【記者手帳】MERS危機を経ても変わらない保健福祉部

【記者手帳】MERS危機を経ても変わらない保健福祉部

保健福祉部(省に相当)は最近、疾病管理本部の局長級の人事異動を実施した。国立仁川空港検疫所長と生命医科学センター長の二つのポストだ。前者は海外の感染症の流入を防ぐ最前線での防疫活動の責任者、後者は認知症やアルコール依存症の予防・治療法開発、体細胞の複製、幹細胞などを担当する七つの分野の責任者だ。政府が中東呼吸器症候群(MERS)の事実上の終息を宣言した後に人事異動が行われたため、常識的に考えれば、MERSの感染拡大を招いた責任者を交代させ、組織の変革を図る人事ということになるだろう。ところが、ふたを開けてみると、とんでもない人事だった。二つのポストにはいずれも、専門性とは全く関係のないキャリア官僚が充てられたからだ。

 MERSによって36人の死者を出すという、韓国の防疫体制の根幹を揺るがす最悪の事態を経験したことから、専門性を高めるため、疾病管理本部を人事や予算の権限を有する「処」や「庁」として独立させる案も検討されている。だが保健福祉部は「MERSが発生したのは組織の問題ではなく、人(専門性)の問題だ」として、疾病管理本部の独立よりも、専門性の強化を主張している。にもかかわらず保健福祉部は、疾病管理本部の専門性を高めることに関心を傾けるのではなく、依然として同本部を保健福祉部の人事をめぐる問題を解消する窓口と考えているようだ。

 保健福祉部はこれまで、疾病管理本部の疾病予防・統制センター長のポストも、ノンキャリア官僚が局長に昇進するための腰掛けとして活用してきた。疾病管理本部の薬剤師や研究員などの専門職は、保健福祉部の人事制度のため、局長への昇進をあきらめ、同本部での経験を基に大学や研究所に転出するのが常だった。

 疾病管理本部は今でも非常識がまかり通る組織だ。同本部の研究職など非正規職員の数(600人)が、正規職員(318人)の2倍もいることから、責任感や使命感を求めるのは難しいのが実情だ。MERSの感染拡大という悲劇を経てもなお、保健福祉部長官が無神経だからなのか、一般国民の期待とは異なる信念でも持っているのかは分からない。疾病管理本部のモットーは「疾病に束縛されない世の中を切り開く」だが、同本部は今や「疾病」ではなく「保健福祉部」に束縛されない世の中を切り開くことが重要な課題となっている。

キム・ドンソプ保健福祉専門記者
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