つい最近、中国当局は自国内で合計200人もの人権派弁護士を拘束したが、これもエスカレートする人権弾圧のほんの一例だとされている。弾圧の対象は、共産党の独裁を批判する勢力に始まり、個人の言論や集会の自由、宗教や信仰の自由を唱える人たち、具体的にはイスラム教徒のウイグル人や仏教徒のチベット人が最大の標的となる。
なかでも、ウイグル民族に対する弾圧は最も過酷で峻烈だと言える。言語も文化も慣習も漢民族とは異なり、さらにはイスラム教を信仰する少数民族のウイグル人たちを、漢民族主体の中国社会に強制的に同化させようというのが中国共産党政権の年来の政策である。
ウイグル民族は他の諸国のイスラム教徒との連帯もあり、中国政府の同化政策に激しく抵抗してきた。武力闘争も熾烈で規模が大きい。例えば2009年7月に新疆ウイグル地区で起きた騒乱では、中国政府の弾圧措置に抗議したウイグル人が、中国側の発表でも150人以上、世界ウイグル会議の発表では3000人も殺された。さらに2014年7月にも抗議デモが弾圧され、米国政府の情報ではウイグル人100人以上が中国当局との衝突で殺されたとされる。
容疑不明で逮捕された政治犯は数千人
そんな歴史的な経緯を踏まえて、カーディルさんは7月23日の公聴会で次のような骨子の証言をした。
・中国当局はウイグル人が信仰するイスラム教を「テロ、分裂主義、過激宗教の三悪」と断じ、信仰の活動をあらゆる角度から規制し、禁止している。信仰活動は共産党公認の組織の命令に従うことを義務づけられ、男性の髭、女性のスカーフも禁じられた。
・イスラム教の「ラマダン」(断食月)も中国当局は許さず、ある小学校、中学校では、生徒と先生の両方がラマダン中に公衆の面前でスイカを食べさせられた。一部の都市ではラマダン中にあえてビール飲みのコンテストなどが開かれ、参加を拒んだイスラム教徒が逮捕された。