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Memory of a treasure.
ざぁーーー…。
春風が心地よい空気とともに駆け抜ける。
揺られて宙に舞う淡い花びら。
見上げるこの景色が、青空に記憶と共に溶けていく。
街並がどんなに姿を変えようと、この場所だけはなにひとつ変わらない。
たった一度。
繋いだ手の温もりは、今でも鮮明に蘇る。
あの柔らかで暖かい日々が今でも忘れられない。
いつの間にか私は大人と呼ばれる年齢になって。
君と過ごしたあの春からは、気の遠くなる程の月日が過ぎた。
忘れることを恐れた日々でさえ今は愛おしい。
伝えたかった言葉は喉元で飽和して、いつの間にか跡形もなく消えてしまった。
今でも好き、なんて、そんなおとぎ話のようなことは言うつもりもない。
何年たっても桜の季節にはここを訪れてしまう私を、君は笑うかな。
だけど、どうしても忘れられない。
繋いだ手の温もり。
君の声。
振り向いた最後の笑顔。
交わした約束。
時と共に思い出は美化されて、他者の追随を許さない。
今もなお捕らわれているのは、14歳の、あの頃の私―――――。
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