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外国為替市場に対する当局の介入や誘導は、市場の動揺が激しい場合は、あり…
外国為替市場に対する当局の介入や誘導は、市場の動揺が激しい場合は、ありうることだ。だが先週、中国発で引き起こされたのは、当局の介入が各国の市場を不安定にさせるという形で起きた出来事だった。
中国の通貨・人民元の対米ドルレートが8月11日以降、大幅に元安に振れた。今回の対応もさることながら、過去数カ月にわたり硬直的にレートを維持してきた点にも問題がある。市場と対話し、柔軟に対応する姿勢が中国に求められている。
一国の通貨価値は、経済力の上昇とともに増す。中国もその道を歩んできた。対米ドルレートを事実上固定していたのを改め始めたのが10年前だった。当局が毎日公表する基準値を中心に一定の変動を認め、その幅を上下0・3%から、最近は2%にまで拡大した。この間、少しずつ元レートが上昇した。元を信用ある国際通貨へと引き上げる長期戦略に沿うものでもあっただろう。
米国の利上げが近いとみられる最近は、円、ユーロに比べ元高が目立っていた。市場で変動幅ぎりぎりの元安になっても、基準値は高めを維持する状況が昨年末から続き、明らかに無理があった。
今回の措置は、市場の実勢に基準値を合わせた結果ではある。中央銀行である中国人民銀行の幹部は「市場化改革の一歩だ」と説明している。だが、それならもっと早くレート調整に着手し、ショックを和らげることができなかったのか。
人民銀行は、7月の株価急落への対策で通貨供給が増え、外為市場に元安圧力がかかっていた、とも説明した。だとすれば、やはり政府の強引な政策対応が諸悪の根源だったということではないか。
今回の事態を機に「中国経済の低迷ぶりは深刻だ」という見方が各国の市場関係者に広がっている。いくぶん誇張されているとはいえ、そう受け止められるのは、政策の不透明さにも起因している。そもそも、金融政策のプロたる人民銀行は政府の一部門にすぎず、その上に共産党最高指導部があり、独立性が保障されていない。
中国はいまやアジアインフラ投資銀行を設立して世界をリードしようという勢いである。ならば、少なくとも国際金融の世界では、その常識に合わせる改革がいっそう必要だろう。
不透明な当局と不透明な市場は無用の混乱を招き、信頼を損なう。中国自身はもちろん、その他の国々にとっても、避けたい事態だ。
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