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ギフトワールド~才能世界の挑戦者~ 作者:スペイン
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20XX年、時代の進歩とともに発展を見せたゲームはついに、夢物語とも言われたVRMMOの開発に成功した。

しかしそれは、遊ぶ機械というよりも人生をやり直す機会とすら言われるようになった。架空世界に身をおいて自分の分身を創り出して生活をする。それは生をやり直すことと同義だ。そう時代の評論家達は位置づけた。

家庭用ハードとして出回るのはまだ先の事になるであろうそのVRMMOはゲームショップの特設コーナーで楽しむことができた。プレイをする際は前金として1時間500円を支払い、プレイしたいタイトルを手渡しされて特設コーナーでプレイをするというスタイルだ。最大利用時間は12時間、それ以上の時間をプレイすることは脳に悪影響を与えるということで戒められた。12時間以上プレイしたら1時間の休憩を絶対に取るように!と念を押された覚えがある。なんでも、その約束を破った人が帰らぬ人になった・・・なんて噂もあるけれども所詮は噂、実際のところは分からない。

数あるゲームソフトの中でも特に人気があるのは『スマッシュスカイ』というゲームだった。大手ゲームメーカーが手掛けたその作品は、そのメーカーのキャラクターになりきって他のプレイヤーと戦うことが出来るというものだ。Lvの概念は無いものの、各キャラクターごとに個性的なSkillを持っており、それを活かして戦うという物だ。プレイすればするほど上手くはなるものの、Lvの概念が無いことから初心者vs中級者でも結構いい勝負ができたり、上級者vs上級者の試合に至っては元のキャラクターよりもいい動きをするプレイヤーが出てくることもあり見応えもあった。

多くのゲームが注目を集め、多くのゲームにプレイヤーが群がる中で、新たに一つのゲームが世に放たれ用としていた。

『ギフトワールド』、PV無し、βテスト無し、事前情報で公開されたのは一つだけ、『アナタの望みが叶う世界』というキャッチフレーズ。

このキャッチフレーズに魅せられる者、呆れる者、興味を示す者、多くの人々が期待を寄せながらも『所詮はゲーム』と馬鹿にしていた。開発会社に関してもまるで聞いたことがない『Beyond』というところ、開発スタッフすらロクに公開されておらず、『不安の塊のようなゲームソフトだ』とゲーム雑誌には載せられていた。

そんな酷評冷めやらぬ中、そのゲームのプレイングを決意している男がいた。

京峰暘(きょうみねいずる)、28歳で株に手を出し、大成功。安定こそしないものの、33歳になる現在までの年収は一億~三億程、それまで様々な職種に手を出してきたが働くことが嫌になって半ば自暴自棄で株に手を出したのだが『運の良さ』、ただそれだけで彼は人生の成功者となった。

中背中肉、染めようと思ってもブリーチ液が痛いと聞いて染めずにいた黒髪、髪の毛を切りに行くのも億劫なので前髪を後ろまで持ってきて一纏めにしている。顔は整ってこそいないのだが、三白眼と切れ目が特徴的で初対面の人にはまず良い印象は持たれない。故に職場での彼はいつも爪弾き者だった。会話自体は苦手ではないのだが、相手の目を見て喋ると相手が萎縮してしまい、話も段々と盛り下がっていき・・・お開き。

そんな彼にとってVRMMOとの出会いは衝撃的だった。自分本来の姿を捨て、別世界に身を置いて別人のような姿の自分で過ごすことが出来る。彼は溜まりに溜まったその資金でVRMMOにのめり込んだ。

最初にプレイした『スペりオールサーガ』は彼の記憶に色濃く残っている。

『スペりオールサーガ』、ゲームセンターに初めて設置されたVRMMO体験機だ。プレイヤーは八つの種族から一つを選び、そのキャラクターに応じた物語を進めていく。同じゲームセンター内のプレイヤーとであれば協力プレイも可能で、大きなゲームセンターであれば120人が同時にプレイできた。協力プレイ時はパーティー内の誰かの物語を進めることになるのだが、ウッドエルフの物語で、ウッドエルフの最強装備や最上位呪文は手に入らない、ウッドエルフの物語で手に入るのはドワーフの最強装備と鍛冶師の誇りというアイテムだった。結果として協力プレイは否応なくすべてのプレイヤーが行った。暘にとって初めてのVRMMOだったが、このゲームのおかげでVRMMO世界でのコミュニケーション能力は付いたといっても過言ではない。

おかげであと5日後にプレイ開始となる『ギフトワールド』に対しても抵抗感無く始められそうだ。

・・・ここだけの話、暘はとんでもない事をした。

ゲーム筐体の購入だ。

本来であればVRMMOはゲームセンターへ行くことでやっとプレイできる作品だ。そうでなければ、12時間という縛りを無視してプレイする者が大量に出るからだ。今回の購入に際しても、1週間に1回必ずゲーム会社まで来て健康診断をすることを条件とされた。12時間以上のプレイは『出来るだけ』してはいけないと言われたので、恐らくは脳に異常が起きていないかのチェックを兼ねているのだろうと適当に判断した。

ゲーム筐体の値段は六千万だった。通常のゲーム筐体と比べてえらく高いのだが、それは最新筐体であり、なおかつ最新技術であるVRMMOだ。身体の安全さえも時間制限をしなければいけないそんな筐体を買おうというのだからどんな値段をつけられても仕方ない、そう思って買った。(実は販売するゲーム会社側もこのくらいの値段をつければまさか買いはしないだろうと思ってのことだったのだが)

いつもどおりに株の動きを追って、昼間になればゲームセンターへVRMMOをしに行く。『ギフトワールド』がどんなゲームなのか、それすらも今はまだわからない状態なので、どんなゲームが来てもいいように一通りのVRMMOをプレイしておく。

『GrandRacing』、車に乗る・・・のではなくまさかの車になるゲームだ。まさか『ギフトワールド』がそういうゲームだとは思わないけれども久しぶりにプレイしてみた。四肢の感覚はなくなり、フロントガラスからの光景がそのまま自分の視覚となる。耳を動かそうとするとサイドミラーが動き出す。面白い感覚だ。ただ、未だに走り出す時の腹が燃えたぎるような感覚には慣れないし、排気ガスが出て行く時に感じる不思議な高揚感もあまり得たくはないものだと思っている。

次にプレイしたのは『HuntingBird』だ。名前の通り、鳥になって獲物を狩るというゲームなのだが、レベル制であり、なおかつこれはRPGなのだ。最初は小さな雛なのだが、レベルが上がると最初に選んだ雛と同じ種類の鳥へと成長していく。段々と素早く、自由に空を飛べるようになっていく。舞台は異世界なのだが、どこかアメリカに似ているその地形は海外旅行をしている気分にもしてくれた。

最後にプレイしたのは『PlasticGirl』という恋愛ゲームだ。このゲーム、R18なのだが理由は以下の通りだ。1.主人公が必ず死ぬ。2.ヒロインが殺す。3.ヒロインを殺す。4.1、2、3のいずれかを1度経験しないと本編が始まらない、それまではプロローグ。基本的に主人公がヒロインを殺した場合、本編で結ばれるが、ヒロインに殺された場合は主人公がヒロインを殺してハッピー(?)エンド。とてもじゃないがプレイしていると精神が蝕まれるので何回もプレイするのは嫌だ・・・ったはずなんだけれど、流石に13週もしてしまうとその感覚すら麻痺してきていた。攻略対象キャラが26人もいるので何回も何回もプレイしているのだが、このゲームを選択するたびに自分の後方に並んでいる順番待ちのプレイヤーが天を仰いだり、突然むせたりするのが面白かったりもする。

この3種類をメインで・・・特に『PlasticGirl』をメインでプレイしていたら、5日が経った。

そう、ついに筐体が届いたのだ。

高さ1m50cm、横幅1m、奥行2mのドデカイ筐体が俺の部屋に運ばれてきた。フォルムは丸みを帯びていて、横についたドアを開けて中にある椅子に座り、ゲームを起動させるだけで良い。それまでの頭部に装着したりする機械とはあまりにも違っていたので最初は不安があったのだが、筐体管理の書類を見ているうちにそうした不安もなくなっていった。

この筐体は脳波や血流、心臓の働きなど人体において行われる全ての活動をスキャンすることで、サーバー場に完全な分身を作り上げるのだという。とんでもなく詳しく書かれていたのだがまとめると先の通りだ。

説明書がついてきていたのでそちらにも目を通してみる。

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『ギフトワールド説明書』

ギフトワールドの設置、または購入ありがとうございます。この説明書は、設置後にプレイをする人に話す内容となりますので、ゲームセンターの店員に該当する人は覚えていただけるようお願い致します。

ギフトワールドはVRMMORPGです。プレイヤーには新しい人生をこの世界で楽しんでいただくことができます。ゲーム内における1日が現実における1時間に該当します。とは言っても、ゲーム内で過ごす1日は24時間であり、最新鋭のシステムによって体感時間を伸ばしている形となりますので、現実時間の経過はあまりお気になさらずにプレイしていただくことができます。

どのような人生を歩むのかはプレイヤーの皆様次第でございます。ギフトワールドの時間は止まることを知りません、誰もプレイしていない状態であっても、ギフトワールドの時間は進み続けます。プレイヤーの皆様がプレイしていない時間帯は、自分のキャラクターに行動設定をしておけばその行動をさせることができます。その際、戦闘行動等を設定してしまうと思いがけないトラブルを生む危険性もあるので気をつけましょう。

最初は筐体型でのプレイのみとなりますが、筐体設置から3ヶ月後、スーツ型ゲーム機として売り出すことが決定しておりますのでご自宅でもお楽しみ頂くことができます。スーツ阪ではいくつかの要素が楽しめなくなっていますが、一度ゲームをプレイして頂ければネット上にプレイヤー皆さんのアルファ数値、プレイヤーごとの身体から計測される数値を記録させていただき、筐体、スーツ、両方で同じデータでのプレイができるようになっております。

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とまぁ、以上が俺の方で簡単にまとめた概要だ。

つまりは遊び呆けてOKということだな?え?違う?

・・・き、聞こえなーい。

筐体内部にあったタイマーで12時間と設定をして椅子に座る。これで俺はゲーム内12日間プレイできるというわけだ。椅子のひざ掛け部分にボタンがあり、それを押したら、いや、それを押すだけでゲームスタートというわけだ。

さて、それじゃあ楽しむとしようか、『ギフトワールド』!

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