(堀北)「私は今東京の雑踏の中でこの手紙を書いています」。
岩手にある「手紙でしか予約できない宿」。
どんな所なんだろう?何だかわくわくします。
「是非訪れてみたいのですが8月まだ泊まれるお部屋ありますか?」。
緑に囲まれたとても気持ちのいい所にやって来ました。
そして私もお手紙でお返事を頂きました。
返事が来るまではすごくドキドキしたんですけど「お待ちしています」というお手紙を頂いてうれしかったです。
あっこちらのかやぶき屋根の所になるのかな?これが「手紙の宿」。
訪れる人たちのひと夏の物語です。
郵便で〜す。
(テーマ音楽)結構楽しいのただ…。
こんばんは〜遅くなりました。
いいえ楽しみにしてましたよ。
帰りました。
手紙が来たのがすごいうれしかったですね。
沿岸部がだめになったぐらいにしか分からなかったんで…。
岩手県野田村。
東日本大震災では18mの津波に襲われ全壊半壊合わせて500軒近くの建物が被害を受けました。
今村の再建が少しずつ進んでいます。
手紙の宿があるのは海から8.5km離れた山あいの集落。
津波の被害は免れました。
手紙の宿「苫屋」。
築160年の古民家です。
いただきます。
どうぞ。
朝7時朝食が始まっていました。
囲炉裏でくん製された卵。
自家製の小麦で作ったパン。
焼いているのは宿の主人坂本充さんです。
妻の久美子さんは台所の担当。
二日酔いのお客さんのために特製のハーブティーをブレンドしています。
二日酔いに効くって書いてあった。
お茶?これ。
何…。
(久美子)ハイビスカスと…。
ハイビスカス。
(笑い声)そうだよねビタミンがあってね。
(充)大体赤い系はそうやな。
1泊2食で6,000円。
夫婦2人で営むたった3部屋の小さな宿です。
午前10時。
いつもの車がやって来ました。
郵便です。
(久美子)はい!は〜い。
すみませ〜ん。
ありがとう。
ご苦労さま!はいどうも〜。
予約の手紙は毎日3〜4通届きます。
この方が今日の人。
(充)ハハハハ。
これは東京で暮らす女性から。
「はじめてお手紙を書きます。
こんにちは。
是非お宿に泊めていただきたくまたご夫妻にお会いしたくお便りしました。
女2人海岸線南下旅です」。
(久美子)この文は女の子だよ。
一人一人の手紙にじっくり向き合いその人に合ったもてなしを考えます。
(久美子)うん元気。
手紙には相手を思いながら一枚一枚返事を書きます。
「霧が出ると寒いので長袖を一枚お持ち下さい」。
宿の裏山には充さんの畑が広がっています。
これ…これ取れるわな。
これ取れるでしょ。
ピーマン。
育てているのは野菜や小麦。
一番おいしい時期にお客さんと自分たちが食べる分だけ収穫します。
自然と共にある時間に縛られない暮らしです。
若い頃充さんと久美子さんは気ままに世界中を旅して回る生活をしていました。
ロンドンで出会い手紙のやり取りを続けて心が結ばれます。
野田村を初めて訪れたのは23年前。
数か月の滞在のつもりでした。
気持ちを変えたのは自然と共に暮らす人々の温かさでした。
こんにちは。
こんにちは。
こんにちは。
すごいすごいすごい。
こんなにいっぱい?いいよいいよ。
よそ者だった夫婦にも自慢の料理を分けてくれたり農業を教えてくれたり。
2人は自然と村の一員になっていきました。
ありがとう!7月中旬。
(久美子)今日のお客さんのメニュー…。
手紙をくれた女性たちが泊まりに来る日です。
都会から来る2人に味わってほしいのは新鮮な野菜。
これは村のおかあさんにもらったお豆腐。
自家製のふきのとう味噌を塗って囲炉裏で焼きながらお客さんを待ちます。
夜8時。
待ちわびた2人を乗せたタクシーが宿に到着しました。
ありがとうございます。
こんばんは。
(充)いらっしゃい。
こんばんは〜遅くなりました!
(充)いいえ楽しみにしてましたよ。
ありがとうございます。
すいません。
想像どおり元気いっぱい!
(充)遅なったからお茶じゃなしにもう食事にしちゃうね。
ありがとうございます。
(充)まあゆっくり落ち着いて炉端に来て下さい。
はい。
昼まで仕事をして新幹線に飛び乗ってきたそうです。
ふだん仕事で忙しい2人が一緒に旅をするのは8年ぶりです。
(シャッター音)緑の旬野菜が並びます。
晩ご飯の時間夫婦も一緒に囲炉裏を囲みます。
寒かったらもっと手前に寄ってね。
(充)お待たせしました。
お待たせしました!
(充)お互いにね…。
ようこそ!うれしいです。
お会いできて。
久美子さんの料理いかがですか?あ〜。
ああうんうん。
進むやつだね。
進むやつ。
ゆったりと流れる時間。
食後の話題は久しぶりに書いた手紙の事。
(充)極端に言うとあれかな…。
ひょっとしたら。
ふだんないからねぇ。
「来た〜!」って。
普通なのに。
(久美子)ねえ。
(上田)そうそうそれだよ。
(充)そのリズムで判断してるんやね。
時間を忘れて語らうひとときです。
7月下旬夫婦にとって特別なお客さんがやって来ました。
(玄関のベル)熊瀬伸二さん46歳です。
遠いとこどうもね。
はいどうも。
元気でしたか?岡山の会社で働く熊瀬さん。
8年前から宿に通い続ける常連客です。
暑い?
(充)めっちゃ暑い。
もう夏バテなるだけ。
ムーンとしてるで。
向こう行ったら倒れる?今では夫婦を「兄さん」「姉さん」と呼ぶ間柄。
お茶でもいれる?お願いします。
ふだんからお互いの近況も手紙で報告し合っています。
(充)僕の想像ちょっとずれてたな。
そう?熊瀬さんには宿を訪れる度に必ず向かう場所があります。
帰りました。
お帰りなさい。
村の中心部にあるお菓子屋さん。
お土産を買うために熊瀬さんがずっと通ってきたお店です。
熊瀬さんは?ご覧のとおりです。
うちらもご覧のとおりです。
店の真ん中に飾ってある千羽鶴。
4年前熊瀬さんが折って届けたものです。
震災直後の野田村の中心部。
津波で建物の多くが流され道路や通信網が寸断されました。
お菓子屋さんも店内に大量の泥やがれきが流れ込むなど大きな被害を受けました。
熊瀬さんが店の状況を知ったきっかけは宿の久美子さんからの手紙でした。
「心ちゃんのお店が津波で壊れました」。
「今は気丈にしています。
電話が通じないので不安になられていると思いますが安心して下さい。
葉書届くかな?」。
熊瀬さんは岡山から車で15時間かけて野田村に入り店の手助けを始めました。
店内の泥を掃除したり復興市でお菓子を売る手伝いなどもしてきました。
ほんとたくさんのものとか持ってきて下さって。
野菜とか持ってきたんですけど全部しおれてしまって逆に持ってこなかった方がよかったかなとか。
いや全然もう全然そんな事感じなかったですね。
「ありがたい」のもうひと言で。
(充久美子)こんばんは。
こんばんは。
熊瀬さんが来た日の夜。
野田村の人たちが次々と宿に集まってきました。
いただきます。
いただきます。
かんぱい!かんぱ〜い!仮設住宅で暮らす人や地元の商店主など。
熊瀬さんが支援に走り回る中で親しくなっていきました。
久美子さんが居たたまれずに書いた一通の手紙。
思わぬ縁が広がりました。
もうほんとに祈る気持ちで届けて下さいという祈りを込めて。
届くかなぁって…ただ祈るだけで。
新しい仲間との縁を大切に育んできた野田村の人たち。
動かすとさ早く終わっちゃうんだもん。
手紙の宿の短い夏。
つかの間の再会のひとときです。
次また…。
またね〜!
(久美子充)行ってらっしゃい。
岡山まで長い道のりを帰っていく熊瀬さん。
次の予約は2か月後だそうです。
郵便で〜す。
東京に帰ったあの2人の女性から手紙が届きました。
「充さん久美子さん。
お二人ははがきだけなのにたくさんのことを読み取られていました。
自分が日頃どれだけ想像することを忘れているか思い知らされたような気がしました。
人生の大切な1ページありがとうございました」。
手紙がつなぐ人と人。
小さな宿がその心を結んでいきます。
2015/08/13(木) 19:30〜19:55
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「こころ結ぶ手紙の宿〜岩手 野田村〜」[字]
岩手県北三陸の野田村。山間に“手紙でしか予約ができない宿”がある。営むのは村にほれ込み移住した夫婦。手紙から生まれる、夫婦と宿を訪れる人とのつながりを見つめる。
詳細情報
番組内容
岩手県北三陸の野田村。山間の集落に“手紙でしか予約ができない宿”がある。築160年になるかやぶき屋根の家を改築した宿を営むのは、村にほれ込み移住した夫婦。季節ごとに畑を耕し自ら作った野菜で客に食事をふるまう。夫婦が手紙にこだわるのは、筆跡や文面から送り主を想像して食事の内容を考えるなど、その人にあったもてなしをしたいから。手紙から生まれる“夫婦と宿を訪れる人たち”との不思議な縁やつながりを見つめる
出演者
【出演】堀北真希
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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