(2015年8月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国が先週、人民元を突然切り下げたことで活発になった議論がある。この動きは市場改革の勝利なのか、それとも輸出の増加を狙った通貨安競争の試みなのか、という議論だ。
しかし、3%の人民元安は輸出業者の支援を目指したものだと考える人々でさえ、中国経済の試練を克服するなら人民元レートの下落だけではまったく不十分だという見方は受け入れている。
「輸出刺激策としての通貨切り下げは有用でもなく必要でもない」。HSBCの中国担当チーフエコノミスト、屈宏斌(ク・ホンビン)氏はこう言う。
また、中国の輸出は今年減少しているものの、「アジア全域の輸出業者が同じ試練に直面しており、根底にある問題は先進国市場の需要不振だということを示唆している」と指摘している。
中国の今年上半期における経済成長率は、公式的には年率換算で7%で、通年の政府目標に見事に沿ったものになっている。しかし、この数字を疑問視する向きもある。例えば調査会社キャピタル・エコノミクスは、実際は5~6%だろうと考えている。
また、成長の減速を防ぐには追加的な景気刺激策が必要になるとの指摘も多方面から出ている。
「輸出主導型の経済成長」の幻想
とはいえ、輸出が回復しても、それによる成長率の押し上げはごくわずかにとどまるだろう。
一般的な見方に反して、中国はこの10年間、いわゆる「輸出主導型の経済成長」を目指してこなかった。2004年から2014年にかけて、純輸出は国内総生産(GDP)成長率(年率)を平均で3%押し下げている。この時期の経済成長は、平均すれば52%が投資によって生み出されていた。