「支持する」(37.7%)、「支持しない」(51.6%) |
◆毎日新聞 (7月17、18日実施) |
「支持する」(35%)、「支持しない」(51%) |
◆朝日新聞 (7月18、19日実施) |
「支持する」(37%)、「支持しない」(46%) |
◆産経新聞・FNN (7月18、19日実施) |
「支持する」(39.3%)、「支持しない」(52.6%) |
◆読売新聞(7月24~26日実施) | 「支持する」(43%)、「支持しない」(49%) |
◆日経新聞・TV東京 (7月24~26日実施) |
「支持する」(38%)、「支持しない」(50%) |
◆毎日新聞 (8月8、9日実施) |
「支持する」(32%)、「支持しない」(49%) |
◆NHK (8月7~9日実施) |
「支持する」(37%)、「支持しない」(46%) |
◆時事通信 (8月7~10日実施) |
「支持する」(39.7%)、「支持しない」(40.9%) |