4-6月期GDP3期ぶりマイナス、消費と輸出低迷で1.6%減
2015/08/17 10:31 JST
(ブルームバーグ):今年4-6月期の実質国内総生産 (GDP)速報値は前期比年率で1.6%減と、3期ぶりのマイナス成長となった。個人消費と輸出の低迷が主因だが、ブルームバーグによる事前の予想は上回った。
内閣府が17日発表したGDP速報値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%減。項目別では全体の約6割を占める個人消費が0.8%減。設備投資は0.1%減。公共投資は2.6%増。在庫の寄与度はプラス0.1ポイント、外需の寄与度はマイナス0.3ポイントだった。
実績は予想中央値の年率1.8%減、前期比0.5%減を上回ったが、内容については慎重な見方が多い。日本銀行による秋の追加緩和予想も根強い。前期(1-3月期)の実質GDP成長率は年率換算4.5%増、前期比1.1%増と2次速報値(それぞれ3.9%増、1.0%増)から上方改定された。
甘利明経済再生相はGDP発表後の談話で、成長率がマイナスになった要因として、「中国を中心としたアジア向けや、米国向けの輸出が減少したことに加えて、消費者マインドの持ち直しの動きが緩やかになる中で、天候不順の影響や4月からの軽自動車税の引き上げの影響もあり、個人消費が前期比マイナスになったなどが挙げられる」と述べた。
甘利氏は会見で、消費者の間に「食料品の値上がりが大きいので、実質収入が減っているという肌感覚がある。肌感覚の物価上昇があるにせよ、賃上げがそれを凌駕(りょうが)するという期待が持てる経済にすることが重要だ」と語った。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストはGDP発表後のリポートで、「1-3月期に強い成長を記録した後の反動減の範囲内との評価になろうが、中身はあまりよくない。輸出入とも減少、特に輸出が弱く外需寄与度がマイナス化している」と指摘した。
宮前氏は先行きについて、「中国経済減速の影響で輸出が当初想定したよりも一段と弱まっており、成長率見通しが下振れ方向にある。7-9月期は反発が見込まれるものの、強い伸びが期待しづらい」とみている。
政府は7月の月例経済報告で、「緩やかな回復基調が続いている」として、景気の基調判断を4カ月連続で据え置いた。生産については「このところ横ばいになっている」として、前月の「持ち直している」から判断を引き下げた。GDPがマイナスになったことで、景気が踊り場にあることがあらためて裏付けられたとの見方が出ている。
第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは7月31日のリポートで、「『景気は着実に回復』とはさすがに言いにくい。景気は踊り場との評価が妥当だろう。また、今後の指標の動きいかんでは、景気が『後退局面』と判定される可能性があることにも注意が必要である」としている。
日銀は再三の成長見通し下方修正か日銀は7月15日に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)の中間評価で、2015年度の実質GDP成長率の見通し(政策委員の中央値)を前年度比2.0%増から1.7%増に下方修正した。15年度の成長率はこれで2回連続の下方修正となった。4-6月期のマイナス成長を受けて、日銀は3回連続で下方修正する可能性もある。
三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミストはGDP発表前、「6月の消費関連指標や輸出が弱かったため、次回の見通し変更時には成長率見通しを下方修正せざるを得ないだろう」とみていた。
10月追加緩和予想も健在ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは3日のリポートで、6月は消費の大幅悪化、生産・輸出の基調的な弱さの継続などから、「5月以上に失望的な結果だった」と指摘。景気はいったん「踊り場的な状況となった」という。
悪天候要因の剥落や、実質賃金のプラス転化予想などから、「消費は緩やかな回復パスへ復する」と予想するが、力強い回復が認められない場合は、「政府は秋口以降、経済対策の検討を迫られる可能性がある」と指摘。日銀の金融政策についても、10月末の経済・物価情勢の展望(展望リポート)時の「追加緩和予想」を維持している。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
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更新日時: 2015/08/17 10:31 JST