武士と両班は真逆


  ――明治維新を経て欧米列強の力に触れた日本人は、欧米的な政治や社会の概念を日本語(漢字)に翻訳した結果、多くの「造語」が生まれました。その造語が日本から中国、韓国に流れていった結果、向こうの人たちは初めて欧米文明を理解し始め、近代化に成功しました。

ケント 民主主義や自由、共和制、交通、情報、経済、銀行などの言葉は、すべて日本人の発明です。日本人がいなければ「中華人民共和国」や「朝鮮民主主義人民共和国」という国名はありませんでした。

 長いあいだ、旧態依然とした時代遅れの「中華思想」のなかで呑気に生きていた韓国・中国人は、日本人が必死になって努力したおかげで今日の近代的な生活を享受しているのです。そのことを忘れるなといいたい。

 私が最も指摘したい日本の業績の一つは、朝鮮半島において、李氏朝鮮時代から厳しい階級格差と差別に何百年間も苦しんでいた人びとの「身分解放」を日本政府が行なった事実です。日本は韓国人のために、本当に正しく立派なことをしたと思います。

 ――朝鮮半島での「身分解放」は日本でもほとんど語られていませんね。かつての朝鮮人は、両班という階級を頂点とした「良民」と、奴婢や白丁、僧侶などの「賤民」に分けられていました。

ケント 両班階級は、汗をかくような労働を嫌悪し、「箸と本より重いものは持たない」ことを誇りにしました。自分より下層の者を徹底的にいじめ、金品を差し出させ、いうことを聞かなければ自宅に連れ帰って拷問しても、罪に問われない特権を何百年も維持したそうです。

 一方、上の階級から非人間的な仕打ちを受けていた賤民階級は、住居や職業、結婚などで激しい差別を受け奴隷として市場で人身売買され、白丁に至っては人間とすら認められていなかった。当然、文字など読めません。

 もちろん、日本も過去に階級差別はありましたが、日本は中世以降、事実上の統治者となった武士階級は、兵士であると同時に、有能な官僚でした。さらに江戸時代になると、「武士は食わねど高楊枝」で言い表される「清貧」と「誇り」を維持する日本の武士は、庶民の期待と憧れを一身に受けました。だから『忠臣蔵』などの歌舞伎の演目が人気だったのです。同じ支配者層でも、庶民の恨みと憎悪の対象だった朝鮮の両班とは真逆です。武士の起源は、天皇を頂点とする朝廷の警護役です。じつは将軍、貴族、農民などの身分や、年齢にもいっさい関係なく、日本人は全員が天皇の下にいる臣民です。朝鮮や中国大陸だけでなく欧米でも当たり前だった奴隷売買の習慣が日本にだけなかった理由はそこにあると思います。

 両班を頂点とする当時の朝鮮の激しい身分差別と、悪しき因襲は、誇り高き武士道精神をもった元下級武士らがリーダーとなり、明治天皇の下で文明開化を実現してきた当時の日本人にはとても受け入れ難く、朝鮮半島近代化の最大の足かせになることは明白でした。このため日本政府は劇的な「身分解放」を行なったのです。

 ――「身分解放」は韓国近代化の第一歩となったということですね。

ケント 朝鮮人を厳しい階級差別から解放した日本は、若者たちを教育するため、学問の機会を広く提供しました。おかげで、白丁の子弟でも学校に行けるようになりました。日本の朝鮮半島政策が、搾取目的の「植民地化」ではなく、自国の一部として迎え入れる「併合」だった事実がわかります。奴隷に勉強は教えません。

 日本政府による朝鮮人の「身分解放」は、1863年にリンカーン大統領が行なった「奴隷解放宣言」に匹敵する先進的な政策であり、これが韓国近代化の第一歩だったことは疑う余地のない歴史的ファクトです。今日の韓国人はこの点だけでも、日本に大恩があるはずですが、それに対する感謝の言葉は聞いたことがありません。

韓国人は永遠の「中二病」


 ――日本政府は、日本国民から集めた血税の多くを朝鮮半島に注ぎ込み、そこで上下水道や電気、道路や鉄道などの近代的なインフラを導入しました。

ケント 現在でも、北朝鮮には水豊ダムという巨大なダムがありますが、これもまた、日本政府が最新の土木工学技術と労力を投入して建設したものです。その予算たるや、当時としては莫大なものだったはずです。

 ――当時日本政府が構想していた東京と下関を結ぶ「新幹線計画(弾丸列車)」に匹敵する額でした。

ケント それだけでも当時の日本が朝鮮半島の近代化にどれだけ尽くしたのかよくわかりますね。

 水豊ダムは、水量や発電規模も、そうとう大きかったと記憶しています。

 ――資料によると、琵琶湖の約半分に及ぶ湛水面積を有し、完成した1944年当時としては、発電規模において世界最大級を誇りました。構造自体も要塞のように堅固だったようです。

ケント じつは朝鮮戦争中、アメリカ軍はこのダムと「喧嘩」をしているのです。当時アメリカ軍は、北朝鮮に対する電力供給を遮断する作戦を行なっていましたが、その攻撃目標の一つがこの水豊ダムでした。アメリカ空軍は何度もダムを空爆し、最後には大型の魚雷を何本も撃ち込みましたが、それでもダムが決壊することはなかった。その後もほとんど改修を加えられることなく、今日もなお当時と変わらず発電を継続し、北朝鮮最大の電力源の一つとなっています。メイド・イン・ジャパンの底力は、当時から健在だったのです。

 このように朝鮮半島の発展のために努力した日本を、いまの韓国政府とマスコミ、そして真実の歴史を調べもしない多くの韓国人が口汚く罵っている。まさに「恩知らず」であり、永遠の「中二病」みたいです。世界各国でささやかれる「芳しくない評価」も理解できます。ちなみに外国人による日本人の評価は、「正直」「誠実」「親切」「勤勉」「冷静」「寛容」「トラブルを起こさない」などですが、韓国人は見事にこの真逆です。

 知り合いの外国人は、知れば知るほど韓国から気持ちが離れていきますが、私のようにどんどん日本が離れ難くなる外国人は多いです。正義感は強いが感情的にならず、穏やかに国を運営していく日本人の平和的な態度は嫉妬されないかぎり好感をもたれます。