内閣府が発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は3四半期ぶりにマイナス成長となった。物価変動の影響を除いた実質成長率は前期比0・4%減。このペースが1年間続くと想定した年率換算では1・6%減だった。

 回復が進むと見られた個人消費が落ち込んだ。円安で食料品などが値上げされたが賃金はそれほど伸びず、実質的な家計の負担が増したためだ。また、円安効果で伸びると期待された輸出も、6四半期ぶりのマイナスだった。

 昨年4月の消費増税後、景気はゆるやかに回復していると見られていた。ここにきてのマイナス成長は日本経済の実像を考えるうえで示唆的である。

 このマイナス成長は何か大きなショックによって引き起こされたものではない。むしろこの間、経済環境は比較的良好だった。企業業績は改善し株価は回復。雇用増の動きも活発だ。訪日観光客の急増で関連産業は潤った。日本銀行は金融緩和を続け、公共事業も高水準だ。

 こんな好条件のもとでも日本の成長率はさえなかった。

 もちろん、世界経済には不安定な動きも確かにあった。欧州ではギリシャ債務問題による混乱があり、中国経済は減速傾向が次第にはっきりしてきた。

 とはいえ、こうした海外要因は一時的なものではない。しばらくこの不安定な状況が続くと見たほうがいい。ならば、今後輸出が劇的に増えたり、日本を訪れる外国人観光客の需要がさらに飛躍的に盛り上がったりすることは想定しにくく、外需に過大な期待はできない。

 政府は、2020年度に基礎的財政収支を黒字にするという財政健全化計画を掲げている。その前提は実質2%、名目3%という高い成長率である。だが、今回のマイナス成長という現実を冷静に分析すれば、成長期待だけで財政再建を進める危うさは自明と言える。

 また2%インフレ目標を掲げて大規模な金融緩和を続ける日銀にも、貴重な指標となったはずだ。消費者が先行きの物価上昇を予想すれば、消費を盛んにして需要を押し上げ、成長率は高まる。そんな日銀のシナリオ通りの消費行動は現れていない。この政策に無理があることが、次第にはっきりしてきたのではないか。

 政府も日銀も、現実を出発点にして、想定する成長率やインフレ率を修正し、経済戦略や金融政策を組み立て直す。そんな必要があることを、今回のマイナス成長は示唆している。