午後のサスペンス「さすらい署長風間昭平2 こまち田沢湖殺人事件」 2015.08.12


〜《風間昭平:ここ秋田県田沢湖でひと組の男女が死んだ。
無理心中とみられるがしかしまだ詳細は分からない》〜《私が秋田中央署に赴任したのはその1か月ほど前。
私はある任務を帯びこの東北の町に来たのだ》おぅ着いてる着いてる。
〜「秋田は寒いのでよかったら使ってください細川」へぇ…。
あぁあったけぇ…。
制服の入った段ボールは何番だっけ?署のほうに送った?いやぁさすがだねぇ。
はい分かってます。
感謝してますわが女房殿。
さすがは20年選手だ。
え何?25年?ハッハッハッ…こりゃ失礼しました。
フッフッはい…じゃ。
25年か…。
それにしてもよくもったなぁ…。
〜さあ出勤だ。
お前さんも秋田の道に馴染んでくれよ。

(細川次長)君停めて!停めて!
(急ブレーキ音)Uターンだ!Uターン!〜ちょっとちょっとあなた!おはよう。
おはようってどちらに?うん?署長室。
あそこは気軽に入れる所じゃ…。
気軽に来てほしいね。
ちょっとあそこは駐輪場じゃ…。
すぐ出るからさ君見ててくれよ。
あんたねもう…。
しまいには怒りますよ!
(急ブレーキ音)署長!風間署長!えっ!?署長!?細川さんお気遣い感謝します。
あの綿入れあったかいですなぁ。
ハッハッまどうぞ。
よろしく。
あこれだこれだ…。
手伝いましょうか?あけっこうけっこう。
前代未聞の不祥事だ…と上層部は騒いでいるようだが署長の藤田さんが姿を消して今日でちょうど1か月だねぇ。
表向きには脳梗塞で入院中…ということにして極秘に捜索中なんですが一向に手がかりが…。
ま身分的には今のところ県警本部付けで休職中ということに…。
自殺や他殺誘拐や事故に巻きこまれた可能性もなく個人的に悩みを抱えていた節もない…。
えぇ。
失踪当日10月10日の朝「帰りの車はいらない」とおっしゃって午後5時過ぎに署を出られたんですが…その際も私にひと声…全くいつもと変わらぬ笑顔で…。
あ署長お疲れさまでした。
(藤田前署長)お先に…よろしく私が藤田署長…あいえ…藤田前署長のお姿を見たのも今のところあれが最後に…。
本当に信じられません。
奥さんとの仲も良好だったとか…。
えぇ。
藤田前署長は29歳の時不幸にも最初の奥さんを病気で亡くされ12年前40歳を過ぎて頼子夫人と再婚されたんです。
子供はおりませんがそれだけに仲がおよろしいのか正におしどり夫婦だと…。
結論的に言えば藤田さんは自らの意志で姿を消した…私にはそう思えるね。
もしそうだとすればそこには必ず本人が抱える問題があるはずなんだが…。
あのぅ…制服に何か問題でも?これ?いや私はどうも制服ってやつが苦手でね。
しかしそれではあの…ケジメというものが…。
さて頼子夫人にお会いする前にどんな事件を扱っているのか現在の中央署の状況を把握しておこうか…。
藤田前署長が失踪した頃は3件もの未解決事件が…。
しかし2つの事件は見事に解決し現在は「共同墓地タクシー運転手殺人事件」だけという状況に…。
しかしこれがなかなかの難事件で…。
(細川)どうぞ。
風間です。
いやご苦労さま。
新しく赴任された風間署長です。
あぁ堅苦しい挨拶は抜きにしてそれよりも事件の概要を聞かせてもらおうか。
大久保さん…頼むよ。
(大久保刑事)ええ…?はいはい…。
ガイ者は角館に本社がある角館観光タクシー運転手煙山太一郎44歳。
事件発覚は先月10月2日早朝。
死体発見現場は市内寺内字大小路の空き地。
死因は紐状のものによる絞殺。
死亡推定時刻は前日の午後8時から11時頃までの間とみられております。
状況から推して殺害現場は別の場所と思われますが現時点ではいまだその特定に至ってはおらず…。
分かった。
ありがとう。
後で今までの資料を署長室に届けてくれないか?今夜にでも読ませてもらうよ。
それじゃよろしく。
署長どうぞ。
署長!署長!署長!細川さん。
はい。
知らない町を知るには自分の目でよく見てその町の空気を思いっきり肌で感じる…。
それにはこれがいちばんなんですよ。
ハッハッなるほど…。
その門左です。
ここ?そう。
ここが署長官舎?はい。
では…。
早速ですが…藤田さんは失踪当日の朝奥さんの兄上横沢宏さんから電話を受けたそうですね?はいそれに相違ございません。
その事はうちの大久保君と松川君が…。
(頼子)私も兄に確認しましたが時候の挨拶というか大した話ではなかったと…。
そうですか…。
奥さん…夫婦だからこそ分かる心当たりはありませんでした?心当たりがあったらもうとっくにお話しています。
そう…ですね…。
いただきます。
ほぅ…。
随分難しそうな本が並んでますね。
藤田さんのご趣味ですか?いいえ私です。
私は東京文化大を出たんですが卒業後も大学に残って西行とか芭蕉とか菅江真澄とか東北を旅した人が好きでそんな研究を続けていたんです。
そのお陰で婚期が遅れてしまい心配した兄の紹介で30歳を前にして藤田とお見合いをして…。
まさか警察官の妻になるとは思ってもいませんでしたが…。
でも藤田はとても優しい夫でした。
藤田さんは携帯電話はお持ちじゃなかったんですか?その件に関しては何も報告がないんですが…。
いえあの人は何だか目に見えない首輪をされているような気がして携帯電話は嫌いだと…。
なるほど…。
よく分かりました。
いや実は私も携帯電話が苦手でね。
藤田さんも私も時代遅れのアナログ人間かもしれませんね。
《子供はいないが夫婦仲も円満な家庭…。
そして順風満帆なキャリア…。
公私共に恵まれた男がなぜ突然姿を消さねばならなかったのか。
藤田の事も気になったが私には署長としての責務がある。
いや…早く未解決事件を解決し身軽になりたい。
あの夫人の顔に心からの笑顔を取り戻すためにも早く身軽になって署長失踪事件に専念したいのだ》
(鍋の吹きこぼれる音)アチッ!おぅ…。
できたできた…。
上杉君この道でいいの?ちゃんとナビしてくれよ。
(上杉刑事)ですから私が運転しますと申し上げたのに…。
この車はね…私とは長いつきあいでね。
日本中どこへ行くのもいつも一緒なんだよ。
あそこですタクシーが放置されていたのは…。
(読経の声)おかしな事を訊くがお寺はどこ?共同墓地なのでここにお寺はありません。
江戸時代からの墓地です。
そう…。
しかしこういうのは珍しいねぇ…。
はい。
こんな場所に死体ともどもタクシーを遺棄するとは…。
犯人には土地勘があるようだな。
ここに墓がある者はすべて当たりましたが残念ながら何も出ませんでした。
ところで煙山という男…そもそもどんな男なんだい?角館の出身で…生真面目で評判だった樺細工職人の父親も亡くなり現在身内と呼べる者はいません。
高校を素行不良で退学となりその後各地を転々として傷害賭博恐喝などの前科を…。
そんな煙山も3年ほど前に角館に戻って来て父親の友人の紹介で角館観光タクシーに就職。
しかしやはりまっとうな生活はできなかった…。
休みの日は秋田でパチンコやボート三昧。
「下手の横好き」というやつで借金もあったようです。
しかしなぜか6月半ば頃から急に羽振りがよくなった…。
煙山の部屋から200万円近い札束が入った菓子箱も発見されています。
なるほど。
じゃあかなり他人様の恨みを買ってるかもしれないな。
えぇ。
ですから捜査本部は角館署の応援とうちの二課の応援も得て…。
菅江真澄…。
上杉君これは有名な人?秋田県人なら名前くらいは…。
江戸後期の民俗学者で生まれは三河なのですが30歳の時から生涯を旅に生きた方です。
信濃から越後出羽と巡り更に津軽から伊達へと足を延ばしそれから松前に4年ほど滞在。
その後秋田に来られ76歳で亡くなるまでの30年近くを過ごしたくさんの著作をものにされたすごい方です。
へぇ〜君は歴史に詳しいんだなぁ。
私の父は能代にある神社の神宮で小さい頃からいろいろたたき込まれたものですから。
(笹木)秋田日報のサツ回りをしている笹木といいます。
ほぅブン屋さん…。
早速ですが藤田さんいかがですか?もう入院されて1か月…。
さすらい署長とも呼ばれる風間さんが赴任する先にはきっと何かあると…。
おいスッポン失礼な事を言うな!しかしこれが私の仕事ですから。
へぇスッポンの笹木さんか…。
しかし噛む相手とタイミングを間違うと自分が噛まれる事になるよ。
明日の捜査会議では諸君新しく赴任された署長に笑われないようよろしく頼みますよ。
聞いてるのか高倉君。
暴力団専門の二課さんでも今は一課に協力してるんです。
もっと協調してください。
(高倉刑事)俺は前の藤田も嫌いだ。
署長なんてのはみんな嫌いだ!
(大久保刑事)新しい署長は分からんが藤田署長は部下思いの立派な人だったろ!高倉悪く言うのは許さんぞ!これだからなぁいつもお優しい…大久保のダンナは…。
なんだとおい!《どこの署にも必ず内部に対立がある。
人間の社会が常にそうであるように…。
私がさすらい署長という身に甘んじているのは常によそ者の立場でいたいからか…》すでに承知のとおり煙山の首に残された索状痕からは後部座席に乗った犯人が煙山の不意を衝きその背後から煙山の首に紐を回しそれを背後で交差させ絞殺したものと思われます。
しかしここで問題なのはタクシーのタイヤおよび運転席の床からもイチョウの実が検出されているにも関わらず煙山の靴や衣服からはまったく検出されていない…という点です。
(野村刑事)第1現場すなわち殺害現場は不明ですが犯人はイチョウの木がある犯行現場から秋田まで自分でタクシーを運転してきた事になります。
そのへんに切り口はないかと…。
私は鶴田組事務所と賭場を家宅捜索したいと思うんですが…。
しかしガサ入れしても何も出なかったらどうします?
(宍戸刑事)出ないはずはありません。
賭場に出入りしていたのは事実。
決まりの祝儀も渡さず勝ち逃げした煙山を不愉快に思っていた連中もいたはずです。
二課はそれでいいだろうが俺たちはマル暴の手伝いに靴底減らしているんじゃねぇ!
(松川刑事)はい。
はい松川君。
車の床に落ちていたイチョウの実ですが品種や樹齢によって成分が違うそうです。
ですからそれを分析して市内のイチョウの木のサンプル表を作れないものかと思うんですが。
大久保さんもおっしゃったように煙山の靴底からはイチョウの実の成分は検出されていません。
車の床のイチョウは犯人が踏んだものと思われます。
だとすれば殺害現場の特定も可能じゃないですか?しかし…タクシー料金メーターは…え〜1万5760円。
ほぼ角館から秋田までの料金ですよ。
イチョウを調べるとなると秋田と角館両方を調べなくては…。
そんなロスできるほどうちには余裕がねぇんだ。
(北畠部長刑事)はい。
何ですか?キタバタさん。
いえキタバタケです。
角館南署からの応援の北畠です。
あぁ…では北畠さんどうぞ。
すみませんが例の金ボタンの件…これはやはり公開捜査にしてもらえませんかねぇ…。
煙山は角館観光タクシーの制服姿で発見されておりますがその制服の金ボタンがひとつ紛失しています。
公開捜査の件は何度も検討したでしょう!悪戯や功名心から余計な通報を招き捜査が攪乱される恐れがあります!すみませんでした。
はい。
ひとつ訊きたいんだが…煙山の女性関係はどうだったんだろう?女性関係といえるかどうか…。
鶴田組の者の話では例の川反芸者のゆき江が煙山と同じ角館の出身でどちらも父親が樺細工職人で…。
ま…煙山が一方的に熱を上げてちょっかいを出していたようですが…。
そう…。
で…「例のゆき江」っていうのはどういう意味?ええ…。
あぁ大久保君続けて…。
(大久保)はあ…。
この香本繁というのが多分鶴田組の跡目を…。
ほう…なかなかのイケメンだねぇ。
ところで…川反芸者のゆき江という女性は?やっぱり何かあるんだ…。
「例のゆき江」とやらは…。
実はその「例のゆき江」というのは失踪された藤田署長と昔深い関係が…。
大久保さんを筆頭にほとんどが藤田署長のシンパなもんでできればそれに触れたくないんじゃないでしょうか?ほぅ…署長思いのいい部下だねぇ。
あそれはそうと角館南署からの応援のコロンボ君が言っていた紛失した金ボタン…。
私も公開捜査にしたほうがいいと思うねぇ。
現状ではこのカードを切っていくしかないんじゃないかねぇ…。
それにしても藤田さん…。
どこへ…?・
(三味線)
(佐藤ゆき江)おばんです。
《私が「例のゆき江」に会えたのは3日後のことだった。
川反芸者随一の人気を誇る彼女は予約がいっぱいだった》おばんです。

(三味線)ほぅ君が噂のゆき江姐さんか…。
フフッそんな素人さんみたいな事おっしゃって。
フーさんの事?それとも煙山の事?はい新しい署長さん。
フーさんねぇ…。
何度も事情聴取とやらを受けたけど煙山の事だったら堪忍してね署長さん。
私煙山って大嫌い。
だったらフーさんの事なら?ええ喜んで…。
フーさんの事なら話してるだけで楽しくなるから。
おいおいこりゃまた妬けるようなこと言うね。
フーさんと出会ったのは私がまだ18歳で半玉の時…。
当時フーさんは30代の男盛りでしょ。
そりゃあカッコよかったわよ。
しかし警察官の給料でよくお座敷遊びができたね?いいえ出会ったのはお座敷じゃないのよ。
その辺の一杯飲み屋なの…。
お姐さんたちに連れられて入ったお店で…。
お互い一目惚れってやつ…。
でも…夢って…長くは続かないから夢なのかしらねぇ…。
フーさんとそうなれたのはそれから何年も経って…。
やっとそうなれたと思ったら…。
12年前…藤田さんが再婚する時君はどうしたの?何て答えたら署長さん嬉しい?うん?うん…。
きれいに別れました。
飛ぶ鳥跡を濁さず…。
しかし…男と女…そう簡単には…。
生まれて初めて好きになった男性よ。
そりゃあ死ぬほど苦しかったわ。
でも想い出は今もこの胸に…。
〜ねえ署長さん…フーさんがいなくなった事と煙山の殺人事件…何か関連があるんですか?うん?いや…。
なんか驚いてません?署長さん。
いやそういう発想もあるのかな…ってちょっと意外でね…。
フフッ私シャーロック・ホームズか金田一耕助か…って?
(笑い声)《好い女だ…。
私は素直にそう思っていた。
少し前の言い方をすれば「癒し系」とでも言うのだろうか…》ありがとうございます。
署長が私の意見を取り上げ金ボタンを公開捜査にしてくださった…。
角館南署からの応援で正直肩身が狭かったもんで…。
そんな事よりあなたは例のゆき江姐さんが角館出身ということもあって煙山が殺された夜の彼女のアリバイを調べたそうですね?はい佐藤ゆき江はなかなかの車を所有しておりその車で角館の実家にも帰るというんで…。
しかしこう言っては何なんですが捜査本部は当初からゆき江は事件に関係がないという方針だったので…。
そうですか…なるほどねぇ…。
じゃ改めてお願いしよう。
念のため事件当夜のゆき江姐さんの帰宅後のアリバイを探ってみてくれませんか?あっ…これは内々に…。
承知しました。
あそういえば藤田前署長の奥さんの実家も角館ですね…。
横沢家というご先祖は中級藩士だった旧家で…。
そのようだねぇ…。
なんだかみんな角館だね…。
(福原君枝)朝刊でございます。
ありがとう。
イチョウの実の果肉にはビロボールとギンゴール酸という成分が含まれて…。
ちょっと待った!今更訊くのも何だけどイチョウの実ってギンナンの事だよね?いえちょっと違います。
イチョウの実の中の硬い殻に包まれた胚乳…それがギンナンですね。
その外側を覆っている果肉にビロボールとギンゴール酸が含まれています。
イチョウにはオハツキイチョウとかフイリイチョウラッパイチョウなどの品種があって実の果肉成分は少しずつ違うそうです。
したがって車内から検出された果肉とビロボールやギンゴール酸の比率が同じイチョウの実が見つかればそこが第1現場だという有力な証明になります。
いや松川君…。
君はギンナン博士だな…。
(笑い声)どうしました?実は事件当夜帰宅後のゆき江のアリバイに疑問が出てきまして…。
うんそれで…?本人は10時過ぎには自宅のマンションに帰ったと言ってますが11時半過ぎにゆき江の赤い車がマンションの駐車場に入っていくのを見たという証言が出まして…。
ゆき江の赤い車?煙山太一郎の死亡推定時刻はその夜の8時から11時…。
死体発見現場とゆき江のマンションとは車で20分ほどの距離…。
なるほど…。
それはちょっと微妙だなぁ…。
はい…。
たいへん微妙です。
まず…ゆき江本人に確かめる事が先決だなぁ…。
予約を入れたらまた3日かかったよ。
フフッ…。
呼んでいただけるのは嬉しいんだけど少し心配だわ。
ええ?何がだい?裏を返して馴染みになって…その先どうなるのかしらねぇ?こんな時に不粋な話で恐縮なんだが煙山が殺された夜君の車が…そう…君の真っ赤な車がマンションの駐車場から不審な出入りをしていたと聞いてね…。
あの夜なら私はどこへも出かけてはいません。
車はコウさんが出したの。
どこへ行ったのか何時に帰ったのか私は何にも知らない。
コウさん?ご存じない?鶴田組の若頭の香本繁さん。
そもそもあの車はコウさんのものなんですよ。
君と…そのコウさんとはどういう関係なの?それはお答えする必要があるのかしらねぇ…。
コウさんが何かの事件の容疑者にでもなった…というんなら話は別でしょうけど…。
でも風間さんて…どこかフーさんと似たような雰囲気があるわよねぇ…。
もっと出会い方が違っていれば…。
やっぱり私って男運がないのかしらね。
〜《藤田がゆき江に惹かれたのが分かる気がした。
しかし藤田の失踪にゆき江は関係していないのだろうか?》・はい風間…。
(村里)署長…いいかげん携帯電話を。
その声は懐かしいね〜チョーさんじゃないか…。
いや〜実はうちの娘の絵美が盛岡の短大に通ってましてね…。
そこで「菅江真澄研究会」てえのに入っているんですわ…。
ご存じですか?菅江真澄はね田沢湖付近で亡くなったとか…。
つまりチョーさん何が言いたいんだ?つまりですな〜娘の絵美はサークルの仲間と角館に行った際にそちらの事件で公開捜査になった例の金ボタンを拾ったらしいんです。
何だって!?チョーさんそれ本当かい?まあまあ話は角館でじかに会ってしましょうや。
私も娘を連れて行きますから署長もお出ましくださいよ。
ちょうどいいや。
明日は日曜日だ。
角館で再会といきますか…。
《翌日私は角館に向かった。
車で約50分。
チョーさんがいる盛岡からも新幹線で1時間少々…》《チョーさんたちと待ち合せた時間までにやるべき事があった》最近藤田さんがこちらに来られたことは?
(横沢)いや最近は…。
頼子夫人はたまにはお見えになるんですか?いや…妹もめったに来ませんね。
お盆の墓参りとか法事の時以外あまりこちらには…。
いただきます。
はい…どうぞ。
ご存じかどうか…私と妹は腹違いの兄妹なんですよ。
私の母は私が生まれてすぐに亡くなりそれから何年かして父が再婚したんです。
そして妹が生まれて…。
だからって仲が悪いわけじゃあないんですよ。
そういえばあれはいつだったか。
そう…今年の春先でしたか。
妹は田沢湖を見た帰りだといって珍しく顔を見せまして一晩泊っていきました…。
田沢湖…。
はい。
湖水が真っ青なきれいな湖だそうですね。
水深400メートル以上日本一の深さです。
その日は藤田が出張で留守なので久しぶりに遊びに来たといって。
風間さん…藤田が失踪してそろそろ2か月です。
このまま藤田が現われなければ妹はどうなるんですか?やはりあの官舎を出なければいけないんでしょうね?私もできるかぎりのことはしてみます。
とにかく今は藤田さんが無事に戻られることを祈りましょう。
あの〜よろしいですか?ゆき江さんの知り合いの者で風間といいます。
(佐藤和助)何の用だべ?特注で茶筒を作っていただきたいと思って。
茶筒だば出来合いのものが土産屋に。
あんたも娘が目当てならとっとと帰れっ。
娘は結婚する。
失礼ですが…いつですか?今年の3月だ。
3月の初め…そう決まった。
土産屋の藤木商店だ。
俺の作った物はみんな藤木さ納めている。
ゆき江は藤木商店の嫁になる。
この辺の奴らは年いった俺のためだとか玉の輿って言うより体のいい…身売りだとか〜言いよるが…。
やっぱり私って〜男運がないのかしらね〜《土産物屋藤木商店…》《年老いた父親のためとはいえゆき江の相手には〜やはり不似合いに思えた》や〜すまないっ。
今日は非番だろ?いえ光栄です。
しかしどうしてまた私を?君は菅江真澄にも詳しいから心強いと思ってね。
・署長っ。
お〜チョーさん。
どうもどうも…これが娘の絵美です。
(絵美)絵美です。
風間さんですね。
初めまして。
いやこちらこそ初めまして風間昭平です。
秋田中央署の上杉です。
おい若者っ。
署長にしっかり扱いてもらってるかっ?はいっ…いや…。
俺はな盛岡南署の村里だ。
風間署長とはおめ〜ツーカーの仲だべ…えっ?相変わらずだな〜チョーさん。
おいっあれ…。
あはい。
署長これです。
上杉君…。
はい。
絵美ちゃんこれを拾ったのはいつどこで?10月6日の土曜日神明社でです。
間違いありません。
事件が発覚したのはその4日前。
署長…。
決まりですか?うん早速神明社に行ってみよう…。
ここが菅江真澄終焉の地か…。
「民俗学者で紀行家でもあった菅江真澄は文政12年7月19日この地に住まいしていた神主鈴木家にて没したと伝えられ…」そうなんだ。
私は菅江真澄が亡くなったのは梅沢村とばかり。
梅沢村?今の田沢湖町です。
上杉さんも菅江真澄ファンですか?はい。
絵美さんもそうなんですよね?もちろん。
ここへ来たのも「菅江真澄研究会」で…。
いや〜嬉しいです。
こんな機会に菅江真澄ファンに出会えるなんて。
おいっサークルで来てるんじゃねえべ早くしろよ。
ここですっ。
私があの金ボタンを拾ったのは…。
〜わ〜立派…〜最初は〜何だろうと思ったんですが何だか縁起がいいように思え〜それで持ち帰ったんです。
〜ここが第1現場に〜違いない。
ギンナン博士が言ったとおりここのイチョウを鑑識で調べてみよう。
〜〜絵美…でかしたっ。
お前20年生きてきて初めて〜世間様の役に立ったなあ〜。
わ〜お父さん…〜それはひどいよ〜。
さて署長〜どうしますか?観光タクシーに行ってみようと〜思ったが今日はここまでだ。
〜十分すぎる成果があったよ。
それに絵美ちゃんにも〜お礼をしないとね。
あっ…私そうだと思って〜今夜の宿を予約しました。
〜あっそう。
上杉君君は署に戻って〜ボタンの確認を。
それにここのイチョウの実を〜鑑識に回して…。
このボタンの入手経路は取りあえず善意の第三者からと…。
〜〜絵美さん機会があればぜひ〜菅江真澄についてお話を。
〜ええ…喜んで。
〜いや〜署長お役に立てて本当によかったですよ。
実は私はね。
え…。
失踪した藤田署長の行方を捜すのが第1の任務だったんだ。
そうだったんですか。
まそのためにも…まず今度の事件をね。
いや〜しかし明日の捜査会議が楽しみでがんすな〜。
まず最初に善意の第三者が拾った金ボタンは煙山の制服のものと確認されました。
神明社から採取してきたイチョウの実の果肉片から検出したビロボール及びギンゴール酸の数値は煙山のタクシー運転席の床から見つかった果肉片の物ともう完璧に一致しました。
大久保君要点をまとめてくれるかな。
え〜10月1日の午後7時半以降犯人は角館町のどこかで煙山のタクシーに乗り神明社境内のイチョウの木の下まで行った。
そこで背後から煙山を絞殺。
煙山の靴や衣服にはイチョウの実が付着していないところをみると運転席から助手席に移したのではと。
一方犯人は後部席から運転席に移動。
その際に犯人の靴の底にイチョウの果肉片が付着。
それが運転席の床に落ちた。
制服の金ボタンが車の外に落ちてたってことはその時何らかの状況があって…。
これでようやく第1現場…殺害現場が特定されたわけだが捜査はまだこれから。
面識犯には間違いないと思われますが現在もまだ犯人の性別さえ不明です。
どうだろう?菅江真澄がヒントにならないかね。
署長…それはいったいどういう意味ですか?つまり第1現場は菅江真澄終焉の地第2現場は菅江真澄の墓所…ということなんだが…。
失礼ですが前署長の藤田さんならもう少し理詰めの捜査を提案しますよ。
そんな推理小説みてえなことを。
署長は初めて聞く名前かもしれませんがね菅江真澄の名は秋田の人間なら誰だって知ってますよ。
そうか…。
謎解きごっことしては面白いと思ったんだがな。
(ノック)どうぞ。
署長っ見ましたかこの記事。
いやスッポンの笹木さん…あの男は使えるよ。
しかし県警の本部長からは…。
お叱りは私が受けるよ。
そういうのは馴れてるんでね。
恐縮です。
兄から電話がありました。
風間さん主人を心配して角館の兄を訪ねてくださったとか…。
いえかえって失礼してしまって。
風間さんこうなってみて初めて分かりますね。
穏やかな生活が平凡な生活がどんなにすばらしいか…。
この記事どう思われます?奥さんはたしか学生時代は菅江真澄に傾倒されたとか。
そうですね。
私も神明社で「菅江真澄終焉の地」を見たことがきっかけでした。
菅江真澄が亡くなった場所には角館町と梅沢村の2説があって梅沢村というのは今の田沢湖町なんですけど…。
そうらしいですね。
あそういえば今年の春先ですか田沢湖に行かれたそうですね…。
えっ…!?〜ええ…。
〜〜話は違いますが…。
この運転手の事件と〜藤田さんの失踪に何か関係があるのかと〜言った人間がいましてね。
〜え〜っそうなんですか?〜いや〜。
それはちょっと〜考えすぎだと思いますよ。
〜本当に藤田署長は〜どこに行ったんですかね〜。
私が藤田さんだったら〜そう遠くには行かない。
愛する女たちをどこからか〜見守っている。
〜いやもし私だったらね…。
なるほど…。
〜いやなるほど〜。
〜〜どうかされましたか?いや誰かに見られていたような気がしたんだが…。
〜〜署長っ鶴田組のことなら私に訊いてください。
私にも刑事の面子がありますからね。
これはすまない。
高倉君の言うことがもっともだ。
実は捜査対象になるかどうか微妙だったので内々に北畠さんに頼んだんだよ。
何しろ「例のゆき江」が絡んでいるのでつい慎重になったんだ。
事情はよく分かりました。
それなら私に訊いてください。
私は組の者でも知らないことを知っています。
例えば香本は以前からゆき江を「姐さん」と呼んでるんです。
もう14〜15年前のことですがゆき江がお座敷に向かう途中香本が当時敵対していた組の者に刺される事件が起きたんです。
〜香本:このガキっ。
〜駄目よっ動いちゃ駄目っ香本は命の恩人と思いゆき江を大事にしているんです。
あの車の名義は香本のものですがそれも税金や車検や保険なんかの面倒をみるためで…。
しかしそれほどの関係だったら香本はゆき江のために煙山を殺すってこともありえますね。
私としては藤田さんの問題もあるしゆき江とは今後も協力関係を保ちたい。
強硬捜査は控え穏便に進めたい。
高倉君もそのへん理解してくれ。
はい分かりました。
(急ブレーキ音)鶴田組の香本君だね。
随分と芝居がかった登場だね。
煙山が殺された夜あの車を使っていたのは私ですよ。
姐さんは煙山の事件には一切関係ない。
煙山であろうとなかろうと姐さんを不幸にする奴はこの私がきっちり始末しますがね。
君は何かを知っている。
しかし何も言わないだろう…。
風間さんあんたはこっちの世界でも出世しますよ。
そうかい…。
ま褒め言葉として聞いておこう。
しかし香本君…もしゆき江さんが罪を犯し逮捕されることになったら君はどうする?その時は私が姐さんをあの世に送り…。
そして私も潔く死にましょうか。
それはつまり…心中か?あくまで個人的な聞き込みで昨日一昨日と角館に行きました。
チョーさんは管轄が違うだろう。
署長も前言ってたでねえですか。
観光タクシーに行ってみるつもりだったって…。
ですからですなこの私がその〜代わりにちょっと話を聞きに…。
そしたらですないろいろと不可解な点が分かったんですよ。
そちらの署ではどういう捜査をしているんですかえっ?刑事が1人で聞き込みをするなんてことあるんですか?いや基本的には2人捜査が鉄則のはずだが。
実は煙山殺しが発覚した当初は中年男と若い美人コンビが事情聴取に来たんですがね。
それからまたしばらくしたら今度は刑事が1人で聞き込みに来たというんです。
その刑事はね4月5日の煙山の伝票を調べたというんです。
いきなり4月5日ですよ。
4月…5日?その4月5日に何か特別の意味があるのか私は知りませんがね。
とにかくその4月5日煙山は田沢湖に行ってたようですな〜。
田沢湖に?もしもし署長どうかしたんですか?いや〜日にちはよく分からんが藤田さんの奥さんも春先田沢湖に出かけたとか…。
いや…。
それで?もうひとつ気になることがあるんですがね。
例のゆき江という芸者の亭主になる土産屋のオヤジがいますね…。
そのオヤジが同じ日の煙山の勤務状態を調べに来たそうです。
ただ土産屋のオヤジは「田沢湖に行ったのは誰か」というような訊き方をしたらしいんですがね。
1人の刑事が来て4月5日の…煙山の伝票を調べた。
それに藤木も…。
なぜ…?おはようございます。
あ大久保君観光タクシーへ聞き込みをした担当は?それなら私と松川君が主に担当しましたが。
はいっ。
私がその松川純子君です。
ほかに誰か単独で聞き込みをした者は?いや〜誰も単独では。
2人捜査が鉄則ですからね。
間違いないね?いや〜署長それがどうかしたんですか?いやいいんだ。
え〜4月4月。
4月5日田沢湖でひき逃げ事件か。
署長どうかされたんですか?事件の鍵は4月5日田沢湖にありそうだ。
確認したいのは私が田沢湖に行った日ですね?ええ。
それなら4月4日です。
4日。
ええ。
4日の昼頃こちらを出て先に田沢湖畔を一周してから兄の家に。
その晩は久しぶりに兄の家に泊まり翌日の昼頃に戻りました。
でもどうしてそんなことをお訊きになるのですか?実は先日お伺いした時田沢湖の話になった際奥さん少し動揺されてるようにお見受けしたもので。
あまり言いたくはなかったんですが昔田沢湖で叔父が亡くなったんです。
その叔父にはとてもかわいがってもらいました。
叔父は今でも湖底に眠っているんです。
そうだったんですかいやそんなことが。
(川村)4月5日午後4時頃田沢湖畔付近の県道で小谷常吉61歳がはねられた事故ですがいまだに容疑車両は検挙にいたっておりません。
新聞によるとその被害者は意識不明の重体だということだが。
翌日死亡しました。
大した怪我でなかったが不覚を取ったのか転倒した際に路面にしたたか頭を打ちまして。
悪いことはできないもんですな。
その路面に瓦礫が落ちていたようなんです。
不覚を取ったそれはどういうことですか?実はこの小谷はマイカー族の観光客を狙って狡猾な手段で金を巻き上げる当たり屋だったんです。
当たり屋?ええ事故を装って車に体当たりし示談金のように金を巻き上げるのが当たり屋の商売。
現場はたつこ姫像がある潟尻から車で約10分のかっぱヶ淵というご存じだべか?あの有名なたつこ姫像の由来は?湖畔に生まれた美しい娘たつこが自分の美ぼうと若さを永遠に保ちたいと願をかけたところ結局己の姿は大きな竜となって。
娘は嘆き悲しみついには湖に身を沈め田沢湖の主となった。
これがそのたつこ姫伝説で。
もういいよ川村課長。
ははいっ。
もう半年以上。
交通課では何か手がかりはないのか?目撃証言らしいものがないわけではないのですが事故直後現場のかっぱヶ淵から赤い車が走り去るのを見たと。
赤い車?しかし何分にも小学2年生の子供の証言なもので車種とかナンバーも分からずじまいでして。
お手数ですが煙山太一郎の4月5日の勤務状況を確認させてもらいたいのですが。
は紺野君4月の煙山君の勤務表を出してくれや。
さ。
(紺野)皆さん4月5日がお好きのようですね。
煙山は4月5日田沢湖一周の上客を乗せたと喜んでましたよ。
出発が午後3時15分駅前に戻ってきたのは4時40分。
これ確かに間違いないですか?ええ。
私が翌日の新聞を見てかっぱヶ淵の辺りでひき逃げ事故があったと言ったらその頃付近を走ってたと言ってましたから。
それを1人で調べに来た刑事がいたとか?は〜それは2〜3日前にみえた刑事さんにも訊かれたんですが。
何しろ2か月も前のことですからはっきり覚えてないんです。
ただその日がいつだったかは分かります。
ちょうど修理工場とトラブルがあった日でしたから。
10月11日です。
10月11日?署長。
うん。
《10月11日それは藤田が失踪した翌日だ》もう一つ伺います。
藤木商店のご主人が同じ頃同じようなことを訊きに来たそうですが?ええ来ました。
2度も来ました。
が私は一切教えてはいません。
あ〜それでいいんだべ。
それでいい。
他人様の悪口はあまり言いたくねえんだども藤木さんに悪い癖がありましてね嫌われ者でして。
その悪い癖というのは?藤木さんは怪文書をまいたりして他人を誹謗中傷する癖があるんです。
誰かの弱みや秘密を暴くのが好きなんだべなあ〜。
何度も恐縮です。
ひとつ確認したいことがあるんです。
藤田のことなら以前にも言ったように。
いえ今日は妹さんの頼子さんのことです。
妹のこと?参考までに春先頼子さんは角館に帰って来られたのは正確には何月の何日でしたか?そんなことですか。
それなら4月の5日ですよ。
ちょうどその日はうちの家内の誕生日でして。
そうですか4月5日。
4日のお昼頃こちらを出て先に田沢湖畔を一周して兄の家に《なぜ頼子夫人は嘘をつく必要が。
夫人の車は小豆色だが子供の目には赤い車に見えたのか》その11時半すぎゆき江の〜赤い車がマンションの駐車場に入っていくのを見たという〜近所の人の証言が出て〜もしあの赤い車をゆき江が〜運転していたとしたら?〜
(三味線と唄)
(三味線と唄)〜
(衝撃音と水音)〜署長!車内の遺体はゆき江と藤木に間違いありません。
運転してたのはゆき江ですが車は藤木のものです。
角館南署の調べでは事故車両の発見は今朝7時半頃です。
私ちょっと気になる事があってゆき江のこと調べたんですが佐藤ゆき江と藤木富治は昨夜秋田の料亭で会ってます。
料亭の女将の話では2人ともなにか思い詰めた様子だったとか。
2人が料亭を出たのは夜の9時過ぎだったと…。
藤木のクソ野郎…自棄でも起こしたのかな。
いや…これは恐らくゆき江が仕掛けた無理心中だろう。
無理心中…?ゆき江は自らの命を犠牲にして何かを守ろうと…。
誰かを守ろうとして…。
〜ああ…。
あの〜まだ何か…?10月11日に1人で訪ねてきた刑事のことです。
あまりよく覚えてないという事でしたが写真を見れば分かりますか?はぁ…。
この人です。
確かにこの人です。
失踪後の藤田の足取りが分かった?実は失踪したその10日の夜藤田さんはあなたのところへ来たんじゃないんですか?その時あなたといったい何を話したのか…?まいずれにしてもあなたと話をしたからこそ藤田さんは翌日観光タクシーに行かねばならなかった。
失踪当日の朝私は藤田に電話を掛けて話をしました。
実は…私は妹に関して変な事を聞いたんです。
妹が時々私には内緒でこの角館に来ているらしいと…。
狭い町です。
妹の姿を見かけた人がいたらしいんです。
何か良くない事でもあるのかと心配で私は藤田に…。
妹が最後に家に来た時の事を話した時…。
いや〜何もなければそれに越した事はないんだハハ。
そういえば妹が家に最後に来たのが4月だからねえ。
ほらあんたが出張で留守だった時…。
(藤田正男)私が出張だった時?4月の5日と6日あんた東京に出張だったろう?その時妹は車で遊びに来てね。
田沢湖を見た帰りに家に寄って…。
〜〜ん?なに…?どうした?あいや…〜なんでもないです〜とにかくその翌日藤田は出かけました。
風間さんが言われるように多分角館観光タクシーに行ったんでしょう。
その後藤田はまた私のところへやって来ました…。
「しばらくの間姿を消す」って言ったんです。
もちろん私は驚きました。
でも…藤田は立派な人間です。
きっと何か深い事情があるにちがいない。
私はそう思いました。
妹にも自分から言うまでは言わないでほしい。
中央署にもこの事は内密にしてほしい…。
そう…頼まれて…私は…私は…。
苦しかったでしょうね。
お気持お察しします。

(上杉)署長おっしゃいましたよね?ゆき江は自らの命を犠牲にして何かを誰かを守ろうとしたと…。
ゆき江が命を捨てても守りたかったもの…それはやはり藤田前署長なんでしょうか?〜フーさんと出会ったのは私が18歳で半玉のとき…。
当時フーさんは30代の男盛りでしょう。
そりゃカッコよかったわよ。
でも夢って長くは続かないから夢なのかしらねぇ…。
フーさんとそうなれたのはそれから何年も経って…。
やっとそうなれたと思ったら…〜《3月の初めゆき江は年老いた父親のために藤木との結婚を承諾した…。
しかしそれを決意したゆき江はおそらく最後の夢を見たかったにちがいない…》〜署長さん…今度私…お嫁にいくの。
相手はねとっても嫌なヤツ。
でもお父さんも楽になるしそれもいいかなって…。
お父さんねえもう長くないの。
だから最後の親孝行…。
そうか…。
〜お願い署長さん…。
ううん…いいかしら?12年ぶりにフーさんと呼んでも…。
あぁいいともフーさんで…。
最後の思い出にフーさんと初めて行ったあの温泉に私を連れてってください…。
お願い〜《藤田はゆき江の願いに応え夫人には東京への出張と偽って一泊泊まりの旅に出た…。
それが4月5日…。
同じ日頼子夫人はそんな事とは夢にも思わず昔田沢湖で亡くなった叔父の冥福を祈った。
しかしその帰り道…》あっ!?
(急ブレーキ音)〜
(細川)署長…。
署長…角館南署の岡島次長からファックスが…。
細川さん見たのかい?はいはいはい…。
角館南署の岡島次長に藤木の部屋の家宅捜査を依頼してたがその結果見つかったのがこれだな…。
「角館町でも有数の旧家を誇るY家の令嬢が何とひき逃げ死亡事故を起こしていたというからもうビックリ!しかもこの令嬢は今や警察幹部の御婦人ときた日にはもう二度ビックリ!」署長…これは本当なんですか?「蛇の道は蛇」と言うからね。
藤木は正に獣の嗅覚で…。
岡島次長には改めてお願いするが君もしばらくこの事は…。
あそれから官舎のお手伝いさん福原君枝さんといったね?ちょっと話を聞きたいんだが…。
分かりました。
すぐ手配します。
〜これをうちの新聞に載せるんですか?ゆき江が死んだ事は1日だけ公表を抑えた。
私の最後の賭けだ。
笹木君…力を貸してくれ。
分かりました。
しかし…高くつきますよ。
私も覚悟の上だ。
いつでも噛み付いてくれ。
〜〜《私の最後の賭け…。
〜私は藤田に賭けた…》〜「フーさん今日正午共同墓地の『菅江真澄の墓』の前でゆき江」失踪当日…藤田さんは角館の横沢さんを訪ねていたんです。
あなたも何度か密かに角館に赴いていた事はその朝の横沢さんの電話で聞いていたようですが藤田さんはその時思いがけずあなたが4月5日田沢湖に出かけていた事を知ったんです。
もうお分かりですね?その後の詳細は省きますが結局…藤田さんはあなたの犯した罪に…煙山を殺したことに気づいたんです。
それで…姿を消したんです。
あなたは4月5日田沢湖畔の県道でひき逃げ事故を起こした。
それを煙山に嗅ぎ付けられそれ以来煙山から何度となく脅迫をされた。
そうですね?あの時…あの男はかっぱヶ淵の浜辺にタクシーを停めていたそうです。
(衝撃音)
(急ブレーキ音)〜私はあの男にひき逃げの〜犯人だと見抜かれたんです。
〜何度となく〜お金を要求されました。
〜〜そのうちあの男は…〜私の体まで要求してきて…。
〜私は主人しか〜男の人を知りません。
〜主人のためにも…もうあの男を殺すしかないと〜思ったんです。
〜あの日…私は新幹線で〜角館に向かい人目を避けて駅の近くで〜待ち合わせました。
〜〜そして…神明社の境内に…。
いざとなると…やはり迷いましたが私は心を鬼にして…。
(呻き声)煙山の隙を衝いて…。
〜私は煙山のタクシーを運転して秋田に戻りました。
メーターもそのままにしておきました。
危険は承知していましたが私は一刻も早く家に帰りたかったんです。
菅江真澄終焉の地で煙山を殺害し菅江真澄の墓があるこの地にタクシーごと死体を遺棄した…。
無意識のうちにあなたのふだんの嗜好が表れたんですね。
ただただ…必死だったんです。
主人はその頃…2つの未解決事件の捜査で忙しくて幸い私が帰宅した時もまだ帰ってきてはおらず…。
ご主人に打ち明けようとは思わなかったんですか?警察署長である主人に迷惑をかけてはいけない。
なんとか…自分で解決しようと思ったんです。
それも…今思えば…愚かな考えだったかもしれませんが…。
でも風間さん…。
どうして主人は…私が煙山を殺した事に気づいたんです?どうして!?それは…。
それは…あなたの靴底に付着した…イチョウの実です。
あなたは神明社でイチョウの実を踏んだんです。
イチョウの実…?実は昨夜お手伝いの君枝さんからすべてを聞きました。
あぁ…いゃくっさ〜い…。
どうしたんだい?いゃ〜変な臭いがすると思ったらこれこれみたいですよ〜それは藤田さんが失踪する2日前のことだそうです。
そうですね?藤田さん!あなた…!?風間です。
藤田さん…なんだか初めて会ったような気はしないが…。
あなたは奥さんが煙山を殺したと察した。
そしてその事から奥さんのひき逃げ事件に辿り着いた。
しかし藤田さん…あなたには姿を晦ますことしか方法はなかったんですか?妻の罪は私の罪でもあります。
愛する妻に手錠はかけられない。
私が失踪することで少しでも逮捕の時間を遅らせたい。
いや…すべてうやむやになれば…。
〜風間さん…このとおり感謝します。
あなたは私とゆき江の事を知っていて…。
知らないほうがいい本当の事もあります。
奥さんは十分地獄を見た。
これ以上悲しませることは…。
あなたは出張と称しゆき江さんと最後の旅に…。
その同じ日奥さんはひき逃げ事故を起こした。
そのために結局は殺人に至った…。
それを知ったあなたは自分を責め絶望したんですね…?だから姿を晦ました…。
夫婦の絆と一口に言うがその絆は夫婦の数だけある。
長い年月をかけ細い糸を少しずつ縒り合わせその絆を太く強く紡いでいく…。
しかしあなたは別の絆を…その絆の縒りを戻してしまった…。
人間誰でも…もちろん私だって過ちを犯すかもしれない。
でもそれは誰にも責められない。
しかしね藤田さん過ちを犯した後が大事なんじゃないんですか?どう責任をとるか…それでその人間の真価が分かる。
あなたは結果的に2人の愛する女性を…。
藤田〜っ!〜上杉君〜それはいい。
〜本当にいいんですか?〜〜ゆき江さんに免じて…今の事は〜なかったことにしよう。
〜藤田さん…残念ですが…佐藤ゆき江は死にましたよ。
ゆき江さんはあなたを守ろうとしたんです。
あなたと奥さんを…命に代えて守ろうとしたんです。
ゆき江は…頼子の煙山殺しも知っていたんですか?恐らく知っていたでしょう。
だから藤木という男の怪文書で忌まわしい真相が暴かれる前にあの田沢湖で無理心中を図って…。
あなたは警察官としてはもちろん…夫としても奥さんに自ら手錠をかけるべきでした。
あなたさえそうしていれば…ゆき江さんは死なずに済んだんです。
大久保さん…後は頼みます。
〜署長あいや…〜藤田さん…。
署の方で〜詳しい話を…。
〜〜上杉君…。
〜〜風間さん…あんた姐さんに〜ホの字だったんだろ?〜フッ…何を言ってる。
姐さんが言ってましたよ。
〜藤田と別れて12年…初めて心を許せた男は新しい〜署長さんだったって…。
〜《この東北の町に〜幸薄いひとりの女がいた。
〜しかし…私は結局彼女には〜何もしてやれなかった。
もし彼女にもうひとつの〜人生があったなら…》〜今度の週末1度そっちへ戻るよ。
…ん?いや〜何だか煮詰まった…。
ハハハからかうなよ。
俺だってねたまには里心がつくこともあるんだから。
あっそうだ…。
樺細工土産に持っていくよ。
お前紅茶好きだろ?《男には時として心を揺らすときがある…。
しかしそこには愛する妻がいる。
大事な家族がある…。
人はふと忘れてしまう…。
穏やかな生活の素晴らしさを…平凡な生活の素晴らしさを…》
(細川)では事件解決を祝して署長ご挨拶を…。
こういう挨拶は苦手なんだが今回の事件を通して一人ひとりの胸の中にそれぞれの思いがあると思う。
その思いを大事に今日からまた新しく生きていこう。
ご苦労さまでした!2015/08/12(水) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「さすらい署長風間昭平2 こまち田沢湖殺人事件」[字]

署長失踪の鍵は角館の2人の女?無関係と思えた2つの事件に浮かぶいくつもの接点…。

詳細情報
番組内容
全国各地を転々と渡り歩くさすらい署長・風間昭平は、前署長・藤田の失踪という前代未聞の不祥事を起こした秋田中央署に赴任した。失踪した10月10日からちょうど1カ月、事件性や自殺の可能性はなく、風間は藤田が自らの意思で姿を消したと考えていた。 署では、署長失踪と同じ頃に起きた殺人事件の捜査に苦労していた。
番組内容2
被害者は、角館観光タクシー運転手・煙山太一郎で、10月2日早朝、共同墓地でタクシーの助手席で死んでいるのが発見された。死亡推定時刻は前日の午後8時から11時の間で、死因は背後からの絞殺、殺害現場は別の場所と見られた。風間は藤田の妻・頼子を訪ねた。藤田は失踪当日の朝、頼子の兄・横沢宏から電話を受けていたが、大した用ではなく、署でも確認済みだった。
番組内容3
部屋には、頼子の趣味だという東北を旅した文人の本が数多く並んでいた。後妻で子供はいないが、夫婦仲は円満…公私共に恵まれた男の突然の失踪に、風間は頭を悩ませる。
出演者
風間昭平…北大路欣也
 藤田頼子…姿晴香
 藤田政雄…中原丈雄
 上杉崇…加藤大治郎
 細川次長…中山仁
 大久保刑事…江藤潤
 高倉刑事…大島宇三郎
 宍戸刑事…藤澤慎介
 松川純子刑事…岡田薫
 北畠部長刑事…不破万作   ほか
原作脚本
【原作】中津文彦
【脚本】中岡京平
監督・演出
【監督】関本郁夫

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32118(0x7D76)
TransportStreamID:32118(0x7D76)
ServiceID:41008(0xA030)
EventID:42397(0xA59D)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: