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21話 清楚系黒い死神。
死神復活……みな口々にそう言った。
恋人が死んでも、変わらずにゾンビを屠る姿に畏怖を抱く反面、変わらぬ強さに安心していた。やはり戦場でキサラギは頼もしい。
そんなキサラギに、ある変化が起こった。
僕が、タケヤとカキタと一緒に、夕食のために食堂に入ったときだった。
「ねぇ、あれ」
カキタが小さな声で言う。視線の先にキサラギがいた。出入り口から一番遠い静かな席は、キサラギ指定席だ。今日もそこに1人で座っていた。
僕はキサラギと特別な関係だが、普段は一緒には過ごさない。ただ、夜に時間があるときだけ、キサラギの部屋へ行く。
キサラギは、頭にタオルを巻いていた。それはそれで似合ってるけど、それ以上に問題なのが、チラリと見える髪が黒い……金髪じゃなくなってる。
「フジノ、行って来い」
タケヤが真顔で言う。
「えー……」
僕はカキタを見る。タケヤは僕とキサラギの関係を知っている。問題はカキタだ。僕がキサラギの部屋から出てくるところを目撃されたらしいが、そのことはタケヤが上手くごまかしてくれたようだった。……カキタの前でこれ以上、怪しい行動はできない。
カキタは僕の視線を受けて笑う。
「僕も一緒に行くよ!」
なにを考えたか、威勢よくカキタは言った。
「タケヤも行くよね?」
カキタはきちんと言い出しっぺも巻き込む。
そして、食事をトレーに乗せ、キサラギ指定席の近くに3人で座る。
キサラギはあからさまに目をそらした……これでキサラギに嫌われたら、僕はカキタを嫌いになると思う。悪意がないのが一番タチ悪い。
「ほら、聞けよ!気になって夜も寝れねぇだろ」
タケヤが僕をつつきながら小声で言う。
「寝れなくても、明日は記者団が来るだけだから大丈夫だって」
僕は言い返す。
「じゃ、僕が訊こうか?」
……カキタ、そんな積極的なんだ?もしかして、カキタもキサラギと仲がいいのだろうか?
「いや、お前はやめとけ。機嫌損ねたら殺されるぜ」
タケヤがカキタを止めるところを見ると、あまり仲はよくないらしい。
「じゃあ、フジノ、お願いします」
カキタにお願いされた。
「フジノ、ズバッと行け☆」
タケヤがわざとらしいウインクした……キモいよ。
「あー、キサラギ?」
僕が呼びかけると、キサラギはこっちを向いた。
「なんだ?」
「髪、どうしたの?」
ストレートに訊いた。
「……変か?」
キサラギは真顔で訊いてきた。
「い、いや、変なんてこれぽっちも思ってないぜ!金髪もいいけど、黒髪もいい!どっちも似合うし、タオルもいい!」
タケヤが慌てた様子で言う。キサラギの機嫌を損ねたら殺されると本気で思ってるのだろうか?……いや、たぶん、ふざけているだけだ。
「黒髪は清楚系でステキだよ!」
カキタは意味不明なフォローをした。
「……」
キサラギは静かに驚いていた。そして静かに口を開く。
「明日、記者団の視察があるから、髪を黒に戻せと言われただけだ」
「はぁ……」
タケヤはきょとんとした。
「いつもは、視察のときは訓練を欠席していたけど、犠牲者も出て人数が減ったからな」
キサラギは淡々と言う。
沈黙が流れた。まさか、犠牲者絡みの話になるとは思わなかった。
「別に、1ウィークの染髪剤だから、1週間で金髪に戻るよ。戻らなかったら、染め直す」
キサラギはそう言って席を立つ。食事を終えて去って行った。
「キサラギ、もうサイインのことは気にしてないのかなぁ?」
カキタが言う。その言葉は、僕をチクリと刺す。確かに、淡々と犠牲者の話をするキサラギは、もう亡き恋人を忘れたようにも見える。
「さぁな。ちゃんと乗り越えて生きてんだろ」
タケヤは苦笑めいた顔をした。そして自分の皿に乗っていたトマトをタケヤの皿に乗せた。
「ちょっと、タケヤ、なにすんだよ!」
「いいだろ。トマトは種のまわりのドロドロがまずいけど、リコピンが含まれてて美容と健康にいいんだ。カキタ美しく健康になれよ」
「好き嫌いはダメだって!」
タケヤとカキタはじゃれるように暗い空気を払拭した。
でも、僕は少し憂鬱だった。
今のキサラギにとって、サイインはどんな存在なんだろう?そして、僕はどうなんだろう?
つづく。
タケヤとカキタは、最初サブキャラだったんですけど、かなり気に入って書いてます。
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