著者は、日本の右傾化を支持して母親に暴力まで振るった父親とのコミュニケーションを拒否した。父親が老人性結核で入院したときも、面会にすら行っていない。父親が他界した後、病室の枕元に著者のインタビュー記事があるのを見た。著者はそのとき初めて、父親をはじめ、母親や兄など家族のことが気になった。最も近い存在なのに最も理解し難い存在が、まさに家族だ。
最後には結局一人になってしまう人間に、家族が必要な理由は何か。元NHKアナウンサーの著者は、ベールに包まれた家族史を明らかにしながら、家族神話について省察した。「家族という名が持つ暴力」を力説する著者だが、家族無用論者ではない。夫を「伴侶」と呼ぶ著者は、血がつながっていない家族、子どもをもうけない家族などを紹介し、家族をめぐる新たな定義と観念が必要だと主張する。1万3800ウォン(約1460円)。