■タイミング悪い新工場稼働
鄭会長は昨年末、法人長会議で「ポスト800万時代」を強調し、年間820万台の販売目標を掲げて拡大戦略に打って出た。ところが、現代・起亜の今年上期の実績は、国内市場こそ57万8661台と、前年同期比で2.4%増を確保したが、成長を期待した肝心の海外市場は3.3%減の336万7406台に低迷。この結果、国内外の全体販売台数は、前年同期比で2.4%減の394万6067台にとどまり、「ポスト800万台」の夢には到底、届かないペースなのだ。
鄭会長は会議で、「多くの困難を経験してきたが、すべて乗り越えた経験がある」と強調し、「むしろこのような困難を、外部条件に揺れないように体質を改善して革新する機会にしよう」と宣言。その上で「全社員が団結して、有機的な協力体系を構築するように」と注文をつけたという。
現在の販売の落ち込みは大きいが、中央日報(電子版)は、市場調査会社のJ.Dパワーによる「2015中国販売満足度評価」で現代自動車の中国現合弁法人である北京現代2000年以降過去最高点となる812点を記録し2年連続で1位になったと伝えており、鄭会長の言葉通り同社は難局を乗り切るかもしれない。
しかし、同社が本当に全社員一丸となった協力態勢でまとまれるかは、疑問が残る。現代自の社員の年収は、なんと収益で圧倒的に勝るトヨタよりも多いというからだ。朝鮮日報(電子版)は、それぞれ現代自の韓国とトヨタの日本の従業員を基準にした2013年度の年収を比較すると、トヨタの平均約794万8000円(当時のレートで8318万ウォン)に対し、現代は約9000万ウォンと上回り、日本円で現代自が100万円以上も高いと報じた。現代は14年度の年収がさらに9700万ウォンと上昇しており、トヨタを上回ったとみられるという。
■トヨタを上回る従業員の年収
同紙は背景として、トヨタはリーマン・ショックや米国での大量リコールなどで経営が苦しかった時期に、労働組合が賃上げを要求せず、むしろボーナスの削減などで労使一体で業績改善にあたった点に着目。対照的に営業利益が年々、減少する中でも現代自の労働組合が強気の賃上げを要求してきたことを指摘している。中国販売の不振で、その現代自労組がトヨタのような労使協調路線に簡単に転じるとは考えにくいのだ。
現代自の最近の株価はほぼ5年前の水準に逆戻りしており、多くの投資家も今はまだ反転攻勢に確信が持てず、経営の先行きを不安視している。簡単には巻き返しの展望が開けない中、おそらく現代自の海外法人長らはゾンビ相場と化した中国株バブルの行方に戦々恐々としていることだろう。(I)