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死神と生贄 作者:残念集会の副会長
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19話 貴重なこと。

 僕の相談を聞き終えて、タケヤは居心地悪そうにしていた。
「あ、ワッペン探すよ」
 僕は立ち上がり、引き出しを開ける。手前に1つ、僕が使っているやつがあった。たぶんスペアは奥の方にある。
「いや、再発行してもらうから」
「たぶん、あるから。せっかく来てくれたんだし……」
 妙な話を聞かせたお詫びに渡したかった。探している間、変な沈黙になった。
「……フジノ、本気、なんだよな」
 タケヤに訊かれる。
「本気……だと思う」
 本気とは、言い切れなかった。もし、本気だと言い切って、本気なのが僕だけなら、滑稽すぎるから。
 スペアのワッペンはすぐに見つかった。
「ごめんな。変な話して。さすがに引いたろ。はい、ワッペン」
 僕はタケヤに手渡す。
「別に……変な話だと思わねぇよ。お前とキサラギってのは驚いたけど」
 タケヤはイスから立ち上がらない。まだ、話すことがあるようだ。
「なぁ、フジノ。なんで、この国以外でワクチンが使われてないか知ってるか?」
 突然、違う話をはじめた。
「値段が高いからでしょ?」
 僕は答えた。
「それも1つの理由だな」
 タケヤがうなずく。
「……実は、2世にどんな影響が出るか分かってないんだ」
 タケヤが真顔で言う。
「2世?……ああ、子どものこと?」
 タケヤはうなずく。
「でも、ワクチン接種が始まって何年も経つし……大した影響が出た話は聞いてないよ」
「そりゃな……普通のやつらは大丈夫だけど、問題は俺たち適合体だ」
 言われみて、ハッとした。確かに適合体の子どもは前例がない。
「俺たちが、施設に突っ込まれるのは、戦わせるためってのもあるが、本当の理由は、1代限りで飼い潰すためだ」
 タケヤは虚しく苦笑した。
「……タケヤ、なんでそんなこと知ってんの?」
「ああ。俺、偉い偉いお役人様の息子だったから……驚きだろ」
 タケヤは笑った。
「そうなの?」
「ああ。正直、適合体になっても、お父様のコネで裏口から施設を出れると思ってたくらいのボンボンだぜ?」
 初めて知った。驚いたけど、心のどこかで納得していた。タケヤは冗談大好きなのに、妙に世渡り上手で達観したところがある。
「でも実際には、裏口からオヤジは俺に謝りに来た。息子のこと、バケモン見るような目で見ながら、教えてくれた。もう、俺とは親子じゃないって、わざわざ伝えに来てくれた」
 タケヤは遠い目をした。
「俺たちって、そういう存在なんだよ。家族も恋人もいないまま死んでく運命なんだよ。だから、お前らのことを不適切な関係とは言わねぇよ……ちったぁ、いい目みてもいんじゃないか?」
 タケヤが僕を見た。やけに優しい目をしていた。なんだか照れくさくて、僕は吹き出した。爆笑した。
「不適切な関係って……」
 タケヤらしくない古めかしい言葉のチョイスだ。
「うっせ!俺がここに来る前、塾で出会った子と付き合ってたらオフクロが、不適切な関係って言ったんだよ!」
 タケヤが顔を赤くする。
「マジ?」
「マジだよ。別に、ガキらしい健全なお付き合いだったけど、オフクロは共同主義党の支持者が大嫌いでな。まぁガキには選挙なんて関係なかったけど……こんなことになるなら、あの子をちゃんと抱きしめてりゃよかったよ」
 タケヤは、らしくない顔で笑った。
 最後はタケヤの思い出話になったけど、なんだか励まされた気はする。
 誰かを好きになるって、貴重なことなんだと実感した。
 タケヤと話し込んだせいで、この日はキサラギの部屋へ行けなかった。まぁいい。別に約束しているわけじゃなくて、いつも僕が勝手に行ってるだけだ。

つづく。

 タケヤの秘密回(誰得!?)サブキャラ大昇格!
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