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20話 死神復活。
「おはよ……昨日、来なかったな」
翌朝から、キサラギに言われた。
「ああ。ごめん。少し忙しくて」
僕は謝った。
「……」
キサラギは黙っていた。怒ってる風もなかった。……昨日、僕を待っていたのだろうか?それとも、ただ単に気まぐれに、僕の動向が気になっただけだろうか?
「今晩は、行くから」
僕は言った。
その2時間後にゾンビが出た。キサラギ復帰戦で、僕も一緒に出ることになった。
「キサラギ、久しぶりだし、無理すんなよ」
僕の隣のショウジが声をかける。
「大丈夫。長らく車椅子だったから、上手く動けないかもしれないが、そのときは自分から退くよ」
キサラギはそう言いながらも、威風堂々と先頭を歩く。僕らは少し離れて歩く。
戦場でデートしてるようにサイインの隣を歩いていたキサラギを思い出す。今の僕とキサラギは、そんな関係じゃないらしい。そんな雑念を、首を振って脳内から追い出す。余計なこと考えてたら死につながりかねない。
ベッドではあんな細い背中も、防護服を着て戦場に立てば、最強のオーラを漂わす。どっちが本当のキサラギなんだろうか……なんて考えても仕方ない。どっちもキサラギだ。
台風接近で不思議な雲が渦巻いていた。何重にも雲が重なっているのが分かる。強風が吹く。風鳴りの不気味な音が周囲の音をかき消して、状況はよろしくない。
僕の隣にいたショウジが、いきなり前に倒れた。受け身をする間もなく前のめりに地面に叩きつけられる。ゾンビが後ろから飛びかかって来たのだ。ゾンビはそのまま馬乗りになっている。
こんな近づかれるまで気づかなかったとは……心の中で舌打ちした。
ヘルメットの中に、スピーカーから溢れたショウジの悲鳴が反響する。いきなり背後から襲われたのだ。混乱しても無理もない。
ゾンビがうつ伏せになったショウジの肘を掴み、腕を真上に引っ張る。ヤバい。ヒトの腕は後ろにはいかない。僕はナイフでゾンビの腕を刺す。一緒にいたやつも加勢する。ゾンビは蠅でも払うように僕らのナイフを払う。ナイフが手に当たり、指が飛んでもお構いなし。しかし、こっちはゾンビが振りまわす腕が当たるだけで骨まで響く重い衝撃があるし、下手したら腕が折れる。しかも、ゾンビはショウジの腕を掴んだまま離さない。
先に進んでいたキサラギが駆けて来た。
「どけ!」
キサラギの一喝は、ゾンビでなく僕らに向けられている。死神の狩りの時間だ。邪魔な烏合の衆を威嚇し、退かせる。退かないヤツは蹴っ飛ばす。
真打ち登場だとゾンビも悟ったのだろうか?ショウジの腕を離す……ショウジが解放されたことに一瞬、安堵したが、さっきからショウジの悲鳴が途切れたのが不安だ。
キサラギはナイフを両手に持つ。ゾンビが振りまわす腕に当たる位置にわざと踏み込み、紙一重で避け、ナイフを振る。キサラギは振りかぶるような大きな動作はしない。ただ、1歩踏み込むか、引く程度の動きで攻撃する。
まるでマグロの高速解体ショーのごとく、迷いなくぶった斬る。華麗ですらある。相手がどれだけ素早くとも、その0.01秒早く動いて、的確に急所を突く。
結局、キサラギは1人でゾンビを倒した。
「ショウジ、大丈夫か?」
慌ててショウジに訊く。
「肩……いってるな」
ショウジは弱々しく答えた。それが分かるなら、大丈夫だ。
その夜、戦いの余韻が残っているのか、キサラギは乱れに乱れた。
僕も、あの死神と、このキサラギが同一人物だと思うと、妙に興奮した。
つづく。
そうそう。これがキサラギですよ。
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